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階層別に必要な能力要件とは?身につける方法や高めるポイントを解説

能力要件は、一貫性のある採用活動や人材育成を行う上で欠かすことのできない存在です。経営層や管理職、中堅社員や若手社員といった階層ごとに能力要件を定めることで、自社の人材戦略が明確化し、企業の競争力確保を実現することができます。
この記事では、能力要件の定義やメリット、階層ごとの具体例などを徹底的に解説します。能力要件についてお悩みの人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。


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目次[非表示]

  1. 1.能力要件とは
  2. 2.能力要件を明確にするメリット
  3. 3.【階層別】必要な能力要件
  4. 4.全階層に必要な能力要件
  5. 5.各階層に必要な能力要件を身につける方法
  6. 6.能力要件を活用するポイント
  7. 7.能力要件の向上ならアルーにお任せください
  8. 8.まとめ


能力要件とは

能力要件とは、特定の仕事や役割を遂行するために必要とされる「スキル」「知識」「経験」「態度」といった要素のことです。能力要件には、以下のような内容が含まれます。


  • スキル:実務に必要な具体的な技術や能力。コミュニケーションスキル、プログラミングスキルなど
  • 知識:特定の分野や業務に関する理解や情報
  • 経験:過去の実績や経歴に基づく実務経験
  • 態度(行動特性):仕事に対する姿勢や付随する行動


能力要件は、採用や人材育成のプロセスにおいて重要な指標になります。採用や人材育成に一貫性を持たせるためには、明確な能力要件を策定した上で、それをもとに人事施策を進めることが重要です。また、能力要件を明確にすることで、社員が自身のキャリアパスを理解し、目標に向かってスキルアップするための指針にもなります。



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能力要件を明確にするメリット

働き手不足が深刻化している日本では人材コストが増しており、人材戦略の質を高める能力要件の重要性がますます高まっています。能力要件を明確化するメリットは、主に以下の3つです。


  • 採用の質向上
  • 生産性の向上
  • 人材育成の促進


ここからは、能力要件を明確にするメリットについて確認していきましょう。


採用の質向上

能力要件を明確化することによって、採用の質が向上するというメリットがあります。
企業は採用活動を行う際に、企業側が求めているスキルセットや経験を持った人材かどうかを判断する必要があります。こうした際に、能力要件は重要な指標になるのです。どの職種にどのような能力が必要とされているかを採用担当者が明確に把握できます。

そのため、企業側の求めるスキルとのミスマッチをなくし、最適な人材採用を実現することができます。加えて、能力要件がしっかりと採用担当者に共有されていれば、採用担当者ごとの評価のムラを軽減することもできるでしょう。


生産性の向上

生産性の向上も、能力要件を策定するメリットの一つです。
能力要件を社員へ周知すれば、社員は自分自身の与えられている役割を果たすためにどのようなスキル、あるいは知識が必要なのか明確に把握できるようになります。
その結果、業務遂行に必要な能力を伸ばしやすくなり、業務遂行能力の向上につながるのです。個々の社員の業務遂行能力が向上すれば、社内全体の生産性が改善し、企業の競争力アップにつながります。

企業の競争力を確保するためには、社内の生産性を上げることが必要不可欠です。
社内の生産性を上げる施策について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
生産性向上とは?企業ができる具体的な取り組み・補助金・成功事例を紹介


人材育成の促進

能力要件を策定するメリットとして、人材育成の促進も挙げられます。
例えば能力要件を策定すれば、必要な研修と不要な研修を明確に把握できるようになるでしょう。その結果、必要な人材育成を集中して実施できるようになり、社員のキャリアパスや成長を促進することができます。また、能力要件に沿った自己啓発制度の拡充や、人材配置の実現も可能です。人材育成に関するコストを最適化できるようになり、社員と企業の双方にとってメリットが生まれるでしょう。


監修者からひとこと
能力要件定義を行うことで、人事にとっても社員にとっても、「誰が、いつ、何のために、どの能力を身につける必要があるか?」がクリアになります。能力要件を定義した後は、人事部内で用いるだけでなく、全社員にも共有することを推奨します。



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【階層別】必要な能力要件

能力要件を策定することには、さまざまなメリットがあることがわかりました。ここからは、具体的な能力要件の例について、以下の階層ごとに解説します。


  • 経営層
  • 管理職
  • 中堅社員
  • 若手社員
  • 新入社員


階層別の能力要件を策定する際には、ぜひ参考にしてください。


経営陣に必要な能力要件

会社の舵取りを担う経営陣には、以下のようにさまざまな能力要件が必要です。


  • 志と倫理観の研鑽ができる
  • ミッション型のリーダーシップ
  • 組織のビジョンを実現する力
  • 戦略的発想・思考力
  • ミッション実現のための環境構築力
  • 社外のネットワーキング
  • ミッションを浸透させる力


経営層の能力要件を定める際には、上記の観点を参考にしてみてください。経営陣に求められる能力要件について一つずつ解説します。


志と倫理観の研鑽ができる

経営層は、志と倫理観の研鑽を行う必要があります。
経営層には、周囲からさまざまな暗黙的な期待が向けられます。顧客や社員、株主などの期待に正攻法で応えていくことが求められる立場です。

経営層には、よりよい社会や組織の実現に向けて行動する力が必要です。加えて、自分の志を立てることで、望ましい自己の在り方を体現する必要があります。これらを両立させることで、初めて社会にインパクトを残す経営層として活躍できるようになるのです。


ミッション型のリーダーシップ

経営層には、ミッション型のリーダーシップも求められます。
ミッション型のリーダーシップとは、組織の存在意義やミッションの達成という目的に基づいて組織を牽引するタイプのリーダーシップです。こうしたリーダーシップを発揮するためには、組織のミッションが達成されることで実現する世界に対するイメージを膨らませる必要があります。組織のミッションを起点に求心力を発揮し、組織を牽引することも、経営層に必要な能力要件の一つです。


組織のビジョンを実現する力

組織のビジョンを実現する力も、経営層にとって必要な能力要件の一つです。
昨今のビジネス環境は変化が激しく、現状維持を続けるだけでは競争に勝てません。現代では「非連続的なイノベーションが競争力の源泉である」とも言われており、いかに社会にとって新しいインパクトを出せるかが求められています。そのためには、現在の延長線上にはない未来へ目を向けることが大切です。会社を牽引する経営層は、常に革新的な未来を見据え、企業の中長期的なビジョンを描くことが求められます。


戦略的発想・思考力

経営層には、戦略的な発想力や思考力も必要です。
戦略的発想・思考力には、主に以下の3つの要素が含まれます。


  • 組織の長期的なビジョンを描き、それに基づいて具体的な戦略を策定する能力
  • 市場動向や競争環境、内部資源を包括的に分析し、戦略の基礎を固める能力
  • 変化する環境に対応し、戦略を適時に見直し、調整する能力


企業が長期的に競争力を確保するためには、短期的な利益だけでなく、組織の持続的成長を見据えたビジョンを持つ必要があります。経営層が戦略的発想・思考を持つことで、組織の方向性を明確にし、チームを導くことができるようになるでしょう。

また、経営層が戦略的発想・思考力を持つことは、企業の継続的成長のKSFを特定し、重点領域を定めて経営戦略を立案することにもつながります。これらができるようになれば、企業のポテンシャルを最大限に引き出す事業展開が実現し、企業の持続的な成功に大きく貢献するのです。


ミッション実現のための環境構築力

経営層に必要な能力要件として、ミッション実現のための環境構築力も挙げられます。
経営層が描いたミッションを実現するためには、経営層が積極的に周囲へ働きかけて環境構築を行う必要があります。また、時には自分自身の手で環境構築を担い、ミッションを実現しやすい社内環境を整えることも必要です。経営戦略推進に必要な資源を調達し、配分するスキルも、経営層にとって大切な能力要件の一つと言えます。


社外のネットワーキング

社外のネットワーキングも、経営層に必要な能力要件の一つです。
企業の競争力を確保するためには、経営層が積極的に自社で担うビジネスの可能性を押し広げることが求められます。経営層が社外に多くのネットワークを持っていれば、その分さまざまなビジネスチャンスが生まれ、自社の可能性が広がるでしょう。自社との連携による相乗効果を生み出せるような事業が見いだせれば、業績改善や競争力向上が期待できます。


ミッションを浸透させる力

経営層に必要な能力要件として、ミッションを浸透させる力も挙げられます。
経営層はどうしても現場との距離が遠くなりがちなポジションです。そのため、経営層の声が現場まで届かなかったり、経営層と現場の意識にギャップが生まれたりすることも少なくありません。こうした状態が続くと、経営層の描いたミッションが現場に浸透せず、絵に描いた餅で終わってしまう可能性が高いです。

ミッションを実現するためには、経営層がミッションを上手く浸透させることが求められます。組織のミッションを継続的に伝え、ミッションの実現に必要な行動規範を示す力も、経営層に必要な能力要件の一つです。

MVVを浸透させる方法について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を浸透させる方法と成功事例

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管理職に必要な能力要件

管理職はチームのマネジメントを担当するとともに、部下の育成や経営層との架け橋も担う重要な存在です。そんな管理職には、以下のような能力要件が求められます。


  • 未知を切り拓く意識
  • リーダーシップ
  • 戦略立案力
  • KPIマネジメント力
  • チームビルディング
  • 部下育成力


管理職に必要な能力要件について一つずつ見ていきましょう。

なお、管理職に求められるスキルの詳細は、以下のページで解説しています。
管理職に求められる能力とは?あるべき姿や能力を身につけてもらう方法について解説


未知を切り拓く意識

管理職には、未知を切り拓く意識が必要です。
ビジネス環境の変化が激しい昨今では、経営層だけでなく、管理職も未知を切り拓く意識を持つ必要があります。過去を踏襲したり、成功体験をなぞったりするのではなく、未来に向けたさらなる変化を自ら志向できるような心構えが大切です。

なお、管理職の中には、プレイヤー時代に優秀で成果を発揮した人も少なくありません。プレイヤー時代に優秀だった管理職は、自らの成功体験にとらわれてしまい、新しい発想ができなくなってしまう場合があります。成果を発揮してきた管理職がいる場合には、これまでの経験にとらわれすぎていないかしっかりと確認しましょう。

過去の経験を手放す方法として、「学びほぐし」や「学習棄却」を意味するアンラーニングが有効です。アンラーニングについては以下のページで詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
【具体例あり】アンラーニングとは?やり方やリスキリングとの違いを解説


リーダーシップ

管理職には、リーダーシップも求められます。
具体的には、以下のような行動を通じてリーダーシップを発揮することが大切です。


  • 現在・未来の問題に対して先んじて警鐘を鳴らし、変革に向けて組織を牽引する
  • 組織と個人を結び付け、各メンバーのやりがいを引き出すことで職場を牽引する


こうした行動ができる管理職は、組織全体を一つの方向へ導くのが上手く、限られたリソースで最大限の成果を出す組織を築くことができます。管理職の能力要件には、ぜひこうしたリーダーシップも盛り込んでおきましょう。

なお、リーダーシップについてさらに理解を深めたい方は、以下の記事をご覧ください。
リーダーシップとは?5つの種類やある人の特徴、身につける方法を解説


戦略立案力

管理職には、戦略立案力も必要です。
戦略立案力とは、組織を取り巻く内外の環境を的確に分析した上で、それに基づいて部門や事業のさらなる成長方向性を描く能力のことを指します。部門が成長していくためには、部門に対する深い知識を持つ管理職が戦略を練り、積極的に経営層へ提言することが重要です。部門にとって拡大のボトルネックとなっている箇所を特定し、重点領域を定めた上で戦術や計画を立てられるようになる必要があります。なお、こうした戦略立案力は、管理職が今後経営層として活躍するために一層必要となる能力です。


KPIマネジメント力

管理職の能力要件として、KPIマネジメント力も挙げられます。
それぞれの部門は、その部門が達成するべき戦略目標を持っています。また、目標達成のために割り当てられる人的・金銭的なリソースは限られていることがほとんどです。管理職は、部門の戦略推進に必要な資源を正しく調達・配分し、実行に向けた体制やオペレーションを構築する必要があります。こうした能力が高い管理職は、KPIを効果的に管理・運用できるため、部署のパフォーマンスを安定させることができるのです。

アルーが提供するKPIマネジメント力研修は、以下のページで詳しくご覧ください。
KPIマネジメント(管理職研修)


チームビルディング

チームビルディングも、管理職の能力要件の一つです。

チームビルディングとは、組織の状態を正しく見立て、コミュニケーションや協働がより活発に行われるようにチームワークを醸成することを指します。
管理職が積極的にチームビルディングを行えば、チーム内での情報共有がスムーズになり、業務効率が向上するでしょう。また、コミュニケーションが活性化することにより、社員の主体性やモチベーショの向上も期待できます。
なお、管理職として仕事を進める中で、必ずしもチームの状況が良好とは言えない事態に直面するかもしれません。こうした場合でも、管理職は健全な話し合いを通じてワンチームとして協働できる関係性を作るのが大切です。

チームビルディングの目的や具体的な方法は、以下の記事で解説しています。
チームビルディングとは?目的やプロセス、具体的な手法を解説


部下育成力

管理職には、部下育成力も求められます。
効果的に部下を育成するためには、若手メンバーのやる気や能力に合わせた関わり方や指導を意識する必要があります。また、タスクベースで業務を割り振るのではなく、メンバーの成長を見据えた、意義のある業務アサインを行うのが大切です。
さらに、部下育成には短期的なスキルアップだけではなく、メンバーの中長期的なキャリア形成も含まれます。管理職は「部下のやりたいこと」と「会社から期待されていること」を上手く調和させ、メンバーの成長を支援することが重要です。


中堅社員に必要な能力要件

会社の実務の中核を担う中堅社員には、以下のような能力要件が必要です。


  • プロフェッショナル意識
  • 率先型のリーダーシップ
  • チームレベルの問題解決力
  • OJT指導力


プロフェッショナル意識やチームレベルでの問題解決力はもちろん、OJT指導力やリーダーシップなど、今後管理職としてステップアップする上で重要な能力要件もしっかりと組み込む必要があります。中堅社員に必要な能力要件を詳しく見ていきましょう。

なお、中堅社員に求められる役割や育成ポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。
中堅社員に求められる役割|必要なスキルや育成のポイントを紹介


プロフェッショナル意識

中堅社員には、プロフェッショナル意識が必要不可欠です。
実務の中心となる中堅社員は、何事にもプロフェッショナル意識を持って取り組み、高い成果を追求することが求められます。中堅社員がしっかりと質の高いアウトプットを出すことで、部署全体としてのパフォーマンスが上がり、社内外からの信頼獲得につながるのです。また、高い水準で仕事をこなす中堅社員を見た若手社員や新入社員は、自身に求められる期待水準の高さを知り、成長することができます。


率先型のリーダーシップ

中堅社員に求められる能力要件として、率先型のリーダーシップも挙げられます。
率先型のリーダーシップとは、進んで手本を示すことによって職場のメンバーの行動を推進するスタイルのリーダーシップです。中堅社員が率先型のリーダーシップを発揮すれば、周囲の社員は自分に求められる行動を知ることができるため、成長しやすくなります。率先型のリーダーシップを早い段階から磨いておくことで、管理職へステップアップする土台を作るのが大切です。

リーダーシップの種類や、リーダーシップを身につける方法について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
リーダーシップとは?5つの種類やある人の特徴、身につける方法を解説


チームレベルの問題解決力

チームレベルの問題解決力も、中堅社員に必要な能力要件の一つです。
チームとして仕事を進める中で、問題やムダが生じることも少なくありません。中堅社員はこうした課題を素早く発見し、解決する必要があります。そのためには、問題の本質的な課題を追求する姿勢や、見抜いた問題点を実際に解消する実行力が欠かせません。チームの業務品質や生産性を高めるためにも、中堅社員にはぜひチームレベルの問題解決力を高めてもらいましょう。

問題解決力の定義やトレーニング方法、鍛えるメリットや基本となる3ステップは以下の記事で詳しく解説しています。
問題解決力とは?トレーニング方法や鍛えるコツ、問題解決の流れを解説


OJT指導力

中堅社員には、OJT指導力も必要です。
多くの企業では、新入社員の育成手法としてOJTが採用されています。OJTを担当するのは、ある程度実務経験を積んだ中堅社員が中心となることが多いです。
OJTで効果的な教育を行うためには、部下の気付きを引き出す質問を投げかけたり、部下の成長につながるタスクを提示したりするスキルが欠かせません。中堅社員のOJT指導力を高め、経験のあるメンバーに対するフォローの強化につなげましょう。

なお、OJTにはいくつかの注意点やポイントが存在します。OJTの進め方やポイントを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
OJTとは?OFF-JTとの違いや効果的な方法をわかりやすく解説


若手社員に必要な能力要件

若手社員は、実務経験を積み重ねると同時に、徐々に独り立ちする立場です。若手社員としてパフォーマンスを発揮するためには、以下のような能力要件が求められます。


  • 仕事への志
  • 学び続ける姿勢
  • 問題発見・解決能力
  • コミュニケーション能力
  • メンタリング能力
  • 社内のネットワーキング


ここからは、若手社員に必要な能力経験を見ていきましょう。


仕事への志

若手社員の能力要件には、仕事への志が必要です。
仕事への志とは、仕事に対する情熱やこだわりのことを指します。こうした志は、若手社員が成長していくために必要不可欠なものです。若手社員の段階からプロフェッショナル意識を持つことで、チャレンジングな業務にも積極的に挑戦できるようになり、成長スピードが速くなるのです。


学び続ける姿勢

学び続ける姿勢も、若手社員の能力要件に必要な要素の一つです。
若手社員は、今後業務の中核的なプレイヤーとなるために、知識やスキルの獲得に注力する必要があります。そのためには、自分の力量や成果などの現実をしっかりと直視しつつも、常に自分の描く理想の姿に向けて高い目標を掲げることが欠かせません。
なお、若手社員に学び続ける姿勢を獲得させるためには、企業側の取り組みも重要です。研修やeラーニングを実施する、資格取得や書籍購入に補助を出すといった方法で、社員が学びやすい環境を整えましょう。


問題発見・解決能力

問題発見・解決能力も、若手社員の能力要件です。
問題発見・解決能力とは、日常業務やプロジェクトの遂行において、問題を迅速に発見し、解決するスキルのことを指します。問題を発見するためには、業務やプロジェクトの進捗や成果を定期的に分析し、問題点を特定することが大切です。特に、データをもとにした客観的な分析が、問題発見の鍵となります。
また、問題を発見したら、表面的な対処で終わるのではなく、本質的な改善策を見つけるために深堀りすることを心がけましょう。問題の根本原因を明確にした上で、それに対する具体的な解決策を立案、実行することが大切です。

問題解決力を鍛える方法やメリット、基本となる3ステップは、以下の記事で詳しく解説しています。

問題解決力とは?トレーニング方法や鍛えるコツ、問題解決の流れを解説


コミュニケーション能力

若手社員の能力要件として、コミュニケーション能力も挙げられます。
コミュニケーション能力とは、上司や後輩、同僚と円滑に意思疎通を図り、業務の進行や目標の達成に向けて協力していく能力です。具体的には、以下のような要素が含まれます。


  • 明確で的確な表現を用いて情報を伝える
  • 適切なフィードバックを提供する
  • 他者の視点を理解し尊重する


良好なコミュニケーションを行うことで、チームの連携が強化され、業務の効率性を高めることができます。加えて、社員のモチベーションアップや主体性の向上にも役立つでしょう。

コミュニケーション能力についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
仕事に活きるコミュニケーション能力とは?鍛える方法や高い人の共通点


メンタリング能力

メンタリング能力も、若手社員の能力要件の一つです。
メンター制度を導入している企業では、新入社員と世代の近い若手社員がメンター役になることが多いです。メンターは、経験の浅いメンバーへの簡易な実務指導を担いつつ、悩みや不安の相談に乗って心理的に支えることが求められます。そのためには、新入社員の悩みに寄り添う姿勢や傾聴力、信頼関係構築能力などが重要です。

メンタリングについて、以下のページで詳しく解説しております。
メンタリングとは?メリットや進め方、効果的に実施するポイントも解説


社内のネットワーキング

若手社員の能力要件として、社内のネットワーキングも挙げられます。
若手社員が社内のネットワークを広げれば、他部署やチームと協働しやすくなります。実務をこなす若手社員同士がネットワークを広げることで、部署をまたいだ仕事が効率的に進むようになるでしょう。日頃から積極的なコミュニケーションを心がけ、部署やチームの垣根を超えた協力・支援を仰げる関係を築くことが重要です。


新入社員に必要な能力要件

入社直後の新入社員は実務経験も浅いため、まずは社会人としての土台を作り上げることが必要です。新入社員に必要な能力要件としては、以下の6つが挙げられます。


  • 企業理念の理解
  • 経験学習サイクルを回す力
  • 定型業務を遂行する力
  • 向上心・自立性・創造性
  • 社会人としての意識行動
  • 他者の受容・尊重


新入社員に必要な能力要件を6つ解説します。


企業理念の理解

新入社員に求められる能力要件として、企業理念の理解が挙げられます。
企業理念とは、企業の核となる価値観や目標のことです。企業理念を理解することで、新入社員は企業の目標に共感し、自身の業務や行動がそれに貢献する意識を持つことができます。
また、企業理念は倫理的な行動や決断をするための指針となる存在です。企業理念を正しく理解すれば、組織文化に適応し、組織全体と一体感を持つこともできます。

なお、企業理念を浸透させるためには、企業側の積極的な働きかけが重要です。
企業理念を浸透させる方法や、企業理念の浸透を成功させるポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。
【事例あり】理念浸透の方法と成功のコツ


経験学習サイクルを回す力

新入社員は、経験学習サイクルを回す力も求められます。
経験学習サイクルを回すためには、何事にも前向きに取り組み、上位者・先輩からの指摘・意見を素直に吸収して自己改善につなげる姿勢が大切です。この姿勢があれば、経験のない新しい仕事や苦手な仕事にも、過去の経験を基に取り組むことができるようになります。

経験学習サイクルは、新入社員の今後の成長スピードを左右する重要な要素です。早い段階からこの考え方を身につけ、スムーズに成長できる土台を作りましょう。

経験学習サイクルの概要やコツについて詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
経験学習サイクルとは?実践のコツや具体的な施策例


定型業務を遂行する力

新入社員の能力要件として、定型業務を遂行する力も挙げられます。
定型業務を遂行する際は、正確性と注意深さを意識し、業務を細部まで正確に取り組むことが大切です。また、ただ業務をこなすのではなく、タスクの優先順位を理解し、スケジュール通りに業務を進める姿勢も求められます。

業務内容によっては、手順を厳守し、業務の安全性と品質を保つことも重要です。実務遂行の基礎力として、まずは定型業務を確実にこなせるようになってもらいましょう。


向上心・自立性・創造性

向上心・自立性・創造性も、新入社員の能力要件の一つです。これらの定義と具体例は、それぞれ以下の通りです。


定義

具体例

向上心

常に自己を向上させる意欲

業務やスキルの向上に向けて積極的に学び、成長する姿勢など

自立性

指示を待たずに自ら行動し、業務を遂行する能力

与えられたタスクや目標を理解し、自ら考えて行動する

創造性

新しいアイデアや解決策を生み出す能力

型業務にとらわれず、新しい視点やアプローチを取り入れる

新入社員がこうした3つの要素を身につけることで、新入社員自身の成長につながりますし、チーム全体の業務効率化や生産性の向上も期待できます。


社会人としての意識行動

新入社員の能力要件として、社会人としての意識行動も挙げられます。
社会人としての意識行動とは、社会人として求められるマインドセットに基づいた責任感のある行動のことです。これを身につけるためには、基本的な社会人基礎力を習得した上で、学生から社会人へとマインドや行動を変える必要があります。研修などを実施して、早い段階から社会人としての基本行動を定着させることが大切です。

社会人基礎力の診断方法や鍛え方は、以下のページで詳しく解説しています。
社会人基礎力とは|診断方法から鍛え方まで詳しく解説


他者の受容・尊重

新入社員の能力要件として、他者の受容や尊重も挙げられます。
社会人として仕事を進めるためには、自分とは異なる考えや価値観を持った人と協働しなければならない場面も少なくありません。こうした場面でもしっかりと相手の考えや価値観を受容・尊重して、職場のメンバーとの距離を縮めることが大切です。
また、ときには相手に伝えづらい内容を伝えなければならない場面もあるでしょう。この際も、しっかりと相手に配慮したコミュニケーションをとり、 自他をともに大切にすることが大切です。

また、自他ともに大切にするためのコミュニケーションスキルとして、アサーティブコミュニケーションを身につけることも有効です。アサーティブコミュニケーションについては、以下のページで詳しく解説しておりますのでぜひご覧ください。
アサーティブコミュニケーションとは?職場での具体例やデメリットを解説


監修者からひとこと
階層別に必要な能力要件を定義する際は、既に世の中に出回っている情報を叩き台にし、自社用に修正するほうが効率的です。アルーでは階層別の能力要件マップを提供していますので、参考にしてみてください。
階層別能力要件マップ:アルーコンピテンシー




教育体系見直しに役立つ3つの観点~アルーコンピテンシーマップを活用した階層別教育




全階層に必要な能力要件

ここまで、社員に必要な能力要件を階層別に解説しました。この他にも、能力要件の中には全社員に共通して身につけてもらうべきものが存在します。
全階層に必要な能力要件は、以下の2つです。


  • コンセプチュアルスキル
  • ヒューマンスキル


ここからは、全階層の社員に必要な能力要件について解説します。


コンセプチュアルスキル

すべての社員に求められる能力要件として、コンセプチュアルスキルが挙げられます。
コンセプチュアルスキルとは、知識や情報などを体系的に組み合わせることで、複雑な事象を概念化し、物事の本質を把握する能力のことです。具体的には、以下のような能力がコンセプチュアルスキルに含まれます。


  • ロジカルシンキング
  • ラテラルシンキング
  • クリティカルシンキング
  • 問題解決思考
  • 仮説思考
  • 戦略的思考
  • ビジョン構想力
  • 俯瞰力
  • 多面的視野
  • 知的好奇心
  • 探究心
  • 受容性
  • 柔軟性
  • 先見性
  • 応用力


ロジカルシンキングやクリティカルシンキングなどを磨くことで、論理的で筋道だった考えができるようになります。また、高い知的好奇心や探究心、先見性などを持つことで、複雑性の増す現代のビジネス環境へ適応することが可能です。階層によらず、社員にはこれらのコンセプチュアルスキルも能力要件として組み込むとよいでしょう。

コンセプチュアルスキルについてさらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
コンセプチュアルスキルとは?15の構成要素と高め方【具体例あり】


ヒューマンスキル

ヒューマンスキルも、すべての階層の社員に求められる能力要件の一つです。
ヒューマンスキルとは、他者と良好な信頼関係を構築し、質の高いコミュニケーションを行う、対人関係能力のことを指します。ヒューマンスキルを構成する8つの要素は、以下の通りです。


  • リーダーシップ
  • コミュニケーション能力
  • ネゴシエーション能力
  • プレゼンテーション能力
  • コーチング能力
  • ヒアリング能力
  • ファシリテーション能力
  • 向上心


これらを身につけることで、社内に必要な情報がスムーズにいきわたるようになり、業務効率化や主体性の向上につながります。研修やeラーニングなどを通じて、社員がヒューマンスキルを磨くことのできる環境を整えるのが大切です。

ヒューマンスキルは、以下のページでさらに詳しく解説しています。
ヒューマンスキルとは?一覧や高い人の特徴、向上させるコツ【研修事例】


監修者からひとこと
ヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルは、階層別研修に取り入れるやり方と公募研修で取り入れるやり方、その両者を組み合わせるやり方があります。階層別研修に取り入れることのデメリットは、ある階層になるまでスキル習得ができないことです。キャリア自律を志向していたり、ジョブ型を取り入れたりしている企業では、公募研修の方が効果的でしょう。




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各階層に必要な能力要件を身につける方法

能力要件を身につけるためには、研修の実施やメンター制度の導入が有効です。また、1on1ミーティングを実施して、能力要件を身につけられるよう上司側がサポートするのもよいでしょう。
ここからは、各階層に必要な能力要件を身につける方法を解説します。


能力要件に沿った研修の実施

能力要件を身につけてもらうためには、それに沿った研修を実施するのがおすすめです。
スキルや階層別に、それぞれの能力要件に合致した研修を実施しましょう。例えばコンセプチュアルスキルを磨いてもらうのであればロジカルシンキング研修や問題解決力研修、ヒューマンスキルを磨いてもらうのであれば、コミュニケーション研修やチームビルディング研修を実施するのがおすすめです。なお、研修規模が大きくなる場合には、社員のレベルや職種に応じてクラス分けをするといった工夫を行いましょう。
経営層や管理職、新入社員など階層ごとに区切った研修を実施するのも効果的です。

以下の記事では、階層別研修の目的や内容、研修体系図の作り方やカリキュラム例などを徹底的に解説しているので、ぜひ参考にしてください。
階層別研修の目的や内容、体系図の作り方やおすすめカリキュラム例をご紹介


メンター制度の導入

メンター制度の導入も、社員に能力要件を身につけてもらうために有効な手段です。
メンター制度があれば、経験豊富で高い専門知識を持ったメンターから、社員は直接フィードバックを受けられるようになります。その結果、実践的なスキルや知識を効果的に学ぶことができ、能力要件の獲得に役立つでしょう。研修だけでは補いきれない細かい部分も個別にフォローできるため、研修と同時に導入するのもおすすめです。

メンタリングのメリットや進め方、ポイントは以下のページで詳しく解説しています。
メンタリングとは?メリットや進め方、効果的に実施するポイントも解説


1on1ミーティングの実施

1on1ミーティングの実施も、社員に能力要件を獲得してもらう効果的な方法です。
1on1ミーティングを行えば、個々の社員のニーズや成長目標に合わせた指導・フィードバックができるようになります。その結果、社員一人ひとりが自分の強みや課題を正しく理解し、目標達成に向けた具体的なアクションプランを立てやすくなるのです。さらに、定期的に上司と話す機会を設けることで、上下の信頼関係構築にもつながります。

1on1ミーティングの進め方や注意点を知りたい方は、以下のページをご覧ください。
1on1とは?話すことの例や意味がないと言われないための進め方


監修者からひとこと
各階層に必要な能力要件を身につける方法として大切なことは、現場での実践、フィードバックの運用です。学んだことを活かし、上長や周囲からフィードバックをもらうことが大切です。そのためには、上長や周囲の先輩・同僚がそのスキルを身につけ、さらにフィードバックできるスキルも身につけておく必要があります。




教育体系見直しに役立つ3つの観点~アルーコンピテンシーマップを活用した階層別教育




能力要件を活用するポイント

能力要件を運用する際には、どういった点に気をつければよいのでしょうか。
能力要件を効果的に運用する際のポイントは、以下の2点です。


  • 経営方針・能力要件を明確に提示する
  • 経営陣・管理職にまずは身につけてもらう


ここからは、企業全体の能力要件を高める際に意識したいポイントを2つ解説します。


経営方針・能力要件を明確に提示する

企業全体の能力要件を高めるためには、企業の経営方針や能力要件を明確に提示するのが大切です。
企業全体の方針がまとまらないと、社員はどのような行動を取ればよいのかわかりません。業務の混乱を招き、モチベーションの低下につながる可能性もあります。
まずは企業全体の方針を明確にして、その方針を実現するために必要な能力要件を社員へ周知しましょう。全社員が具体的な目標に向かって行動できる環境を整えることで、能力要件を意識した成長を実現しやすくなります。


経営陣・管理職にまずは身につけてもらう

まずは影響力の高い経営陣や管理職から身につけてもらうのも、能力要件を効果的に運用するためのポイントです。
上司が能力要件の獲得に向けて積極的に取り組めば、周囲にその姿勢が伝わり、部下も自然と取り組むようになります。反対に、上司に能力要件に対する理解がなければ、「上司もやっていないし、自分もやらなくていいか」という雰囲気が生まれてしまうでしょう。
まずは上層部から能力要件を体現してもらい、徐々に会社全体へと浸透させるのが大切です。


監修者からひとこと
能力要件を活用するポイントとして、人事がどれだけ運用に落とせるか、という点も重要です。能力要件を作ったものの、各能力要件を底上げする人事施策がなかったり、現場任せになってしまったりすると、せっかく作った能力要件が形骸化してしまいます。人事リソースの問題で運用に落としにくい場合は、外部のリソースを活用して運用を推進することも選択肢の一つになるでしょう。




教育体系見直しに役立つ3つの観点~アルーコンピテンシーマップを活用した階層別教育




能力要件の向上ならアルーにお任せください

能力要件の向上なら、ぜひアルーへお任せください。
人材育成を手掛けているアルーでは、能力要件の策定を支援するサービスを提供しております。また、能力要件の獲得に向けた成長を実現する研修事例も豊富です。
この記事の最後に、アルーの提供している能力要件の策定サービスをご紹介します。


グローバル人材能力要件定義作成サービス

アルーでは、グローバル人材に必要な能力要件を作成するサービスを提供しています。
本サービスでは、グローバル人材の具体的な人物像を以下の3つのカテゴリーに分け、10個の領域にマッピングするのが特徴です。


  • ジブン……トランジション・リーダーシップ・アイデンティティ
  • コト……課題目標設定・戦略計画立案・実行管理と改善・未知変化への対応
  • ヒト……チームワーク・人材育成と組織開発、異文化対応


ヒアリングや関係部署との議論を通じて、上記のカテゴリーに基いた、貴社に最適なグローバル人材能力要件を定義いたします。本サービスを利用すれば、人材採用基準の明確化や育成の効率化など、さまざまなメリットがあります。

グローバル人材能力要件定義作成サービスの詳細は、以下のページをご覧ください。
グローバル人材能力要件定義作成サービス(グローバル人材育成コンサルティング)



教育体系見直しに役立つ3つの観点~アルーコンピテンシーマップを活用した階層別教育



まとめ

能力要件について、定義やメリット、階層別の具体例などを徹底的に解説しました。
能力要件の策定は、一貫性のある人材採用や育成を行う上で必要不可欠です。一方、能力要件のカバーする領域は多岐にわたるため、階層ごとに最適なものを選択するのは簡単ではありません。ぜひアルーの提供するグローバル人材能力要件定義作成サービスを利用して、貴社に最適な能力要件を作成してください。
ぜひこの記事を参考に能力要件に対する理解を深め、効果的な人材戦略を実現しましょう。



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アルー株式会社
アルー株式会社
20年以上、企業向けに人材育成コンサルティングや研修を提供してきた。新入社員・管理職といった階層別研修や、海外駐在員やグローバルリーダーなどのグローバル人材育成、DX人材育成に強みを持つ。その実績は取引企業総数1400社以上、海外現地法人取引社数400社以上に及ぶ。京都大学経営管理大学院との産学連携など、独自の研究活動も精力的に行っている。
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