
チームビルディングとは?目的やプロセス、具体的な手法を解説
「チームビルディングをやっても、飲み会やイベントで終わってしまう」「タックマンモデルの混乱期から抜け出せない」——このような手応えのなさを感じている人事や組織開発の担当者は少なくないでしょう。
チームビルディングは、単なる交流施策ではなく、チームの成果を最大化するための設計された組織開発手法です。本記事では、定義とタックマンモデル、リーダーの介入アクション、失敗回避策、リモート環境での設計まで、自社チームに応じた最適な施策を選択、実践できるよう詳しく解説します。
この記事でわかること
- チームビルディングの定義と、チームワークや組織開発との違い
- タックマンモデル5段階とリーダーの具体的な介入アクション
- 目的から逆算する施策選定の考え方
- チームビルディングが失敗する4パターンと回避策
- リモートやハイブリッド環境での設計の勘所
この記事の監修者

アルー株式会社
代表取締役社長
落合文四郎
1977年、大阪府生まれ。 2001年、東京大学大学院理学系研究科修了後、株式会社ボストン コンサルティング グループ入社。 2003年10月、株式会社エデュ・ファクトリーを設立し、代表取締役社長に就任。 2006年4月、アルー株式会社に社名変更。京都大学博士(経営科学)。
チームビルディングとは——定義と注目される背景
単価削減ではなくROI基準で判断する枠組み
チームビルディングとは、チームメンバーが共通の目標に向かって協働できる状態をつくり出すために、意図的に関係性や役割、プロセスを設計する組織開発手法です。単なる親睦や一体感の醸成ではなく、関係の質を起点に思考の質、行動の質、成果の質を高めていく循環を生み出すことを目的とします。
MITダニエル・キム教授が提唱した「組織の成功循環モデル」では、関係の質、思考の質、行動の質、成果の質の4つが相互に循環するとされています。キム教授自身は必ずしも「関係の質から始めるべき」と限定しているわけではありませんが、本記事では、関係の質を起点として循環を回すアプローチを推奨する立場を取ります。多くの実務現場において、成果を先に求めるアプローチが行き詰まりやすく、関係の質を意図的に整えることで循環が動き始めるケースが多いためです。
チームワークや組織開発との違い
「チームビルディング」「チームワーク」「組織開発」は混同されがちですが、対象範囲と目的が異なります。社内で説明する際に自信を持つためにも、以下の比較表で整理しておきましょう。
観点 | チームビルディング | チームワーク | 組織開発 |
|---|---|---|---|
対象範囲 | 特定のチーム(5〜30名程度) | チームメンバーの協働状態 | 組織全体・部門横断 |
目的 | 関係性・役割・プロセスの設計 | 協力し合って成果を出すこと | 組織文化・制度の変革 |
時間軸 | 短期〜中期(数か月) | 常時 | 中長期(1年以上) |
主体 | チームリーダー・人事 | メンバー全員 | 経営層・人事・外部専門家 |
アプローチ | ワークショップ・研修・1on1 | 日常業務の中での協働 | 制度・組織構造や文化の変革 |
チームワークが「協力できている状態」という結果を表すのに対し、チームビルディングは「その状態をつくり出す手段」を指します。組織開発はさらに広く、組織全体の構造や文化に働きかけます。チームビルディングは組織開発の一手法として位置づけられます。
注目される背景と目的
近年チームビルディングが再注目されている背景には、以下の3つの環境変化があります。
- リモートやハイブリッド勤務の常態化により、雑談や偶発的な交流が減少し、意図的に関係性をつくる必要性が高まった
- 価値観の多様化や世代間ギャップの拡大により、放置していては共通言語が育たない状態が生まれている
- 心理的安全性研究の広がりにより、関係の質が成果に直結するという考えが浸透してきた
こうした背景を踏まえると、チームビルディングは福利厚生的なイベントから、経営課題を解く組織開発施策へと位置づけが変わりつつあると言えます。
タックマンモデルの5段階におけるリーダーの介入アクション
5段階のプロセス概要
心理学者ブルース・タックマンが提唱したチームの発達段階モデルは、チームビルディング設計の基本フレームとして最も広く使われています。5段階の概要は以下の通りです。
- 形成期(Forming):メンバーが集まった直後。互いに様子見で、表面的な会話が中心
- 混乱期(Storming):役割や価値観の違いから対立が表面化。避けて通れない段階
- 統一期(Norming):対立を経てチームのルールや共通言語が形成される
- 機能期(Performing):チームとして高い成果を出せる状態
- 散会期(Adjourning):プロジェクト完了や組織改編などで解散する段階
段階×介入アクション一覧
各段階でリーダーが取るべき介入アクションを整理します。
段階 | メンバーの状態 | リーダーの介入アクション | やってはいけないこと |
|---|---|---|---|
形成期 | 様子見・遠慮 | 目的とゴールの明示 / 自己開示ワーク / 期待役割の言語化 | いきなり成果を求める / 対立を避けさせる |
混乱期 | 意見対立・不信 | 対立を「見える化」する場の設定 / 傾聴と再質問 / 判断基準の合意 | 対立を抑え込む / リーダーが即断即決する |
統一期 | ルール形成 | チーム憲章の明文化 / 意思決定プロセスの合意 / 役割分担の再確認 | ルールを固定化しすぎる |
機能期 | 自律的協働 | 権限委譲 / 振り返りのファシリテート / 外部変化への感度共有 | 過剰介入 / 現状維持を強要する |
散会期 | 別れ・喪失感 | 学びの棚卸し / 貢献の相互承認 / 次への接続支援 | 曖昧に解散する / 振り返りを省く |
混乱期に対して「自チームがなかなか抜け出せない」と悩むケースも少なくありません。混乱期を抜けられない典型パターンは3つあります。
- 対立を抑え込んでいる(=形成期に見えて実は混乱期を回避している)ケース
- 判断基準の合意ができていないケース
- そもそも基本的な信頼関係が構築できていないケース
3つ目のケースでは、対立を扱う前段階として、まず自己開示と他者受容を通じた信頼構築のプロセスに戻る必要があります。
段階を見極めるチェックポイント
自チームがどの段階にあるかを見極めないと、介入がミスマッチになります。以下の兆候から判断しましょう。
- 会議で本音の意見が出ない、否定を避ける発言が多い → 形成期
- 感情的な対立が起きている、水面下で不満が渦巻いている → 混乱期
- 「うちのチームのやり方」が語られる、暗黙のルールが機能している → 統一期
- メンバーが自発的に役割を越えて協働している → 機能期
タックマンモデルについて詳しくは以下の記事をご参照ください。
チームビルディングの手法、ゲーム、研修の選び方
手法カテゴリ4分類
チームビルディングの手法は多岐にわたりますが、目的別に4カテゴリに整理すると選定しやすくなります。
段階×介入アクション一覧
各段階でリーダーが取るべき介入アクションを整理します。
カテゴリ | 主な手法 | 適する目的 |
|---|---|---|
対話系 | 1on1 / 対話ワークショップ / チェックイン | 相互理解・関係の質向上 |
体験系 | ゲーム / アクティビティ / 合宿 | 心理的距離の短縮・共通体験 |
課題解決系 | プロジェクト型学習 / ケーススタディ | 思考の質・行動の質向上 |
制度系 | チーム憲章 / 役割定義 / 評価連動 | 行動の定着・成果の質向上 |
施策選定の基準一覧(段階×目的×形式)
「ゲームやアクティビティを実施しても一過性のイベントで終わり、現場の行動や関係性が変わらない」という声はよく聞かれます。原因は、手法をカタログから選んでいるためです。目的から逆算する選定基準を紹介します。
チーム段階 | 主目的 | 推奨形式 | 具体的な施策例 |
|---|---|---|---|
形成期 | 相互理解 | 対面ワークショップ(半日〜1日) | 自己紹介ワーク / 価値観カード / チェックイン |
混乱期 | 対立の可視化と統合 | ファシリテーター付き対話(1日) | フィードバック演習 / ケースメソッド / 合意形成ワーク |
統一期 | 共通言語・ルール形成 | ワークショップ+日常運用 | チーム憲章づくり / 意思決定プロセス設計 |
機能期 | 内省と外部感度 | 定期リフレクション | 四半期振り返り / 外部越境体験 |
散会期 | 学びの棚卸し | 締めくくりワーク | 貢献承認ワーク / ラーニングジャーナル |
ゲームやアクティビティの位置づけ
ゲームやアクティビティは、関係構築の入口として機能します。ただし、その後の対話や実務接続とセットで設計することが重要です。単独で実施すると一過性のイベントにとどまり、日常業務の行動変容にはつながりません。
「ゲームを実施すれば解決する」という考えを避け、①なぜこのゲームを選ぶか(目的)、②ゲーム後にどんな対話を行うか(振り返り)、③日常業務にどう接続するか(定着)、の3点を必ずセットで設計しましょう
チームビルディングで使えるゲームについて詳しくは以下の記事をご参照ください。
チームビルディングが失敗する4つのパターンと回避策
4類型と兆候や回避策の一覧
多くのチームビルディング施策は、以下の4類型のいずれかで失敗します。事前に兆候を把握し、回避策を仕込んでおくことが重要です。
失敗パターン | 兆候 | 根本原因 | 回避策 |
|---|---|---|---|
①飲み会依存型 | 「懇親会を増やせば良くなる」と考える / 参加意欲の差が拡大 | 関係の質を思考・行動の質に循環させる設計がない | 対話+実務接続をセットで設計 / 業務課題を扱う場を組み込む |
②イベント一過性型 | 当日は盛り上がるが1か月後に元通り | 日常業務への接続と振り返り設計が欠落 | 3か月後振り返り / 1on1で行動定着を追跡 |
③リーダー丸投げ型 | 現場マネジャーに施策実施を委ねきり | ファシリテーション力の育成なしに実施 | リーダー向け事前研修 / 進行台本と問いのテンプレ提供 |
④形骸化型 | 制度・ルールは残るが誰も使わない | 効果測定と改善サイクルの不在 | eNPS(Employee Net Promoter Score / 従業員推奨度)・心理的安全性スコアなどの定点観測 / 半年ごとの見直し |
失敗を防ぐリーダーの3つの行動
「リーダーである自分の関わり方を変えないまま施策だけ打っても、無駄になるのでは?」——この感覚は正しく、施策の成否はリーダーの行動変容と不可分です。
行動1:目的と現状のギャップを言語化する
「なぜ今チームビルディングをやるのか」を自分の言葉でメンバーに説明できるまで整理します。人事から降りてきた施策として実施すると形骸化してしまいます。
行動2:対立を歓迎するスタンスを取る
混乱期の対立を「悪いこと」として抑え込むと、チームは形成期に留まり続けます。「意見の違いはチームが機能するために必要」というメッセージを繰り返し伝えます。
行動3:振り返りをファシリテートする
施策実施後の振り返りを、リーダー自身が問いを立てて進めます。外部講師任せにせず、日常の対話に振り返り(内省)を組み込むことが定着の鍵です。
ファシリテーションについて詳しくは以下の記事をご参照ください。
リモートやハイブリッド環境でのチームビルディング設計
リモート環境固有の課題
リモートやハイブリッド環境では、対面前提の設計ではなく、環境固有の課題に対応した設計が必要です。押さえるべき固有課題は以下の4点です。
- 偶発的な雑談の消失:オフィスや廊下での短い交流がなくなり、業務連絡以外の接点が消える
- 表情や空気の読み取り困難:画面越しでは感情やニュアンスが伝わりにくく、誤解が生まれやすい
- 新入社員の孤立:オンボーディング時に顔見知りがつくれないため、質問しづらい状態が続く
- 時間差(非同期)コミュニケーションの負荷:チャットの文脈読み取りに時間がかかる
非同期やバーチャルでの設計原則
リモート環境では「同期(リアルタイム)」と「非同期(時間差)」を意識的に使い分ける設計が必要です。
原則1:同期時間は関係構築と対話に使う
オンライン会議の時間は貴重です。情報共有はドキュメントで済ませ、会議は対話や意思決定、振り返りに絞ります。
原則2:非同期でつながる仕組みを設計する
チャットツールで「今日の学び」「困っていること」を投稿する場や、非同期で読み合うドキュメント文化を意図的につくります。
原則3:バーチャル1on1を週次で回す
リモート環境では、リーダーとメンバーの1on1がチームビルディングの中心装置になります。業務進捗だけでなく、キャリアや関係性、課題感を話題の中心に据えます。
原則4:対面機会(オフサイト)を組み込む
特に形成期や統一期の切り替え時期に合わせて、年1〜2回の対面機会(オフサイト)を組み込むと、関係性の再構築に高い効果を発揮します。
オンラインチームビルディングについて詳しくは以下の記事をご参照ください。
チームビルディングの成功事例
管理職層に対するチームビルディング研修において、MITダニエル・キム教授の成功循環モデルを全体像に据え、「関係性構築のためのコミュニケーション」→「期待役割の伝達と課題解決のファシリテーション」という順序で設計し、受講者が現場で実践できる手応えや気づきを得られた事例を紹介します。
管理職層におけるチームビルディング研修
規模・対象者
弊社が支援した企業では、管理職層を対象に、自チームのチームビルディングを実践できるようになることを目的とした研修プログラムを実施しました。対象は100名規模の管理職層で、部門横断でチームリーダーが参加しました。
課題
受講した管理職層は、個々の業務遂行能力は高いものの、チームリーダーとして「関係の質」を意図的に高める打ち手を持てていないという課題がありました。多くの管理職が、まず成果を出すことを優先してコミュニケーションを取ってしまい、結果としてチーム内の対話が業務連絡中心にとどまっていました。期待役割の伝達や課題解決のファシリテーションといった打ち手を持っていても、その前提となる信頼関係が構築されていない状態で実行しても効果が出ないという根本的な問題が浮かび上がりました。
実施した施策
キム教授の成功循環モデルを全体像として提示したうえで、3つの段階で研修を設計しました。第1段階では、関係性構築のための「判断を保留するコミュニケーション」と「自己開示や他者受容のコミュニケーション」を実践する場を設けました。第2段階では、メンバーへの期待伝達に関するコミュニケーションのロールプレイを行い、第3段階では、チームにおける課題解決のファシリテーション方法についてインプットと実践を組み合わせました。研修期間の合間には、受講者が実際のチーム内でこれらのコミュニケーションを試行し、次回研修でその結果を持ち寄る形式としました。
成果
受講者からは、「自己開示と他者受容というプロセスをチームとしてあえて取り上げて実践することの意義を理解した」「成果を出すことを優先するコミュニケーションをとってしまっていたが、関係構築が先であるというアプローチを試したら、チームの雰囲気が変わってきた」という声が挙がりました。チームビルディングを実践する重要性を理解したうえで、現場で試す手応えを得られたことが確認できました。
設計のポイント
特に有効だった設計は、「関係性構築のための判断保留、自己開示、他者受容のコミュニケーション」を最初に置き、「期待役割の伝達」や「課題解決のファシリテーション」を後段に配置した順序性です。前者の関係性構築とコミュニケーションが、後者の期待伝達、課題解決の前提になるためです。関係の質を先に整えることで、後段の打ち手が実際にチームで動き始める構造を作りました。
アルーは管理職層のチーム力向上に活用できる「管理職研修」を提供しています。詳しくは以下のページをご覧ください。
🔗アルーのサービス:管理職研修
まとめ
チームビルディングは、単なる交流施策ではなく関係の質、思考の質、行動の質、成果の質の循環を意図的に設計する組織開発手法です。タックマンモデル5段階に応じ、目的から逆算した施策選定を行い、失敗パターンを事前に回避する設計が求められます。
飲み会依存、イベント一過性、リーダー丸投げ、形骸化の4つの失敗パターンを避けるためには、施策を打つだけでなく、リーダー自身の行動変容と、3か月後の振り返りや定着化の仕組みが不可欠です。リモートやハイブリッド環境では、同期と非同期を使い分けた設計と、対面機会の意図的な組み込みが鍵になります。
自社チームの段階や課題に応じた設計思想と再現条件を持つパートナーとの対話が、施策の成否を分けます。
よくある質問(FAQ)
Q | チームビルディングは飲み会やイベントと何が違うのですか? |
|---|---|
A | 最大の違いは「循環設計」の有無です。飲み会や単発イベントは関係の質を一時的に高めますが、思考や行動、成果の質にまで循環させる仕組みがありません。チームビルディングは、関係の質を高めた後の振り返りや実務接続、定着化を含めて設計されます。 |
Q | タックマンモデルの混乱期から何年も抜けられません。設計が悪いのでしょうか? |
|---|---|
A | 混乱期を抜けられない典型パターンは3つあります。①対立を抑え込んで実質的には形成期に留まっているケース、②意思決定の判断基準がチーム内で合意できていないケース、③そもそも基本的な信頼関係が構築できていないケースです。3つ目の場合は、対立を扱う前に自己開示と他者受容による信頼構築に戻る必要があります。ファシリテーターを入れて対立を「見える化」する場を設定することも有効です。 |
Q | リモート環境でもチームビルディングは可能ですか? |
|---|---|
A | 可能ですが、対面前提の設計をそのまま移植すると機能しません。同期(会議時間)は対話と意思決定に絞り、非同期でつながる仕組みを設計し、週次のオンライン1on1と年1〜2回の対面オフサイトを組み合わせるのが有効です。 |
Q | 効果はどう測定すればよいですか? |
|---|---|
A | eNPS(職場の推奨度を示す指標)や心理的安全性スコア、1on1実施率などの定点観測が基本です。研修直後の満足度だけでなく、3か月後の行動変容や6か月後の成果への反映まで追跡する設計を推奨します。定量指標と併せて、チーム内の対話の質的変化を上司の観察で捉えることも重要です。 |


