
アサーティブコミュニケーションとは?具体的な例やメリットを簡単に解説
相手の気持と自分の気持ちをどちらも大切にするコミュニケーション手法として最近注目を浴びているのが、「アサーティブコミュニケーション」です。
アサーティブコミュニケーションのスキルを磨けば、職場でのコミュニケーションがより円滑になり、居心地の良いチームを作ることができるようになります。この記事では、アサーティブコミュニケーションの概要や具体例、さらにはアサーティブコミュニケーションを取り入れるメリットについて簡単に解説します。
職場のコミュニケーションに課題を感じている人事の方は、社員のアサーティブコミュニケーション力についてこの記事の情報を参考にチェックしてみてください。
目次[非表示]
- 1.アサーティブコミュニケーションとは?
- 2.アサーティブコミュニケーションを身につけるメリット
- 2.1.良好な人間関係を築くことができる
- 2.2.組織の生産性が向上する
- 2.3.社内でのコミュニケーションが活性化する
- 2.4.従業員のメンタルヘルスケアに貢献する
- 3.3つのコミュニケーションのタイプとは
- 4.アサーティブコミュニケーションの4つの柱
- 4.1.肯定的な言葉にする
- 4.2.自分の気持ちを「Iメッセージ」で伝える
- 4.3.数字を用いて具体的に伝える
- 4.4.自分の一番強い要望を最初に伝える
- 5.アサーティブコミュニケーションを実践できるDESC法とは
- 5.1.Describe(状況を描写する)
- 5.2.Explain(気持ちを表現する)
- 5.3.Specify(提案する)
- 5.4.Choose(代替案を提示する)
- 6.アサーティブコミュニケーションの具体的な例
- 7.アサーティブコミュニケーションを社員に身につけてもらう方法
- 8.アサーティブコミュニケーション研修ならアルーにお任せください
- 9.まとめ
アサーティブコミュニケーションとは?
アサーティブコミュニケーションとは、相手の考えをしっかりと尊重した上で、自分の感情や思いを抑圧することなく自己主張を行うコミュニケーションの手法のことを指します。
簡単に言えば「自分も大切、相手も大切」という状況を実現するためのコミュニケーション手法です。一見コミュニケーションが円滑に回っているように見える場合でも、実はどちらかが気持ちを抑圧していたり、伝えたいことを我慢していたりするというケースは少なくありません。そういった状況をできるだけ避けるようにするのが、アサーティブコミュニケーションの取り組みなのです。
アサーティブコミュニケーションを身につけるメリット
アサーティブコミュニケーションは、日常のコミュニケーションはもちろん、ビジネスの現場でも活用できる手法です。相手と自分、双方を大切にするコミュニケーションによって、職場全体にポジティブな影響を与えます。
アサーティブコミュニケーションを身につけるメリットについて見ていきましょう。
良好な人間関係を築くことができる
職場での人間関係は、様々な悩みのタネとなります。実際、離職のきっかけとして職場での人間関係を挙げる人も多く、良好な人間関係を構築することは組織全体のパフォーマンスにも大きく影響します。
アサーティブコミュニケーションを身につけるメリットに、良好な人間関係を構築できるという点が挙げられます。上司や部下などへアサーティブに意見や要望を伝えることができるようになれば、メンバー間での信頼関係が構築できるのです。
組織の生産性が向上する
アサーティブコミュニケーションのスキルを身につければ、自分の考えや思いを率直に伝えることができるようになります。そのため、会議などの場でもメンバーから様々なアイディアが出るようになり、組織の生産性が向上するというメリットがあります。
特に、アサーティブなやり取りによって意思決定の質が向上することは大きなメリットです。ディスカッションでも自分の考えを率直に言葉にできるようになるため、形式だけの議論に陥ることもなくなるでしょう。
社内でのコミュニケーションが活性化する
社内のコミュニケーションを改善することは、組織のパフォーマンスを向上させる上で重要です。また、コミュニケーションが活発に行われることで、社員は組織に愛着を抱くようになり、自発的な行動も誘発できるでしょう。
社員がアサーティブに気持ちを伝えられるようになれば、社内でのコミュニケーションも大きく改善します。相手を大切にすることはもちろん、自分も抑圧しないという状況を実現することで、誰も我慢したり抑圧されたりしない環境が実現できるのです。
従業員のメンタルヘルスケアに貢献する
「相手の気持ちが気になるあまり、コミュニケーションについていちいち考えすぎてしまう」といった悩みを抱える人は多いものです。相手のことを考えすぎるあまり、自分の気持ちを抑圧しているとメンタルヘルスにも悪影響を与えかねません。
アサーティブコミュニケーションを身につけ、うまく自己主張ができるようになると、必要以上に相手のことを考えすぎることがなくなります。
また、社員全員がアサーティブコミュニケーションを身につけると、一方的なコミュニケーションにさらされる社員が減り、社員の心身的な負担を軽減することもできるでしょう。
アサーティブコミュニケーションは心理学における認知行動療法の一つとして広く活用されている方法でもあるため、メンタルヘルスにも好影響が期待できるのです。
3つのコミュニケーションのタイプとは
コミュニケーションのタイプは、大きく分けて3つ存在すると言われています。1つめは自己主張を重視する「アグレッシブタイプ」、2つめは自己主張を控えめにする受け身の傾向を持つ「パッシブ」、そして3つめは相手と自分の気持ちをともに大切にする「アサーティブ」です。
ここでは、アサーティブを含む3つのコミュニケーションタイプについて見ていきましょう。
アグレッシブ
コミュニケーションタイプの1つめは、自己主張を積極的に行うアグレッシブタイプです。このタイプのコミュニケーションでは、自分の意見の主張を積極的に行う一方で、相手の意見をあまり気にしないという傾向があります。
このタイプのコミュニケーションは、”I’m OK, You’re not OK”と特徴づけられます。自分の主張を押し通すことは得意ですが、相手の気持ちを理解せずに発言してしまうため、関係性を壊すこともある危険なコミュニケーションタイプです。
パッシブ
パッシブなコミュニケーションとは、相手の気持ちや感情を優先する受け身のコミュニケーションです。アグレッシブとは反対に、相手の気持ちや感情に配慮することができる一方で、自分の考えや気持ちを我慢してしまうという傾向があります。
アグレッシブと比較すると、パッシブなタイプのコミュニケーションは、”I’m not OK, You’re OK”な状態であると言えます。相手に配慮しすぎてしまうあまり、本人に不満や負担が溜まりやすいという危険があります。
アサーティブ
アサーティブなコミュニケーションとは、自分の気持ちと相手の気持ちをともに大切にするタイプのコミュニケーションです。このタイプのコミュニケーションは、相手の考えを尊重しながら、自分の意見も抑圧せずに伝えることができます。
先ほど紹介したアグレッシブ・パッシブと比較すると、アサーティブなコミュニケーションとは”I’m OK, You’re OK”な状態であるといえます。相手への配慮と自分の主張を両立した、理想的なコミュニケーションタイプです。
アサーティブコミュニケーションの4つの柱
アサーティブコミュニケーションは、自分と相手の双方を大切にできる、いわば理想的なコミュニケーションの状態です。それでは、実際にアサーティブコミュニケーションを実現するためには、どのようなポイントを意識すればよいのでしょうか。
アサーティブコミュニケーションには、4つのポイントがあると言われています。アサーティブな状態を実現するための4つの柱について見ていきましょう。
肯定的な言葉にする
例えば明日までのスケジュールが詰まっているときに、先輩社員から「明日までにこの提案書を仕上げてきてください」と言われたとしましょう。この際、「明日の納期は厳しいからできません」と伝えてしまうと、相手に「否定された」と受け取られてしまう可能性が高まります。
そこで、「明日は厳しいですが、明後日ならなんとかなります」というように伝え方を変えてみます。伝えている内容は変わりませんが、こちらのほうが相手に受け入れられる確率が高まるでしょう。このように、できるだけ肯定的な言葉に言い換えるのがアサーティブコミュニケーションを実現するポイントです。
自分の気持ちを「Iメッセージ」で伝える
「Iメッセージ」とは、自分が主語となる伝え方のことを指します。アサーティブコミュニケーションを実現するためには、この「Iメッセージ」を意識するとよいでしょう。
例えば、上司から直前に仕事を依頼され、直前の依頼は困ると伝えたい状況を考えます。ここで「今後はもっと早く依頼してください」と言葉にしてしまうのは、相手の行動を直接指定する、いわば「YOUメッセージ」です。ここで、「できれば次からは早めに依頼していただけると(私が)助かります」というように言い換えることで、アサーティブなコミュニケーションを実現できます。
数字を用いて具体的に伝える
数字を用いて具体的に伝えるのも、アサーティブコミュニケーションを実現する上で役立ちます。例えば、先程と同じく上司に仕事を依頼された仕事を断りたいシチュエーションを考えましょう。
このとき、「すぐに終わらせる必要がある仕事が複数あり、厳しいです」と伝えるよりも、「今日中に終わらせる必要がある仕事を3つ抱えているため、厳しいです」と伝えるのがポイントです。具体的な数字が盛り込まれていることで、相手はあなたがどれだけの仕事を抱えていて、どういった状況なのかをより的確に把握できるようになります。
自分の一番強い要望を最初に伝える
「自分の一番強い願望を最初に伝える」というのが、アサーティブコミュニケーションの4つめの柱です。仕事でのコミュニケーションにおいてよくある課題として、結論までに紆余曲折してしまい、結局何がいいたいのか分からない、というものが挙げられます。
例えば「定時までに帰りたい」ということを上司に伝える際には、「定時までにやれる範囲で協力したいです。なぜなら〜」と理由を続けるのが効果的です。一番の要望を最初に伝えることで、相手はあなたが何をいいたいのかを適切に把握できるようになります。
アサーティブコミュニケーションを実践できるDESC法とは
アサーティブコミュニケーションを実践する方法の一つに、「DESC法」と呼ばれるものがあります。DESC法とは、Describe・Explain・Specify・Chooseという4つの単語の頭文字をとったもので、それぞれがアサーティブコミュニケーションにおいて重要な内容を表しています。
アサーティブコミュニケーションを実現する際に役立つDESC法について解説します。
Describe(状況を描写する)
DESC法におけるDescribeとは、客観的な状況を描写することを指します。自分自身の置かれている状況を的確に描写することによって、あなたの置かれている状況や抱いている気持ちを把握してもらう材料を提供することが可能です。
例えば、仕事を依頼された際に、「今は無理です」というように断るのではなく、「本日締め切りの仕事が2件あるため、対応できません」など、客観的な事実や状況を具体的に話すのがDescribeに相当します。客観的な事実や状況をしっかりと伝えれば相手に伝える際の論理性が高まるため、自分の主張を納得してもらいやすくなるのです。
Explain(気持ちを表現する)
Explainとは、気持ちを表現することです。Describeではできるだけ客観的に事実や状況を伝えることを意識しましたが、Explainの段階では自分の意見や考えなど、主観的な気持ちを伝えるようにしましょう。
例えば、相手からの要求を断る際に「先輩の大変な状況もよく分かるため、お手伝いしたい気持ちも山々なのですが」といった文言を付け加えることが”Explain”の実践例です。Explainに力を入れることで、直接的な論理の押しつけを防ぎ、相手の感情へ効果的に訴えかけることができるようになります。
Specify(提案する)
DESC法におけるSpecifyとは、相手への提案を行うことを指します。
例えば先輩社員からの要求を断る際に、ただ相手からのお願いを否定するだけではアサーティブなコミュニケーションは取れません。「明日までは厳しいですが、明後日の12時までなら対応できます」といったように、積極的に提案を行うと相手にも納得感を持ってもらいやすくなります。Specifyに力を入れれば、要求を否定された相手も「自分の気持ちも考えてくれているな」と認識できるようになるでしょう。
Choose(代替案を提示する)
DESC法の4番目にあたるChooseは、「代替案を提示する」ことを指します。
例えば、「明後日までなら対応可能です。もしくは、他に対応できる者を探しましょうか」といったように、代替案を提案するとよいでしょう。代替案を提示することによって、相手により一層「自分のことを考えてくれているな」という感情を抱いてもらいやすくなり、アサーティブなコミュニケーションが実現しやすくなります。
アサーティブコミュニケーションの具体的な例
アサーティブなコミュニケーションを実践するためには、先程解説した4つの柱と、DESC法を実践するのが効果的です。それでは、ここからは実際にアサーティブなコミュニケーションとはどういったものなのか、その具体例を見ていきましょう。
アサーティブなコミュニケーションの具体例をつかむことで、普段の仕事にも応用しやすくなりますよ。
上司から部下へのアサーティブコミュニケーション
上司から部下へのアサーティブコミュニケーションの例として、依頼した資料作成の提出遅れが多い部下へ注意するシチュエーションを考えましょう。クライアントにも迷惑をかけてしまっているため、上司として部下へ行動変革を促したいという状況です。
この時、「何回言ったら分かるの?」と問い詰めてしまっては部下は萎縮してしまいます。また、部下に遠慮してしまって「きっと忙しいんだ」と放置してしまうのも、改善にはつながらないでしょう。アサーティブに伝えるためには、DESC法を使用すると、
D:資料作成が遅れたことが原因で、ここ一ヶ月で5件、顧客からクレームがありましたね。
E:いつもお客さんに丁寧に接してくれていてありがたいと思うけれど、
S:お客さんから依頼された資料は3日以内に作成できるようにしませんか?
C:業務内容や量で調整したいことがあれば相談してくださいね。
といった声掛けが有効です。問題点を始めに指摘した上で、解決策を積極的に提案しています。
部下から上司へのアサーティブコミュニケーション
部下から上司へのアサーティブコミュニケーションの例として、隣の部署の部長から飲み会に誘われたケースを考えましょう。実際のところは仕事が忙しく、あなたはあまり飲み会に乗り気ではありません。
この時、自分の気持ちを無視して飲み会に無理やり参加することはアサーティブなコミュニケーションではありません。この場合は、「誘ってくれてありがとうございます。でも最近は少し疲れが溜まっています。今回は遠慮しておきます。ぜひまた誘ってください。」といった断り方をするとよいでしょう。
同僚同士でのアサーティブコミュニケーション
同僚同士でのアサーティブコミュニケーションの例として、会議で決まりそうな案件がある状況を考えましょう。
例えば、自分以外の皆は決まりそうな内容について賛成していますが、自分自身はその事柄に少しだけ違和感を持っています。
このとき、「いいや、それはないと思います。」と答えるのは、アグレッシブなコミュニケーションです。また、「まあ、良いと思います。」と妥協してしまうと、パッシブなコミュニケーションとなってしまいます。アサーティブなコミュニケーションとしては、例えば「懸念点として1点、人手不足が挙げられます。人員を2名増やしてから始動するのが良いと思いますが、いかがでしょうか。あるいは予算を2割増やすことでも対応できるかと思います。」といったものが挙げられます。はじめにしっかりと問題点を指摘した上で、数字を交えながら自分なりの解決策を伝えられているため、相手に納得感を持ってもらいやすい伝え方です。
アサーティブコミュニケーションを社員に身につけてもらう方法
アサーティブコミュニケーションを身につけてもらう方法としては、研修を実施してアサーティブコミュニケーションの基礎を学んでもらうのが効果的です。また、eラーニングを活用した研修の実施もおすすめです。研修で基礎的な知識を身につけたあとで、実際に学んだ内容を実践する場を設ければ、自然とアサーティブコミュニケーションの能力を高めることができます。
アサーティブコミュニケーション研修ならアルーにお任せください
アサーティブコミュニケーション研修の実施をご検討の場合は、ぜひアルーへお任せください。アルーは、人材育成を長年手掛けてきた企業で、チーム内のコミュニケーションを改善する研修を数多く実施してきました。
特にアサーティブコミュニケーションを強化する研修では、この記事で簡単に紹介した4つの柱やDESC法について詳しく学ぶことができます。また、学んだ知識をアウトプットする実践的なワークや演習問題も多く用意されているため、アサーティブコミュニケーションを自然とチーム内に定着させることが可能です。
▼アルーのアサーティブコミュニケーション研修について詳しくはこちらのページをご覧ください。
まとめ
アサーティブコミュニケーションの概要や、身につけるメリット、さらには4つの柱やDESC法といった内容について解説しました。コミュニケーションにおいては、自分の意見を我慢することで上手く場を回すケースも少なくないでしょう。
しかし、そのような立ち振舞いは自分自身の不満を増やすきっかけとなるだけでなく、チーム全体としての意思決定の質の低下を招きかねません。チーム内でのコミュニケーションに課題感がある場合は、ぜひこの記事で解説したアサーティブコミュニケーションのスキルを身につけ、円滑な意思伝達ができるように改善を進めていきましょう。
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