ロジカルコミュニケーションとは|鍛える方法や研修のポイント
ロジカルコミュニケーションは、論理的で根拠のある情報共有を行うコミュニケーション手法の一つです。
すべてのビジネスパーソンに共通して求められるスキルの一つですが、意外とロジカルコミュニケーションを正しく実践できている人は少ないものです。
本記事では、ロジカルコミュニケーションの基礎となる考え方やロジカルコミュニケーションを鍛える方法、研修でロジカルコミュニケーションを身につけさせる際のポイントを解説します。
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ロジカルコミュニケーションとは?
ロジカルコミュニケーションとは、論理的に自分の考えをまとめ、相手にわかりやすく伝えて円滑にコミュニケーションを図ることです。
「ロジカル」には論理的という意味があるため、論理的なコミュニケーションと理解するとわかりやすいでしょう。
ロジカルコミュニケーションは、以下の二つの力から構成されています。
自分の考えを論理的にまとめる力
相手に話をわかりやすく伝える力
それぞれの要素を細かく確認していきましょう。
自分の考えを論理的にまとめる力
ロジカルコミュニケーションは、自らの考えを論理的に整理する能力が不可欠です。情報を構造的に整理し伝えたいメッセージを抽出し、相手が理解しやすいように話のストーリーラインを作ってから伝える必要があります。このベースとなる力がロジカルシンキングです。ロジカルシンキングは、情報を構造的に整理し、結論と根拠を明確に分け、矛盾のない論理的な結論に導くスキルを指します。ロジカルコミュニケーションでは、論理的思考を駆使して情報を整理した上で、相手に合わせてわかりやすく伝えることが求められます。具体的なスキルには「情報のグルーピング」「メッセージの抽出」「根拠づけ」「MECE」などがあげられます。
論理的に物事を捉え、矛盾なく結論を導くロジカルシンキングは、ロジカルコミュニケーションの基礎となる能力といえます。
ロジカルシンキングに関しては以下のページでも詳しく解説しています。
『ロジカルシンキングとは?メリットや基本的な考え方・鍛え方について紹介』
相手に話を分かりやすく伝える力
自分の考えを論理的に整理した後は、それを相手に分かりやすく伝える能力が必要です。ビジネスの場では、話の構成を工夫して伝わりやすくするだけでなく、難しい内容をできるだけ平易な言葉で説明することも欠かせません。また、相手の理解度に応じて、話す順番や言葉選びを適切に調整することも大切です。分かりづらい話は相手の信頼を得るのが難しくなります。そのため、ロジカルコミュニケーションには、分かりやすさを重視した工夫が不可欠です。
相手の話をつかむ受信力も必要
ロジカルコミュニケーションを実践するためには、相手の話をつかむ受信力も必要です。
たとえば、相手の質問に的確に答える、相手の頭の中のピラミッド構造を明らかにするといった力があれば、相手の聞きたいことや考えを的確に把握することができます。加えて、相手の情報を論理的にまとめることができるため、相手が気づいていない領域を補うことも可能です。相手からすると、自身の話を的確に把握するだけでなく、新たな視点やリスクの指摘をもらえるため、意義のあるコミュニケーションだと感じてもらえるでしょう。
ロジカルコミュニケーションを身につけるメリット
ロジカルコミュニケーションを身につけるメリットとして、コミュニケーションロスが減る、社員のプレゼン力や交渉力が向上するといった点が挙げられます。
また、部下育成に役立ったり、社員の自信につながったりするでしょう。
ロジカルコミュニケーションを身につけるメリットを解説します。
コミュニケーションロスが減る
ロジカルコミュニケーションを身につければ、業務を進める際のコミュニケーションロスが減り、生産性が向上します。
ビジネスを効率よく進めていくためには、相手に正しく情報共有することが大切です。
例えば、仕事に取りかかる前にゴールや段取りをしっかりと共有しておかなければ、手戻りやスケジュール変更といったコミュニケーションロスが発生してしまうでしょう。
ロジカルコミュニケーションによって効果的に相手へ情報伝達できるようになれば、コミュニケーションロスが減り、業務がスムーズに進む効果が期待できます。
プレゼン力や交渉力が向上する
プレゼン力や交渉力が向上することも、ロジカルコミュニケーションを身につけるメリットの一つです。
プレゼンや交渉の場面では、相手からの納得を引き出すことが大切です。そのためには、相手の知りたい情報を整理して、相手にとってわかりやすい形で伝えることが求められます。ロジカルコミュニケーションを身につければ、相手の目線を意識した論理展開ができるようになるため、プレゼンや交渉の場面でも相手の理解を得やすくなるでしょう。
部下育成力が向上する
社員がロジカルコミュニケーションを獲得すれば、部下育成力が向上します。
部下育成の際には、1on1面談を通じて上司が部下の成長につながるようなフィードバックを提供することが大切です。
また、評価面談の際にも、部下が評価に納得できるよう論理的で相手の立場を意識した説明が求められます。
ロジカルコミュニケーションを身につければ、部下の成長につながるような指導がしやすくなるでしょう。「できている点はどこで、さらなる成長には何が必要なのか?」を的確に伝えられるようになるため、部下育成力の向上が期待できるのです。
コミュニケーションに自信をつけられる
ロジカルコミュニケーションを身につけることは、社員が自分のコミュニケーションに対して自信を持つことにもつながります。
ロジカルコミュニケーションを実践できるようになれば、話が整理されてわかりやすくなるため、相手からの理解や納得を引き出せる場面も増えてきます。こうした小さな成功体験を積むことで、社員は自分のコミュニケーションに自信を持つことができるのです。
ロジカルコミュニケーションによって自信をつければ、難しいプレゼンや交渉にも徐々に挑戦できるようになり、さらなる成長につながるでしょう。
信頼を得られる
ロジカルコミュニケーションを身につければ、わかりやすい情報伝達ができるようになるため、相手からの信頼を得やすくなるでしょう。
例えばロジカルコミュニケーションが実践できないと、伝える順番が違っていたり、結論がない話をしてしまったりします。こうした問題点があると、相手は話の要点を把握しづらくなり、さまざまなコミュニケーションロスが発生するのです。
一方でロジカルコミュニケーションが実践できている場合は話がわかりやすくなるため、情報共有もスムーズです。「〇〇さんはしっかり情報共有しながら仕事を進めてくれるな」など、周囲からの信頼も獲得しやすくなるでしょう。
ロジカルコミュニケーションの基礎となる考え方・フレームワーク
ロジカルコミュニケーションを実践する際には、ロジカルコミュニケーションの基礎となるいくつかの考え方や、フレームワークについて学ぶことが重要です。
具体的には以下のフレームワークがあてはまります。
- ロジカルシンキング
- PREP法
- DESC法
ここからは、ロジカルシンキングやPREP法、DESC法といった、ロジカルコミュニケーションの基礎となる考え方・フレームワークについて解説します。
ロジカルシンキング
ロジカルコミュニケーションの基礎となる能力の一つが、ロジカルシンキングです。
ロジカルシンキングとは、論理的に筋道だった思考を展開する能力のことを指します。
ビジネスのさまざまな場面でデータが活用されるようになってきた昨今において、ロジカルシンキングはますます重要度を増している能力といえます。
ロジカルコミュニケーションに役立つ、ロジカルシンキングのフレームワークについてさらに詳しく解説します。
なお、ロジカルシンキングの詳細は、以下のページでも詳しく解説しています。
『ロジカルシンキングとは?メリットや基本的な考え方・鍛え方について紹介』
ピラミッド構造
ピラミッド構造とは、結論から根拠へ向けたピラミッドを構築する思考法のことです。ピラミッドストラクチャーとも呼ばれることもあります。
ピラミッドを構築する際は、まず一番上に「事実である」と説得したい結論を配置します。その下には、事実やデータといった結論の根拠を配置して、さらにその下に根拠を裏付ける事実やデータを置きましょう。
なおピラミッド構造を用いた思考法には、「仮説→根拠→事実」の順で、論理展開を行うトップダウン・アプローチと、「事実→根拠→仮説」と事実から積み上げた論理展開を行うボトムアップ・アプローチの二つがよく用いられます。
グルーピング
グルーピングは、混在しているいくつかの情報の中から共通点を見つけ、グループごとに分類するフレームワークです。
グルーピングを実践する際は、まずデータを外観し、どういった切り口で分類すれば意味のある結論が得られるのかを吟味します。そのあと、それぞれの情報をグループ分けしていき、グループを完成させる流れです。
ヒアリングやアンケートによって多くのデータが得られても、それらから意味のある結論を抽出できなければ意味がありません。
グルーピングは、数あるデータの中から有意義な推論を行う際に役立つ考え方です。
「So what」と「Why so」
「So What?」とは、日本語で「つまり、何?」という意味です。
また、「Why so?」は「どうしてそうなったの?」という意味です。これら二つの問いかけは、ロジカルシンキングで重視されます。
会議やディスカッションが長引くと、本題から逸れた結論となってしまうことがあります。こうした場面で「So What?」という問いかけを行えば、他人にとってわかりやすいシンプルな結論を導くことが可能です。
また、「Why so?」は、一見論理的に見えるディスカッションの中で、論理の飛躍や矛盾を見つける際に役立つ問いかけであるため、覚えておくといいでしょう。
MECE
MECEとは、”Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive”の略で、日本語にすると「互いに被りがなく、全体として漏れがない」という意味です。
MECEを身につければ、情報にダブりを含むことなく、網羅的に捉えることができるようになります。顧客分析や売上分析など、ビジネスのさまざまな場面で役立つ考え方です。MECEの考え方が身につけば、必要な情報をモレなくダブりなく、相手へ伝えることができるようになるでしょう。
PREP法
PREP法とは、「結論→理由→具体例→結論」の順番で話す方法のことです。
PREP法を実践すれば、ビジネスにおける日常のコミュニケーションでも結論から話すことができるようになります。また、PREP法では結論が二度繰り返されるため、相手に「結局何が言いたいのだろう?」と思われることがありません。
「長々と話してしまい、要点がわからない」「結論のない話をしてしまう」などの課題がある場合には、PREP法を実践することをおすすめします。
DESC法
DESC法とは、「描写→説明→提案→選択」という順番で話す方法のことです。
まず「描写」では、客観的に相手の置かれている状況を明らかにします。
そのあと、「描写」の段階で自分の立場や考えを説明し、いくつかの行動や解決策を相手へ提示したあとで選択を促します。
DESC法は、相手から何らかのアクションを引き出したい場合に有効なコミュニケーションスタイルです。
正しくDESC法を実践できるようになれば、自分の考えを正直に伝えると同時に、相手からの納得も得やすくなるでしょう。
ロジカルコミュニケーションを社員に身につけてもらう方法
ロジカルコミュニケーションに必要なフレームワークや考え方を説明してきました。それでは、こうしたロジカルコミュニケーションに必要なスキルを社員へ獲得してもらうためには、どういった施策が有効なのでしょうか。
主に以下の方法が挙げられます。
- ディベートを実施する
- フェルミ推定の問題を解いてもらう
- 研修を実施する
ここからは、社員へロジカルコミュニケーションを身につけてもらうための方法を詳しく解説します。
ディベートを実施する
社員にロジカルコミュニケーションを身につけてもらう際には、ディベートの実施がおすすめです。
ディベートとは、一つのテーマに対して「肯定」「否定」の二つのチームにわかれ、それぞれの立場から討論を実施するものです。
ディベートを行う際には、ジャッジや相手チームからの理解を引き出す必要があるため、論理的に自分の考えを主張することが求められます。
ディベートを繰り返し練習してもらえば、相手からの納得を引き出すようなコミュニケーションスタイルが自然と身についていくことが期待できます。
フェルミ推定の問題を解いてもらう
フェルミ推定の問題を解いてもらうことも、ロジカルコミュニケーションを獲得してもらう際に有効な方法です。
フェルミ推定とは、一見予想もつかないような数字を、論理的思考を用いて推論することを指します。
例えば、「日本にはマンホールが何個あるか?」「日本にあるワイパーの本数は?」といったものが有名です。
こうしたフェルミ推定の問題に取り組む際には、自分の持つ知識から結論に向けて論理的な思考を展開し、それを相手へ説明する必要があります。
フェルミ推定の思考プロセスを通じて、ロジカルコミュニケーションに必要な論理性や伝える力が養われていくでしょう。
フェルミ推定を始めとしたロジカルシンキングを鍛える例題集は下記ページで紹介しています。
『ロジカルシンキングの例題10選|解答例や学習方法を紹介』
研修を実施する
ロジカルコミュニケーションを獲得してもらう際には、研修を実施することもおすすめです。
研修を通じてロジカルコミュニケーションに役立つフレームワークや考え方を学べば、段階的にロジカルコミュニケーションのスキルを高めていくことができるでしょう。
また、研修中に日常の場面を想定したワークを取り入れれば、現場での実践を促すことも可能です。
ただし、研修を実施する際には、社員のレベルにあったプログラムを提供することが重要です。ロジカルシンキングなどの定着度合いも見つつ、現状のレベルにあわせたプログラムで実施するとよいでしょう。
ロジカルシンキング研修に関しては以下のページで詳しく解説しています。
『ロジカルシンキング研修の目的|成功させるポイントについてもご紹介』
ロジカルコミュニケーションに関する研修事例
人材育成を専門としているアルーでは、これまでにロジカルコミュニケーションの定着を支援する研修を数多く実施してきました。
これまでにアルーが実施した研修事例の中から、特に参考となるものを二例ピックアップして紹介します。
ロジカルコミュニケーションを鍛える研修の具体的な内容やプログラム構成を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
営業向けロジカルシンキング研修
営業職を対象に、商談場面でのコミュニケーション力向上を目的とした研修を実施したいと考えていたA社では、新卒入社の社員を対象とした営業向けロジカルシンキング研修を実施しました。
まず研修の事前課題として、ロジカルシンキングに必要なフレームワークを学ぶインプットと演習に取り組んでもらいました。
研修中は、商談時に必要な心構えやスキルの獲得を目的として、ロジカルコミュニケーションや相手目線の獲得に取り組んでいます。
研修後にはロールプレイングやフィードバックを実施して、ロジカルコミュニケーションの定着を促した研修事例です。
ロジカルシンキング研修との組み合わせ事例
ロジカルコミュニケーションとロジカルシンキングの両者を伸ばしていきたいと考えていたB社では、入社二年目の社員を対象としたロジカルシンキングとの組み合わせ研修を実施しました。
本事例では、まずロジカルシンキングのフレームワークについて講義でインプットしたあと、「論理関係の把握」「メッセージ・論点の分解」などの五つのノックに取り組んでもらっています。
その後、フォロー研修では現場での実践を振り返りながら、ロジカルコミュニケーションの実践をサポートしました。ロジカルシンキングとロジカルコミュニケーションを同時に引き上げ、現場での実践までフォローした事例です。
ロジカルシンキング研修ならアルーにお任せください
アルーは、人材育成に向けたさまざまな施策を支援している企業です。ロジカルコミュニケーションを鍛えるロジカルシンキング研修なら、ぜひアルーへお任せください。
ロジカルコミュニケーションのスキルを高めれば、社内のコミュニケーションが効率化したり、プレゼン力や交渉力、営業力が向上したりといった、さまざまなメリットがあります。アルーでは、職種や階層、年数別などさまざまなタイプのロジカルシンキング研修を実施しております。
ロジカルコミュニケーションに関することなら、お気軽にアルーまでご相談ください。