人材育成とは?5つの大切なことと、4つのよくある課題
企業が成長するためには人材育成が欠かせません。
少子高齢化などの原因で人材不足に悩む企業が多い現在、企業では従業員のパフォーマンスを向上させることが求められています。
この記事では人材育成に大切な5つのことと、よくある4つの課題、人材育成の手法や目標・計画の立て方について解説します。
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人材育成とは
人材育成とは、企業が経営目標を達成することや、業績向上のために社員を育成していくことです。職種や役職などで対象者を分け、必要とされるマインドやスキルの習得を目指します。
ここでは、人材育成と人材開発の違いや、人材育成の目的について紹介します。
人材教育・人材開発との違い
人材育成とよく似た言葉として「人材教育」と「人材開発」があります。
人材育成は職種や役職で対象者を分け、必要なスキルを教え、会社の経営目標達成のために社員を成長させることです。
一方、人材教育はスキルを教えること全体を指し、人材開発は全社員を対象として人材を資源と捉え、社員の能力を開発していくことです。
人材育成と人材開発ではその目的も異なります。人材育成は職種や役職ごとの業務に必要なスキルを身につけさせ、業務を効率化させることが目的で、人材開発はその人が持っている能力を伸ばして課題解決ができるような知識を身につけてもらうことが目的になります。
また、人材育成は比較的長いスパンをかけて行っていくのに対して、人材開発は短いスパンで取り組んでいくことが多いです。
人材育成の目的
人材育成の目的は企業によってことなりますが、以下のような目的をもって行われることが多いです。
- 生産性向上のため
- 経営戦略を具現化するため
人手不足が深刻化している中で企業の成長を維持するためには、社内人材がスキルを身につけることを通じて、生産性を向上させることが必要不可欠です。
また、将来の事業のあり方や企業の方向性を踏まえ、将来求められるスキルや知識を明確にし、継続的に人材育成を行うことは、組織の将来を決めていくことになります。
例えば、2年後に新規事業の売上をアップさせたいという目標があるとすると、そこに向けて管理職候補の育成や営業部署の営業力の向上、若手社員のスキルアップを研修やOJTなどを通して長期的に行うことで、目標達成に近づくことができるでしょう。このように、企業の経営戦略を達成することを目的とした場合、どのようなマインドやスキルを身につけてもらうべきかを考え実施するのが人材育成です。
人材育成が企業にとって重要な理由
人材育成が企業にとって重要な理由は、以下の通りです。
- 人手不足の深刻化
- 企業の競争力を高めるため
- 人的資本の情報開示の義務化
ここでは、人材育成が企業にとって重要な理由を解説していきます。
人手不足の深刻化
少子高齢化が進む日本社会において人手不足は深刻です。今後も人材不足が続き、人材獲得競争が激化し、新しい人材の獲得が難しくなることが予想されます。
そのため、今いる人材を育成し、生産性を向上させることが求められています。
また、社員が人材育成により成長することで業務にやりがいを感じ、モチベーションの維持にもつながります。つまり、人材育成はモチベーションを維持できないが故の退職を減らす手段にもなり得ます。
企業の競争力を高めるため
企業を取り巻く環境は大きく変化しています。グローバル化やIT化、DX推進など、環境の変化を取り入れ、順応していくことが企業には求められています。
企業が環境の変化に適応していくためには、そこで働く社員が変化に柔軟に対応し、成長し続ける必要があります。このような環境の変化に順応していく能力やスキルを社員に身につけさせることで、企業の競争力を高めることができます。
人的資本の情報開示の義務化
2023年の3月期の決算以降、上場企業の人的資本の情報開示が義務付けられます。
人的資本とは、人が持つ能力を資本と捉え、投資の対象とする考え方です。開示する項目は、従業員の状況(女性管理職比率・男女間賃金格差・育休取得率など)と、サステナビリティ情報(人材育成方針など)です。
企業には、人材育成に着手するだけでなく情報開示することも求められています。
これまで、人材育成にかかる費用は「コスト」と考えられてきました。ですがこれからは人材育成にかかる費用は「投資」と考えるという意識改革を行っていくことも必要になるでしょう。
人材育成に取り組むうえで大切なこととは
では、人材育成に取り組む上で大切なことをご紹介します。
人材育成に取り組む場合には、以下のようなことに注意しましょう。
- 人材育成方針を明確にする
- 人材育成マネジメントと経営戦略をリンクさせる
- フォロー体制を構築する
- 体系的な育成機会を用意する
- 育成担当者への研修を行う
人材育成方針を明確にする
企業が直面する課題や目指す戦略に基づいて、人材育成の方針を明確に設定することは、ビジネスの成長に不可欠です。企業にとって人材育成がなぜ重要なのか、その目的を具体的にすることで、効果的な育成計画が実現可能となります。
経営コンサルティング会社識学が提供するメディア「識学総研」によると、育成する側も育成される側も認識がずれないような基準を設定する必要があります。明確な基準が存在していれば、育成する側は誰がどこまで育成されているのかを把握できます。また、育成される側は、基準をクリアしていくことで成長を認識できるのです。
曖昧な目標設定では、社員が育成施策の必要性を感じず、「自分には関係ない」と思われてしまいがちです。これでは、企業の長期的な理念や目標達成に向けて人材育成の効果を最大化することは難しいでしょう。そのため、人材育成の具体的な目標を設定し、それが企業全体の目標と連動するように取り組むことが重要です。
明確な人材育成方針を確立することで、社員は自身の役割と成長の道筋を理解し、企業の目指す方向へと一丸となって進むことができます。
人材育成方針の作り方や参考にできる事例は、以下の記事で詳しく解説しています。
『【図解】人材育成方針とは?人材育成のプロが伝える作り方と参考事例』
人材育成マネジメントと経営戦略をリンクさせる
成功する企業は、人材育成マネジメントを経営戦略と密接に結びつけています。人材育成と経営戦略をリンクさせることで、企業は競争優位性を獲得し、持続可能な成長を達成することが可能になります。
人材育成の成果を定期的に評価し、経営戦略の調整や再設計に役立てることが重要です。これには、生産性の向上や売上増加などの定量的な指標だけでなく、従業員満足度やチームの協力関係など定性的な指標も含めることが大切です。
経営戦略と人材育成をリンクさせる戦略人事の考え方については、以下の記事で詳しく紹介しています。
『戦略人事とは?必要な4つの役割やスキル、実現のためのポイントを紹介』
アウトプットの機会を設ける
人材育成で行うべきことは座学などでのインプットだけではありません。研修内容をOJTと連携させるなど、アウトプットの機会を設けることも大切です。
例えば、座学などのインプットだけではなくロールプレイングを取り入れる、座学で学んだスキルを使える業務を与えるなど、アウトプットの時間を必ず設けると良いでしょう。
フォロー体制を構築する
人材育成は研修を受けさせて終わりではありません。研修が終わった後も人事部が社員をフォローをする体制を構築することで、育成のより一層の定着が見込めます。研修実施から数ヶ月が経つ頃にフォローアップ研修を行なって、課題が解決できているか、新たな課題は生まれていないかチェックするのがおすすめです。フォローアップは研修内容の定着・振り返りだけでなく、次のステップで必要なスキルや知識を発見することにもつながります。
体系的な育成機会を用意する
人材育成は短期的なものではなく、中長期で行うものです。そのため、目指すべき人材像、育成方針、研修のメニューなど人材育成における要素をもとに育成方針や施策設計が必要です。人材育成を整理して体系化することで場当たり的な研修がなくなり、より効果的で効率的な施策を実施できます。体系的な育成機会を設けることで、部署や等級ごとのニーズを把握して成長を促しましょう。
コンピテンシーを使った研修体系図の作り方については、以下の記事で詳しく紹介しています。
『【図例あり】コンピテンシーを用いた階層別研修の体系図作成のススメ | アルー株式会社』
育成担当への教育を行う
人材育成を実施する担当者の教育も忘れてはなりません。上述した通り人材育成は企業の未来を担う大切な取り組みです。
育成担当者にティーチングスキルやコーチングスキルを身につけてもらうことで、部下に対する教育の質が上がり、人材育成も効率よく進めることができます。
研修などを利用して、人材育成や企業の事を理解した育成担当者になるように教育しましょう。
アルーが行っている育成担当者向けの研修は、以下のページでご確認いただけます。
人材育成が企業にとって重要な理由
人材育成が企業にとって重要な理由は、以下の通りです。
- 人手不足の深刻化
- 企業の競争力を高めるため
- 人的資本の情報開示の義務化
ここでは、人材育成が企業にとって重要な理由を解説していきます。
人手不足の深刻化
少子高齢化が進む日本社会において人手不足は深刻です。今後も人材不足が続き、人材獲得競争が激化し、新しい人材の獲得が難しくなることが予想されます。
そのため、今いる人材を育成し、生産性を向上させることが求められています。
また、社員が人材育成により成長することで業務にやりがいを感じ、モチベーションの維持にもつながります。つまり、人材育成はモチベーションを維持できないが故の退職を減らす手段にもなり得ます。
企業の競争力を高めるため
企業を取り巻く環境は大きく変化しています。グローバル化やIT化、DX推進など、環境の変化を取り入れ、順応していくことが企業には求められています。
企業が環境の変化に適応していくためには、そこで働く社員が変化に柔軟に対応し、成長し続ける必要があります。このような環境の変化に順応していく能力やスキルを社員に身につけさせることで、企業の競争力を高めることができます。
人的資本の情報開示の義務化
2023年の3月期の決算以降、上場企業の人的資本の情報開示が義務付けられます。
人的資本とは、人が持つ能力を資本と捉え、投資の対象とする考え方です。開示する項目は、従業員の状況(女性管理職比率・男女間賃金格差・育休取得率など)と、サステナビリティ情報(人材育成方針など)です。
企業には、人材育成に着手するだけでなく情報開示することも求められています。
これまで、人材育成にかかる費用は「コスト」と考えられてきました。ですがこれからは人材育成にかかる費用は「投資」と考えるという意識改革を行っていくことも必要になるでしょう。
企業が抱える人材育成の課題と解決策
人材育成に取り組むうえで、教育内容の多様化や育成のために割ける時間の不足、さらには人材不足など人材育成において乗り越えなければならない課題がいくつかあります。
ここでは、企業が抱える人材育成の課題とその解決策を紹介します。
社員の一律教育から自律的学習へのシフト
これまでは、会社側が社員を一堂に集めて研修を行うことでスキルアップを図る一律教育が主流でした。一律教育により多くの社員の知識レベルを一定レベルに効率的に引き上げることができますが、会社から用意された研修を受けるだけでは、社員側にどうしても「やらされている感」が出てしまいます。現代社会で求められる人材になるには、「人材育成は会社がやってくれるもの」という意識ではなく、自ら学ぶべき内容を取捨選択し、自律的に学んでいく必要があります。
そのような自律学習を促す土壌づくりが、人材育成には求められています。
社員が学びたいときに学べるよう、公募研修やeラーニングを豊富に準備しておいたり、社員が自身のキャリアを考えたうえで学びを設計できるようにキャリアデザイン研修を実施するのが有効です。
キャリアデザイン研修については『キャリアデザイン研修とは?年代別の設計方法を紹介』の記事も参考にしてください。
アルーでは、あらゆる年代の社員におすすめのキャリアデザイン研修をご用意しています。詳しくは以下のページをご覧ください。
▼下記から資料もダウンロードできます。
教育内容の多様化
企業のグローバル化に伴う語学学習やDX化に伴うデータ分析スキルなど、現代に必要とされる学びの内容は多様化しています。
そのため、学ぶテーマが幅広く、従来のような集合研修では効率的に学ぶことができないこともよくある課題です。
企業の方向性や個人の方向性をすり合わせて、学ぶスキルの優先順位をつけてテーマごとの研修をしましょう。また、必要なスキルにあわせて社員をグループ分けすることも有効です。
育成担当者の業務が忙しく、人材育成の時間がない
人材育成が大事だとわかっていても、業務が忙しく時間がとれないという企業も少なくありません。あるべき人材像の定義や人材像に沿った研修計画の策定には多くの手間と時間がかかります。そんな時はアウトソーシングを利用するのも一つの手でしょう。人材育成の構成や企画、調整までをアウトソーシングすることで業務が忙しくても人材育成が可能となります。また、人材像の定義までは自社で行い、そのために行なう研修は外注する、というように、内製と外注を組み合わせることもおすすめです。
育成に携わる人材が不足している
社員を育成する人材に対しては、経営戦略にたったよりレベルの高い教育が必要となりますが、高度な教育が必要がゆえに人材不足に陥りがちです。社員を育成する人材の不足に対する解決策の一つは、育成担当者の教育です。育成担当者の教育は人材育成の根幹となる部分です。企業の経営戦略をきちんと理解し、人材育成の重要性を育成担当者に認識してもらうことから始めましょう。
人材育成目標の立て方
何をするにも目標を立てることは重要ですが、人材育成も同じです。ゴールが不明確なままでは、取り組みが形骸化してしまいますし、受講者のモチベーションも保つことができません。人材育成目標は、以下の流れで立てていくと良いでしょう。
- 企業の方向性を決める
- 役職や等級ごとの役割を明確にする
- 目標を数値に落とし込む
- それらを計画表にする
まずは企業の方向性を決め、それをもとに役職や等級ごとの役割を明確にしましょう。この時、コンピテンシーを作成するのも有効な手です。
作成したコンピテンシーや社員の役割に沿って、「いつまでに」「どの程度まで」など、必要な目標を数値に落とし込みましょう。
コンピテンシーを使用した階層別研修の体系図作成については、以下の記事で詳しく解説しています。
【図例あり】コンピテンシーを用いた階層別研修の体系図作成のススメ
人材育成の手法
では「実際に人材育成はどうすればいいの?」といった担当者に向けて、ここでは具体的な人材育成の手法を紹介します。OJTからOff-JTなど人材育成の手法は様々です。企業の方針や個人の目標に沿った適切な方法を用意し、学びの機会を与えましょう。
OJT
OJTとは実務を通して人材育成を行う手法です。育成対象の社員トレーナーが付き、対象者を育成します。
実際の業務を通してスキルを身につけてもらうため、座学による研修やマニュアルだけでは身につけにくい実践的な知識を伝えることができることがメリットです。
OJTを成功させるためには、OJTトレーナーの教育も必要になります。
OJTに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
▼アルーのOJTトレーナー研修について詳しくはこちらのページをご覧ください。
Off-JT
OJTが実務を通して教育を行うのに対して、Off-JTは通常業務から離れて場所と時間を設定して教育をする手法です。
厚生労働省の調査によると、正社員に対してOff-JTを行った事業所は75.7%と、多くの事業所でOff-JTが行われています。
Off-JTは学習すべきポイントを研修カリキュラムに組み込めるため、汎用的なスキルを得られることや、育成内容の標準化や品質が均一になりやすいことがメリットです。
eラーニング
eラーニングはパソコンやスマホ、タブレットで学習を実施する手法です。デバイスと教材さえ用意すればいつでもどこでも学習できるため、効率よく学習できる点がメリットです。集合研修のように会場を用意したり講師に依頼することが必要ないため、教育担当者の工数も削減できます。また学びのコンテンツも豊富で、階級や所属部署に関わらず様々なニーズに応えられるのも大きなメリットでしょう。
自己啓発
自己啓発は社員自らの意思によって学習することを言います。
企業側が自己啓発を支援する方法としては、
- 書籍やセミナー費用を負担する
- 希望者に向けて勉強会を開催する
- eラーニングシステムを契約し、希望する講座を受講できるようにする
- カフェテリア研修制度などを用意して社員が自律的に学べる環境を作る
などがあげられます。
社員が自発的に学習を進めるために企業側や人事側がフォローをしておくことが大切です。
また、何を学ばせたいかと社員の学びたいことをすり合わせて行うことも必要になるでしょう。
ワークプレイスラーニング
ワークプレイスラーニングとはOJTとよく似た人材育成手法で、一般的に「個人や組織のパフォーマンスを改善する目的で実施される学習その他の介入の統合的な方法」と定義されています。知識だけでなく個人と組織のパフォーマンスを向上させるのが主な狙いです。
一方的に指導が行われる研修制度ではなく、受け身とならないように社員自身が自ら考えて学ぶことに焦点を当てた育成手法と言えます。
人材育成計画の立て方
人材育成は無計画に実施してしまうと効果は半減してしまいます。人材育成では中長期的な計画を立てることが大切です。ここでは人材育成を成功に導く計画の立て方を説明します。新入社員から幹部候補までの階層別と、海外駐在員などのグローバル人材における育成計画について解説します。
新入社員の育成計画の立て方
新入社員や新卒社員の育成計画は、まずは職場に慣れることと業務を覚えることを中心に組み立てていきましょう。
計画を立てる際には、新入社員の現状のスキルを確認し、必要なテーマの研修を組み立てて行くと良いでしょう。
まずはビジネスマナーや企業理念の浸透などを集合研修で学んでもらい、配属後にOJTで集合研修での学びをアウトプットする機会を設けましょう。
新入社員研修のカリキュラム作成のポイントなどは、以下の記事で確認いただけます。
中堅社員の育成計画の立て方
中堅社員にはマネジメント能力や部下の育成能力をはじめとした高度なスキルや知識が求められます。中堅社員ともなるとそれぞれが望むキャリア像や、経験・スキルが異なることがあるので、一律学習よりもレベル別でのグループ分けを行い、個別学習で望むキャリアにあった知識とスキルを身につけてもらいましょう。
また、本人のキャリアと会社の方向性をすり合わせて高難度のポジションへの抜擢を行ったり、部署異動をさせたりすることも有効な育成方法です。
アルーの中堅社員・リーダー層への研修は、以下からご確認いただけます。
管理職の育成計画の立て方
管理職になると部下のマネジメントから組織運営までの高度で、かつ幅広いスキルが必要になります。管理職は企業の成長にとって欠かすことのできない存在です。中堅社員以上にプロフェッショナルな視点が求められるため、その分高度なスキルと知識が必要です。そのため、OJTの前に、新任管理職には一律で集合研修を受けてもらうことも有効です。プレイヤーからマネジャーへの意識転換、部下とのコミュニケーションの方法、人事評価の方法などは集合研修でスキルを付け、その後実務に取り組み、定期的に研修を行って自分の強みや弱みを認識し、さらなる成長を促していく、という流れで計画を立てると良いでしょう。
管理職に対する研修に関しては、以下の記事で解説しています。
管理職研修を行う目的と内容は?効果を高める方法と合わせて解説
幹部候補の育成計画の立て方
企業の行く末を左右する幹部候補の育成に重要なポイントは4つあります。
- 幹部候補のポストと要件の明確化
- 人材の把握と選抜
- 育成計画の策定と実施
- 育成結果の評価と施策の見直し
要件を明確化することで求める人材像を明確にし、その要件に沿った人材を集めるための公正な選抜を実施します。幹部候補が絞れたら、経営幹部としての研修やOJTを実施していきます。幹部候補の育成においては、経営幹部との対話を行う、新事業へのチャレンジなど困難な状況に身をおいてもらう、といった方法も有効です。
幹部候補の育成については、以下の記事で紹介していますので、あわせてご確認ください。
幹部候補の育成方法とは?選抜方法や人事が知っておくべきポイント
グローバル人材の育成計画の立て方
グローバル人材の育成には、海外事業ビジョンの明確化・必要な能力の明確化・人材選定など様々な要件があります。しっかり計画を立てて実行しなければ、育成コストが無駄になってしまう可能性があります。そのため、グローバル人材の育成は慎重に段階を踏みながら進めていくことが重要です。
グローバル人材の育成は、以下7つの段階を踏みながら行っていきます。
- 海外事業ビジョン・中期経営計画を明確化
- 自社に必要なグローバル人材像を定義
- グローバル人材に必要な能力・役割・ゴールを明確化
- グローバル人材の育成プログラムを明確化
- グローバル人材の候補者を選定
- 目標達成に向けて具体的な育成施策の決定
- 海外事業に携わるポジションにアサイン
グローバル人材の育成方法については、以下の記事で詳しく解説しております。
『【企業事例あり】グローバル人材育成の取り組みとよくある課題への対策』
人材育成計画の作り方や事例について詳しくは、以下のページもご覧ください。
『【テンプレートあり】人材育成計画の作り方や計画書の事例を紹介』
人材育成で用いられるフレームワーク
人材育成の企画を検討するうえでは、フレームワークを使って戦略をたてることもおすすめです。人材育成においてよく使われるフレームワークを解説します。
HPIモデルをもとにしたギャップ分析
一つ目はHPI(Human Performance Improvement)モデルをもとにしたギャップ分析です。HPIモデルでは、次のようなプロセスで企画を進めます。
- ビジネスとパフォーマンスのあるべき姿を定義する。
- 職務上のパフォーマンスの現状を把握し、あるべき姿と現状のギャップを分析する
- ギャップを埋めるために妥当な施策を立案・実行する
- 成果を測定する
たとえば、営業力に課題がある企業を例として説明すると次のようになります。
まずはビジネスとパフォーマンスのあるべき姿を定義します。ビジネス目標が年間100社の新規顧客開拓である場合、営業メンバー一人当たりの新規開拓目標を試算します。営業メンバーが20人だとすると、一人当たり年間5社の新規開拓があるべき姿になります。
ところが現状のパフォーマンスを確認すると、メンバー一人当たり新規開拓は年間2社しかできていませんでした。あるべき姿である「年間5社」とのギャップが生まれています。
次に、このギャップが生まれている要因を分析します。そもそもターゲットがサービスに合っていない、担当している顧客が少ないといった様々な理由が挙げられます。その中から、真の課題を抽出しましょう。
今回は、真の課題は「メンバーが新規顧客開拓のコツを知らないこと」だとします。ココまで分析出来たら、課題にアプローチするための施策を立案しましょう。今回の場合は新規顧客開拓のポイントを伝える研修を実施することにしました。
そして最後に、施策の効果測定も忘れてはいけません。今回の場合は研修前後で新規顧客開拓の件数が増えたかどうかをチェックするのがよいでしょう。
このように、あるべき姿と現状のギャップを探り、ギャップに対してのアプローチと効果測定方法を設計するのがHPIモデルをもとにしたギャップ分析です。
気を付けておきたいのは、施策を考える際に研修にこだわらないということです。研修は「=人材育成」ではありません。あくまでも、パフォーマンスを最大化させるための一手です。社員がパフォーマンスを発揮できない要因は、外部要因や職場環境、個人の能力など様々です。ギャップの原因を抜けもれなく分析したうえでパフォーマンスを高める方法を検討し、整理することが大切です。
コルブの経験学習サイクル
二つ目に、コルブが提唱した経験学習サイクルを紹介します。経験学習サイクルとは、実際に経験した事柄をノウハウという知見へ変換することを通じて、自分なりに役立つ教訓を獲得することを目指すサイクルのことです。
具体的には、以下の図のように「経験する」「内省する」「教訓化する」「試行する」という4つのステップを繰り返して、経験から教訓を獲得していきます。
企業の人材育成においては、OJTとOff-JTをつなぐ考え方として経験学習モデルが利用されます。例えば、Off-JTは日頃の業務を離れて、経験学習サイクルをベースに振り返りを行うことで、新たな教訓を引き出します。一方OJTでは、Off-JTで学んだ内容を日頃の業務で実践してもらいます。そしてさらに、OJTの成果を定期的に振り返る機会を用意すると経験学習サイクルを回しやすいでしょう。このように、OJTとOff-JTがどのようにつながっているかを意識して学習をデザインする必要があります。
経験学習について詳しくは以下のページもご覧ください。
『経験学習サイクルとは?実践のコツや具体的な施策例』
7:2:1モデル
三つ目に、経験のデザインに必要な7:2:1モデルを紹介します。7:2:1モデルは、人の成長の70%は直接経験からの学びが占めていることを意味しています。他者の観察やアドバイスによる成長が20%、研修や読書などのインプットによる成長は10%と言われています。
しかし、「研修による成長は10%だから、研修をやっても意味がない」という捉え方をしてはいけません。7:2:1モデルが真に意味するのは、「70%の直接経験から成長するために、どのような経験をさせるかをデザインすることが重要である」ということです。企業の人材育成においては、人の成長の70%を占める直接経験を有意義にするために、どんな時期に、どんな方法で、何を学ぶとよいのか、どんな環境を提供したらよいのかを検討することが重要です。
人材育成の成功事例
最後に、アルーがご支援した人材育成の成功例を見ていきましょう。経営理念や重点戦略に即した人材育成に成功した、大同特殊鋼株式会社様、ポーラ化成工業株式会社様、株式会社オカムラ様の事例です。
大同特殊鋼株式会社様
「つなげ。次の100年へ」というスローガンを元に、経営理念や行動指針を見直して教育体制の再構築に取り組んだ事例です。各階層やキャリアプランに沿った行動指針、役割への期待、次のグレードに求められることを示しました。さらに、社内でのキャリアだけでなく社員の人生も考えた仕組みを作りました。
詳しい事例は以下のページから確認いただけます。
ポーラ化成工業株式会社様
重点戦略である女性活躍に関する研修を9か月にわたり実施しました。生産系を対象に選抜された女性を対象に主体性やチームワークの醸成を目的とした研修を行い、結果として各持ち場でリーダーシップを発揮する女性が増えました。
詳しい事例は以下のページからご確認いただけます。
女性活躍推進の風土づくりに「リーダーシップ」「チームワーク醸成」の重要性を理解する(ポーラ化成工業株式会社)
株式会社オカムラ様
社名変更を期に人材育成の意義を見直し、制度や環境、文化の改革に取り組みました。会社によって提供される学習から自律的学習へ着実にステップアップできるように、研修のゴールまでをしっかりと見据えた計画を設計しました。さらに当社LMS「etudes」の導入によって、自律した風土と学びあう文化の醸成を加速させています。
詳しい事例は以下のページから確認いただけます。
社名変更を機に人財育成も問い直す。学ぶ意欲を喚起し、自律的に学ぶ文化を醸成。(株式会社オカムラ)
2024年の人材育成のトレンドとは
近年、人事評価軸や雇用形態の多様化に伴い、企業における人材育成のあり方も大きく変化しています。「VUCA」とも言われる先の見えない現在において効果的な人材育成を行うためには、最新のトレンドをおさえた育成施策の展開が欠かせません。
2024年の人事に関連する重要なキーワードとしては、代表的なものは以下となります。
- ウェルビーイング:従業員の心身の健康を促進すること
- リスキリング:従業員が持つ既存のスキルや知識を見直し、必要に応じて新しいスキルや知識を習得すること
- 心理的安全性:従業員が意見や意見を自由に出し合えるとともに、失敗を恐れずに挑戦できるような企業風土のこと
- 人的資本経営:従業員を企業の資本として捉え、その資本価値を最大限に引き出そうという経営手法のこと
- DX人材育成:自社のDXを進める上で必要なスキルや知識をもった人材を増やすこと
- グローバル人材育成体系:文化や言語が異なる国々でビジネスを展開するための語学力、異文化コミュニケーション能力、マインド面を体系的に育成する仕組みをつくること
最新の人材育成の潮流やトレンドを知りたい方は以下の記事もご覧ください。
人材育成ならアルーにお任せください
人材育成とは、企業の従業員が能力やスキルを向上させるための取り組みです。ですが形骸化してしまっていたり、目標が立てられておらずにモチベーションが下がってしまったり、「自分には研修は意味ない」と思われてしまうこともあるでしょう。
効果的な人材育成を行う場合には、目標を立て、育成計画を綿密に立てることが大切です。
人材育成を行える社内人材がいないという場合には、社外の研修会社に依頼することも検討しましょう。
アルーでは、階層別研修から、テーマ別研修などを数多く取り揃えており、自社にあわせたカリキュラムにカスタマイズも可能です。
人材育成でお困りのことがございましたら、ぜひ一度アルーにご相談ください。
▼アルーの提供する研修一覧はこちらからご覧ください。