
人材育成計画の作り方とは?機能する計画にする5ステップと見直しのポイント
「人材育成計画を作っても、現場で活用されない」
「研修が一覧化するだけで優先順位が見えない」
「経営戦略と育成施策がつながらない」
といった悩みを抱える企業は少なくありません。
人材育成計画は、作成すること自体が目的ではなく、経営戦略と現場運用につながる形で設計し、実行・見直しできる状態にすることが重要です。
この記事では、人材育成計画の作り方を、作成前に整理したいこと、5つのステップ、機能しない計画に共通する失敗、フォーマットや参考情報、事例まで含めてわかりやすく解説します。
人材育成計画作りでよくある悩み
人材育成計画を見直したいと考えたとき、最初にぶつかりやすいのは「何から整理すればよいのかわからない」という壁です。
人材育成計画の見直しでは、たとえば次のような観点を整理する必要があります。
- 経営戦略との接続
- 育成したい人材像
- 現場で求められる役割やスキル
- 施策の優先順位
- 運用方法
特に、複数階層の育成を同時に考える必要がある企業では、論点が広がりやすく、計画書を作ること自体が目的化した結果、実行につながらないまま運用が形骸化してしまうこともあります。
その中でも、特によく見られるのが、経営戦略と育成施策が結びついていないという悩みです。たとえば、事業としてはDX推進や次世代リーダー育成が急務であっても、育成計画の中身は従来通りの階層別研修の並びにとどまり、何を優先して育てるべきかが見えなくなってしまうケースがあります。
また、研修一覧は作れても、対象者ごとの到達イメージや育成の順序が整理されておらず、「誰に、何を、どの順番で育成するのか」が曖昧なままになっていることも少なくありません。その結果、現場では研修受講の有無だけが管理され、行動変容や業務成果につながったかどうかまで追えない状態になりがちです。
さらに、計画書が人事部だけで完結し、現場マネジャーや育成担当者に活用されていないことも大きな課題です。人材育成計画は、現場で運用されて初めて意味を持ちます。人事だけが理解していても、上司の1on1や評価、配置判断とつながっていなければ、計画は機能しません。
このように、人材育成計画づくりの悩みは「どう書くか」だけではなく、「どう機能させるか」にあります。だからこそ、作成の前段階で整理すべきことを押さえたうえで、設計と運用を一体で考えることが重要です。
人材育成計画とは?研修一覧との違い
人材育成計画とは、企業が目指す事業の方向性や組織課題に対して、どのような人材を、どのような順序と方法で育成していくかを整理した計画です。単に研修テーマを並べるものではなく、対象者、育成目標、育成手段、運用方法までを含めて設計する点に特徴があります。
ここで混同されやすいのが、「研修一覧」との違いです。
研修一覧は、実施する研修の名称や対象階層、時期などを整理したものにとどまる場合が多く、育成の狙いや全体のつながりまでは見えにくいことがあります。一方、人材育成計画は、経営戦略や求める人材像に基づいて、なぜその施策が必要なのか、どう組み合わせて育てるのかまでを示します。
たとえば、若手社員の自律性向上を目指す場合でも、「若手向け研修を実施する」だけでは不十分です。
- どのような行動ができる状態を目指すのか
- そのために研修・OJT・上司支援をどう組み合わせるのか
- どのタイミングで振り返りや見直しを行うのか
まで整理されてはじめて、計画として機能しやすくなります。
また、人材育成方針との違いも押さえておく必要があります。
人材育成方針は、企業としてどのような人材を育てたいのかという方向性を示すものです。それに対して人材育成計画は、その方針を具体的な育成施策や運用に落とし込む役割を担います。つまり、方針が「考え方」だとすれば、計画は「実行の設計図」です。
人材育成方針と人材育成計画の違いを整理したい方は、人材育成方針の決め方 もあわせてご覧ください。方針をどう定めるかを先に整理しておくと、計画との役割分担が明確になります。
人材育成計画を作る意義は、関係者間で認識をそろえ、育成施策の優先順位を明確にし、継続的に見直せる状態をつくることにあります。研修を実施すること自体ではなく、必要な人材が計画的に育つ仕組みを整えることが本来の目的です。
人材育成計画を作る前に整理したい3つのこと
人材育成計画は、フォーマットに沿って項目を埋めれば完成するものではありません。先に整理しておくべき前提が曖昧なままでは、作成後に「結局何を優先すべきなのかがわからない」「現場で運用できない」といった状態になりやすくなります。
そこでまずは、計画を作る前に押さえたい3つの観点を確認しておきましょう。
1. 経営戦略・事業課題とつながっているか
最初に整理したいのは、経営戦略や事業課題と育成テーマの接続です。たとえば、新規事業の立ち上げ、海外展開、DX推進、管理職の世代交代など、企業ごとに優先すべき課題は異なります。人材育成計画は、それらの課題を解決するために、どのような人材を増やす必要があるのかを起点に設計する必要があります。
この整理が不十分だと、前年踏襲で研修を並べただけの計画になりやすく、事業に対する貢献が見えにくくなります。まずは「今、会社としてどの人材課題に向き合うべきか」を明確にし、その課題と育成施策をつなげることが重要です。
2. 求める人物像が具体化されているか
次に整理したいのは、どのような人材を育てたいのかという人物像です。「主体性のある人材」「変化に対応できる人材」といった表現だけでは、現場での育成や評価に落とし込みにくくなります。重要なのは、その人物像を具体的な行動レベルに置き換えることです。
たとえば、主体性であれば「指示待ちではなく、自ら提案・行動できる」、変化対応力であれば「前例のない課題でも必要な情報を集めて判断できる」といったように、現場で観察可能な行動にまで具体化する必要があります。ここが曖昧なままだと、計画を作っても「何をもって育成できたと判断するのか」が不明確になります。
▼ キャリアルートの例

求める人物像を行動レベルに落とし込む考え方については、コンピテンシーとは もあわせて確認しておくと整理しやすくなります。採用・評価・育成で共通言語を持つうえでも有効です。
3. 現場で起きているギャップを把握できているか
三つ目に整理したいのは、理想と現状のギャップです。どれだけ立派な育成方針があっても、現場で実際に何が足りていないのかが見えていなければ、施策は的外れになりやすくなります。
たとえば、管理職候補が不足しているのか、中堅層の巻き込み力が弱いのか、若手の自律性に課題があるのかによって、必要な打ち手は変わります。現場ヒアリング、評価結果、1on1の内容、エンゲージメントサーベイなどをもとに、どこにボトルネックがあるのかを把握しておくことが大切です。
業務遂行に必要な専門性や実務能力を整理したい場合は、テクニカルスキルとは も参考になります。現場で不足しているスキルを洗い出す際に役立ちます。
この3つが整理できていると、人材育成計画は単なる研修計画ではなく、経営や現場の課題に対して意味のある設計図になりやすくなります。
人材育成計画の作り方5ステップ
人材育成計画は、いきなりフォーマットを埋めるのではなく、順序立てて整理することで機能しやすくなります。
ここでは、実務で進めやすい5つのステップに絞って作り方を整理します。
▼ 人材育成計画の作り方

1. 経営戦略と人材課題を結び付ける
最初のステップは、経営戦略と人材課題をつなげることです。事業上の優先テーマを確認し、その実現に必要な人材要件を整理します。たとえば、「新規事業を伸ばしたい」という戦略があるなら、必要なのは企画力の高い人材なのか、周囲を巻き込む推進力のある人材なのかを具体化していく必要があります。
この段階で重要なのは、育成を独立したテーマとして扱わないことです。あくまで事業を前に進めるために、どのような人材が必要かを考えることで、計画の軸がぶれにくくなります。
2. 求める人物像と能力要件を定義する
次に、育成対象ごとに求める人物像や能力要件を整理します。新入社員、中堅社員、管理職候補など、対象によって期待される役割は異なるため、階層別・職種別に考えることが重要です。
ここでは抽象的な表現にとどめず、できるだけ具体的な行動に落とし込むことがポイントです。「課題発見力がある」「対話力が高い」といった言葉だけで終わらせず、どのような場面でどのような行動ができる状態を目指すのかを整理することで、施策や評価との接続がしやすくなります。
求める人物像を実際の育成目標に落とし込みたい場合は、人材育成の目標設定の手順 も参考になります。職種や階層ごとに目標を具体化する考え方を整理できます。
3. 現状とのギャップを把握する
人物像を整理したら、次は現状とのギャップを確認します。理想像だけを描いても、今どこに課題があるのかが見えていなければ、必要な施策は定まりません。
このときは、人事評価、上司ヒアリング、1on1での対話内容、現場からの声、受講者アンケートなど、複数の情報を組み合わせて把握することが大切です。どの階層で何が不足しているのかを可視化することで、育成の優先順位が見えやすくなります。
4. 育成施策と優先順位を設計する
ギャップが見えたら、それを埋める施策を設計します。ここで陥りやすいのが、研修を並べるだけで計画を終えてしまうことです。しかし実際には、研修だけで人が育つわけではありません。OJT、上司の関わり、1on1、配置、振り返りなど、複数の手段をどう組み合わせるかが重要です。
また、すべての課題に一度に対応しようとすると、施策が拡散しやすくなります。だからこそ、「今期は何を優先するのか」「どの階層から着手するのか」を明確にし、実行可能な計画に絞り込むことが必要です。
研修、OJT、eラーニング、自己啓発など、施策の選び方を広く整理したい方は、人材育成の手法と成功事例 も参考になります。自社の課題に応じた打ち手を比較しやすくなります。
5. 運用方法と見直しプロセスを決める
最後に、計画をどう運用し、どう見直すのかを決めます。人材育成計画は、作った時点ではなく、回し続けて初めて価値が出るものです。そのため、誰が進捗を確認するのか、どのタイミングで振り返るのか、何をもって見直すのかをあらかじめ決めておく必要があります。
たとえば、半期ごとに人事と現場責任者で振り返りを行う、1on1や評価面談で確認する観点をそろえる、受講後の行動変化を追う項目を設定するなど、運用の仕組みまで含めて設計しておくと、計画が実務に乗りやすくなります。
人材育成計画が機能しない企業に共通する失敗
人材育成計画は作成して終わりではありません。見た目が整っていても、現場で使われず、育成施策の優先順位も見えない状態では、計画として機能しているとは言えません。
ここでは、計画が機能しない企業に共通して見られる失敗を整理します。
抽象的な人物像のままで終わっている
よくある失敗の一つは、求める人物像が抽象的なスローガンで止まっていることです。「自律型人材」「変革を推進する人材」といった表現は方向性としては有効ですが、それだけでは育成施策や現場支援に落とし込みにくくなります。
人物像を定義したつもりでも、行動にまで具体化されていないと、受講者も上司も「何ができれば育っているといえるのか」を判断しづらくなります。その結果、研修だけが実施され、現場での育成がばらつきやすくなります。
施策を並べただけでつながりがない
もう一つの失敗は、研修や制度を列挙しただけで、施策同士のつながりが見えないことです。新入社員研修、若手研修、管理職研修などを並べても、それぞれがどのような役割を持ち、どのように接続しているのかがわからなければ、体系としては機能しにくくなります。
人材育成計画では、「何を育てるのか」だけでなく、「いつ、どの手段で、どうつなげていくのか」を示す必要があります。施策の一覧ではなく、成長の流れが見える設計にすることが重要です。
現場運用との接続が弱い
計画が機能しない最大の要因になりやすいのが、現場運用との接続不足です。人事が作成した計画が、上司の育成支援や評価、配置と結び付いていなければ、現場では「研修を受けて終わり」になりやすくなります。
たとえば、研修で学んだ内容を1on1で振り返る仕組みがない、評価項目と育成テーマが連動していない、配属後にどのような行動を期待するかが共有されていない、といった状態では、計画は実際の行動変容に結び付きにくくなります。
このような失敗を防ぐには、計画を作る段階から、現場で誰がどう使うのかまでを見据えて設計することが欠かせません。
人材育成計画を機能させるポイント
人材育成計画を作っても成果につながらない場合、多くは計画の中身そのものよりも、運用とのつながりに課題があります。
ここでは、計画を機能させるために押さえたいポイントを整理します。
▼ 人材育成計画を立てる上でのポイント

経営と現場の認識をそろえる
まず重要なのは、経営・人事・現場の間で育成の目的や優先順位を共有することです。人事だけが必要性を理解していても、現場が「なぜこの育成が必要なのか」を納得していなければ、実行段階で形骸化しやすくなります。
特に管理職や現場責任者が、育成計画を自分たちのマネジメントとどう結び付けるのかを理解していることが重要です。計画書を作るだけでなく、関係者の共通認識をつくることが運用の前提になります。
1on1・評価・配置とつなげる
人材育成計画を機能させるには、研修施策だけで完結させず、1on1、評価、配置などの人事運用と接続することが必要です。研修で扱ったテーマが1on1で継続的に振り返られる、評価観点と育成テーマがそろっている、次の役割機会と連動している、といった状態がつくれると、学びが現場で活きやすくなります。
逆に、研修は研修、評価は評価、配置は配置と別々に動いていると、学びが定着しにくくなります。だからこそ、計画段階から「学んだことをどこで使い、誰が支援するのか」を設計しておくことが大切です。
育成計画と日常の対話を接続するうえでは、1on1ミーティングの基本 を押さえておくことも重要です。1on1の目的や進め方が整理できると、育成施策の定着支援まで設計しやすくなります。
定期的に見直せる仕組みをつくる
事業環境や組織課題は変化するため、人材育成計画も一度作ったら終わりではありません。毎年同じ計画を踏襲していると、現場とのずれが広がりやすくなります。
そのため、半期や年度単位で見直す仕組みを持ち、施策の効果や現場課題の変化に応じて更新していくことが重要です。計画を固定化するのではなく、状況に応じて改善し続ける前提で運用することが、機能する計画につながります。
計画づくりだけでなく、人材育成全体を成功させる観点から整理したい方は、人材育成を成功させる8つのポイント も参考にしてください。階層別・手法別に押さえるべき論点を俯瞰できます。
人材育成計画書のフォーマットと参考情報
ここまで見てきたように、人材育成計画は設計思想と運用の仕組みが重要ですが、実務ではそれを整理するためのフォーマットも欠かせません。関係者が共通認識を持ちやすくするためにも、必要な項目を一枚で俯瞰できる形にしておくことが有効です。
フォーマットに入れたい基本項目
人材育成計画書には、少なくとも次のような項目を入れておくと整理しやすくなります。
- 対象者
- 育成目的
- 求める人物像・能力要件
- 現状課題
- 育成施策
- 実施時期
- 運用方法
- 見直し方法
▼ アルーの人材育成計画書のテンプレート

特に重要なのは、施策名だけで終わらせないことです。その施策で何を目指すのか、どの課題に対応するのか、実施後にどうフォローするのかまで記載しておくと、一覧表で終わりにくくなります。
公的資料や既存情報を参考にする
人材育成計画をゼロから考えるのが難しい場合は、公的機関の資料や既存の評価基準を参考にするのも有効です。たとえば、職業能力評価基準やキャリアマップの考え方は、職種や役割に応じた能力整理のヒントになります。
▼ キャリアマップの例(事務職)

ただし、外部資料をそのまま流用するだけでは、自社の事業や組織課題との接続が弱くなることがあります。あくまで参考情報として活用しつつ、自社の戦略や現場実態に合わせて調整することが大切です。
フォーマットは完成形ではなく対話の土台
フォーマットは、完成した計画を固定するためのものではなく、関係者と対話しながらすり合わせるための土台として捉えると使いやすくなります。人事だけで作り切ろうとせず、現場責任者やマネジャーと見ながら調整できる形にしておくと、運用に乗せやすくなります。
人材育成計画の事例から見るポイント
人材育成計画を考える際は、他社事例を参考にしながら、自社で押さえるべき視点を確認することも有効です。特に参考になるのは、単に「何を実施したか」ではなく、「どの課題に対して」「どのように設計し」「どのような成果につながったか」が見える事例です。
たとえば、次世代リーダー育成を強化したい企業では、候補者選抜から研修、実践機会、上司支援までを一連で設計しているケースがあります。このような事例では、研修単体ではなく、育成の流れ全体をどう組み立てるかが成果に影響していることがわかります。
また、若手社員の早期戦力化をテーマにする場合でも、導入研修だけで完結させず、配属後のOJTや上司面談とつなげている企業ほど、行動変容までつながりやすい傾向があります。つまり、事例を見るときは施策の名称よりも、課題・設計・運用のつながりに注目することが大切です。
自社の課題と照らし合わせながら事例を確認することで、「どの施策をまねるか」ではなく、「どの考え方を自社に応用できるか」が見えやすくなります。
人材育成計画の見直しに悩んだらアルーに相談
人材育成計画は、作成そのものよりも、経営戦略や現場運用とつながる形で機能させることが重要です。しかし実際には、人物像の定義が抽象的で止まっている、施策の優先順位が整理できない、現場運用まで設計しきれないといった壁にぶつかることも少なくありません。
そのような場合は、自社だけで計画書を整えることにこだわるのではなく、育成設計の観点から見直すことも有効です。事業課題と人材課題をつなぎ、対象者ごとの育成テーマを整理し、研修・OJT・マネジメント支援まで含めた設計に落とし込むことで、計画はより機能しやすくなります。
アルーでは、企業ごとの課題に応じて、人材育成計画の整理から施策設計、実行支援まで一貫して支援しています。計画を作るだけで終わらせず、現場で使われる形に見直したい場合は、ぜひご相談ください。
まとめ
人材育成計画は、研修施策を並べるための資料ではなく、経営戦略と現場運用につながる形で人材を育てるための設計図です。機能する計画にするには、作成前に経営課題・人物像・現場ギャップを整理し、5つのステップで設計し、運用と見直しまで含めて考えることが欠かせません。
また、計画が機能しない企業には、人物像が抽象的なまま、施策を並べただけ、現場運用とつながっていないといった共通の失敗があります。こうした状態を避けるには、1on1や評価、配置とも接続しながら、定期的に見直せる計画にしていくことが重要です。
人材育成計画を見直したいが、どこから手を付けるべきかわからない場合は、フォーマットや参考情報を活用しつつ、自社の課題に合わせて整理していくことから始めてみてください。



