【2024年最新】人材育成のトレンドとは
近年、人事評価軸や雇用形態の多様化に伴い、企業における人材育成のあり方も大きく変化しています。「VUCA」とも言われる先の見えない現在において効果的な人材育成を行うためには、最新のトレンドをおさえた育成施策の展開が欠かせません。
2024年の人事に関連する重要なキーワードとしては、人的資本開示、DX人材育成、テレワークやサステナビリティ、リスキリングなどが挙げられます。本記事では、育成前にぜひ知っておきたい人材育成の最新トレンドについてご紹介します。
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2024年の人事を取り巻く環境
コロナ禍や働き方改革など、社会全体はここ数年で大きく変化しました。「ウィズコロナ時代」とも呼ばれる2024年、人事を取り巻く環境は具体的にどのように変化してきているのでしょうか。
最新の人材育成を考える上で見逃せないのが、テレワークや社員の価値観の変化です。また、DXやサステナビリティ、海外売上比率の向上なども重要なキーワードとして注目を浴びています。まずは2024年の人事を取り巻く環境について確認していきましょう。
テレワークが一般的になった
新型コロナウイルスの流行に伴い、テレワークが急速に普及しました。出社せず、完全在宅で仕事をこなす機会が増えたという方も多いのではないでしょうか。
出典:第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査 令和
内閣府が2023年7月に公表した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、東京都23区において2022年6月時点でテレワークを実施している企業はおよそ50.6%となっています。2021年9〜10月ごろのピークと比較するとやや減少傾向にあるものの、半数以上の企業がテレワークを活用しており、今後もこの傾向は続くでしょう。
テレワークでは、社員間のコミュニケーションが不足してしまいがちといった課題を抱える企業も少なくありません。また、コンプライアンス面にも力をいれた育成が求められます。
働くうえで重視するものが変わってきている
先ほどご紹介した内閣府の調査では、「働く上で重視するもの」についてもアンケートを実施しています。同調査によると、全年代にわたって最も重視する傾向が見られたのは「就業形態(正規、非正規)」と「給与の額」の2つです。また、「職場の人間関係・雰囲気」についても全体でおよそ2割の社員が重視すると回答しています。
テレワークが一般的になり、テレワークやフレックスタイム制など柔軟な働き方が重視されるようになってきました。
特に、20代~30代では柔軟な働き方を重視する人の割合が高くなっています。
一方で労働時間や仕事のやりがいを重視する傾向は若い世代の社員の間ではあまり見られなくなってきているのも、仕事に対する価値観の大きな変化です。育成の指針を的確に定めるためにも、若い世代の社員の仕事に対する考え方を把握しておきましょう。
DX人材の育成が急務に
DXは、もはや業種や業界を問わず必要とされている取り組みといえます。さまざまな企業がDXに取り組む中、その推進を阻んでいるのがDX人材の不足です。
「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」は「DXレポート」の中で、具体的に以下のようなDX人材の育成が求められていると提言しています。
- CDO:システムの刷新によって経営改革を牽引できるトップ人材
- デジタルアーキテクト:業務内容とITの両方に精通し、経営改革をITシステムに落とし込める人材
- 各部門において、要件を明確に定義できる人材
- AIの活用ができるデータサイエンティスト
DX人材を育成するためには、アジャイル開発の実践など実務を通じて技術を習得してもらうのが非常に有効です。また、大学や研究所などと企業が連携する「産学連携」を通じて、AIやデータサイエンス領域で高度な知識を持った人材の流動性を高めるといった施策も注目を浴びています。
アルーでは、DX人材を育成する研修を行っています。詳しくは、以下のページでご覧いただけます。
▼DX・デジタル活用人材研修の資料はこちらからダウンロードできます。
サステナビリティやESGの重要度が高まっている
ESGとは、「環境」「社会」「ガバナンス」の頭文字を組み合わせた単語です。ここ数年で、企業の社会的な責任や環境問題、社会的格差などに対する意識が高まっています。企業はただ単に利益を追求する存在ではなく、サステナビリティやESGに関する取り組みを進めることが求められているのです。
人材育成の現場においても、人事担当者がESGに関する取り組みを担当部署や従業員に広く周知するといった施策を行うのがよいでしょう。従業員が企業の社会的責任について理解すれば、企業全体として積極的な参加を促進できます。ESGの観点を取り入れた企業の成長や経営を目指して、人的資本の価値を向上させるという点が2024年の大きなトレンドです。
人的資本の情報開示が義務化
人的資本とは、人への投資によって能力開発を行い社会や企業に利益をもたらそうという狙いのもと、企業に在籍する人を「資本」ととらえた概念です。最近では、人的資本に積極的に投資して、将来的により大きな成果を期待しようという考え方が普及してきています。
金融庁によると、2023年3月期の有価証券報告書から段階的に、この人的資本の開示義務化を開始すると発表しています。内閣官房は「人的資本可視化指針」の中で、次の7つの事項を開示することが望ましいと発表しています。
- 育成
- エンゲージメント
- 流動性
- ダイバーシティ
- 健康・安全
- 労働慣行
- コンプライアンス/倫理
開示の対象となる企業の人事担当者は、企業の人材戦略や人的資本に関する情報を収集し、適切な情報開示を行う必要があります。また、人材の採用や育成、評価制度の改善など、人事部門の業務の改善も必要です。
▼人的資本経営の基礎知識と施策事例をまとめました。
海外売上比率向上
新型コロナウイルスの流行により、海外に活路を見出した企業は少なくありません。また、人口が減少傾向にある日本市場だけにとどまらず、積極的に海外進出しようと考える企業も増えてきました。
2024年の人材育成を取り巻くキーワードとして、「海外売上比率向上」も重要です。特に上場企業など大企業にとって、グローバル戦略は必要不可欠といえます。
海外進出を行う上場企業の場合、まずはグローバル人材の育成や採用が求められます。英語をはじめとした語学面はもちろん、異文化コミュニケーションのスキルや海外拠点のマネジメント能力などの開発も必要です。さらには企業のグローバル化に対応できるような評価制度を導入する、面接の際の選考基準を見直すといった対応も求められるでしょう。
アルーが行っているグローバル人材の育成支援は、以下のページからご確認いただけます。
岸田内閣が「人への投資」の抜本強化を宣言
岸田内閣は、「人への投資」の抜本強化を経済政策の一環として宣言しました。先ほど紹介した「人的資本」に重点的に投資して、企業の持続的な成長と賃金引き上げを目指そうという政策です。具体的には、以下の3つの柱にそって1兆円を投じる方針が示されています。
- 転職や副業を受け入れる企業、非正規雇用から正規雇用への転換を行う企業への支援の新設や拡充
- 従業員のリスキリングから、その後の転職までを一貫して支える制度の創設
- 従業員を訓練する企業に対して、支援金の補助率引き上げ
中でも従業員へのリスキリングに取り組む企業への助成拡大が示されたことは重要で、今後ますますリスキリングの取り組みは普及していくことが予想されます。
参考:転職・副業の受け入れ先支援 首相「リスキリング拡充」(日経新聞2022年10月12日)
▼新入社員レポートから読み解く育成トレンド
2024年の人材育成のトレンドは?
2024年の人事を取り巻く環境について解説してきました。それではこれらの環境を踏まえ、具体的にどのような人材育成を行えばよいのでしょうか。
2024年の人材育成のトレンドとしては「ウェルビーイング」や「心理的安全性」、さらには先ほども簡単に紹介した「リスキリング」が挙げられます。ここからは、2024年の人材育成のトレンドについて確認していきましょう。
ウェルビーイング
ウェルビーイングとは、従業員の心身の健康を促進するための取り組みのことです。
2024年の人材育成トレンドの1つとして、ウェルビーイングが注目されています。
ウェルビーイングは、企業経営の観点から重要な課題の一つとして取り上げられるようになってきています。最近では働き手の減少により、ビジネスの現場における人手不足が深刻な課題となってきました。また、テレワークの普及は従業員のメンタルヘルスにも影響を与えており、「幸福度を高める場づくり」がこれまで以上に求められてきています。
ウェルビーイングを実現するためには、従業員が働きやすい環境を作るためのコミュニケーション研修やハラスメント研修などの実施がおすすめです。
また、企業理念の浸透もウェルビーイングに必要です。従業員がやりがいを持って働けるように、理念を浸透させ会社との繋がりを意識してもらいましょう。新入社員研修に理念浸透に関するプログラムを取り入れたり、理念の伝道者を育成するプログラムを取り入れたりといった育成施策を検討してみてください。
▼アルーのコミュニケーション研修についてはこちらのページをご覧ください。
従業員のウェルビーイングを促進すれば、従業員の生産性向上や離職率低減といった数多くのメリットがあります。従業員のウェルビーイングは企業の成長に直結するといっても過言ではありません。企業の持続的な成長を実現するためにも、ウェルビーイングという概念をぜひ頭に入れておきましょう。
リスキリング
2024年の人材育成トレンドの2つ目として、リスキリングが挙げられます。リスキリングとは、従業員が持つ既存のスキルや知識を見直し、必要に応じて新しいスキルや知識を習得することです。
一方、最近ではリスキリングとデジタル人材育成がほぼイコールで語られることが増えています。これは、デジタル技術の進化が多くの業種や職種に影響を与えており、デジタルスキルの習得が業務をこなす上で必要不可欠な場面が増えているためです。AIやロボットを中心としたテクノロジーはますます進歩しているため、今後もこの傾向はしばらく続くでしょう。
ただしリスキリングには、新しい価値観や考え方を取り入れ、いつもの仕事のやり方を変える「アンラーニング」も必要です。アンラーニングによって今までの知識や考え方、仕事のやり方のなかで必要ない部分、非効率な部分から脱却し、新たな知識を学び直すとよいでしょう。
アンラーニングやリスキリングのためには、人事側が研修プログラムや制度を用意することをおすすめします。
特に管理職など既にスキルや知識を持っている従業員に対しては、研修プログラムの際にアンラーニングの概念や方法を伝える必要があるでしょう。
また、集合研修やeラーニングなど、様々な学習方法を用意し、従業員が選べるようにすることが大切です。
心理的安全性
心理的安全性は、従業員が意見や意見を自由に出し合えるとともに、失敗を恐れずに挑戦できるような企業風土のことを指します。心理的安全性も、2024年の重要な人材育成トレンドです。高い心理的安全性があれば、チャレンジする文化が後押しされる、率直な意見交換が促進されるといった効果が期待できます。
心理的安全性が高い企業では、
- 的外れな発言でも最後まで話を聴き、傾聴する
- チャレンジに失敗しても、チャレンジした「行動」を褒める
- 失敗に対して、改善に向けた指摘をする
- 叱る際は、「ヒト(存在)」ではなく、「コト(行動)」を指摘する
といった特徴があります。これらを実現するためには、従業員が自由に意見を出し合える環境づくりやフィードバックの文化を定着させる施策を進めるのが有効です。社員間の距離を縮めるイベントやレクリエーションを企画するのはもちろん、まずは挨拶から始めてみるなど、小さなところから取り組むのもよいでしょう。
また、管理職に対して傾聴力強化などの研修を行う、チームビルディング研修を通して従業員同士の信頼関係を構築するなどの取り組みも心理的安全性を高めるために有効な手段です。
▼管理職の傾聴力強化についてはこちらの資料もご覧ください。
人的資本経営
人的資本経営とは、従業員を企業の資本として捉え、その資本価値を最大限に引き出そうという経営手法です。従業員に積極的に投資して従業員の能力を向上させれば、業務の効率化や革新的なアイデアの創出を促すことができます。
人的資本経営は、企業としての社会的責任を果たすためにも欠かせない取り組みです。また、従業員に積極的に投資すれば、先ほど紹介したウェルビーイングの促進や、生産性の向上にも繋がります。
具体的な人事部の取り組みとしては、社員の教育・研修プログラムの充実、人事評価制度の見直し、キャリアパスの整備といったものが考えられます。また、ワークライフバランスの改善といった多様な観点からの働きかけも有効です。今後ますます変化の激しくなるビジネスの現場において、従業員の価値を最大化する人的資本経営は、企業の成長に不可欠といえるでしょう。
▼人的資本経営の基礎知識と施策事例をまとめました。
DX人材
先述したように、企業がDXを進める上で大きな障壁となっているのがDX人材の不足です。DX人材といっても、ただ単にプログラミングやITに関するスキルや知識を習得すればよいというわけではありません。効果的なDXを推進するためには、自社のビジネスの理解やコミュニケーション能力なども重要です。
人事部が実施できる具体的な育成手法としては、社内での研修プログラムの拡充や、外部講師や専門家を招いたセミナーなどの実施などが考えられます。社内にITに精通する社員が在籍する場合は、業務ローテーションなどでITスキルを共有するのも有効です。
また、DXに必要な知識や技術は日々進化し続けています。DX人材の育成を考える際は、「一度研修して終わり」とせず、最新のITトレンドをキャッチアップできるような意識改革を含めた継続的な取り組みを心がけましょう。
アルーでは、DX人材を育成する研修を行っています。詳しくは、以下のページでご覧いただけます。
▼DX・デジタル活用人材研修の資料はこちらからダウンロードできます。
グローバル人材育成体系の強化
グローバル化が進む現在、上場企業をはじめとした大企業にとってグローバル人材の育成は必要不可欠です。文化や言語が異なる国々でビジネスを展開するためには、語学力や異文化コミュニケーション能力はもちろん、マインド面を含めた教育が求められます。幅広いスキルを備えたグローバル人材を育成するためには、まずグローバル人材育成体系そのものを整備することが必要です。
社員に異文化コミュニケーション力やグローバルマインドを身につけさせたい場合は、集合研修で知識を習得すると効果的です。
特にオンライン上で学習できる環境を整備すれば、海外拠点や海外の研修先などと気軽なやりとりが可能となり、効率的な研修が実施できます。
アルーでは、異文化コミュニケーション力やグローバルマインドを身につけられる研修を行っています。詳しくは、以下のページからご確認ください。
また、語学については、海外への語学留学やマンツーマンビジネス英会話レッスンを検討することをおすすめします。
アルーで行っている語学留学支援は、オンラインにも対応しており、忙しい社員の方でも取り組みやすくなっています。詳しくは、以下のページからご確認ください。
▼新入社員レポートから読み解く育成トレンド
2024年の人材育成手法のトレンド
2024年の人材育成のトレンドについて見てきました。従来にはなかった新しい観点からの取り組みも多いため、これらのトレンドをおさえた人材育成を行うためにはこれまでとは異なるアプローチが必要です。
2024年の人材育成手法としては、ブレンディッドラーニングや経験型学習、マイクロラーニングなどが注目を浴びています。2024年注目の人材育成手法について解説します。
ブレンディッドラーニング
ブレンディッドラーニングとは、集合型研修やOJT、eラーニングなど、さまざまな研修方法を組み合わせて実施される研修形態のことです。それぞれの学習方法の利点を引き出すことによって、研修の効率や質を最大化できます。
ブレンディッドラーニングにはいくつかのパターンがありますが、「動画コンテンツや集合型研修で基礎的な知識を習得し、OJTで知識の定着をおこなう」というのが特に典型的です。従来型の研修では身に付かなかった高度な内容を身につけられることも多く、最近注目されている研修手法といえます。
アルーでは、eラーニングの進捗管理ができるLMS「etudes」を提供しています。ブレンディッドラーニングを導入する場合は、ぜひご検討ください。
経験型学習
経験型学習とは、経験を通じてスキルや知識を習得し、それを次の経験に活用するというプロセスのことです。集合型研修などで座学に取り組むことも大切ですが、ビジネスの現場で本当に通用するスキルを身につけるためには、現場での実践が欠かせません。実践によって知識の習得を目指すのが、「経験型学習」です。
2024年現在、この経験型学習はITスキルやマネジメントなど、さまざまな能力開発に活用されています。トレンドを押さえた人材育成を実施する際には、ぜひこの「経験型学習」も検討しましょう。
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マイクロラーニング
マイクロラーニングとは、1〜5分程度に細分化された身近なコンテンツで学習を進める手法です。パソコンやスマートフォンなどで手軽に学習できるため、会議までの待ち時間や通勤時間など、ちょっとしたスキマ時間を活用した学習ができるメリットがあります。
また、マイクロラーニングでは必要な時に必要なコンテンツだけをかいつまんで学んでもらえるため、教材の作り手が研修対象者にあわせて教材を作り直す手間が省けるというメリットもあります。
まとめ
2024年の人材育成トレンドについて、人事を取り巻く環境や人材育成のトレンド、人材育成手法といった観点から解説してきました。先の見えないVUCAの時代、これまでとは異なる教育内容や教育手法が求められています。特に従来にはなかった価値観を持つ若い世代の社員を対象とした教育を行う際には、この記事で紹介したようなトレンドをおさえた教育を実施することが極めて重要です。ぜひ今回紹介した内容を踏まえ、変化の激しい時代にも対応できる効果的な人材育成を実施してください。
どのような育成手法が良いか分からない、社内で内製するのが難しいといった場合は、ぜひアルーにご相談ください。貴社の課題をお伺いし、トレンドを押さえた人材育成プログラムの実施をご支援いたします。
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