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OJT教育とは?指導の手法やマニュアル作成のコツ、メリット・デメリット
実践的な知識を手早く身につけてもらえる点が特長のOJT。業界を問わず多くの企業で活用されている、最もポピュラーな教育の一つです。
OJTにおいて業務に必要な知識を効率よく伝授するためには、PDCAサイクルを回しながら常にOJTのプロセスを改善することが欠かせません。OJTを実施する際の流れや、OJT教育を行う際に気をつけておきたいポイントなどについて解説します。
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OJT教育とは
OJT教育とは、”On the Job Training”の略称で、実際の仕事をこなしながら業務に必要な知識やスキルを身につけていく教育方法のことです。入社したばかりの新入社員や、昇進したばかりの社員に対して、先輩や上司に当たる社員がOJTトレーナーとして指導に当たります。
実際の仕事を題材に業務に必要な知識を伝達するため、座学による研修やマニュアルだけではなかなか身につきにくい実践的な知識を身につけてもらえることが大きな特徴です。日本の企業では企業の規模を問わず最もメジャーな教育手法の一つであり、業界や業種を問わず活用されている教育方法でもあります。
OJT教育には必ずトレーナーが必要
OJTは、単に新入社員へ先輩の仕事ぶりを見せればよいというわけではありません。OJTを効果的に実施するためには、先輩や上司にあたる社員が新入社員や若手社員にOJTトレーナーとして指導にあたる必要があります。
OJTトレーナーは新入社員の能力や特性を見ながら、実際に取り組んでもらう仕事の内容や難易度を調整します。OJTでは主にトレーナーからマンツーマンの指導を受けながら仕事のノウハウを学んでいくため、OJTトレーナーはOJTの効果を大きく左右する重要な存在です。そのため、OJTトレーナー研修の実施や、トレーナー自体のスキルアップをさせる施策が必要になるでしょう。
OJTと研修(Off-JT)との違い
OJTは、実際の業務を通して必要な実践的知識を学べるため、対象者のスキルや業務内容に合わせてカスタマイズできます。アウトプットの機会が多いため、知識を実務に活かす方法も同時に学べます。
一方、OFF-JTは、体系的に整理された知識、特に汎用性の高い概念やフレームワークを習得するのに適しています。学習内容の個人差が少なく、数日で完了するため時間コストが優れています。また外部講師を活用できるため、社内で指導する必要がありません。
OJTとOFF-JTの違いについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
『OJTとOFF-JTの違いは?それぞれのメリットや組み合わせ方を紹介』
OJT教育のメリット・デメリット
企業の育成においては、OJT教育と研修などのOff-JTを組み合わせて施策実施を行います。ここでは、OJT教育のメリットとデメリットを紹介します。メリットとデメリットを踏まえ、OJTをOff-JTをうまく組み合わせて育成を行いましょう。
OJT教育のメリット
まずは、OJT教育のメリットを紹介します。
即戦力への育成をしやすい
実務を通じて教育を行うので、実務に必要な知識やルールを効率的に覚えることができ、現場ですぐに成果を出すのに必要なスキルを早期に身につけることができます。
短い期間で会社全体の力をあげやすい
現場ですぐに成果を発揮できる戦力が増えることで、短期的に会社全体の成果につながりやすいのもOJTのメリットです。
研修コストがかからない
現場での直接指導を通じて教育を行うので、外注するコストがかかりません。Off-JTなどを外注すると、講師の人件費や教材費などが必要になります。OJTは社内の人材が業務の一環として教育を行うため、コストがかからない点が魅力です。
OJT教育のデメリット
即戦力を生み出しやすく、研修コストもかからないOJTですが、デメリットもあります。ここでは、OJT教育を行う際に知っておきたいデメリットをご紹介します。
トレーナーによって質に差が出る
現場のトレーナーや上司の知識やスキル・業務経験によって、どのような方針で教育を行うか、何を教えるか、どのようなやり方で教えるか、新入社員個人の適性を踏まえて教育できるかどうかに差が出てしまいます。そのため、トレーナーと新入社員の相性が悪かったり、その部署の育成環境がよくないと新入社員が育たないことがあります。
新入社員と接する際の心構えやティーチングスキル、フィードバックスキルなど、トレーナーや上司が共通して身につけておくべきスキルは事前にトレーナー研修を行うことがおすすめです。研修を行うことで、一定の質を担保できるようにするとよいでしょう。
アルーでは、OJTトレーナー向けの研修を提供しています。詳しくは「OJTトレーナー研修」をご覧ください。
体系的に学びにくい
実務にあった知識やルール、業務の仕方はOJTで効率的に身につけることができます。一方で、体系的な思考スキルや仕事の進め方はOJTでは身につけづらいです。
OJTで実践した内容を体系的なスキルに落とし込むには、業務経験から教訓を引き出すような能力が必要です。新入社員の中にはまだそのような力が身についていない人もいるでしょう。その場合、思考力や応用力が身につきにくいことがあります。
仕事の進め方やロジカルシンキングスキル、文章作成スキルなどを体系的に学ぶには、研修やeラーニングなどのOff-JT教育のほうが効率的です。
▼体系的に学べるアルーの研修一覧はこちら
トレーナーの業務が忙しいと、教育が進まなくなる
職場環境によっては、トレーナーが自身の業務にかかりっきりになり、新入社員の面倒をみる余裕がなくなってしまうこともあります。そうすると、新入社員はやるべき業務がなく時間を持て余してしまったり、フィードバックが得られず成長実感を感じられなかったりするかもしれません。最悪の場合、メンタル不調に陥ってしまうこともありえます。
教育担当を担うトレーナーの業務状況も把握しながら、職場全体で新入社員に関わる環境づくりが必要です。
指導する立場からのOJT教育とはなにかにご興味がある方は下記の記事をご覧ください。
『OJTは放置することじゃない!退職されないためのOJTの方法とは』
監修者からひと言 OJT教育のメリット・デメリットを考える際には短期的なメリット・デメリットだけでなく中長期的なメリットも考えてみましょう。OJTトレーナーにとっての中長期的なメリットとしては、いずれ管理職になった際にどういう点で困るのか、何ができて何が苦手なのかを把握する機会にもなるという点が挙げられます。OJTトレーナー向けのオリエンテーションでは、短期的なメリットや目的だけでなく、将来管理職になった際にこのOJT経験を活かすことができるとを伝えるといいでしょう |
OJT教育にはPDCAのサイクルが欠かせない
OJTを実施している企業の中には「気がつけばOJTが単なる放置となってしまっていた」といった問題点を抱えている場合も少なくありません。OJTで適切な指導が行えないまま新入社員を放置してしまうと、新入社員のモチベーション低下を引き起こす可能性があります。最悪のケースでは早期離職を招いてしまうこともありえるでしょう。
OJTを失敗させないためには、指導計画を立てること、そして指導がうまくいっているか常に確認しながら必要であれば改善を加えていくことが求められます。つまり、PDCAサイクルを回しながら継続的にOJTのプロセスを改善していくことが重要なのです。OJTにおけるPDCAサイクルについて紹介します。
Plan=計画
OJTを実施する際には、まずOJTの全体像の計画を立てましょう。計画の段階でOJTの骨子をはっきりとさせておくことで、OJTにおいて実践すべき具体的な内容が明確化するため、OJTの事前計画はとても重要です。
計画を立てる際は、まず全体のゴールとなる大きな目標を策定します。例えば「OJTで営業のノウハウを身につけてもらいたい」と考えた場合、「案件の獲得から成約までを一人でこなせるようになる」という最終目標を明確化します。
大きな目標が決まったら、次は最終目標を達成するための小さな目標に細分化しましょう。例えば先程の営業の例でいえば、「潜在顧客へのアプローチ方法を身につける」「契約に必要な書類記入プロセスを身につける」といった内容が考えられます。
Do=実行
PDCAサイクルの”D”にあたる「実行」では、計画の段階で策定した内容に沿って実際に業務をこなしてもらいましょう。
OJTで実際に職務をこなしてもらう際はいきなり仕事を丸投げせずに、まずはOJTトレーナーとなる先輩社員が「実際に仕事をやってみせる」ようにします。その後、業務をこなすのに必要な補足説明を行い、実際に新入社員に仕事へ取り組んでもらう、という流れがおすすめです。
以上のプロセスのうち一つでも欠けてしまうと、新入社員はスムーズに業務に取り組めず、十分なOJTの成果が得られない可能性があります。業務をやってもらう際には、「やってみせる」ことと「説明を行うこと」の両方を必ず実施しましょう。
また、最初に立てたOJT全体の計画がスムーズに実行できるように、企業側がサポートすることも大切です。OJTトレーナー以外にも、その上司や人事・経営陣も実行に対するサポートを行いましょう。
Check=評価
「評価」にあたる”Check”の段階では、Planで立てたOJTの計画がきちんと進んでいるか、確認します。
最初に立てたOJT教育全体の計画が滞りなく進んでいるかどうかや、期間目標に対する定期的な評価とフィードバックをOJTトレーナーが新入社員に行います。
計画が思うように進んでいない、計画通りにOJTを行っていても、新入社員には定着していないというような場合もありますので、次の段階でOJTの内容や計画をブラッシュアップしていく必要があるでしょう。
Action=行動
PDCAの最後の段階である「行動」では、評価の段階での成果や反省点を踏まえたプロセスの改善を行います。
例えば、Checkの段階で「OJTトレーナーが多忙でなかなかOJTが進まなかった」という課題が見つかったら、「OJTトレーナーの業務量を調節する」「OJTトレーナーが不在の場合にサポートする人を任命する」などの改善案を出し、計画の見直しをして、次のPlanに活かしていきます。
OJTトレーナーのスキル不足や、新入社員の知識の定着が課題となった場合には、OJT以外の集合研修やeラーニングを使用した教育方法を検討しても良いでしょう。
OJT教育の進め方
OJT教育は、PDCAサイクルを通して効率的に進めていくことが重要であることをお伝えしました。
では、実際にOJT教育を進めていく上で、どのように新入社員に伝えれば良いのでしょうか。
アルーでは、「やってみせる」「言って聞かせる」「させてみる」「ほめる」の4段階にわたって新入社員に教育をすることをおすすめしています。
1段階ずつ、詳しく解説いたします。
やってみせる
OJTにおいて新入社員に業務を実践してもらう前に、まずはOJTトレーナーとなる社員が「実際に仕事をやってみせる」ようにしましょう。
実際に先輩社員が実際に仕事をこなす様子を見ながら、新入社員は業務をこなす方法やコツについて体得することができます。先輩社員が仕事を実践する様子を見ながら、仕事の全体像を把握することを心がけてもらうとよいでしょう。
最近では、定型的な業務については実践方法を動画化し、オンラインで仕事の方法を学んでもらう企業も増えてきています。OJTトレーナーの負担も考慮しながら、随時工夫していきましょう。
言って聞かせる
先輩社員の仕事の様子を見るだけでは、なかなか細かなコツやノウハウまでは伝わりにくいかもしれません。また、その仕事がどうして必要なのかといったバックグラウンドまではなかなか伝えきれません。
業務をやってみせたあとは、仕事の内容やノウハウに関する説明を行いましょう。新入社員は先程の「やってみせる」で学んだ内容と、ここでの説明を頼りに次の段階へ進むことになります。「何かわからないことはないか?」「不安な点はないか?」など、実践へ進む前に丁寧なヒアリングを行いながら進めてみてください。
させてみる
業務の説明を一通り伝えたら、いよいよ新入社員に自分自身で仕事へ取り組んでもらいます。新入社員が実際に仕事を行なってみることで、ここまでの段階で身につけた知識の定着を図ることが可能です。また、「説明を聞いただけでは分かったつもりになっていた部分」を明確化することもできます。
新入社員にとって初めてとなる業務の場合、なかなか上手くいかない場面もあるかもしれません。しかし、OJTトレーナーとなる先輩社員は新入社員が一通り業務をこなすまでは口を出しすぎないことが重要です。
新入社員が自分で業務をこなす前に口を出してしまうと、新入社員が業務を行ったという達成感が得られなかったり、自分で業務をこなすことによる気付きが得られなくなってしまいます。
ただし、「放置されている」と新入社員に感じさせないよう、「疑問点にはいつでも答える」という姿勢を見せるようにしましょう。
また、「失敗は責めない」ということも徹底することで、新入社員は安心して業務に取り組むことができます。
ほめる
新入社員による業務の実践が終わったあとは、OJTトレーナーが業務に対するフィードバックを実施します。もちろん初めての業務の場合は改善点が多々見つかるかもしれませんが、まずは新入社員が「実践できた」部分に焦点を当て、できた部分を褒めてあげることが重要です。
これまでの成長をOJTトレーナーとともに振り返ることで、新入社員は自分の仕事ぶりに自信を持つことができます。新入社員のモチベーションを維持してあげることで、新入社員は次の業務にもポジティブな気持ちで臨むことができるでしょう。
リモートワーク環境でのコミュニケーションやOJTのコツについては、以下の動画で詳しく解説していますので、ぜひ一度ご確認ください。
監修者からひと言 OJT教育を進める際には、OJTトレーナー自身のスキルに依存しないよう、デジタルツールの導入やオープンコミュニケーションの導入も行うと効果的です。教えられる側のZ世代はデジタルネイティブであり、テクノロジーに慣れ親しんでいます。そのため、オンラインプラットフォームやデジタルツールを活用した学習資料に落とし込むことも効果的です。これまではOJTで教えないといけないと思っていたものでも、OFF-JTやeラーニングに落とし込めるものがあるかもしれません。Z世代の学習スタイルに合った教育を提供していくと効果的でしょう。 |
OJT教育がうまくいかない原因は?
毎年OJT教育を行っているが、うまくいった印象がないということはありませんか?うまくいかない原因について解説します。
OJTトレーナーの知識やスキル不足
OJTの効果は指導者の力量に大きく依存しており、指導者が適切なスキルを持っていないと、新人が不満を抱いたり、指導側もストレスを感じてしまうことがあります。企業は、OJTに適した人材を選定するだけでなく、指導者に人材育成の知識とスキルを習得させる機会を提供することが重要です。
指導者自身がOJTの手法やノウハウを十分に修得できるよう、研修の実施や教育マニュアルの整備など、OJT実施体制の強化が肝心です。これにより、効果的なOJTの実現とともに、双方の負担軽減にもつなげることができるでしょう。
十分な指導体制をとれていない
テレワークの増加によるコミュニケーションの希薄化などで、新人教育への関心が低下し、またトレーナー自身の人材育成に対する意識が十分ではない場合も多く、効果的な教育が行われにくい体制になっている実情があります。
OJT教育は単に知識を教えて実践させるだけでは不十分で、実践後の成果や課題の振り返りを通じて継続的に改善を図ることが重要です。また、指導者のやり方自体にもフィードバックを行い、指導の質の向上につなげていくことが求められます。つまり、組織全体で人材育成の重要性を共有し、十分な指導体制の構築が不可欠なのです。
コミュニケーション不足
OJT教育がうまくいかない原因の1つにOJT中のコミュニケーション不足があります。トレーナーと新人の間でのコミュニケーション不足により新人の士気低下や離職につながりえます。業務多忙でトレーナーが新人への指導を疎かにしてしまったり、コミュニケーション頻度が減らないようにすることが大切です。
OJTの質を担保するには、トレーナーの役割を明確にし、新人育成への意識を醸成することが不可欠です。トレーナーの評価にも新人育成の成果を反映させるなど、組織的な取り組みが求められます。
OJT教育の指導のコツは?
ここまで、OJTを行う際の具体的なステップについて紹介してきました。それでは、実際にOJTへ取り組む際にはどのようなポイントに注意すればよいのでしょうか。
OJTにおいて効果的な教育を実施するためには、「育成計画を作成しておく」「個人によって指導内容を変える」といったいくつかの指導のコツが存在します。OJT教育における指導のコツについて見ていきましょう。
育成計画を作成する
「蓋を開けてみればOJTを通じて何も知識が身につかなかった」という事態を防ぐためには、事前にOJTによる育成計画を作成しておくことが必要不可欠です。「OJTを通じて何を身につけてもらいたいのか」「そのためにはどのようなマイルストーンが必要となるのか」といった事柄を明確にしておくことで、OJTトレーナーは新入社員の能力に応じた適切な指導を行うことができるようになります。
育成計画の作成には負担がかかるため、企業側のサポート体制を整えておくことも重要です。例えばOJTトレーナー向けの研修を実施し、育成計画の立て方を伝えたり、トレーナー同士の横のつながりを作り出し、OJTのクオリティを底上げすることができます。
計画を作成する際には、OJTシートを活用するのがおすすめです。OJTシートについては以下の記事をご覧ください。
『OJTシートとは|メリットや書き方のポイントを紹介』
育成マニュアルを整備する
新入社員向けとトレーナー向けの育成マニュアルがあることで、トレーナーによる教育のばらつきを無くし、指導のクオリティを平準化しやすくなります。
新入社員向けには、OJT期間終了時に目指すべき姿、身につけるべき知識・スキルの全体像、ロードマップ、具体的に必要な手順などを用意しておくとよいでしょう。
トレーナー向けにも同様に、OJT期間で新入社員が達成すべき状態や、身につけるべき知識・スキルの全体像、ロードマップ、手順を整理したマニュアルを用意しましょう。OJT施策を毎年行っている企業では、トレーナーの指導経験を踏まえたナレッジを集約し、マニュアルに掲載しておくとよいでしょう。
結果が出なくても焦らない
新入社員の成長速度は人それぞれです。たとえ「育成計画よりもOJTが遅れている」といった事態が起こったとしても、焦りは禁物です。
例えば営業向けのOJTで「なかなか契約書類の用意ができない」といったような事態が発生した場合、焦って実務へ進んでしまっては逆効果です。「なぜこの書類が必要となるのか」「この書類にはどのような目的があるのか」といった背景まで立ち入りながら丁寧な説明を行い、新入社員が自立して仕事を行なえるようになるまでサポートしましょう。新入社員の能力を見ながら、ときには事前に作成した計画を柔軟に変化させることも重要です。
個人によって指導内容を変える
OJTの長所として、新入社員一人ひとりの能力や特徴にあった指導ができるという点が挙げられます。OJTを実施する際には、個人によって指導する内容を変化させるということも重要です。
特に中途入社した社員に対してOJTを行う場合は、社員それぞれが持っている経験やバックグラウンドは人それぞれで大きく異なります。OJTトレーナーとなる社員は、「この社員には業界の事情について重点的に指導しよう」「この社員は基本的な事柄はできているから、応用的な内容を教えよう」といった具合に、新入社員の能力に合わせた指導を行いましょう。
指導内容を明確に言語化する
OJTでは、「実際の業務の様子を見ながら学んでもらう」ことがメインとなります。そのため、単に仕事内容を見せるだけでは、以下のような情報が抜け落ちてしまいがちです。
- なぜこの業務が必要となるのか?
- それぞれの工程にはどのような意味があるのか?
- どのようにすればさらにステップアップできるのか?
OJTを実施する際には、仕事の内容や業務手順、背景などをできる限り明確に言語化するようにしましょう。業務に必要なこれらの情報を言語化することで、OJTトレーナーの頭の中で今一度業務内容を整理する機会にもなるため、業務プロセスの改善も見込めます。
フィードバックを行う
OJTで業務を実践しただけで終わらせてしまうと、せっかく身につけた知識やスキルを改善し、深める絶好の機会を逃してしまいます。そのため、OJTで新入社員が業務を実践した後は、OJTトレーナーがフィードバックを行うことが重要です。
フィードバックを通じて、新入社員は自分の仕事の良し悪しや改善点を明確に理解することができます。たとえば、「特定のタイミングで早口になっている」と指摘されることで、自分では気づかなかった癖を把握し、修正する機会を得ることができます。このように、他者の視点を通じて客観的に自分を見つめ直すプロセスは、課題解決やスキル向上の第一歩となります。
また、OJTトレーナーからフィードバックを受けることで、「OJTトレーナーが自分を見てくれている」と感じ、存在承認を得ることに繋がります。結果として自信を持つことができ、職場での早期戦力化も期待できるでしょう。
効果的なフィードバックを行うために
フィードバックを効果的に行うには、その目的や意義を十分に理解し、適切な方法を取り入れることが大切です。フィードバックには、単なる指摘ではなく、受け手が納得感を持ち、自ら改善に向かう意識を引き出す力があります。
特にOJTの場面では、具体例を交えた指摘や改善案を示すことで、新入社員の理解が深まりやすくなります。たとえば、「次は、プレゼン時に間を取ることで聴衆の反応を確認すると良いですね」など、前向きで具体的な提案を添えると効果的です。
フィードバックについては以下の記事をご覧ください。
『フィードバックの意味とは?効果・実施する方法・ポイントをわかりやすく紹介』
フィードバックの基準を作っておく
OJTにおいてフィードバックが重要であることは広く認識されています。しかし、現場での実践となると、フィードバックの基準が曖昧なまま進められてしまうことが少なくありません。その場でOJTトレーナーが気になった点だけを指摘する運用では、単なる業務指示に終始し、効果的なOJTとしての成果を上げにくくなります。
こうした状況を防ぐためには、OJTを開始する前に、フィードバックの基準を明確に設定することが重要です。たとえば、「具体的にどのような行動や成果がOJTの目標達成を示すのか」を定義しましょう。この際、達成度を数値で表す「定量的な基準」と、状況やプロセスに着目した「定性的な基準」をバランスよく設定することがポイントです。
効果的なフィードバックの基本原則
フィードバックを効果的に行うためには、以下の3つのポイントを押さえましょう。
事実に基づく指摘
推測や噂ではなく、確認された事実を基にフィードバックを行うことで、受け手の信頼を得られます。具体的な例を挙げることで、改善点を明確にしましょう。
鏡のように状況を伝える
相手の行動や状況をそのまま伝え、自分の感じ方を添えることで、新たな気づきを与えることができます。
具体的な改善提案
「何をどう変えるべきか」を具体的に伝えることで、受け手が次に取るべき行動を理解しやすくなります。
監修者からひと言 OJTトレーナーは直属の上司ではないことが多いでしょう。トレーニーにとって話しやすい関係性を作ることで、直属の上司には話しにくいこともOJTトレーナー相手なら話してくれるかもしれません。また、OJTトレーナー一人で抱え込まず、上司や周囲の同僚を巻き込みながらトレーニーをサポートすることもOJT指導のコツです。 |
OJTトレーナーの教育方法とは
OJTは実践的な知識を身につけてもらう上で効果的な教育手法ですが、教育の質がOJTトレーナーに大きく左右されてしまうという問題点が挙げられます。このような教育の質の「ムラ」を防ぐためには、OJTを実施する前に会社側がOJTトレーナー向けの研修を用意することが得策です。
OJTトレーナー向け研修を通じて、OJTトレーナーにはOJTにおける指導方法や指導の際の心構えなどを身につけてもらうことができます。OJTトレーナーの教育方法について見ていきましょう。
自社でOJTトレーナー研修を受けさせる
OJTトレーナーを教育する際の方法として、まず自社でOJTトレーナー向け研修を実施するという手法が挙げられます。
OJTにおいて指導をする際には、「育成計画の作成」「評価基準を設ける」など、先述した多くのポイントに気をつける必要があります。事前に社内でOJTトレーナーとなる社員を集めて、OJTトレーナー研修を行うことをおすすめします。
アルーではOJTトレーナー育成に最適な研修を提供しています。詳しい情報は下記リンク先をご覧ください。
OJTトレーナー研修
人材育成会社に研修を外注する
OJTトレーナー向けの研修では、具体的な指導法や指導のポイントなど多くの項目を体系的に学んでもらう必要があります。OJTトレーナーに対して指導法を教育できる社員は限られており、社内でOJTトレーナー向け研修を実施する余裕がないというケースは少なくないのではないでしょうか。また、OJTトレーナー向け研修の質をさらに向上させたいといった場合もあるかと思います。
そのようなケースでは、人材育成会社が実施している研修を利用するのも一つの手です。中にはOJTトレーナー向け研修を提供している企業もあるため、研修の外注も一つの手段として念頭においておきましょう。
研修を外部委託する有効性やポイントについて解説した記事がありますのでご興味ある方はぜひご覧ください。
『研修は外部委託すべき?委託している割合や委託先選定のポイント』
監修者からひと言
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OJTトレーナー育成事例
近畿日本ツーリスト株式会社 新入社員とOJT担当者の両方の成長を図ったOJT担当者研修事例
近畿日本ツーリスト株式会社では、OJT担当者研修を通じて、新入社員とOJT担当者の両者の成長を目指しました。背景には、現場対応が中心でマニュアルが少ない業務環境があり、OJT担当者の教え方や意識を共通言語化し、新入社員にとって分かりやすい指導方法を確立する必要がありました。
この研修では、若手社員をOJT担当者に任命し、指導スキルの向上や論理的思考力の強化を目指す内容が盛り込まれました。結果として、参加者からは情報のアップデートや新たな気づき、横のつながりができたとの声が寄せられました。近畿日本ツーリスト株式会社の事例に、ご興味ある方はぜひご覧ください。
近畿日本ツーリスト株式会社 新入社員とOJT担当者の両方の成長を図ったOJT担当者研修事例
中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社 OJTの風土を1から根付かせるOJTトレーナー年間プログラム研修事例
中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社では、OJTの文化を根付かせるために、1年間のプログラムを通じてOJTトレーナーの育成を行いました。背景には、新入社員を迎えるための整った環境が不足していたことがあり、社員育成のための仕組みづくりが急務でした。
この年間プログラムでは、OJT担当者が新入社員と向き合いながら、信頼関係の構築や技術的スキルの伝達を行い、個々の成長に寄り添う形を確立しました。参加者からは「教えることの難しさ」を学び、自分の成長にもつながったとの声が寄せられています。中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社の事例に、ご興味ある方はぜひご覧ください。
中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社 OJTの風土を1から根付かせるOJTトレーナー年間プログラム研修事例
後輩社員のOJT指導のための適切な心構えと基本的スキルを身につけるOJT指導員育成施策例
サービス業の企業では、後輩社員の早期戦力化を目指し、限られた時間で効果的なOJT指導ができるようにするための研修を実施しました。背景には、管理職やリーダークラスが指導スキルを習得し、即戦力となる人材を育成する必要性がありました。
この施策では、OJT担当者が持つべき「心構え」「考え方」「スキル」の習得に重点を置き、グループディスカッションを通じて他の担当者から気づきを得る機会を提供しました。受講者の97%が業務に活かせると回答し、すぐに実行可能なアクションを学んだとの評価がありました。
後輩社員のOJT指導のための適切な心構えと基本的スキルを身につけるOJT指導員育成施策例
アルー株式会社の人材育成
アルー株式会社は、人材育成を専門に手掛けてきた企業です。新入社員研修や管理職研修などを始めとしたメジャーな研修はもちろん、OJTトレーナー向けの研修も数多く手掛けてきました。
OJTトレーナー向け研修の外注を検討されている場合は、ぜひアルー株式会社へおまかせください。アルー株式会社が提供しているOJTトレーナー向け研修では、後輩との関係構築力や指導方法などをトレーニングできる研修プログラムを用意しています。講義形式でOJTトレーナーとして必要な知識を体系的に身につけられることはもちろん、「業務の依頼」「仕事以外の話をする」といった実践的な演習も数多く含まれていることが特長です。
アルーのOJTトレーナー向け研修については、以下のページをご確認ください。
OJTトレーナー研修
まとめ
OJTを実施する際の流れや、OJT教育の指導のコツなどについて解説してきました。OJTは日本の企業において最もポピュラーな教育方法の一つですが、「気づいたら放置になってしまっていた」といった失敗例が少なくないのも事実です。
効果的なOJTを実施する際には、この記事で紹介したような多くのポイントに気を配ることが求められます。ぜひこの記事の内容を参考にしながら、会社全体にとって本当に効果的なOJTを実施してください。