フィードバックの意味とは?効果・実施する方法・ポイントをわかりやすく紹介
部下が成長するためには、上司からの効果的なフィードバックが必要不可欠です。部下の成長につながるフィードバックを提供するためには、どういったポイントを意識する必要があるのでしょうか。
この記事ではフィードバックの定義や効果、効果的なフィードバックを行う方法やポイントをわかりやすく解説します。上司のフィードバック力を高める研修例も解説するので、ぜひ参考にしてください。
▼フィードバック力の向上におすすめの研修3選
目次[非表示]
フィードバックとは?
フィードバックとは、相手の考え方や実際の行動に対して、他者が指摘や評価を行うことです。主に人事評価やプロジェクトの振り返りといった場面で実施されることが多く、ビジネスではフィードバックのプロセスが重視されることも多くあります。
自分自身を客観視するためには、他者からの的確なフィードバックが欠かせません。そのため、部下の成長にとって上司や先輩社員からのフィードバックはなくてはならない存在といえます。また、同僚同士でのフィードバックや、部下から上司に対するフィードバックも、ときには重要です。
フィードバックの2つの種類
フィードバックは、その方向性によって以下の2つに分けることができます。
- ポジティブフィードバック
- ネガティブフィードバック
どちらかのフィードバックが一方的によいというわけではなく、社員が成長するためにはこれら2つのフィードバックを適切に使い分けることが大切です。フィードバックの2つの種類について順に見ていきましょう。
ポジティブフィードバック
ポジティブフィードバックとは、「うまくいったね」「この点がよくできていたよ」などと、対象者に対して肯定的な反応を返すフィードバックのことです。
ポジティブフィードバックを提供する際には、単に評価対象者を褒めるだけではなく、評価対象者が仕事に対して自信を持てるよう工夫する必要があります。ポジティブフィードバックを通じて感謝やねぎらいの言葉、成長した点などを伝え、仕事に対して積極的に取り組めるようサポートすることが大切です。
ネガティブフィードバック
ネガティブフィードバックとは、「この点がもう一歩だったね」などと、対象者のよくなかった点を伝えて改善を促すフィードバックのことです。
ポジティブフィードバックと異なり、ネガティブフィードバックは聞き手にとって気分がよくなるものではありません。しかし、自分を客観視してさらなる成長につなげる上で、ネガティブフィードバックは必要不可欠です。聞き手にとって耳が痛いような内容も、ネガティブフィードバックとしてうまく伝えることで、社員の成長や問題解決につながります。
適切なフィードバックによる効果
適切なフィードバックを提供すれば、さまざまな効果が期待できます。具体的には、以下の4つの効果がもたらされるでしょう。
- 目標の達成に向けて軌道修正できる
- スキルアップや成長につながる
- 社員のモチベーションが向上する
- コミュニケーションが活性化する
フィードバックを適切に提供することで得られる効果について解説します。
目標の達成に向けて軌道修正できる
フィードバックを適切に提供すれば、目標の達成に向けて軌道修正することができます。
社員が目標達成に向けて努力していると、いつの間にか望ましい行動とはズレた方向へ進んでしまうことも少なくありません。こうした場合に上司から適切なフィードバックを提供すれば、行動のズレを修正し、目標に向けて正しく取り組めるようになります。的確なフィードバックによって目標達成までの無駄な時間を削減し、社員のポテンシャルを最大限に引き出すことができるのです。
スキルアップや成長につながる
スキルアップや成長につながることも、フィードバックを提供するメリットの一つです。
上司からの的確なフィードバックがあれば、社員は自分の強みや弱みを客観的な視点から把握できます。自分の特性を客観視することで、成長のための正しいアクションプランを立てられるようになり、スキルアップや成長スピードの向上につながるでしょう。また、フィードバックによって上司から仕事のコツや進め方を教えてもらうことで、部下は今までよりも効率的に仕事を進められるようになります。
社員のモチベーションが向上する
フィードバックを提供するメリットとして、社員のモチベーションの向上も挙げられます。
上司が部下に対して適切なフィードバックを提供できれば、部下は自分の実力に対してポジティブなイメージを持つことができます。また、ポジティブなフィードバックを継続的に受け取れば、成功体験を積むことができ、自信につながるでしょう。こうした成功体験は、仕事に対するモチベーションの向上に役立ちます。
また、上司から感謝やねぎらいの言葉をかけてもらえば、部下は「上司が自分のことをちゃんと見てくれているのだな」と感じることができます。フィードバックによって上司が自分のことを気にかけてくれていることがわかるため、モチベーションの向上につながるのです。
コミュニケーションが活性化する
コミュニケーションの活性化も、的確なフィードバックを提供するメリットの一つです。
フィードバックというと一般的には上司から部下に対するフィードバックが想像されがちですが、実際にはそれ以外のフィードバックも存在します。例えば同僚同士で相互にフィードバックを提供しあう風土が形成されれば、職場内でのコミュニケーションが活性化され、メンバー同士の関係性を強化できるでしょう。同時に、部下と上司の間でのフィードバックも、上下の関係を強化することに直結します。
仕事で必要なコミュニケーション能力や、それらを鍛える方法は以下のページで詳しく解説しています。
『仕事で必要なコミュニケーション能力と鍛える方法』
フィードバックの方法
フィードバックを提供する方法としては、以下の3種類が存在します。
- SBI型
- サンドイッチ型
- ペンドルトン型
いずれも一長一短あるため、これら3つの方法を場面に応じて使い分けられるようになるとベストです。ここからは、フィードバックを提供する方法について解説します。
SBI型
SBI型は、以下の3つについて順番にフィードバックを提供していく方法です。
- S(Situation)……状況(どのような状況で)
- B(Behavior)……行動((評価対象者の)どういった言動や行動が)
- I(Impact)……影響(周囲や評価者にどういった影響を及ぼしたのか)
Situation、Behavior、Impactの順番でフィードバックを提供していくため、これらの頭文字からSBI型と呼ばれています。SBI型は世界的に広く認知されている方法で、フィードバックに必要な要素をバランスよく伝えるのに適した手法です。
サンドイッチ型
サンドイッチ型は、ポジティブなフィードバックの間にネガティブなフィードバックを挟んで行うフィードバックの手法です。
具体例としては、「今回の仕事は概ねうまくいったね」「でも、〇〇の部分は改善が必要だね」「全体を通してうまくいっていたよ、次からも頑張ろう」といった形が挙げられます。サンドイッチ型のフィードバックでは、ネガティブな内容を2つのポジティブな内容で挟むため、必要以上に評価対象者に心理的な負担を与えないという長所があります。ポジティブな内容とネガティブな内容をどちらも伝えたい場合や、評価対象者のモチベーション低下を防ぎつつネガティブな内容を伝えたい場合に適した手法です。
ペンドルトン型
ペンドルトン型は、評価対象者が評価者とコミュニケーションを取りながら、自分自身で改善点を考えるフィードバックの方法です。ペンドルトン型でのフィードバックを行う際は、以下の順序でフィードバックを進めていきます。
- 何について話すのか(共通認識の形成)
- よかった点
- 改善点
- 今後どうするべきか(改善計画の策定)
- まとめ
評価者が一方的にフィードバックを与えるのではなく、部下の内省を元に今後のアクションプランを策定することがペンドルトン型の特徴です。部下の主体性を伸ばしたい場合や、今後のアクションプランを一緒に考えたい場合に有効な手法といえます。
適切なフィードバックを実施するポイント
適切なフィードバックを実施するためには、安心できる場を用意したり、フィードバックを提供する適切なタイミングを選んだりすることが重要です。また、フィードバックの内容をできる限り具体的にしたり、ティーチングとコーチングを使い分けたりすることもよいでしょう。
ここからは、適切なフィードバックを実施するためにおさえておきたいポイントを解説します。
安心できる場を用意する
フィードバックを提供する際には、部下が安心できる場を用意することが大切です。
例えばトラブル対応や業務過多などで、現場がパニックになっているタイミングは避けましょう。上司と部下双方が落ち着いて、ゆっくりと話せる時間を確保することが大切です。また、他人にフィードバックの内容が聞かれない、情報の漏れない場所を確保してください。
さらに、フィードバックを行う際には、上司が部下の斜めや横の位置に座ることがおすすめです。正面に座ってしまうと、部下へ威圧感を与えてしまいます。部下がもし緊張している場合は、本題に入る前に雑談などでリラックスしてからフィードバックに臨むとよいでしょう。
適切なタイミングでフィードバックを実施する
フィードバックを提供する際には、適切なタイミングでフィードバックを実施することが重要です。
例えば問題が生じた場合には、できるだけ早い段階でフィードバックを提供しましょう。問題が生じた直後や、パフォーマンスが記憶に新しい時点でフィードバックを提供することで、部下はフィードバックの内容を次につなげやすくなります。また、問題が大きくなる前にフィードバックを提供することでスムーズに軌道修正できるため、失敗によるモチベーション低下を防ぐことも可能です。
具体的なフィードバックを提供する
フィードバックを提供する際には、できるだけ内容を具体化して伝えるようにしましょう。
抽象的にフィードバックを行っても、部下は何についてフィードバックされているのかよくわかりません。また、自分のどの部分が指摘されているのかわかりづらく、次の成長へつながらない可能性もあります。
フィードバックの際には、フィードバックの対象となっている行動や結果などを明確化して、ピンポイントで指導するよう心がけることが大切です。5W1Hの観点も意識しながら、できるだけ具体的に伝えるよう意識してみてください。
ティーチングとコーチングを使い分ける
フィードバックを行う際には、ティーチングとコーチングを使い分けることも大切です。
ティーチングとは、上司がすでに持っている答えを部下へ直接伝える指導スタイルを指します。反対にコーチングとは、部下が持っている答えを上司が引き出す指導方法です。
フィードバックの際には、一方的に上司が指摘するだけでは効果的に部下の実力を伸ばせません。しかし、コーチングを重視しすぎるあまり、すべての内容について部下自身による気づきを促すことも難しいです。ティーチングとコーチングをバランスよく取り入れながら、内容に応じて両者を適切に使い分けるようにしましょう。
ティーチングとコーチングの違いや両者の使い分けは、以下のページでさらに詳しく解説しています。
『コーチングとティーチングの違いとは|使い分けや効果・メリットを紹介』
耳の痛いこともストレートに伝える
フィードバックを行う際には、耳の痛いこともストレートに伝えることが効果的です。
上司の中には、部下の心情に配慮するあまり、伝えるべき内容を伝えられない人がいます。しかし、ネガティブなフィードバックが必要な場面で変にフォローしてしまうと、かえって部下の成長を阻害することになりかねません。パーソルキャリアが運営する調査機関Job総研が、516人の社会人男女を対象に「2024年 人材育成の意識調査」を実施しました。調査の中で、上司からの理想のフィードバックについて聞いたところ、「ハッキリ言われたい」と答えた人が76.0%と過半数を占めました。調査の結果からわかるように、部下としては、成長のために耳の痛いことでもストレートに伝えてほしいと考えていることがわかります。そのため、部下にとって耳の痛い内容であっても、伝えるべき内容はしっかりと伝える意識が大切です。
出典:『2024年 人材育成の意識調査』を実施しました | Job総研
双方向のコミュニケーションを心がける
双方向のコミュニケーションを心がけることも、適切なフィードバックを提供する上で大切なポイントです。
フィードバックを提供する際に、一方的に上司だけが話し続けるのでは効果が上がりません。部下が「押し付けられている」と感じてしまい、反発を招く可能性もあります。
フィードバックの際には、フィードバックを受け取る側にも適宜意見を求めるようにしましょう。フィードバックを受ける側が自分の意見や視点を述べる機会を確保することで、両者の対話を促進し、より建設的なフィードバックを提供できるようになります。
普段からよく相手を観察し、コミュニケーションを取る
適切なフィードバックを提供するためには、普段からよく相手を観察し、コミュニケーションを取ることが大切です。
普段から部下の要素を細かく観察しておくことで、フィードバックで伝える内容に説得力が生まれます。日常の細かい言動を基にフィードバックできれば、部下はフィードバックに納得しやすくなるでしょう。
また、日頃から部下とコミュニケーションを取っておくことで、部下との間に信頼関係を構築することができます。部下と強固な信頼関係があれば、フィードバックの内容を受け入れてもらいやすくなり、部下の成長につながるのです。
フィードバック力を高める施策ならアルーにお任せください
フィードバック力を高める施策なら、アルーにお任せください。的確なフィードバックを行うためには、研修によって上司のフィードバック力を高めることが効果的です。アルーでは、フィードバック力を高めるのに役立つ研修を数多くご用意しています。
ここからは、フィードバック力を高めるのに役立つアルーの研修を3つ紹介します。上司のフィードバック力を高めたい方や、フィードバック力を高める具体的な施策について知りたい方はぜひ参考にしてください。
部下育成力研修
部下育成力研修は、管理職や若手リーダー層の社員の部下育成力を鍛える研修です。
管理職や若手リーダー層の中には、変化する若手社員の価値観に対応できず、部下育成に悩む人も少なくありません。アルーの部下育成力研修では、最新の若手社員の傾向を踏まえた部下との正しい接し方や、部下と接する際の心構えについて学ぶことができます。
フィードバックを提供する方法について学ぶ機会や、実際の場面を想定した演習も豊富に含まれているため、上司のフィードバック力を伸ばしたい方はぜひご検討ください。
アルーの部下育成力研修の詳細は、以下のページからご覧いただけます。
部下育成力研修
コーチング研修
コーチング研修は、管理職に必要とされるコーチングスキルを幅広く学べる研修です。
コーチングを実施する際には、部下の気づきを促すようなフィードバックや質問を的確に投げかける必要があります。そのためには、上司側のコミュニケーションスタイルの変化が欠かせません。
コーチング研修では、コーチングの際に必要となる心構えや基本的なノウハウを学ぶことが可能です。さまざまな状況を想定したシミュレーション形式での演習も用意されているため、現場ですぐに役立つコーチングスキルを習得することができます。
アルーのコーチング研修についてさらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
コーチング研修
▼サービス資料をメールで受け取る
ティーチング研修
ティーチング研修は、ティーチングの際に必要なスキルセットやマインドセットを学べる研修です。
ティーチングを行う際には、ティーチングの際に必要な心構えや方法を学んでもらう必要があります。アルーのティーチング研修では、ティーチングの準備をする際のポイントや、考えや方法を提示するためのスキル、部下へ実践させてできるようにするためのスキルを学ぶことが可能です。ティーチングの際の一連の流れはもちろん、部下がつまずいているポイントを的確に指摘するフィードバックスキルも演習形式で磨くことができます。
アルーが提供しているティーチング研修の詳細は、以下のページからご確認ください。
ティーチング研修
フィードバック力を高める研修事例
ここでは、フィードバック力を高められた研修事例を紹介します。
紹介する事例は、下記の3例です。
- 中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社 OJTトレーナー研修
- 帝人株式会社 リーダーシップ研修
- 株式会社ネットドリーマーズ 評価者研修
中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社 OJTトレーナー研修
中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社様では、新入社員を育成するOJTの風土が形成されておらず、新入社員を迎える環境として多くの課題がありました。
そこで、アルーでは新入社員に対してのOJTをサポートし、成長できる環境整備を行っています。本事例では、「新入社員が何度も聞きやすくなるようなOJTトレーナーの関わり方を目指す」ことを目標に、新入社員との関わり方についてOJTトレーナーに学んでもらいました。
研修後には、新入社員から手紙で「色々とよい影響を受けて知識も経験も増えました」とOJTトレーナーに感謝の声が伝えられるなど、新入社員とOJTトレーナー双方の成長につなげられました。
本事例の詳細は、以下のページからご覧いただけます。
中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社 OJTトレーナー研修 導入事例
帝人株式会社 リーダーシップ研修
帝人株式会社様では、人事制度の見直しにより設けられた「AS職」という新たな管理職の職掌で、期待役割に見合ったスキルや意識を開発・醸成する必要がありました。そこで、リーダーシップと指導育成力を身につけるための新任AS職研修を実施しています。
本研修プログラムでは、「リーダーシップ」、「指導育成力」の強化を中心に2回開催しました。部下との信頼関係を構築する方法や、部下指導に役立つフレームワークなどを体系的に学んでもらいました。研修のまとめとしてアクションプランを設定し、短い研修期間ながらも現場での実践を意識させたことがポイントです。
研修後には、これまで暗黙知とされていた指導スキルが共通言語化され、研修ゴールとして設定していた「期待行動・意識の発現率」も68%から95%へ向上しました。受講者同士で課題や悩みを共有できたことで、新しい発見や解決への糸口を見つけることができたという効果もありました。
本事例の詳細は、以下のページからご覧いただけます。
帝人株式会社 現場管理者としての リーダーシップを強化する 「新任AS職研修」
株式会社ネットドリーマーズ 評価者研修
株式会社ネットドリーマーズ様では、マネージャーによって評価基準が異なり、どうすれば評価されるのか、次の成長につながるのか見えづらいという課題がありました。
そこで、評価に関する知識を平準化し、共通認識を持つために評価者研修を実施しました。
本研修では、評価の方法やメンバーとの向き合い方、目標設定など、マネージャーとして必要な知識やマインドを幅広く獲得してもらっています。また、平等な形の評価を実現するため、評価の方法や平等性についてマネージャー全員で考え、独自の形を作っていることがポイントです。
研修後には、研修内容をチームで実践するなど、マネージャーとしての意識を持つ方が増えました。また、アルーの講師についても、「非常にロジカルな考え方を持っており、刺激になった」など、好評の声をいただきました。
本事例についてさらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
株式会社ネットドリーマーズ 評価者研修 導入事例
まとめ
フィードバックについて、定義や種類、フィードバックの方法などを解説しました。
的確なフィードバックは、部下が成長する上で必要不可欠です。しかし上司の中には、部下の成長につながる建設的なフィードバックが提供できなかったり、部下の心情に配慮するあまりネガティブなフィードバックをうまく提供できなかったりする人も少なくありません。フィードバックによる若手層の成長を促すためには、研修などを実施して、上司のフィードバックスキルを高めることが重要です。
ぜひこの記事をきっかけにフィードバックに対する理解を深め、管理職の部下育成力を引き上げていきましょう。