新入社員教育に効果的なOJT。内容や目的・研修(Off-jt)との違いを解説
OJTは、新入社員の教育に効果的な研修方法です。一方で、「OJTが機能していない」「OJTが上手くいかない」と感じている人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
今回は、OJTの効果を最大限に発揮させるための方法や、研修との違いについてご紹介します。
目次[非表示]
- 1.OJTとは
- 2.研修(OFF-JT)との違い
- 3.OJTに必要なスキル
- 4.OJTによる効果・目的とは
- 5.OJTを根付かせるための手順
- 6.OJTがうまくいかない理由とは
- 7.OJTを成功させるには
- 8.アルー株式会社のOJT支援
- 9.まとめ
OJTとは
OJTとは、「On the Job Training」の略で、実際の仕事を通じて上司やトレーナーが指導し、知識・スキルを身につけさせる教育方法のことです。
厚生労働省がまとめた能力開発基本調査によると、計画的なOJTを行っている企業は59.1%で、半数以上の企業がOJTを取り入れています。
実際の業務を通じて教育ができることから、実践につなげやすい知識やスキルを身につけることができるのがOJTのメリットです。
研修(OFF-JT)との違い
OJTは実務を通じて指導をする教育方法です。一方で、実務を一時的に離れて、研修やeラーニングなどで学ぶ方法をOFF-JTと言います。
OJTとOFF-JTの特徴
OJTの特徴は以下の通りです。
- 一人ひとりに応じてカスタマイズしやすい
- 現場で指導を受けるため学びをすぐに実践できる
- 業務の一環として上長・先輩社員が指導を行うため、インハウスで教育でき、コストが安い
一方、OFF-JTの特徴としては以下が挙げられます。
- 育成内容を標準化できるため、品質コントロールがしやすい
- 学習すべきポイントを研修に組み込めるため、普遍的・汎用的なスキルを得られる
- 外部ベンダーが講師を務めることが多いので、社内の人的リソースを確保する必要がない
OJTとOFF-JTは「組み合わせること」が重要
OFF-JTはOJTとあわせて行うと効果的です。OFF-JTでインプットした知識をOJTで使うことによって、知識の定着率が上がり、効率的に教育を進めることができます。
また、OJTトレーナーを研修で教育することもOJTを成功させるコツの一つです。OJTの質を高めることにも、トレーナ―社員の育成にも役立ちます。
OJTに必要なスキル
OJTトレーナーが身につけるべきスキルは以下の4つです。
- コーチング
- ティーチング
- フィードバック
- メンタリング
それぞれ1つずつ解説いたします。
コーチング
コーチングとは、対象者の自主性を促し、目標達成に向けてモチベーションを高めるコミュニケーション手法です。
馬車を意味する英語の「Coach」が語源となっていて、人を望む場所に送り届けるという意味が含まれています。
コーチングには、対象者を深く理解するために耳を傾けて話を聴く傾聴スキル、成果だけではなく、相手の変化や成長に気付き、言葉で伝えるスキル、対象者の考える力を促す質問スキルが必要とされます。
OJTトレーナーがコーチングスキルを持っていることによって、対象者の自主性をはぐくみ、長期的な人材育成が可能になるでしょう。
ティーチング
ティーチングとは、上司や先輩社員が知識やノウハウを伝える手法のことです。
ティーチングは指導者側が明確な答えを持っているという前提で行われることが多いです。
相手に答えを教えて指導するため、短時間で仕事のスキルを伝えられるメリットがあります。
対象者のスキルや経験が乏しい場合や緊急性の高い業務をしている場合は、特にティーチングが有効です。
フィードバック
フィードバックスキルもOJTにおいて重要です。
OJTではやってもらって終わりではなく、行った業務が成功だったのか失敗だったのかを判断し、次はどのようなことに注意していけばよいのかを伝えることが重要です。
プレッシャーを与えないように課題を指摘し、正しい方向へ導くフィードバックスキルをOJTトレーナーが持っておくことで、OJTを効率的に進めることができるでしょう。
メンタリング
OJTトレーナーは、コミュニケーションの基本をおさえておくことが大切です。相手の相談に乗り、悩みを聴き、精神面で支え、新入社員の成長を支援することもOJTトレーナーの役割の1つです。
新入社員が安心して相談できるような態度・姿勢・心構えを身につけておくとよいでしょう。
OJTによる効果・目的とは
OJTを行うことによって得られるメリットは、
- 実践的なスキルが身に付く
- 職場内の人間関係を築ける
- OJTトレーナーのスキルアップにもなる
- 新入社員の自立を支援できる
などが挙げられます。
1つずつ詳しく解説いたします。
実践的なスキルが身につく
実務を通してスキルを学ぶことができるため、実践的なスキルを身につけられることがOJTを行うメリットの1つです。
実際に職場で使っているツールや方法に慣れ、企業やチームに即した仕事の進め方やスキルをつけることができます。研修やマニュアルではわからない部分もすぐに聞くことができるため、スキルの定着も早く、想起に即戦力として働けるようになります。
職場内の人間関係を築ける
OJTは、新入社員とトレーナーの双方がコミュニケーションを取りながら業務を進めていく教育手法です。
また、トレーナーだけでなく他の社員もOJTに関わることにより、必然的に新入社員は上司や先輩と関わって業務にあたることになります。
その結果、職場内でのコミュニケーションが活発化し、新入社員が職場内での人間関係を築きやすくなる点もメリットの1つです。
新入社員を組織に馴染ませる取り組みとして、オンボーディングがあげられますが、OJTはオンボーディングの一部として取り組むことが可能です。仕事を覚えながら同じ組織の社員と良い関係性を築くことができるでしょう。
オンボーディングについて詳しくは『オンボーディングとは?人事担当者が知っておくべきプロセスや成功ポイント』の記事もご覧ください。
OJTトレーナーのスキルアップにもなる
新入社員を教育する経験を通して、業務の見直しができたり、マネジメント力を向上させることができるため、OJTはトレーナー側にとってもスキルアップにつながります。
OJTトレーナの中には教育や指導をすることが初めてだという人もいるでしょう。そういった社員に対し、後輩への指導のコツやコミュニケーションの方法などを身につけてもらう機会になります。スキルアップをOJTトレーナー任せにせず、OJTトレーナー研修を実施するなどしてサポートすることがおすすめです。
新入社員の自立を支援する
OJTは、新入社員に業務を任せっきりにすることではありません。かといって、つきっきりで業務を行うことでもありません。
まずはやって見せ、業務の説明を行い、業務を行ってもらい、それについて評価・指導をするというフローで進めることが一般的です。
業務を行ってもらう時には、過度に業務に干渉せず、一人でさせてみることが大切です。一人では不安に思うかもしれませんが、そうすることで新入社員が自発的に考え、動くことの訓練になります。その際は、失敗しても大丈夫という安心感を与えたり、わからないことをすぐ聞ける環境を整えたりすることで、新入社員のストレスや不安を和らげるよう、注意してください。
OJTを根付かせるための手順
OJTを「とりあえずやってもらえばいい」「新人だからここまでで充分か」と、明確なビジョンなく続けていると、新入社員の大きな成長なくOJT期間が終了してしまうことがあります。
これでは、上で述べたようなOJTの効果を十分に得られません。むしろ、「OJTに時間をかけたのに新入社員が成長しなかった。時間の無駄ではないか」といったOJTトレーナーや上司の不満が生まれ、OJT推進を難しくする要因になりかねません。OJTを成功させ、社内に根付かせるためには正しい手順でOJTに取り掛かる必要があります。
ここでは、OJTを根付かせるための手順についてご紹介いたします。
最終的な目標設定を明確にする
OJTが失敗する要因の1つに、目標設定ができていないことが挙げられます。
目標設定ができていないと、新入社員がいつまでに何ができていれば良いかがあいまいになり、スキルの差が出てしまったり、モチベーションの維持が難しくなってしまうでしょう。
OJTの最終的な目標を決めることで、OJTトレーナーにとっても新入社員をどの水準まで育てればよいか、そのためにはどのような教育が必要かを考えやすくなります。目標を明らかにしておくことで、計画的な指導が可能になります。
OJTのマニュアルを作成する
OJTの目標設定をしたら、OJTを行うためのマニュアルを作成しましょう。
OJTマニュアルは、学習者用とトレーナー用の2つを用意しておくと良いです。
学習者用マニュアルであれば、「企業理念を覚える」「ビジネスマナーを覚える」など、1つずつ基本項目を設定していき、そこから枝分かれするように基本項目に必要な情報を書き出していきます。
トレーナー用のマニュアルには、OJTのゴールや指導の意義を明確に示し、具体的な行動もまとめておくと良いでしょう。
学習者用マニュアルは未経験者でも見ればすぐに分かるように記載をすると良いでしょう。ここでも、目標や具体的にどう行動すれば良いかをまとめましょう。
OJTトレーナーの選定
目標を決定し、マニュアルを作成したら、OJTトレーナーを選定しましょう。
OJTトレーナーは、担当業務を卒なくこなすことができ、加えてコミュニケーション能力があり、説明や褒め方が上手な社員が向いています。
OJTトレーナーの経験やスキルが低い社員が多い場合、OJTトレーナー研修を行い、トレーナー人材の育成をしましょう。
研修などでOJTトレーナーとして働くことのメリットや、OJTを行う目的を知っておくとOJTを効率的に行えます。
▼アルーのOJTトレーナー研修について詳しくはこちらのページをご覧ください。
先述したコーチングスキルやティーチング・フィードバックスキルも身につけておくことで、質の高いOJTを行えるようになるでしょう。
▼アルーのコーチング研修・ティーチング研修はこちらから詳しくご覧いただけます。
育成対象者の現状スキルを把握・共有
OJTを始めた後は、育成対象者の現状のスキルを把握・共有する必要があります。
「どの業務ができるのか」「どの業務が経験が少なくて教える必要があるのか」などを共有しておくことによって、OJTトレーナーが不在の場合や他の社員と業務を行う際に混乱が起こりません。
定期的に、育成対象者のスキルを把握し共有することで、教えられていない作業がないか確認し、効率的に進めることが可能です。
また、OJTを行っていてもなかなか身についていないスキルがある場合には、教育方法を変えてみたり、OJTトレーナーへ指導方法の助言を行なったりしましょう。
OJTがうまくいかない理由とは
OJTは半数以上の企業が採用している教育方法ですが、OJTが上手くいかないと感じている人事担当の方も多いのではないでしょうか。
ここでは、OJTを実施する上でよく起こる課題と、その解決方法をご紹介します。
トレーナーが多忙で、OJTに十分な時間が取れない
OJTトレーナーが多忙な場合、OJTに充分な時間が取れず、新入社員が放置されてしまうことが多々あります。
このような場合は、人事担当者や上司が現場の状況を判断し、OJTトレーナーを一時的に変えたり、現場の仕事量の見直しを行なったりする必要があります。
新入社員が放置されていると感じてしまうと、モチベーションの低下につながり、最悪の場合退職に繋がってしまう危険性もあります。
新入社員が放置されていないかどうかは、企業全体で把握しておくべき事項です。
特定の社員に負担が偏っている
OJTトレーナーを選定する際に一人で何人もの新入社員を見なければならず、業務が滞ってしまうことやトレーナーに負担がかかってしまうこともよくある課題です。
特定の社員に負担が偏らないよう、現場の仕事量の見直しや、OJTトレーナーをフォローする社員を決めておくなど、負担を軽減させるような対策が必要になるでしょう。
計画的・体系的なOJTでなく、場当たり的な指導にとどまってしまう
OJTのデメリットとして、実務中心で教育を行うため、業務の全体像を把握したり、体系的な教育に向いていないというものがあります。
計画的にOJTを進めていかないと、場当たり的な指導にとどまってしまう危険性があります。
そのため、OJTを行う前や実施中に、OFF-JTなどで企業全体の業務内容を知ってもらう機会を作ったり、共通の研修プログラムや資料を準備しておく対策が必要です。
また、上司やトレーナーが事前にOJT計画を立てておき、場当たり的な指導にならないようにすることも重要です。
誰から学ぶかによって新人の成長に差が出てしまう
OJTは、OJTトレーナーの質によって新入社員の成長に差が出やすいことがデメリットです。
そのため、均一の質で指導ができるようにトレーナーを育成することが重要になります。
研修やeラーニングなどでOJTトレーナーの育成を行ったり、OJTの成果をトレーナーの上司や人事担当者からフィードバックを行う機会を作ったりすることによって、トレーナーの成長を促すことができます。
OJTを成功させるには
上記のような課題をふまえて、OJTを成功させるには、5つのポイントがあります。
- トレーナー選出は慎重に
- トレーナーを教育する時間を作る
- OJTのための時間を確保する
- 第三者によるチェックがあるとなお良い
- 効果的なOJTをするなら企業がサポートを
1つずつ詳しく解説いたします。
トレーナー選出は慎重に
OJTを成功させるには、OJTトレーナーの選出も慎重に行わなければなりません。
プレーヤーとして活躍しているかどうかや、社歴の長さだけで選出した場合、OJTトレーナーとしての能力がなかったり、OJTの目的を理解していないために放置してしまったりといった危険性があります。
OJTトレーナーを選出する場合には、「コミュニケーション能力があるか」「褒め方が上手か」「主体性をもって行動できるか」などの基準を持って慎重に選びましょう。
OJTトレーナーの選び方について詳しくは『OJTトレーナーに向いていない人の特徴4つ。失敗しない選出方法と支援策』の記事もご覧ください。
トレーナーを教育する時間を作る
OJTトレーナーに指導のために必要なスキルを身につけてもらうこともOJTを成功させるポイントです。トレーナーがOJTの目的や育成方法について理解していない場合、教育内容にムラができたり、新入社員が放置されたりする可能性があります。
そのため、OJTを行う前にトレーナーを教育する時間を作り、トレーナーの能力の強化を行うと良いでしょう。
OJTのための時間を確保する
トレーナー自身の業務が忙しく、OJTの時間が取れないと、新人社員が放置されてしまい、モチベーションの低下やOJTの効果を充分に得られない危険性があります。
そのため、OJTトレーナーが効率的にOJTを行えるよう、トレーナーの業務量を上司や人事担当者が調整する必要があるでしょう。
OJT期間中は定期的にトレーナーにヒアリングし、育成目標に対して今どの程度進捗しているか、困っていることはないかといった点を確認することも大切です。
第三者によるチェックがあるとなお良い
OJTをトレーナーだけに任せてしまうと、新入社員の成長の度合いを人事担当者やトレーナー以外の社員が把握できなくなりがちです。
そのため、定期的にトレーナー以外の第三者によるチェックを行うとなお良いです。
OJTの成果を確認する仕組みがあれば、OJTの指導を受ける新人社員だけでなく、トレーナーの成長も促すことができるでしょう。
効果的なOJTをするなら企業がサポートを
OJTは、トレーナーだけに行ってもらうものではなく、企業全体で取り組むべき施策です。
OJTトレーナーに負担が集中しないよう業務を調整したり、第三者視点でOJTの成果を評価するなど、サポートを行いましょう。
また、OJTトレーナーへの研修を行うことも、企業ができるサポートの1つです。
アルー株式会社のOJT支援
アルーでは、OJTトレーナー研修を行っています。
アルーは、103社・約2.3万人の新入社員研修を実施しています。(2022年実績※当社調べ)多くの新入社員研修を実施する中で、新入社員の強みや課題を毎年分析しています。そのため、OJTトレーナーに対しても近年の新入社員の傾向をおさえた指導方法をお伝えすることができます。
新入社員の得意・不得意を考慮した上でかかわり方を選択する手法や、ティーチング・フィードバック・コーチングの方法を理解し、使い分けるコツを学ぶことができますので、OJTトレーナーの育成にお悩みの方は、ぜひご検討ください。
まとめ
OJTは、必要な体制をきちんと構築しておくことによって、業務に必要な知識やスキルを新入社員に効率的に覚えてもらうことができます。
OJTを成功させるための大きな要素の一つがOJTトレーナーです。OJTトレーナーは、社歴やプレイヤーとしての活躍だけで決めてしまうと、OJTの効果を十分に得られない可能性があります。適切なOJTトレーナーを選出し、OJTトレーナーの指導スキルを育てることが必要です。
アルーでは、新入社員の強みや課題などの傾向をおさえて指導ができるようになれるOJTトレーナー研修を行っています。
人材育成をご検討の方は、ぜひ一度ご相談ください。
アルーのOJTトレーナー研修は、以下のページで紹介しておりますので、あわせてご確認ください。