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次世代リーダー人材の選抜育成を成功させる方法を事例つきで紹介

「次世代リーダー研修を毎年実施しているのに、現場に戻ると行動が変わらない」「次世代経営層の候補が育っていない」——こうした声を、人材育成担当者から聞く機会が増えています。

次世代リーダー育成は、管理職育成の延長線上にあるものではありません。管理職育成が「方向性が定まっている業務をいかに効果的・効率的に回すか」を扱うのに対し、次世代リーダー育成は「正解のない状況で、自らの軸で覚悟をもって決断できる人材」を育てる選抜育成です。本記事では、次世代リーダー育成の本質を「視座の高まり」と「自らの軸での決断」の両輪で捉え直し、育成の手順を具体的に解説します。

この記事でわかること

  • 次世代リーダー育成と管理職育成の本質的な違い
  • 「判断」と「決断」の違いと、リーダーに求められる覚悟
  • 視座の高まり×決断経験で設計する選抜育成プロセス
  • 視座・決断・適応課題のレベル別行動基準
  • アクションラーニングや修羅場経験を軸にした育成設計
  • 技術課題と適応課題の両面で成果を見える化するKPI

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この記事の監修者

落合 文四郎

アルー株式会社
代表取締役社長
落合文四郎

1977年、大阪府生まれ。 2001年、東京大学大学院理学系研究科修了後、株式会社ボストン コンサルティング グループ入社。 2003年10月、株式会社エデュ・ファクトリーを設立し、代表取締役社長に就任。 2006年4月、アルー株式会社に社名変更。京都大学博士(経営科学)。

次世代リーダー育成とは——管理職育成と何が本質的に違うのか

次世代リーダー育成の定義と目的

次世代リーダー育成とは、正解のない状況で自らの軸をもって決断し、組織の方向性を示せる人材を、選抜のうえ計画的に育てる取り組みを指します。ポスト充足や階層別研修の延長ではなく、「事業環境が大きく揺らぐ局面で、覚悟をもって意思を決められる経営人材」を継続的に輩出するための仕組みづくりです。

なぜ管理職育成と分けて考える必要があるかというと、両者に求められる能力の性質がまったく異なるためです。管理職育成は「方向性が定まっている中で、目標を設定し、効果的・効率的な手法で達成する力」を伸ばす取り組みです。一方、次世代リーダー育成は、答えがない問いに対して、自らの内面と向き合いながら覚悟を決める力を育てる取り組みです。

具体例として、ある中堅企業では「新任管理職研修を2日間実施して終わり」という形式でリーダー育成を済ませていました。結果として、業務管理スキルは身についても、事業環境が変わったときに自ら方向性を示せる人材は育ちませんでした。これはリーダー育成と管理職育成を混同していた典型例です。次世代リーダー育成は別の設計思想で取り組む必要があります。

「判断」と「決断」の違い

次世代リーダー育成を理解するうえで、最も重要な区別が「判断」と「決断」の違いです。両者を混同したまま研修を設計すると、次世代リーダーは育ちません。

観点

判断

決断

前提

正解または最適解が存在する

正解がない、または分からない

必要な力

情報収集力、論理的思考、分析力

視座の高さ、自らの軸、覚悟

主な対象

技術的課題(技術的に解ける問題)

適応課題(内面の変容を伴う問題)

求められる場面

日常業務、計画立案、PDCA

事業転換、撤退判断、組織変革

管理職/

リーダー

管理職の主領域

リーダーの主領域

管理職育成では主に「判断」する力を磨きます。情報を集め、論理的に分析し、最適解を選ぶことが管理職には求められるからです。これは重要な力ですが、判断の鍛錬だけでは正解のない問いに直面したときに止まってしまいます。

リーダーに求められるのは「決断」です。情報を集めても正解が見えない状況で、自分は何を大事にするのか、どのような方向性を示すのか、その結果を引き受ける覚悟があるか——これらを自分の内面や周囲と対話しながら決める力です。研修の知識だけでは身につかず、修羅場経験と内省の往復によってしか育ちません。

視座の高まりと適応課題

次世代リーダー育成のもう一つの軸が「視座を高めること」です。視座は何を視野に入れて物事を考えるかによって変わってきます。現場視座、部門視座、全社視座、社会視座と段階的に高まり、それぞれの位置で見える景色も、向き合うべき問いも変わります。
視座が上がる過程で必ず直面するのが、適応課題です。適応課題とは、知識やスキルなどのテクニカルな解決策では対処できず、本人の信念やアイデンティティの変容を求められる課題を指します。たとえば「プレイヤーとしての成功体験を手放す」「自部門の利益と全社最適のジレンマを引き受ける」「失敗の責任を一身に負う」といった課題は、いずれも知識やスキルだけでは対応できず、内面の変容が必要です。
適応課題について詳しくは以下の記事をご参照ください。

🔗関連記事:適応課題と技術的課題の例を紹介。研修で適応課題にアプローチする方法
次世代リーダー育成が難しいのは、この適応課題への向き合いを避けて、テクニカルな知識・スキル研修で済ませようとする傾向が強いためです。視座を高め、適応課題に向き合い、そのうえで自らの軸で決断する——この3点を育てるのがリーダー育成の本質です。

なぜリーダーが育たないのか【失敗4パターン】

リーダーが育たない現場には、4つの典型的なパターンがあります。施策を増やす前に、自社がどのパターンに陥っているかを特定することが、合わない施策に予算を投じる事態を防ぎます。

パターン

詰まりの本質

兆候

主な打ち手

①管理職育成

との混同

リーダー育成を新任管理職研修などで済ませている

知識習得型研修ばかり、決断経験の設計がない

視座×決断軸での選抜育成を別立てで設計

② 組織文化

との不一致

トップダウンが強くリーダーが育つ土壌がない

候補者が萎縮、自分の軸での発言が出ない

経営陣の関わり方の見直し、心理的安全性

③ 場当たり的対応

役員昇格直前に慌てて育成を始める

育成計画が単発、長期視点なし

5〜10年のロードマップ設計、早期着手

④ 知識・スキル面への傾倒

視座の高まりや決断軸を扱わない

適応課題が育成テーマに入っていない

修羅場経験・内省・対話の組み込み

自社の失敗パターンを省みる際は、人材データの確認と経営層や候補者へのヒアリングの両方を行ってください。具体的には、過去の研修プログラム内容、研修参加者のその後の登用状況、現役員の育成経路、候補者が「決断を求められた経験」をどれだけ持っているかを確認します。

① 管理職育成との混同

最も多い失敗パターンが、リーダー育成を管理職育成で代替してしまうケースです。具体例として、「新任管理職研修を2日間実施して終わり」というパターンがこれにあたります。

この状態では、業務管理スキルは身につきますが、視座は上がらず、決断する力も育ちません。「リーダー育成のつもりで実施した研修が、実態としては管理職育成だった」というズレが、組織全体の経営人材不足を生みます。

対策は、次世代リーダー育成と管理職育成を別立てで設計することです。管理職育成は階層別研修として整備しつつ、リーダー育成は選抜型の長期プログラムとして、視座を高め決断する力を育てる枠組みで組みます。

② 組織文化との不一致

現経営陣からのトップダウンが強い組織では、リーダーが育つ土壌そのものが整っていないケースがあります。候補者が経営陣の顔色を伺い、自分の軸での発言や決断を控えるため、視座が上がっても表に出ない構造が生じます。

兆候としては、会議で口を開かない、現場で自分の判断を主張しない、経営陣の発言を待ってから動く、といった姿が挙げられます。この状態で「リーダーらしく振る舞え」と促しても、本人は萎縮するだけです。

対策は、経営陣自身の関わり方を見直すことから始まります。具体的には、候補者の意見に対して「反論する前にまず受け止める」関わり、失敗を許容する場の提供、経営陣と候補者の対話セッションの設計などです。組織文化への手当てなしに、研修だけで個人を変えようとしても限界があります。

③ 場当たり的対応

次世代リーダー育成には本来5〜10年単位の時間がかかります。しかし、役員になって初めて「後継者がいない」と気づき、慌てて育成を始める——という場当たり的なパターンが、多くの組織で繰り返されています。

この状態では、候補者が視座を高め、複数の決断経験を積む時間が足りず、付け焼き刃の研修で済ませることになります。結果として、ポスト充足はできても、覚悟をもって決断できる人材は育ちません。

対策は、5〜10年のロードマップを描き、若手の段階から「視座を一段上げる経験」と「小さな決断を積む機会」を計画的に与えることです。早期着手こそが、次世代リーダー育成の最大の打ち手です。

④ 知識・スキル面への傾倒

視座の高まりや決断する力といった適応課題を無視し、リーダーシップ理論や経営フレームワーク、財務知識といったテクニカルな知識・スキルだけを詰め込むパターンも頻発しています。また、アクションラーニングにおいて経営課題を提言するような取り組みも多いですが、候補者側も経営陣側も経営課題のアウトプットに対する評価に終始してしまい、肝心のリーダーとしての視座の高さや決断する力の深まりに意識が向かないパターンもあります。

この状態が続くと、候補者は「知識は豊富だが、いざというときに自分の軸で決められない」状態に育ちます。内面の変容を伴う適応課題に向き合った経験がないため、正解のない局面で立ち止まってしまうのです。

対策は、知識やスキルのインプットと並行して、修羅場経験(答えのないテーマでの意思決定)、内省支援(自分の軸を言語化するコーチング)、対話(他者との価値観のぶつかり合い)を組み込むことです。

次世代リーダーの選抜育成プロセス

視座の高まり3段階

次世代リーダー育成の中核は、視座を段階的に引き上げるプロセス設計です。階層別マトリクスのように役職と紐づけるのではなく、「いま本人が立っている視座の位置」と「次に引き上げたい視座」をペアで捉えます。

視座の段階

何が見えるか

向き合う問い

主な育成経験

部門視座

自部門の業績、自部署のメンバー

自部門をどう機能させるか

部門横断プロジェクト、他部門との対話

全社視座

事業ポートフォリオ、組織全体の最適

全社の中で自部門は何を担うべきか

経営層との対話、新規事業・構造改革テーマ

社会視座

業界構造、社会の変化、長期トレンド

自社は社会に何を提供すべきか

社外との越境経験、長期ビジョン策定

視座が上がるとき、本人は必ず「これまでの自分の前提が通用しない」感覚に直面します。これが適応課題です。視座の引き上げは知識のインプットだけでは起きず、必ず修羅場経験と内省の往復が必要になります。

決断経験の積み上げ

リーダー育成のもう一つの軸が、決断経験の計画的な積み上げです。判断(正解がある問い)ではなく、決断(正解がない問いに覚悟をもって答えを出す)経験を段階的に与えていきます。

決断経験を積むためには、3つの要素を意図的に組み込みます。第1に、答えのないテーマを考えることです。複数の選択肢にいずれもメリットとデメリットがあり、論理だけでは決まらない問いを取り上げましょう。第2に、結果の責任を本人が引き受ける構造を取り入れます。他者に判断を委ねられない設計にすることが重要です。第3に、決断後の振り返りの場を用意しましょう。なぜその選択をしたか、自分の何が決め手になったかを言語化する場です。

具体的な経験設計としては、ストレッチアサインメント(新規事業立ち上げ、不採算事業の方向性決め、組織変革テーマなど)、アクションラーニング(実テーマに小グループで取り組み、提案ではなく実行責任を負うこと)、社外越境(他社・他業界での意思決定経験)などが有効です。

適応課題への向き合い

視座を高め、決断経験を積む過程で、候補者は必ず適応課題に直面します。これを避けずに向き合えるよう支援することが、リーダー育成の核心です。

適応課題への向き合いを支援する仕掛けとして、以下の3つを取り入れてみましょう

  • 内省:葛藤や悩みを言語化して、振り返るプロセス
  • 1on1コーチング:本人の信念や前提、恐れを言語化する場
  • ピアコミュニティ:同じ立場の候補者同士で価値観をぶつけ合い、チャレンジを応援しあう場

「結局、リーダーは『育てる』ものなのか、それとも『見つける(選抜する)』ものなのか?」という疑問を持つ方もいるはずです。リーダー育成においては、両立する仕組みが必須です。視座を高める意欲と適応課題に向き合う覚悟を持てる候補者を選び、そのうえで時間をかけて育てることが求められます。また、育成の仕組みの中で視座の高まりや適応課題への対処の様子を見て、さらに選抜を進めていきましょう。選抜か育成かのどちらかだけになってしまうと、研修コストばかりかかって成果が出なかったり、選抜しようとしても候補者が枯渇してしまったりします。

次世代リーダー要件定義——視座・決断・適応課題のレベル別基準

要件定義の3軸

リーダー要件定義の目的は、「視座の高さ」「決断の覚悟」「適応課題への向き合い」の3軸について共通のレベル基準を策定し社内で共有することにあります。選抜や育成、評価の際に軸がぶれなくなります。要件定義の際はマネジメント業務のスキル項目を羅列するのではなく、内面の変容を観察できる基準で組み立てます。

要件軸

定義

観察可能な行動例

視座の高さ

どの視座の高さと視野の広さで物事を考えるか

自部門の議論で全社最適を持ち出せる/長期と短期のトレードオフを構造化して語れる

決断の覚悟

正解のない問いに自分の軸で選び、結果を引き受ける力

反対意見の中でも自分の選択を言語化できる/失敗時に他責にしない

適応課題への

向き合い

自分の前提・信念の変容を受け入れる力

自分の弱みや過去の失敗を率直に語れる/他者からの指摘を受け止め内省できる

役職によって細かく分解するのではなく、3軸それぞれで「いまどの段階にいるか」を言語化しましょう。

LV1/LV3/LV5の到達基準

3軸それぞれについて、レベル別の到達基準を観察可能な行動で記述します。

▼ 軸: 視座の高さ

レベル

行動基準

LV1(基礎)

自部門の課題を、他部門や全社への影響と関連づけて語れる

LV3(実践)

自部門の意思決定において、全社最適の視点で異論を提示できる

LV5(影響)

業界・社会の長期トレンドを踏まえ、自社の存在意義を再定義する議論を主導できる

▼ 軸: 決断の覚悟

レベル

行動基準

LV1(基礎)

正解のない問いに対して、自分の選択と理由を言語化できる

LV3(実践)

反対意見や不確実性の中でも、自分の軸で決断し、結果に責任を持てる

LV5(影響)

撤退や転換など痛みを伴う決断を、組織を巻き込みながら実行できる

▼ 軸: 適応課題への向き合い

レベル

行動基準

LV1(基礎)

他者からのフィードバックを受け止め、自分の前提を問い直せる

LV3(実践)

自分の信念やこれまでの成功体験を手放す経験を経て、新しい姿勢を獲得している

LV5(影響)

他者の適応課題への向き合いを伴走でき、組織全体の変容を促せる

選抜と育成への接続

要件定義は、選抜と育成の両方で使います。選抜では、推薦時のチェックや候補者本人との対話を通じて、3軸のいまの段階を把握します。育成では、「次のレベルに引き上げるには、どんな経験と内省が必要か」を本人と上司・育成担当で共有し、ストレッチアサインメントや1on1のテーマに落とし込みます。

マネジメント業務の評価とは別立てで運用することがポイントです。日常のマネジメント業績評価と、リーダーとしての視座・決断・適応課題の評価を混ぜると、どちらも中途半端になります。

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リーダーシップ育成の具体的な方法——アクションラーニングと修羅場経験の設計

4つの育成手法の使い分け

リーダー育成の主要な手法は、研修・アクションラーニング・1on1コーチング・ストレッチアサインメントの4つです。特に1on1コーチングとストレッチアサインメントを通して「修羅場経験」と「内省支援」の比重を高めることが成功のコツです。

手法

得意領域

リーダー育成での役割

集合研修

知識やフレームのインプット、視座を上げるための共通言語形成

視座の引き上げの起点、同期候補者コミュニティ形成

アクション

ラーニング

実テーマでの意思決定経験、決断と振り返りの往復

決断経験の中心的な場

1on1

コーチング

適応課題への内省、自分の軸の言語化

内面の変容の伴走

ストレッチ

アサインメント

修羅場経験、覚悟を試される場

視座と決断の最終仕上げ

研修だけでリーダーが育つ前提を捨てることが設計の出発点になります。研修で視座を上げるための土台を得て、アクションラーニングと現場で”決断する”経験を積み、1on1で内面を変容させる——この往復運動がリーダー育成の本筋です。

組み合わせ設計の考え方

選抜型リーダー育成プログラムの典型的な組み合わせを示します。2〜3年単位の長期プログラムとして設計するのが基本形です。

初年度の前半:視座を上げる起点づくり

  • 集合研修:経営理論・業界構造・意思決定の哲学などのインプット、3〜5日間
  • 同期コミュニティの形成:候補者同士の価値観ぶつけ合い
  • 経営陣との対話セッション

初年度の後半〜2年目:決断経験の積み上げ

  • アクションラーニング:全社課題に小グループで取り組み、提案ではなく実行責任を負う
  • 1on1コーチング:月1回、適応課題への内省支援
  • 中間振り返りセッション:同期での経験共有

2〜3年目:修羅場経験と覚悟の仕上げ

  • ストレッチアサインメント:新規事業、不採算事業、海外駐在、構造改革テーマなど
  • 経営陣メンタリング:自身の決断について深い対話
  • 修了時の経営提言とその後の登用検討

アクションラーニングについて詳しくは以下の記事をご参照ください。

🔗関連記事:アクションラーニングとは|効果や進め方・注意点について

『リーダーになりたくない層』の本質——覚悟の問題への向き合い方

「リーダーになりたくない」という声の背後にあるのは、表層的な意欲不足ではなく、「正解のない決断を引き受ける覚悟」への躊躇です。管理職を避ける理由(処遇・キャリア・ワークライフバランス)と、リーダーを避ける理由(覚悟・責任・孤独)は本質的に異なります。

「研修をやってもリーダーが育たないのは、施策の問題ではなく『なりたくない人を無理に選んでいる』構造の問題ではないか?」という指摘は本質を突いています。リーダー育成において、覚悟を持つ意思のない候補者に対して知識やスキルを習得する研修をしても、決断を引き受けるリーダーは育ちません。

一方で、リーダーとしての難しい決断を引き受ける覚悟を持つ人だけを選ぼうとすると、候補者がなかなか集まらないという壁にぶつかります。こうした覚悟は、最初から備わっているものとは限りません。むしろ、数々の葛藤や修羅場をくぐり抜けるなかで、少しずつ育っていくものです。当初はリーダーとしての覚悟が定まっていなかった人が、経験を重ねるうちにリーダーとしての意識を芽生えさせていく——そんな成長のプロセスを内に持つ組織こそ、本当の意味で強くなっていきます。

躊躇の本質

背景

関わり方

決断責任への

恐れ

正解のない選択で失敗したくない

小さな決断経験から積ませ、失敗を許容する場を設ける

孤独への不安

経営の意思決定は最終的に一人で背負う

同期コミュニティ、メンタリングで伴走者を用意

自分の軸への

確信不足

何を大事にしたいか自分でも分からない

1on1コーチングで価値観の言語化を支援

適応課題への

抵抗

これまでの自分の在り方を変えたくない

安全な内省の場、ロールモデルとの対話

覚悟を引き出す関わり

覚悟は研修で教えられるものではなく、本人の内面から立ち上がるものです。組織ができるのは、覚悟が立ち上がる条件を整えることだけです。

具体的な関わりとしては、「自分が大事にしたいことは何か」を言語化する1on1の継続、覚悟をもって決断した先達(現役員や歴代経営者)との対話、小さな決断と振り返りの繰り返し、失敗を組織として受け止める場の設計などです。これらを年単位で積み上げる中で、「自分はこの組織で何を残したいか」という軸が本人の中で形成され、覚悟へと結びついていきます。

成果の見える化——技術課題と適応課題の両面測定

KPI設計の考え方

リーダー育成の成果は、管理職育成のように「研修満足度・受講数・部門業績」だけでは測れません。視座の高まり、決断軸の形成、適応課題への向き合いといった内面の変容を、観察可能な行動として捉える設計が必要です。

測定領域

指標例

測定方法

技術的課題

(知識・スキル)

研修理解度、ケース演習評価

研修中〜直後

視座の高まり

議論での発言内容、全社視点での提言

360度評価、経営陣観察

決断軸の形成

正解のない問いへの選択と言語化

アクションラーニング成果、1on1記録

適応課題への

向き合い

自分の前提を問い直す行動、内省の深さ

コーチング記録、本人インタビュー

最終成果

登用率、後継候補プールの厚み、経営テーマ提言

1〜3年後の追跡

技術課題側のKPIだけで成果を語ると、リーダー育成の本質が抜け落ちます。経営層への報告には、観察された具体的なエピソード(候補者がどんな決断をし、どんな内面の変容を見せたか)を定性で示すことが、定量数字以上に説得力を持ちます。

内面の変容をどう観察するか

適応課題への向き合いや決断軸の形成は、アンケートや一時点の評価では捉えにくい性質を持ちます。観察のポイントは、長期にわたる行動の変化と本人の語りの変化の両面です。
具体的な観察方法としては、アクションラーニングでの意思決定プロセスの記録、1on1コーチングでの本人の語りの変化(自分の軸についての言語化が深まっているか)、経営陣・上司・同僚・部下からの360度フィードバック、修了時の経営提言での視座の高さなどがあります。
研修効果測定について詳しくは以下の記事をご参照ください。

🔗関連記事:研修効果測定のやり方とは?4段階評価モデルや具体的な指標を解説
これらを定性的なエピソードと組み合わせて経営報告にまとめると、リーダー育成の成果が経営に伝わります。

次世代リーダー育成の取り組み事例

弊社が支援した製造業A社では、現経営陣の後を担う次世代経営層候補が育っておらず、次世代の経営承継に強い危機感を持っていました。

課題

過去のリーダー育成施策は、新任管理職研修や階層別研修にとどまり、視座を上げる経験や正解のない問いへの決断経験を計画的に与える設計が存在しませんでした。さらに、現経営陣のトップダウンが強く、候補者が自分の意見を述べる土壌そのものが整っていない状態でした。

実施した施策

取締役クラスから約10名の次世代経営層候補を選び、3年間のプログラムを構築しました。1年目は経営理論のインプットと、経営陣との対話セッションを通じた「現経営陣との価値観のぶつかり合い」を意図的に組み込みました。2年目はアクションラーニングとして全社の戦略課題(既存事業の構造転換、新規事業の方向性決め)に小グループで取り組み、提案ではなく実行責任を負う構造としました。3年目は個別のストレッチアサインメント(不採算事業の方向性決め、海外子会社の経営代行など)と、月1回の経営陣メンタリングを組み合わせました。並行して、月1回の1on1コーチングで「自分は何を大事にしたいか」「どんな経営者になりたいか」を言語化する内省支援を続けました。

成果

プログラム終了時点で、候補者の半数以上が経営陣との議論において自分の軸で異論を提示できるレベルに到達しました。経営陣からの観察評価では、「視座が変わった」「失敗を恐れず決断する姿が見えるようになった」といった変容が報告されています。何より、「正解のない問いに向き合った経験」を共有するプログラム参加者コミュニティが形成され、候補者同士が互いに適応課題と向き合う伴走者になっていきました。

設計のポイント

成功要因は、知識・スキルのインプットを最小限にとどめ、「決断経験」と「内省支援」に時間と予算を集中投下したことです。経営陣の関わり方も同時に見直し、候補者が自分の軸で発言できる場を意図的に作ったことが、組織文化との不一致という構造課題を解いていきました。

まとめ——自社の次世代リーダー育成を再設計するための3つのステップ

次世代リーダー育成は管理職マネジメント育成の延長線上にあるものではありません。自社の育成を再設計する手順は、以下の3ステップに整理できます。

第1に、次世代リーダー育成と管理職育成を分けて捉え直します。管理職育成は階層別研修として整備しつつ、リーダー育成は「視座×決断軸」を育てる選抜育成として別立てで設計する前提に立ちます。

第2に、自社が4つの失敗パターン(管理職育成との混同/組織文化との不一致/場当たり的対応/知識・スキル傾倒)のうちどこに当てはまるかを確認し、組織文化や経営陣の関わりも含めて育成プログラムを見直します。リーダーは個人の能力開発だけで育つものではなく、組織の土壌とセットで考える必要があります。

第3に、5〜10年のロードマップで、視座を高める経験・決断経験・適応課題への向き合いを計画的に積み上げます。アクションラーニング・1on1コーチング・修羅場経験の組み合わせで、内面の変容を伴うリーダー育成を仕組み化します。

次世代リーダー育成の最適解は、組織の規模・業種・文化によって異なります。自社の状況に合わせて上記のフレームを組み合わせ、稟議資料に落とし込めるレベルまで具体化することが最初の一歩です。

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よくある質問(FAQ)

Q

次世代リーダー育成と管理職育成は、別々の体系を組むべきですか?

A

別立てで設計することを推奨します。管理職育成は「方向性がある程度見えている中で、業務をいかに効果的・効率的に回すか」という問いへの対応であり、リーダー育成は「正解のない状況で自らの軸で覚悟をもって決断する」という問いへの対応です。求められる力の性質が異なるため、同じ研修体系に統合するとどちらも中途半端になります。管理職育成は階層別研修、リーダー育成は選抜型の長期プログラムとして分けて組むのが基本です。

Q

「リーダーになりたくない」層が多い場合、何から手をつけるべきですか?

A

リーダー育成は選抜が先であり、覚悟を持つ意思のない候補者に研修を施しても内面の変容は起きません。まず、「自分が大事にしたいことは何か」「どんなリーダーになりたいか」を言語化する1on1コーチングを継続し、覚悟が立ち上がりやすい環境を整えます。並行して、経営陣との対話セッションや覚悟をもって決断した先達との対話を組み込み、候補者の内面に「自分の軸」が形成される時間を確保します。

Q

次世代リーダー育成の成果はどう経営に説明すればよいですか?

A

研修満足度や受講数といった指標だけではリーダー育成の本質は伝わりません。アクションラーニングでの意思決定プロセス、1on1コーチングでの本人の語りの変化、360度フィードバック、修了時の経営提言での視座の高さなどを、定性的なエピソードとして経営報告にまとめます。「候補者がどんな決断をし、どんな内面の変容を見せたか」を具体的に示すことが、定量数字以上の説得力を持ちます。

Q

うちの会社の規模では、ここまで本格的なリーダー育成は難しいと感じます。

A

完璧な体系を目指す必要はありません。最低限としては、(1)5年後・10年後の経営を担う候補を「具体名で3名挙げられる状態」を維持する、(2)各候補に対して「視座を一段上げる経験」と「正解のない問いへの決断経験」を年に1つ以上与える、(3)1on1コーチングで内面の変容を伴走する、この3点で十分機能します。リーダー育成は予算規模ではなく、経営層の本気度と時間の積み上げで成否が決まります。

アルー株式会社
アルー株式会社
20年以上、企業向けに人材育成コンサルティングや研修を提供してきた。新入社員・管理職といった階層別研修や、海外駐在員やグローバルリーダーなどのグローバル人材育成、DX人材育成に強みを持つ。その実績は取引企業総数1400社以上、海外現地法人取引社数400社以上に及ぶ。京都大学経営管理大学院との産学連携など、独自の研究活動も精力的に行っている。
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