研修の特徴・目的
専門商社業界の現状と人材育成の傾向
専門商社は、特定の分野や製品に特化した事業を展開し、自動車部品、機械、金属など、一つの分野に特化したうえで、その専門性を活かした事業展開を行う企業である。具体的な事業の流れとしては、専門商社は製造業者と供給業者の間に位置し、製品の仕入れや流通を管理して市場に提供する役割を担う。多様な業界との関係を持ちながら、サプライチェーンや国際取引など幅広い活動を展開している点が、専門商社の特徴であり強みである。
その一方で、特定分野に特化する事業形態であることから、専門商社業界は外部環境の変化に対して脆弱であり、国際市場の動向や為替レートの不安定性、政治的リスクなどによって特化している分野が不安定となった場合、事業そのものを継続できなくなってしまうという脆弱性を持つ。新型コロナウィルスの感染が拡大した2020年は、専門商社業界にも大きな影響を及ぼし、業界全体で業績の落ち込みが見られたものの、2021年以降は多くの企業で業績が回復し、2023年に入っても円安の影響や国内の販売価格の上昇といった要因により、業績の上昇が継続している。
国内の長期的な人口減少
日本は長期的な人口減少の段階に入り、2026年には1億2,000万人、2048年には1億人を下回ると試算されている。この人口減少の影響により、専門商社業界の市場縮小が懸念されている。専門商社業界は取り扱う商品の種別ごとに海外売上比率が異なるが、「食品」や「日用品」などといった海外売上比率が低い種別の商品においては、日本の市場での利益に大きく依存している。今後の日本市場の縮小に伴い、利益が減少することが予想されるため、日本市場向けの日用品を取り扱う会社は特に注意が必要である。
人口減少による市場縮小に伴い、専門商社の生存戦略として重要となるのは以下2点である
①海外展開
人口規模が大きく、特定地域の情勢に依存しないといった点で海外展開は重要な鍵を握る。専門商社業界はとりわけ円安をはじめとする社会情勢の影響を受けやすいため、海外での事業展開を行なうことにより、日本で行なうビジネスより影響を受けにくくなるというメリットがある。したがって、海外を含む広範な地域に複数の取引先を持つことで、一市場や一製品に依存するリスクを下げることができる。
②顧客満足度向上の取り組み
商品の仕入れと小売業者への売却による利益は人口減少に伴って縮小していくと予測されるため、顧客維持のために他社との差別化や、付加価値の提供が必要である。単に製品を売るだけでなく、市場の動向やトレンドの分析などの情報を顧客に提供する、あるいは顧客が製品・サービスを最大限活用できるようアフターサポートやトラブルシューティングなどのサービスを提供するなど、多角的な視点で顧客満足度を向上する取り組みが必要となる。
原材料価格の高騰
円安やインフレを背景として、2022年以降は原材料の価格の高騰が顕著であり、あらゆる商材の値上げが続いている。値上げは専門商社に限られた現象ではないことから一部の顧客は値上げへの理解があるものの、専門商社の今後としては、値上げを回避したい小売業者との価格設定を円滑に進められるかが今後の課題となる。そのためには、外部環境や競合他社の価格動向を常にモニタリングし、適切な価格戦略を展開していくことが必要である。
M&Aによる規模拡大(注3)
専門商社業界では、国内市場において専門商社が多数存在し、同一の顧客に対し複数の専門商社が営業を掛けるような構図となっている。このような業界構造から、自社の事業拡大や販路拡大を求めてM&Aの動きが活発になっている。M&Aには大きなメリットがある。例えば、領域拡大、交渉力や開発の強化、海外展開の加速といったことが挙げられる。このような動きは専門商社が生き残ることにも繋がるものである。
専門商社業界向け研修の特徴とポイント
専門知識を兼ね備えたマネージャーの必要性
専門商社業界においては、特定分野に対する深い知見と知識に基づいた判断ができる管理職に対するニーズが高まっている。専門商社業界は多様なメーカーや小売業者の仲介者としての責務を担うことから、多種多様な製品・サービスに関する専門知識を有していることが極めて重要である。具体的には、市場へ製品を投入するまでのサプライチェーンのなかで、どの商材をどの卸先から入手するのか、といった詳細かつ具体的な判断を繰り返し行う必要があり、このような判断を正確かつ迅速に行うためには、決裁権を持つ管理職が正しい判断をするために必要な知識を持ち、かつ、現場の統括者として業務を迅速に遂行するためのマネジメント力を兼ね備えている必要がある。
ビジネスパートナー開拓に不可欠なグローバル人材
専門商社は、その専門分野に応じて迅速にビジネス環境に適応する必要があり、時には国を超えたビジネスパートナーと連携するなどして、自社の利益を上げるために必要な商材あるいは堅固なサプライチェーンを確立する必要がある。たとえば、銅を専門的に取り扱う商社であれば、海外での現状の銅価格をリアルタイムで監視し、銅価格が跳ね上がった際には現地のパートナー企業と連携して迅速に対応策を決定する必要があり、銅価格が下がれば、現地での仕入れ量を増やすべきかどうかを検討する必要がある。このように有効なネットワークを確立し、国外の動向に迅速に対応するためには、現地の情報や文化に精通し、海外パートナーとの密な連携を実現できるグローバル人材の存在が欠かせない。
競争の激しい市場で生き残るためのDX・リスキリング
競争の激しい専門商社業界において、DXやリスキリングの推進による業務プロセスの効率化や、生産性の向上は急務である。例として、顧客が会社の営業時間に縛られることなく好きなタイミングで商品購入ができるようにインターネット販売のチャネルを拡大するほか、サイト上での返品対応を円滑化するなど、購入後のアフターサービスまでを考慮したサービスを提供する必要がある。伝統的なビジネスモデルや文化が根付く専門商社でDXに必要な組織変革を行なうためには、IT知識と業界知識を兼ね備えたデジタル人材の確保・育成が欠かせない。
社内の知を集約するダイバーシティの活用
専門商社業界では多岐に渡る分野の顧客と取引を行なっているため、従業員の多様なバックグラウンドや経験を活かして顧客に適切なサービスや製品を提供することが求められる。専門商社には伝統的な企業文化や風土が根付いていることが多いため、チームや部門単位ではなく、組織全体の変革が重要となるため、従業員同士でお互いが持つ知識や特化して持つスキルを共有する機会を創出する、あるいは互いの強みを活かした新たな事業やサービスのアイデアを社内で募集するなど、社内人材のナレッジを集約してビジネスとして展開していくための地道な取り組みが必要である。
専門知識への迅速なキャッチアップ
専門商社業界で活躍するためには、製品や技術に関する分野特化型の知識が必要となるほか、自社が取り扱う商品のサプライチェーンについて包括的な知識を有していることが大前提となる。新入社員や若手社員がこうした知識を早期に習得するためには、先輩社員によるワークショップや、商品ごとのナレッジ郷友会など、社員の早期戦力化を支援するための会社を挙げた取り組みが欠かせない。また、こうした研修にOJTを組み合わせ、たとえば座学で基本知識を学んだうえで先輩社員の商談に同行させるなどすることによって、社内と社外で求められる価値創出のための感覚を身につけることができる。とはいえ、人事部は採用業務など、研修業務以外の仕事も多く抱えていることから、社外の研修会社を上手に活用する必要がある。
3.よくある質問
Q. 専門商社業界では、どのような研修を実施することが多いでしょうか?
A. 管理職向けから一般職、専門人材まで様々な研修を実施しております。他社では管理職向けや現場リーダー向けに部下指導の研修を実施することが多くあります。
Q. 自社に合わせた研修カスタマイズはできますか?
A. カスタマイズできます。貴社のご要望に応じて、演習のカスタマイズ、講義内容のカスタマイズなどいたしますので、お気軽にお問い合わせください。
Q. 専門商社業界出身の講師に研修を登壇してもらうことは可能ですか?
Q. 業種の特性上、コミュニケーションスキルの向上を重要視しているのですが、こういったメニューでの研修を実施してもらうことは可能ですか?
A. 可能でございます。貴社のご要望に応じて、弊社の担当者が最適な研修プログラムをご一緒に検討またはご提案し、研修の効果測定まで伴走いたします。
Q. 自社の海外の現場で研修を実施したいのですが、研修は海外でも実施できますか?
A. はい、特にアジアでの実施が可能です。中国、シンガポール、マレーシア、ベトナム、インドネシア、ミャンマー、インド、韓国、タイなどで実績があります。
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