物流業界は、新型コロナウィルス感染症の流行に伴い、BtoBの貨物輸送量が減少し、個人向け貨物の輸送が増加した。トラックドライバーの人材不足や、働き方改革法案によりドライバーの労働時間に上限が課される「2024年問題」などにより、物流の効率化と人材確保が喫緊の課題となっている。
国内の貨物輸送量は、2020年以降、新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受けて大きく減少した。具体的には、BtoB向けの貨物が経済の停滞などの影響を受け、貨物量が大幅に減少したことがある。同じく、国際貨物数も減少した。国内貨物量と国際貨物量の減少は、現在も継続しており、コロナ以前の水準まで回復していない。
宅配貨物については、ECサイトや通販アプリの通販需要の拡大に伴い、個人向けの貨物が増加している。この背景には、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う外出自粛要請などから宅配利用者の在宅時間が増加したことがある。今後も、EC市場の拡大が見込まれている。在宅時間の増加に伴い、一回の配達での受け取りが増えているものの、物流業界における労働力不足が懸念されていることから、宅配貨物の不在配達を削減し、物流を効率化することが必要になっている。この取り組みとして、時間指定での配達や置き配が主流となっている。
輸送手段に占める営業用トラックの活用割合が特に多いのは日用品、金属鉱、食料工業品などであり、これらの品目は営業用トラックで輸送される品目の70%以上を占めている。そのため、輸送手段の中でもトラック輸送に依存している。しかし、労働力不足の顕在化に伴い、トラックドライバーが不足していると感じる企業は増加している傾向がある。また、全産業平均と比べてトラックドライバーの年齢層の中で、若年層と高齢層の割合が低く、中年層の割合が高い。道路貨物輸送業は65歳以上の就業者が少ないことから、高齢化が進むことにより、担い手の減少が急速に進んでいく恐れがある。そのため、若年層や女性などの多様な人材を確保するための対策を講じる必要がある。また、2024年度からトラックドライバーに時間外労働の上限を規制される「2024年問題」も輸送能力の不足に大きく影響を及ぼすことが予想されるため、配送の効率化するための対策を講じる必要がある。
(注1)経済産業省・国土交通省・農林水産省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sustainable_logistics/pdf/001_02_00.pdf
物流業界における管理職のマネジメントスキルへの要求が大きくなっている。その理由として、自動化やIoTなどの技術革新が進んでいることに伴う技術革新に適応するためのマネジメントスキル、国際物流や複雑なサプライチェーンを有する企業において、異なる文化や言語を持つ従業員をマネジメントするスキル、持続可能性な物流を実施するためにも省エネルギーや低炭素でも実施できる運送方法の導入や廃棄物の削減などの取り組みをリードすることが求められている。
物流業界では、国際的な取引やパートナーシップという国際的なネットワークを構築することが求められる。そのため、この物流業界では異文化間コミュニケーションの能力や、各国の法規制や税法、輸入・輸出規制などの国際法規制の遵守への対応能力、異なる地域や国でのパートナーシップの構築、供給チェーンの最適化や輸送手段の選択というような国際物流ネットワークの構築が必要であり、そのための地域ごとのニーズや規制への対応能力などが求められている。これらに対処するためには、異文化間のコミュニケーションのトレーニングや国際法規制の教育、最新のテクノロジーに関するトレーニングが必要である。具体的には、異文化交流の機会を頻繁に設けることや国際法規制や最新技術に関する研修を従業員に提供することがその手立てである。
物流業界における新入社員や若手社員の育成には3つの能力が求められる。まず、1つ目は専門知識と実務経験である。物流業界では様々な商品を多数の国とコミュニケーションを取りながら取り扱うことから、国際取引や国際法規制に関する専門知識と国際物流を管理するための実務経験が必要であり、これらを取得するための時間や機械が不足していることがある。2つ目には、チームで業務をスムーズに遂行するためのコミュニケーションとチームワーク能力が求められる。そして3つ目は、日々進化する最新テクノロジーを理解し、活用できる能力である。これらのスキルを獲得するためには、例えば、新入社員や若手社員向けの研修プログラムの導入、先輩社員の商談などへの同行による実務経験の提供という手立てによって獲得できる。