医療メーカー業界は、市場成長に対する障壁が乱発した ”コロナ禍” から、安定成長が予想される ”コロナ後” への移行において、グローバル需要の取り込みや高度化する医療技術への追従といった課題が掲げられている。
世界需要のコロナ禍以前の指数への回帰
コロナ禍においては、手術の延期や受診の抑制といった市場成長の障壁が多く発生したことから需要の低迷が顕著であったが、2023年のグローバル需要は前年比+5.9%と、コロナ禍以前の需要指数に回帰しつつあり、このような”コロナ後”の需要の安定成長は今後も中長期的に継続すると予想されている。
高齢化の進展に伴う国内需要の安定成長予測
視点を国内に移しても世界市場と同様の傾向が認められ、医療の高度化などの要因に伴う需要も中長期にわたって緩やかに成長していくと予想されている。特に循環器や整形外科といった、高齢者治療と密接に関係するテーマの治療機器においては、高齢化の進展に伴って他テーマと比較してより鋭い角度での需要拡大が想定されている。
世界市場で見ても高いプレゼンスを誇る日本企業
収益性や成長性といった観点において、オリンパス社やテルモ社に代表される日系大手企業はグローバル企業に見劣りしないプレゼンスを発揮している。市場における日系企業の生存のカギを握るポイントは下記2点である。
1) 海外事業強化
► 国内メーカーの収益性は海外市場での売上高に比例する。したがって、成長性の高い海外需要を取り込む戦略が重要なカギを握る
2) 高シェアの医療機器開発
► 日系企業が世界市場で50%以上のシェアを有する医療機器は、未だ数が少ない。世界シェアのほぼ全量を日本企業が独占する内視鏡に代表されるような、高シェアの医療機器の数量を増やす戦略が、今後の日本企業の市場での競争力のカギを握る
若手人材支援と異業種人材リスキリング(※2)
グローバル需要の取り込み、高度化する医療技術への追従といった課題を持つ医療業界において、若手人材の育成支援と異業種人材のリスキリング支援の2つが人材育成の重要テーマとして掲げられている。具体的には若手研究者に対する各種支援や、異業種人材の医療機器業界への参入を促進する官民協力といった内容が、経済産業省の牽引する医療機器産業の検討会で議論されている。
急速に変化する労働環境で力を発揮する管理職の育成
医療メーカー業界では、管理職のマネジメントスキルに対する要求が大きくなっています。その理由として、急速に整備・改定が進む労働時間や労働環境の法制度や、「Z世代」に代表される新しい価値観を持つ若年層の出現、外国籍社員マネジメントといったものが挙げられます。このような変化を現場で正しく捉え、適切なマネジメントを実行していくことが、これからの医療メーカー業界の管理職に求められているのです。
多種多様な環境に適用可能なグローバル人材へのニーズ
医療機器におけるグローバル需要がコロナ禍以前の指数まで回復する市場トレンドに伴い、グローバル人材の重要性も増しています。たとえば海外支部・海外市場といった拠点のマネジメントや、日本本社と海外支社のコミュニケーションなど、医療メーカー業界のサプライチェーン上、多種多様な環境に適用できる人材の供給は至上命題です。そのような人材を安定的に現場に供給できる組織となるためには、積極的なグローバル人材育成の取り組みが欠かせません。
DX人材育成・リスキリング
医療技術の高度化に伴い、医療メーカー業界における人材の育成・獲得の方向性が変化しています。たとえば新しいヘルスケアテクノロジーが次々と導入される医療現場では、アナログからデジタルへの移行を先導できるDX人材の配置が求められています。また業界を跨いで優秀なデジタル人材の奪い合いとなっている現状においては、技術者の育成のみでなく、従業員がスキル・知識を再習得することを支援する取り組みが重要であるとの認識が広まりを見せています。このような方向性の変化に柔軟に対応していくためには、DX人材の育成や、リスキリング支援等への積極的な取り込みが重要です。
ミルフィーユ型の製造ラインに見るダイバーシティ推進の重要性
医療メーカー業界の製造ラインは、異なるミッションを持つセグメントが何層にも積み重なった「ミルフィーユ」のような構成が特徴です。セグメントの例としては、医療機器を開発・製造するために必要な技術系のチーム、製品をデザインするクリエイターのチーム、営業や会社を支える仕事を行うバックオフィスのチームなど、その階層は多岐に渡ります。製造ラインがこのような特徴を有する背景には、医療という人命に関わるテーマに関連するからこその厳格な規制や、特殊な素材を使用することによる複雑な製造プロセスといった障壁があります。こうした障壁を乗り越え続けるためには、ダイバーシティを推進し、多様な視点が交錯する創造性に富んだ雰囲気を社内に醸成することが重要です。
Z世代の新入社員のキャリア・仕事観への対応
新人を早期に一人立ちさせ、現場での就業を通して仕事を覚えさせるOJT(On-the-Job Training)は、特に医療メーカー業界で多用されがちな教育方法です。しかし、「背中を見て育て」や「習うより慣れろ」といった現場でのOJTではうまく育ちにくくなっています。というのも、Z世代の傾向として「組織よりも自分らしさを優先する」、「コスパ・タイパを重視して、無駄に感じる業務は倦厭しがちで、いかに自分の時間を使わずにパフォーマンスを発揮できるかを気にする傾向がある」、「とにかく働き続けてキャリアを開拓する」というような意識を持っている人は少なく、むしろ「仕事と家庭を両立した幸せ」に重きが置かれていることが多い」など仕事に対する価値観が以前と変わってきています。そのため、新入社員や若手社員向けの教育のあり方も見直すことで、医療メーカー業界における若手人材の早期戦力化を支援する取り組みが必要です。
部品供給網の最適化を実現するコミュニケーションスキルの重要性
グローバル市場への医療製品の投入が加速するなかで、部品供給網が製品に与える影響も大きくなりました。一方で、グローバル市場自体の成長に伴い、複数の生産拠点が密接に連携して1つの製品を製造するインクルーシブ(包括的)な働き方が求められつつあることから、他者と連携するスキルのベースとなるコミュニケーションスキル力の重要性が増しています。厳格な法規制等の理由から、他産業と比較して、医療機器の設計変更は長い時間を要する特徴があります。したがって、予期しないEOL(※3)は、医療機器のサプライチェーンへ甚大な影響を及ぼすリスクを要し、最悪の場合、製品の供給停止などに発展する恐れがあります。このような特性から、複数の拠点が相互に連携して安定的な部品供給網を構築する体制が必要となり、拠点同士の情報連携・コミュニケーションが強化されています。こうした世界規模のトレンドに追従し、最適化された部品供給網を構築するために、人材育成担当者は拠点間・グループ間のコミュニケーションを促進するようなトレーニングを強化する必要があるでしょう。
Q. 医療メーカー業界では、どのような研修を実施することが多いでしょうか?
A. 管理職向けから一般職、専門人材まで様々な研修を実施しております。他社では管理職向けや現場リーダー向けに部下指導の研修を実施することが多くあります。
A. カスタマイズできます。貴社のご要望に応じて、演習のカスタマイズ、講義内容のカスタマイズなどいたしますので、お気軽にお問い合わせください。
Q. 医療メーカー業界出身の講師に研修を登壇してもらうことは可能ですか?
Q. 業種の特性上、チームワークやコミュニケーション能力の向上を重要視しているのですが、こういったメニューでの研修を実施してもらうことは可能ですか?
A. 可能でございます。貴社のご要望に応じて、弊社の担当者が最適な研修プログラムをご一緒に検討またはご提案し、研修の効果測定まで伴走いたします。
Q. 自社の海外の現場・支社で研修を実施したいのですが、研修海外でも実施できますか?
はい、特にアジアでの実施が可能です。中国、シンガポール、マレーシア、ベトナム、インドネシア、ミャンマー、インド、韓国、タイなどで実績があります。
※1(出所)みずほ銀行(医療機器産業ビジョン研究会第1回WG資料 医療機器業界動向)を基に作成https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/medical_device/kento_wg/pdf/001_08_00.pdf
※2(出所)経済産業省(医療機器産業を取り巻く課題について)を基に作成https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/medical_device/pdf/001_06_00.pdf
※3 EOL・・・End of Lifeの略称。IT資産のハードウェア・ソフトウェアのバージョンアップやサポートの終了などを意味し、供給者はEOLが到来する前に製品・サービスのアップデート、代替品などを検討する必要がある。