「高速道路は今まで以上に維持管理に力を注がねばならない局面にあるため、必要な予算と技術者をグループ内で集約した専門組織の確立は急務であり、現在具体的な検討を始めています。そうしたなかで、「T型エンジニア…」を「昨今の人材育成業界において、「I型人材」から更に一歩進化した「T型人材」の育成の重要性が叫ばれるようになりました。「I型人材」とは、縦棒が上下に伸びるようにある一分野に特化して秀でている人材を指します。
一方で「T型人材」とは、特化する分野の能力を示す縦棒に加えて、幅広い経験を積み重ねることによって獲得できる業務遂行力を示す横棒も兼ね備えた人材を指します。高速道路業界でも、このように専門的な技術力だけでなく、幅広い業務経験に裏打ちされた業務遂行力を持ち合わせた人材が必要とされています。
そのための取り組みとして、高速道路のエンジニアを抱える企業においては、入社後の一定期間はエンジニアとしての基礎技術力を身につけさせたうえで、橋梁、トンネル、舗装の計画、設計、現場管理、点検といった分野のなかで自身が特化する分野を選択させ、その専門分野の技術を確立させる、といった人材育成プランを取り入れるケースが増えています。
今後の高速道路業界においては、幅広い分野の基礎知識を有したうえで、自分の専門分野を確立したT型エンジニア人材をどれだけ確保あるいは育成できるかという点が、業界内の企業競争力に大きな影響をもたらすでしょう。
高速道路業界では、管理職のマネジメントスキルに対する要求が大きくなっています。その理由として、高速道路の老朽化やリニューアルプロジェクトより、専門技術力をベースとしてマネジメント能力を両立させた「T型エンジニア」の育成の重要性が向上していることが挙げられます。このように、専門技術力だけでなく、内外との折衷能力を身に着けて適切なマネジメントをしていくことが、これからの高速道路業界の管理職に求められているのです。
モビリティ社会の到来を見据え、高速道路の維持管理用システムなどのDXの導入が進んでいます。また、こうした業務の高度化・効率化に伴い、高速道路業界における人材の育成・獲得の方向性が変化しています。たとえば新しい高速道路の維持管理用システムが次々と導入される高速道路業界では、アナログからデジタルへの移行を先導できるDX人材の配置が求められています。
また業界を跨いで優秀なデジタル人材の奪い合いとなっている現状においては、技術者の育成のみでなく、従業員がスキル・知識を再習得することを支援する取り組みが重要であるとの認識が広まりを見せています。このような方向性の変化に柔軟に対応していくためには、DX人材の育成や、リスキリング支援等への積極的な取り組みが重要です。
高速道路業界においてもダイバーシティ推進の重要性が叫ばれるようになっています。特に女性活躍推進という観点において、業界内の企業の女性の比率を上げるためには、働きやすい環境を整備する積極的な取り組みが不可欠です。
具体的には、職場環境などのハード面のみに留まらず、労働時間や休暇制度などの人事の諸制度にもメスを入れることによって、結果的に性別・国籍関係なく、誰にとっても働きやすい環境を実現することが可能となります。そのためには人事主導で既存の制度や設備を見直し改善していくことができるよう、研修などを通して社内の人事担当者を育成することから始める必要があります。
高速道路業界の新人研修は、多くがOJTを軸として行われており、その理由として、専門技術を身につけたスペシャリストの育成が目指されていることが挙げられます。しかしながら、Z世代の傾向として「組織よりも自分らしさを優先する」、「コスパ・タイパを重視して、無駄に感じる業務は倦厭しがちで、いかに自分の時間を使わずにパフォーマンスを発揮できるかを気にする傾向がある」、「とにかく働き続けてキャリアを開拓する」というような意識を持っている人は少なく、むしろ「仕事と家庭を両立した幸せ」に重きが置かれていることが多い」など、仕事に対する価値観が以前と変わってきています。そのため、新入社員や若手社員向けの教育のあり方も見直すことで、高速道路業界における若手人材の早期戦力化を支援する取り組みが必要です。
※1(出所)道路構造物ジャーナルNETを基に作成
https://www.kozobutsu-hozen-journal.net/interviews/11026/?spage=2