アンガーマネジメントとは?やり方や6秒ルールと診断について解説
職場や日常生活で経験するさまざまな「怒り」とうまく付き合っていく方法として、アンガーマネジメントが注目を浴びています。アンガーマネジメントを正しく実践できるようになれば、感情の切り替えができるようになったり、ストレスを溜め込まなくなったりして、職場で安定したパフォーマンスを発揮できるようになるでしょう。
この記事では、アンガーマネジメントのやり方や、社員のアンガーマネジメントを促進するために企業側が実施すべき施策やポイントを解説します。
▼感情をコントロールし論理的に考えるためにおすすめの研修3選
目次[非表示]
アンガーマネジメントとは
アンガーマネジメントとは、怒りとうまく付き合うために、怒りを制御するスキルのことです。
人間は、さまざまな場面で「怒り」の感情を抱きます。一般的に「怒り」はあまりポジティブな感情だとはみなされませんが、決して怒りを抱くこと自体が悪いわけではありません。例えばスポーツで負けたとき、怒りをバネに練習を重ねれば、成長につながるモチベーションになるでしょう。
アンガーマネジメントでは、このような怒りの有効活用を重視することが特徴です。「怒らない」という状態を目指すのではなく、怒るべき場面では怒り、そうでない場面では怒らないようにして、怒りと上手に付き合っていきます。
なぜアンガーマネジメントが必要なのか
アンガーマネジメントが必要な理由としては、以下の3つが挙げられます。
- 困難な状況でも冷静に正しく判断できる
- 周囲を巻き込みながら問題解決につなげられる
- 信頼関係を構築できる
仕事を進める際に、怒りの感情にとらわれてしまうと正しい判断ができません。困難な状況も冷静に受け止め、正しく判断するためには怒りの制御が必要不可欠です。
また問題解決に取り組む場面では、自分の要望を怒りに任せて伝えても周囲は協力してくれません。問題解決につながるような行動を周囲へ促すためには、怒りを制御しながら、冷静に指示を出し、協力を仰ぐことが効果的です。
加えて、部下指導の場面でもアンガーマネジメントが必要とされます。部下を頭ごなしに叱るのではなく、アンガーマネジメントを行った上で相手のことを深く理解し、信頼関係を構築しながら指導を進めることが重要なのです。
アンガーマネジメントが注目されている背景
アンガーマネジメントが注目されている背景としては、価値観の多様化が挙げられます。
最近では、性別や国籍、障害の有無にかかわらず活躍できる環境を整えようという動きが進んでいます。働き方やワークライフバランスに対する考え方も多様化し、職場の中で自分とは異なる価値観を持つ人材と接する機会も増えました。
こうした状況でアンガーマネジメントがうまくできないと、自分とは異なる考えを持つ人を反射的に拒否したり、怒りを溜め込んだりしてしまいます。アンガーマネジメントによって価値観の違いを吸収すれば、自分と異なる相手とも効果的に信頼関係を構築し、多様性のある組織を実現できるのです。
また、ハラスメントが社会問題化したことも、アンガーマネジメントが注目されている背景の一つです。上司が怒りに任せて部下を怒鳴りつけてしまうと、ハラスメントとみなされかねません。アンガーマネジメントによって適切に怒りをコントロールすることで、ハラスメントにならない効果的な指導につながります。
部下指導に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
『部下指導で大切なことや指導方法を解説!管理職の部下指導力を育成しよう』
アンガーマネジメント診断とは
アンガーマネジメントの診断を実施することも、アンガーマネジメントを実践する方法の一つです。アンガーマネジメントを診断することで、自分の怒りの傾向を分析できます。普段何気なく抱いている感情や価値観に関するいくつかの質問に答えることで、自分がどのような怒りの傾向を持っているのか客観的に分析することができます。怒りと上手に付き合っていく方法までアドバイスしてくれる場合もあるので、自分の怒りを客観的に分析することができます。
どんなときに怒りが生まれるのか、怒りのメカニズムを知る
アンガーマネジメント診断と並行して、どのようなときに自分の怒りが生まれるのかを知るとよいでしょう。例えば自分が怒りを感じたときに、以下の観点に沿って自分の怒りを分析してみてください。
- なぜ怒っているのか?(怒りの原因)
- 1〜10の10段階で、どれくらい怒っているのか?(怒りの度合い)
自分の怒りを客観視することで、自分がどのようなときにどの程度怒るのかを把握でき、怒りのコントロールに役立ちます。また、怒りが落ち着いたら、「本当に怒る必要はあったのか?」をあとから振り返ってみることもおすすめです。
アンガーマネジメントを身につけた際のメリット
アンガーマネジメントを身につければ、以下のようなメリットがあります。
- 業務の生産性が上がる
- 自己分析ができるようになる
- 組織内のコミュニケーションが活性化される
- パワハラの防止・抑止になる
アンガーマネジメントを通じて業務の生産性が向上することに加え、自己分析の促進やコミュニケーションの活発化も期待できます。さらに、パワハラの防止にもつながるでしょう。
社員がアンガーマネジメントを身につけるメリットを4つ解説します。
業務の生産性が上がる
アンガーマネジメントを身につけるメリットとして、業務の生産性向上が挙げられます。
業務を進める中で、怒りにとらわれてしまうと無駄な行動が増加します。怒りに任せて誤った判断をしてしまい、あとから手戻りや時間のロスが生まれることも珍しくありません。
アンガーマネジメントを実践すれば、怒りにとらわれず冷静に行動できるようになります。その結果、作業時間が短縮されたり、無駄な時間が減ったりして、業務の生産性向上につながるのです。
生産性を向上させるための取り組みや補助金、成功事例は以下のページで詳しく解説しています。
『生産性向上とは?企業ができる具体的な取り組み・補助金・成功事例を紹介』
自己分析ができるようになる
自己分析ができるようになることも、アンガーマネジメントを実践するメリットの一つです。
アンガーマネジメントを行えば、自分はどのようなときに怒りを感じ、それをどうコントロールすればよいのかわかるようになります。自分の感情についてより深く知れるため、自己理解が深まるでしょう。
自己理解が深まれば、仕事へのモチベーションを自分でコントロールできるようになったり、キャリア自律が進んだりと、さまざまな効果が期待できます。
自己分析や自己理解に関して、詳しくは以下の記事で解説しています。
『自己理解とは?社員の自己理解を促すプログラムを事例付きで紹介』
組織内のコミュニケーションが活性化される
アンガーマネジメントを実践するメリットとして、組織内のコミュニケーションが活性化される点も挙げられます。
怒りをあらわにしている社員が多いと、職場の雰囲気が悪くなり、コミュニケーションが停滞します。組織内のコミュニケーションが滞ると、業務に必要な情報が共有されず、社員のモチベーションも低下しかねません。
アンガーマネジメントを通じて怒りをコントロールすることで、組織内のコミュニケーションが活性化されます。人間関係のストレスが軽減するため、社員が働きやすくなったり、モチベーションが向上したりするでしょう。
職場におけるコミュニケーションの重要性や、コミュニケーションを活性化するための具体的な施策例は以下のページで詳しく解説しています。
『職場のコミュニケーションの重要性と活性化のための具体例8選』
パワハラの防止・抑止になる
アンガーマネジメントを実践することは、パワハラの防止や抑止につながります。
昨今ではパワハラに対してますます厳しい目が向けられるようになってきています。以前ではパワハラとみなされなかったことが、部下から「パワハラではないか」と指摘される場面も多いです。
アンガーマネジメントを行えば、感情に任せた指導が減るため、ハラスメントが発生しづらくなります。怒りをぶつける場面が減り、年齢の離れた部下でも効果的に指導できるようになるでしょう。
ハラスメントの定義や事例、対策について知りたい方は、以下のページをご覧ください。
『ハラスメントの意味とは?職場で発生しやすい種類と事例、対策を紹介』
アンガーマネジメントのやり方
アンガーマネジメントを実践するためには、怒りのメカニズムを知ることが重要です。また、怒りが生じたときに6秒間やり過ごすようにしたり、固定概念を捨てるよう意識したりすることもよいでしょう。
ここからは、アンガーマネジメントを実践する方法を解説します。
怒りの感情が生まれたら6秒間やり過ごす
アンガーマネジメントを実践するためには、怒りを6秒間やり過ごすことを意識してみましょう。具体的には、以下のようにしてやり過ごすことがおすすめです。
- 怒りの原因になるものから離れる
- 別のことを考える
- 何かに没頭する
例えば目の前の人が原因で怒っている場合には、目をつむったりトイレに行ったりして、怒りの原因を視野から消しましょう。過去の嬉しかった経験を思い出したり、今日の食事や趣味といった全く関係ない事柄について考えたりすることも有効です。
6秒間だけでもやり過ごすように意識することで、自然と怒りは消えていきます。自分が「怒っているな」と感じたら、ぜひ上記の方法を実践してみてください。
固定観念を捨てる
固定観念を捨てることも、アンガーマネジメントを実践する方法の一つです。具体的には、以下のような思考を意識してみてください。
- 何もかも「自分が正しい」という考え方をしない
- 他者の考えを一旦受け入れる
- 新しい体験や経験を増やす
自分が正しいという考えにとられると、それに沿わない相手に対して怒りの感情が湧きます。自分と異なる考えを持つ他者がいる場合には、それを一度受け止めてみましょう。新しい体験や経験を増やして、視野を広げることも効果的です。
自分でコントロールできることに取り組む
アンガーマネジメントを行うためには、自分でコントロールできることに取り組むのもよいでしょう。
例えばバスが遅れたため、会議に遅刻してイライラする場面を考えます。この場合、どんなに自分が努力してもバスの遅れをゼロにすることはできません。バスの遅れは、渋滞などの外的要因に左右されるものだからです。
怒りを感じた場合、こうした外的要因に着目するのではなく、「次からは一本早いバスに乗ろう」「遅れを知らせる交通情報アプリを試してみよう」など、自分でコントロールできる要素に着目してみましょう。そうすることで、無駄な怒りを減らすことができます。
イライラせずに済む話し方を実践する
アンガーマネジメントを実践する際には、イライラせずに済む話し方を実践することも意識してみてください。
例えば特定の事柄や人物が話題に出た場合に怒りを感じる人もいるでしょう。その場合は、イライラする要因となりうる話題にならないよう会話を展開することが効果的です。また、特定のワードをきっかけに怒りが爆発してしまう場合は、そのワードを使わないように心がけてみてください。
環境を変える
アンガーマネジメントを実践するためには、環境を変えてみることも一つの手です。
例えばチームの心理的安全性を高めたり、メンバー間のチームビルディングを実践したりすることがよいでしょう。こうした取り組みを通じて職場環境を整備することで、アンガーマネジメントしやすい状況が整います。
特に、多くの人が怒りをあらわにしているような職場では、個人のアンガーマネジメントではなく職場環境そのものに問題があることも多いです。チームや職場の環境を整えて、怒りと付き合いやすい状況を作り出しましょう。
風通しのよい職場にするための施策や事例などは、以下のページで詳しく解説しています。
『風通しのよい職場とは?施策例や事例、よくある勘違いをご紹介』
アンガーマネジメントに企業が取り組む際のポイント
アンガーマネジメントに企業が取り組む際には、いくつかの意識しておきたいポイントが存在します。具体的には、以下の4つのポイントを意識することが効果的です。
- アンガーマネジメントについて社員に周知する
- 風通しのよい職場環境を整える
- 研修を実施する
- eラーニングを導入する
アンガーマネジメントに企業が取り組む際のポイントを解説します。
アンガーマネジメントについて社員に周知する
アンガーマネジメントに企業が取り組む際には、社員に対してアンガーマネジメントとは何かを周知することがポイントです。
社員の中には、「アンガーマネジメントという言葉は聞いたことがあるが、どのようなものなのかわからない」という人も多いでしょう。また、アンガーマネジメントという概念について知っていても、具体的な実践方法まで理解できていない人も少なくありません。研修や社内報を通じてアンガーマネジメントの重要性や進め方を共有するなど、アンガーマネジメントの理解促進に取り組んでみてください。
風通しのよい職場環境を整える
風通しのよい職場環境を整えることも、アンガーマネジメントに企業が取り組む際のポイントです。
職場がストレスフルな環境だと、アンガーマネジメントを実施しようとしてもうまくいきません。アンガーマネジメントを実践するためには、風通しのよい職場環境が必要不可欠です。職場のコミュニケーションを活性化すれば、人間関係での余計なストレスが減るため、より自分自身の本質的な怒りの原因と向き合いやすくなります。職場の風通しを改善して、社員がアンガーマネジメントに取り組みやすい環境を作りましょう。
風通しのよい職場の作り方は、以下のページで詳しく解説しています。
『風通しのよい職場とは?施策例や事例、よくある勘違いをご紹介』
研修を実施する
研修を実施することも、企業がアンガーマネジメントを進める際のポイントです。
例えば、レジリエンス研修を実施してストレスに対する耐性を高めたり、ロジカルシンキング研修を実施して自分の怒りを論理的に分析するスキルを高めたりするとよいでしょう。
また、自己分析のための研修を実施して、自分の怒りを客観的に分析することも効果的です。
前述した通り、社員の中にはアンガーマネジメントについてよく知らない人も多いです。研修を実施して社員がアンガーマネジメントについて学ぶ機会を提供し、効果的なアンガーマネジメントの実践につなげましょう。
eラーニングを導入する
企業がアンガーマネジメントに取り組む場合、eラーニングを導入することもよいでしょう。eラーニングとは、オンライン上で配信される学習教材を通じて学びを進める教育手法です。社員は各自のタブレット端末やパソコンを利用して、それぞれのペースで学習を進めます。
eラーニングでは、空いた時間を有効活用しながら、社員がそれぞれのペースで学べることが最大の特徴です。日常業務で忙しくなりがちな管理職も、eラーニングであれば効率的にアンガーマネジメントについて学ぶことができます。
eラーニングの実施方法やメリット、デメリットについて詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
『【簡単解説】eラーニングとは?企業研修で活用するメリット・デメリット』
おすすめの企業向け研修
アルーでは、ネガティブな感情やストレスとうまく向き合っていくスキルを高めるための研修を数多くご用意しています。ここからは、それらの中から特におすすめのものを4つ厳選して紹介します。
レジリエンス研修
レジリエンス研修は、社員のレジリエンスを高めるのに役立つ研修です。
レジリエンスとは、ストレスからしなやかに回復する力のことを指します。高いレジリエンスのある社員は、ストレスやプレッシャーのかかる場面でも必要以上に落ち込むことなく、安定的なパフォーマンスを発揮することが可能です。
レジリエンスを高めれば、怒りや悲しみといったネガティブな感情にも、上手に対処できるようになるでしょう。
レジリエンス研修について詳しく説明したサービス資料は、以下のページからダウンロードすることができます。
ロジカルシンキング研修
ロジカルシンキング研修は、論理的で筋道立った思考を展開するスキルを高める研修です。
ネガティブな感情へうまく向き合うためには、自分自身の感情がどこから生まれているのか論理的に分析することが欠かせません。論理的に思考できるようになれば、感情に振り回された判断をすることがなくなり、意思決定の質が向上します。また、相手に対して自分の要望を論理的に伝えられるようになるため、他者に対して無駄に怒ることも減るでしょう。
アルーが提供しているロジカルシンキング研修について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
ロジカルシンキング研修
▼サービス資料をメールで受け取る
問題解決力研修
問題解決力研修は、周囲へ働きかけながら問題解決するスタンスとスキルを身につける研修です。研修で問題解決力を高めれば、仕事で直面するストレスフルな場面にもうまく対処できるようになり、感情に振り回される場面が減るでしょう。
なお、問題解決を実践するためには、自分自身で問題に取り組むだけでなく、周囲を巻き込みながら進めることが求められます。
アルーが提供している問題解決力研修では、問題解決に向けて周囲を巻き込むコミュニケーション力を身につけられることが特徴です。演習も豊富に含まれているため、実践的な問題解決力を高めることができます。
アルーの問題解決力研修は、以下のページから詳しくご確認ください。
問題解決力研修
▼サービス資料をメールで受け取る
コミュニケーション研修
ネガティブな感情と上手に向き合うスキルを高めるためには、コミュニケーション研修の実施もおすすめです。
コミュニケーションスキルを高めれば、周囲と効果的に信頼関係を構築できるようになります。その結果、相手からストレスを受ける場面が減り、怒りをぶつけることがなくなるでしょう。加えて、職場内でのコミュニケーションが活性化することで社員の働きやすさが向上し、職場のストレスが減少する効果も期待できます。
アルーのコミュニケーション研修は、以下のページから詳しくご確認ください。
コミュニケーション研修
コミュニケーション能力を鍛える方法や、コミュニケーション能力が高い人の共通点は、以下のページで詳しく解説しています。
『仕事に活きるコミュニケーション能力とは?鍛える方法や高い人の共通点』
まとめ
アンガーマネジメントについて、必要とされている背景や進め方、会社が実践する際のポイントなどを解説しました。
アンガーマネジメントは、怒りとうまく向き合う上で重要な考え方です。職場で経験するさまざまな怒りへうまく対処できるようになれば、仕事のパフォーマンスが安定し、周囲と良好な関係を築けるようになります。会社側が積極的に社員のアンガーマネジメントを促進して、働きやすい環境を整えることもおすすめです。
ぜひこの記事の内容を参考にアンガーマネジメントを実践し、怒りと上手に付き合っていきましょう。