【研修事例あり】経営人材育成でぶつかる5つの壁と解決策
企業経営を成功させるためには、経営者の手腕が重要です。企業の将来性を高める上で、経営人材の育成は避けて通れません。
一方、経営人材の育成にはいくつかの壁が存在するため、思うように育成が進まないとお悩みの方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、経営人材の育成を阻害する「5つの壁」や、その解決策を解説し、実際の研修事例もご紹介します。
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経営人材育成が必要な理由
経営人材育成が必要な理由として、時代の変化が挙げられます。戦後の高度経済成長期は、時代とともに経済が持続的な発展を続けていました。経営環境が大きく変化することも少なく、既存事業の知見やノウハウに長けた人材が経営では重宝されていました。
一方でIT技術が発達し、グローバル化が進んだ現在は、VUCAとも呼ばれる変化の激しい時代です。こうしたビジネス環境では、過去の成功体験にとらわれず、常に新しい方向を模索し続ける姿勢が求められます。常に変化する時代でのビジネス競争に勝ち抜けるよう、実行力と高い戦略性を持って企業を牽引できる人材の育成が急務なのです。
経営人材育成が進まない理由
経営人材育成は多くの企業にとって重要です。しかしながら、経営人材の育成が思う通りに進まず、大きな課題となってしまっているケースも少なくありません。
経営人材育成が進まない理由として、以下の「5つの壁」が挙げられます。
- 育成する人材を選定できない
- 経営人材候補の早期育成ができていない
- 経営人材育成に対する社内理解がない
- 社内人材のスキルや能力の把握ができていない
- 効果測定が難しい
一つずつ見ていきましょう。
1.育成する人材を選定できない
経営者育成の成功を阻む要因として、育成する人材を選定できていないという点が挙げられます。経営人材を育成する際には、まず自社が経営者に求める人物像や資質を明確に定義し、それを体現できるような人材を選抜することが大切です。
実際、パフォーマンスの高いグローバル企業の一部ではそうした取り組みに力を入れています。CEOなどのリーダー層に求められる資質要件を明確に定義した上で、人事部や経営層が連携しながら経営者候補の選抜を進めているのです。しかし、一般的な日本企業は海外のグローバル企業と比べると育成を始める時期が遅い傾向にあります。また、経営者の選抜プロセスが属人化してしまっていたり、そもそも経営者に求める資質要件が明確に定まっていなかったりするため、経営人材育成が困難になってしまうのです。
2.経営人材候補の早期育成ができていない
経営人材育成を阻む要因として、経営人材候補の早期育成ができていないという点も挙げられます。一般的な日本企業では、新卒一括採用から始まり「みんなが社長を目指して頑張る」という平等主義的な年功序列の人事管理が行われています。また、長い時間をかけて社内のさまざまな職を経験させることで、スキルアップや人脈作りに励んでもらう方針の企業も多いでしょう。そのため、日本企業の大部分の社員が40歳前後からマネジメント経験を積み始めます。
しかし、グローバル企業の一部では20代、30代の時点から経営人材候補を選抜し、自社の企業理念やビジョンの徹底を行ったり、マネジメント経験を積んでもらったりしています。そのため、日本企業で働く社員とグローバル企業で働く社員を同じ年齢で比較した際に、経験面で大きな差が生まれているのです。
3.経営人材育成に対する社内理解がない
経営人材育成施策に対する社内理解が乏しいという点も、経営人材育成の成功を阻む要因の一つです。経営人材の育成を行う際には、現任の管理職も巻き込みながら、OJTやOff-JTを含めたさまざまな施策を実施する必要があります。
経営人材の育成プログラムや育成計画への理解が乏しい場合、事業部門が優秀な人材を抱え込み手放さない、上司からの支援を得られない、といった問題が発生しがちです。結果として、優秀な経営人材を育成するために必要な職務機会の提供やコーチング、フィードバックが少なくなってしまい、経営人材の育成が成功しづらくなってしまいます。
4.社内人材のスキルや能力の把握ができていない
経営人材育成を阻む要因として、社内人材のスキルや能力の把握ができていない点も挙げられます。経営者候補となる人材を効果的に選抜するためには、経営者に必要な資質を明確にした上で、それに合致した人材を探すことが大切です。
しかし、人材のスキルや能力を把握する機会が少なかったり、体系的に評価が管理されていなかったりすると、こうした人材の選抜が難しくなります。経営者に求める能力資質を明確にした上で、その観点に沿った評価を定期的に行うことが重要です。
5.効果測定が難しい
効果測定が難しい点も、経営人材育成が成功しない要因の一つです。経営人材を育成する際には、その人物がどの程度経営人材として必要な要件を満たしているかの確認が必要です。
しかし、経営人材育成のための効果測定は長期に及びます。また、経営者として必要な人材像は時代とともに変遷するため、育成施策の途中で経営者に求める人材要件が変更されることもあるでしょう。こうした原因により、経営人材育成の正確な効果測定が難しくなっており、経営人材育成の成功を阻んでいるのです。
経営人材育成を成功に導くためのポイント
前項でご紹介した「5つの壁」を乗り越え、経営人材育成を成功に導くために意識すべき6つのポイントを解説します。
- 経営者が積極的に参画する
- 人事部が戦略人事としての役割を果たす
- 現場の管理職が次世代リーダーを育てる意識を持つ
- 合理的な判断で人材を選定する
- 配置転換などで成長機会を与える
- 個々人のキャリア自律を促す
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
1.経営者が積極的に参画する
経営層が直接経営者育成に携わらず、人事部に指示を与えたり、方針を示したりするだけで終わってしまっているケースは少なくありません。経営人材育成を成功させるためには、経営者が育成施策へ積極的に参画することが効果的です。
例えば、経営会議で経営人材の育成をテーマとして取り上げ、役員や各事業部の協力を引き出す、人材委員会に経営層が参加して人材候補者の評価を行ったり育成施策を考えたりするなど、経営者自身が育成施策に時間を割いてコミットする姿勢が求められます。
2.人事部が戦略人事としての役割を果たす
経営人材育成の成功には、人事部が戦略的な思考で企画を打ち出し、周囲を巻き込んで育成施策を進めることが必要です。労務管理などのオペレーショナルな業務をこなすだけではなく、人事と経営が融合した「戦略人事」の役割を果たす必要があります。
具体的には、
- 人事部門が経営トップや事業責任者と密なコミュニケーションを取り、経営方針や事業の方向性を把握する
- 経営方針に基づいた経営者像を策定し、育成プログラムを推進する
- 経営者候補の人材がどの程度のパフォーマンスを発揮しているかを事業部と連携しながら評価する
といった関わり方が考えられます。なお、人事部が戦略人事の役割を果たすためには、人事部の人材を育成するのが大切です。戦略人事に向けた人事研修については、以下の記事をご覧ください。
『人事研修とは?戦略人事を担うために必要な内容・テーマ例』
3.現場の管理職が次世代リーダーを育てる意識を持つ
経営者としてパフォーマンスを発揮するためには、日常業務の中で蓄積される業務経験が重要です。経営者候補となる人材が経験から学ぶためには、上司や管理職からの効果的なフィードバックやコーチングが求められます。
経営人材育成を成功させるためには、現場の管理職に「次世代リーダーを育てる」という意識を持ってもらわなくてはなりません。現場の管理職はどうしても目の前の業務に没頭してしまいがちですが、次世代のリーダーを育てることも管理職の仕事です。
現場の管理職が次世代リーダーを育てる意識を持てるよう、管理職としての役割や業務量を見直したり、コーチングやフィードバックのスキルを伸ばす支援を行いましょう。
コーチング研修に関しては以下のページをご確認ください。
コーチング研修
4.合理的な判断で人材を選定する
経営者候補となる人材を選抜する際には、合理的な判断を心がけましょう。合理的な判断を行うためには、自社の経営者に求められる人材要件を明確に定義することが重要です。どういった資質を備えた人材が経営者に向いているのかを、できる限り具体的に人材要件として策定しましょう。
その後、人材要件に沿った観点からの評価を行います。この際にも、人事が現場の管理職と連携したり、経営層にも積極的に参画してもらい、判断基準が合理性に基づいているかどうかを確認するようにしましょう。
5.配置転換などで成長機会を与える
経営者としての実力を磨くためには現場での経験が何より大切です。経営者候補となる人材が数多くの「修羅場」を乗り越えることによって、経営者として困難に直面したときも柔軟に乗り切れる実力や、精神面でのタフさが身につきます。
経験を積んでもらうため、経営者候補となる人材には配置転換などで積極的に成長機会を与えることが有効です。新規事業に参画させたり、戦略上重要なポジションにアサインしたりして、実力を磨いてもらいましょう。
6.個々人のキャリア自律を促す
終身雇用が崩壊し、雇用の流動化が進みつつある現代社会を生き抜くためには、個人が自分自身でキャリアについて考え続ける「キャリア自律」が欠かせません。経営者候補がこうしたキャリア自律を実現していれば、自分自身で積極的に成長し続けることができます。
経営人材育成を成功させるためには、個々人のキャリア自律を促すことも効果的です。用意された研修プログラムを受けさせてパターン化されたキャリアを歩ませるのではなく、個人の能力や特性に応じて自律的にキャリアを考えてもらいましょう。
キャリア自律については、以下の記事で詳しく解説しています。
『キャリア自律とは|企業が支援するメリット・デメリット、事例を紹介』
経営人材の役割
経営人材とはその名の通り、会社を経営する人材です。企業経営を行っていく上でのビジョン、ミッション、目標を設定し、実行の決定権のある人材を指します。多くの場合、企業の社長や専務、取締役・執行役員クラスが経営人材となります。
ここでは、経営人材がどのような役割を担うのかについて、経営学者のピーター・ドラッカーによる役割定義とヘンリー・ミッツバーグによる役割定義の2つを紹介します。
経営学者ピーター・ドラッカーによる経営者の役割
経営学者のピーター・ドラッカーは、著書『経営者の条件』で以下のように述べています。
経営者の職務は、効果的であること、なすべきことを成し遂げるということが期待されている
引用元:ピーター・ドラッカー著『経営者の条件』
ドラッカーにより取り上げられている役割を具体的に見ていきましょう。
全体の決定と責任を持つ
ピーター・ドラッカーは以下のように述べています。
トップマネジメントは何を"専管"とするかを考えなければならない。
全体を見ることができ、全体に責任をもつ者だけが行うことのできる意思決定である。
第一に、事業の決定、組織としての価値観の決定である。
第二に、資金配分の決定である。
第三に、人材配置の決定である。
ピーター・ドラッカー
このように、経営者の役割には、事業の決定、資金配分の決定、人材配置の決定などがあり、それぞれの決定に対して責任を持つことが1つの役割になります。
①事業の決定、組織としての価値観の決定
企業のミッション・ビジョン、参入する市場、製品、事業の決定から撤退すべき事業の決定、組織としての価値観、行動指針などの決定のことです。
②資金配分の決定
資金の調達と配分は経営人材の責任であり、現場の部門には決定権がありません。
③人材配置の決定
人材も企業全体の資源であるため、経営人材が決定する責任があり、現場の部門に決定権はありません。各部からの提案や人事方針によって、実際には現場部門が一部関与することはあっても、決定は経営人材が行います。
ヘンリー・ミンツバーグによる経営者の役割
経営学者ヘンリー・ミンツバーグは、経営者の役割として、対人関係・情報伝達・意思決定という大きく3つの役割を持ち、さらに細かい10の役割があると述べています。
対人関係の役割
1.儀式代表者
法律上、形式上責任を担う存在であり、法人を代表します。
2.リーダー
企業全体や部門のトップとして、メンバーのパフォーマンスをマネジメントします。
3.外部接触
社外関係者との効果的なネットワークを築き、人と人とを結びつけます。
情報伝達の役割
4.モニター
社内外の情報を収集します。
5.周知伝達役
社内外から集めた情報を社内に情報伝達します。
6.スポークスマン
外部への情報発信として、トップや他部署、顧客に情報を発信します。
意思決定の役割
7.起業家
新しいアイデアを創造し、組織の変革を実現します。
8.障害処理者
想定外のトラブルを解決し、責任を持ちます。
9.資源配分者
組織内の人的リソースや財務的リソースなどの経営資源を適切に配分し投入します。
10.交渉者
組織の利益を確保するために組織内外の重要な交渉を行います。
経営人材を育成する際には、これらの役割があるということを伝え、役割認識を持ってもらうことも意識しましょう。
経営人材に求められるスキル
ここまで、経営人材育成においてぶつかりがちな壁や、効果的に育成をするポイント、経営人材の役割 について解説いたしました。
では、実際に経営人材育成を通してどのようなスキルを身につけさせるべきなのか、具体的にご紹介いたします。
経営人材に求められるスキルは非常に幅広いです。例えば経営戦略や事業戦略に関する知識はもちろん、リーダーシップや課題解決スキル、ブランディングやマーケティングに関するノウハウも求められます。
経営人材に求められるスキルを一つずつ解説します。
経営戦略・事業戦略
経営戦略や事業戦略に関する知識を持っていることは、経営者としての大前提です。限られた経営資源を戦略的に分配できるよう、効果的な経営戦略や事業戦略の立案方法について学んでもらう必要があります。
効果的な戦略を立てるためには、競合他社の状況や消費者の動向、社会の流れなどを俯瞰的な視点から分析する能力が重要です。まずは事業戦略レベルの立案から経験を積んでもらい、効果的な戦略を立案するための考え方や視点の持ち方について学んでもらうとよいでしょう。
コーチング研修に関して詳しくは以下をご確認ください。
コーチング研修
リーダーシップ
経営者として活躍するためには、リーダーシップも求められます。リーダーシップは先天的なものだと思われがちですが、実際はそうではありません。リーダーとして活躍する経験を積んでもらう、リーダーシップについて研修で学んでもらうなど、育成施策によって伸ばすことが可能です。
なお、リーダーシップは「カリスマ性」とも混同されがちですが、両者は異なるものであるため注意が必要です。リーダー自身の強いカリスマ性で組織を牽引するだけでなく、周囲との信頼関係を構築しながらチームのパフォーマンスを最大化することもリーダーシップに含まれます。
アルーではリーダーシップ研修も行っています。詳しくは以下のページをご確認ください。
リーダーシップ研修
経営課題の解決力
経営者として企業を牽引する際には、人材確保や生産性向上、コスト改善などさまざまな経営課題に直面します。こうした課題をうまく乗り越えるためには、経営者の課題解決力が重要です。経営人材を育成する際には、経営課題の解決力も磨いてもらいましょう。
経営課題を解決するときは、課題に対して適切な対処ができる経営計画の作成や、評価プロセスの見直しといった施策面からのアプローチが考えられます。どういった経営課題に対してどのような対策があるのかを学んでもらうのが大切です。
経営課題の解決力について詳しくは以下のページをご確認ください。
ベストプラクティスの実装
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組織・人を育成する力
企業が安定して経営を続けていくためには、組織や人材の育成が必要不可欠です。経営者候補の人材には、組織や人を育成する力を身につけてもらいましょう。
例えばフィードバックやメンタリング、コーチングのスキルを高めてもらえば、さらに次の世代のリーダー候補育成もスムーズに進みます。また、組織内に信頼しあえる風土を醸成し、パフォーマンスを高められる文化を作るのもリーダーの役割です。人と組織という双方の観点からアプローチできるよう、育成スキルを高めてもらいましょう。
組織や人を育成するスキルに関しては以下のページもご確認ください。
成果が出せる組織風土の醸成
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マーケティング・ブランディング
現代のビジネス環境は、価格競争だけで勝ち抜くのは困難です。変化と競争の激しい現在でビジネスを効果的に進めるためには、マーケットの需要を素早く見抜いてアプローチするマーケティングやブランディングの観点が欠かせません。
経営者候補の人材には、マーケティングやブランディングの知識が必要です。消費者の動向はどのように変化していて、それに対して自社はどう対応できるのか、またどの事業にどの程度広告宣伝費を投入するのかといった視点を常に持ってもらいましょう。
アルーではマーケティングに関する研修も行っています。詳しくは以下のページをご確認ください。
マーケティング研修
グローバル経営
グローバル化が進んだ昨今では、グローバル経営が多くの企業で重要な課題となっています。少子高齢化の進行によって需要が縮小しつつある日本のマーケットだけに依存せず、海外へ積極的に事業展開しようという企業は少なくありません。
こうした状況下で求められるのが、グローバル経営の視点です。日本だけで事業を行っていた際にとらわれていた無意識の偏見やバイアスから脱し、世界でビジネスを成功させるために必要な俯瞰的な観点が求められます。さまざまな国の商慣習や法律などについて学ぶとともに、異文化の価値観を理解する姿勢も育成しましょう。
アルーではグローバルリーダーに必要な経営スキルやリーダーシップを身につける研修も行っています。詳しくは以下のページをご確認ください。
グローバルリーダーシップ チャレンジプログラム
ビジョン創造
ビジョンは、企業の羅針盤ともいえる重要な存在です。経営者が魅力的なビジョンを定めれば、ビジョンに対する社員の共感を引き出すことができ、組織としてのモチベーション向上につながります。また、信頼感のあるビジョンを発信することで、企業の対外的な評価向上も期待できるでしょう。
経営者候補の人材には、ビジョン創造のためのスキルも身につけてもらう必要があります。そのためには、社会の流れや市場の価値観を理解した上で、自社の役割を見つめ直す俯瞰的な視点が大切です。
企業統治(ガバナンス)
企業経営を行う際には、ガバナンスの視点が欠かせません。特に最近では情報開示や意思決定プロセスの透明化が求められるようになってきているため、ガバナンスに力を入れる企業は多いです。
経営者候補にも、ガバナンスを強化するためのスキルを磨いてもらいましょう。具体的には、ステークホルダーとの適切な関係構築や情報開示の促進、株主間の平等性確保などが考えられます。ガバナンスを強化して、健全な経営の促進を実現しましょう。
リスクマネジメント
企業が安定して経営を続けるためには、リスクマネジメントの考えが重要です。自然災害や感染症の流行、戦争など社会的な変化によるリスクはもちろん、社員のSNS利用によって引き起こされるトラブルや情報流出など、IT技術に関連するリスクも見逃せません。
経営者候補には、こうした具体的なリスクについて考えてもらいつつ、リスクマネジメントを実践する手腕を磨いてもらいましょう。それぞれのリスクの発生確率や重大性などを分析して優先順位をつけ、事前と事後両方の観点から対応策を考える必要があります。
リスクマネジメント研修の実施をお考えの方は、以下のページもご覧ください。
『リスクマネジメント研修とは?目的やおすすめの内容を解説』
経営人材育成の流れ
経営人材を育成する際には、経営リーダー人材像を明確にした上で、人材育成戦略を策定する必要があります。その後、社員のスキルを評価して人材を選抜し、育成施策へとつなげていく、という流れで進行します。
経営人材を育成する流れについて、ステップごとに解説します。
経営リーダー人材像の明確化
自社の経営者に求められる人材要件が曖昧だと、人材育成が行き当たりばったりのものとなってしまいます。経営者候補の人材を育成する前に、まずは経営リーダー人材像を明確にすることが大切です。
経営人材像を考える際には、まず経営戦略を実現するためにどのポストが特に重要で、そのポストにどういった役割が求められているのかを確認しましょう。その後、その役割を果たすために必要な具体的なスキルや能力をリストアップし、能力獲得に必要な業務経験へ落とし込んでいきます。
経営リーダー人材育成戦略の策定
経営リーダー人材像の明確化が完了したら、次にリーダー人材育成戦略を策定します。前ステップで明確化した人材像をもとに、経営リーダー人材の候補となる人材プールや育成方法などを盛り込んだ戦略を立案しましょう。
なお、効果的な戦略を立てるためには、前述した通り経営層のコミットメントが大切です。前例踏襲や縦割り型の戦略ではなく、経営層として必要な経験を幅広く積めるよう現在の経営層が横断的に関わりましょう。
社員のスキル把握と評価
経営リーダー人材育成戦略が確定したら、経営リーダー候補となる人材の選抜に向けて、社員のスキル把握と評価を行います。経営リーダーに求められる人材資質にもとづいて、経営リーダーとなる人材の評価を行いましょう。
なお、社員のスキル把握と評価を行う際には、人事部と経営層、さらには現場の管理職が連携する体制を構築することが大切です。人事部だけ、あるいは現場の管理職だけの評価では、経営リーダー育成戦略を正確に評価へ反映できません。この段階でも、経営層が積極的に時間を割き、経営リーダー育成へコミットする必要があります。
経営人材育成候補者の選別
社員の評価やスキル把握が終了したら、評価結果にもとづいて経営人材育成候補者の選別を行っていきましょう。前ステップと同じく、人事部と経営層、管理職などが密に連携することが大切です。
なお選別を行う際には、経営人材候補から漏れた社員のモチベーションにも注意を払う必要があります。特に育成施策の途中で経営人材候補から外れた社員はモチベーションが低下してしまいがちなので、集中的にケアしましょう。
人材育成計画の策定
経営リーダー候補の人材選別が終了したら、次に具体的な人材育成計画を立てていきます。既に立ててある人材育成戦略にもとづいて、実際にどのような経験を積んでもらうのかという育成計画に落とし込みましょう。
なお育成計画の内容としては、海外子会社のトップや不採算事業への配属などが有効です。さらにはベンチャー企業や中堅企業、海外組織などへの出向を含めた外部との接点の確保もよいでしょう。いずれにしても、一般化された紋切り型の育成計画ではなく、自社の人材要件に沿った経験を積んでもらうことを意識してみてください。
育成環境の整備
人材育成計画を策定したら、計画を実現するために必要な育成環境を整備していきます。各事業部と連携しながら、経営リーダー人材を育成するために必要な体制を整えましょう。
この段階で注意したいポイントは、各部署における優秀な人材の抱え込みを防ぐという点です。事業部門から優秀な人材を引き抜いて多様な経験を積んでもらうためには、各部署の育成計画に対する理解が欠かせません。また、海外拠点では人材受け入れの余力がないケースもあります。こうした点に注意を払いつつ、経営リーダー人材の育成がスムーズに進むような育成環境を整備していきましょう。
育成結果の評価と見直し
育成環境が整い次第、育成施策を実施して評価と見直しを行っていきましょう。この段階では、育成したリーダー候補者の組織的な評価を行ったり、育成計画を実施してわかった候補者の適性や関わり方などを整理したりして、今後の方針を定めるのが大切です。
さらに、評価結果にもとづいて今後の育成施策の見直しも行います。育成候補者の選抜や育成といった一連のプロセスが適切だったかどうかを、現場や本人へのヒアリングを通じて確認しましょう。
アルーの経営人材育成の事例
人材育成を専門に手掛けているアルーでは、経営人材育成に向けたさまざまな研修実績があります。ここでは、アルーの経営人材育成の事例として
- 経営幹部育成
- 女性役員候補者育成研修
- 海外拠点長育成研修
の3つをご紹介します。
経営幹部育成
経営幹部育成は、約30名の役員兼事業本部長やエリア長、海外拠点のCEOを務めることが期待される社員に対して実施した研修です。世界経済や市場の動向、リスクなど激しく変化するビジネス環境を勝ち抜くために必要なリーダーの素質を磨くことを目的として実施しました。
研修では、まず経営幹部として活躍するために現在の立ち位置を確認するところから始めました。経営層として必要な資質と現在の間に存在するギャップを認識した上で、ディスカッションなどを通じてマインド面での発達を中心に実現しています。
女性役員候補者育成研修
女性役員候補者研修は、役員を務める際に必要な広い視野や高い視座を獲得することを目的として実施した研修です。対象者は、今後2年以内に役員へ昇進することが期待されている女性部長2名となっています。
研修ではまず役員の役割認識を深めたあと、会社のビジョンを策定する方法や、事業構想を描く方法について学んでもらいました。現場での実践も含めたアクションラーニングも交えつつ、管理職として必要な能力をバランスよく伸ばした研修事例です。
海外拠点長育成研修
海外拠点長研修は、海外の拠点長として果たすべき役割や必要とされるリスクマネジメントについて学んでもらうことを目的に実施した研修です。主な対象は、将来海外の拠点長として活躍することが期待されている社員となっています。
本研修事例では、海外拠点で想定される具体的なリスクを想定したケーススタディを豊富に取り入れました。「賄賂の発覚」「匿名での告発」「社員の定着率低下」といったさまざまなトラブルにどう対処するのか、リスクマネジメントを学んでもらいました。さらに、魅力的なビジョンを描く方法なども学んでもらい、組織を牽引する力を幅広く磨いた研修です。
経営人材育成ならアルーにお任せください
経営人材を育成するなら、ぜひアルーへお任せください。アルーは、企業向けの人材育成を専門に手掛けている企業です。階層別研修やグローバル人材育成研修など、人材育成に関するノウハウが豊富にございます。
経営人材育成を行う際には、人事部と経営層、管理職が密に連携した人材育成が必要です。アルーでは、人材育成戦略の策定段階から伴走することが可能です。丁寧なヒアリングを行い、個々の企業が抱えている課題に最適化した、アルーならではの研修プログラムをご提供いたします。
まとめ
経営人材育成の際にぶつかる5つの壁や解決策、さらには経営人材育成のステップやポイントなどについて細かく解説しました。経営者を育成する際には、パターン化された育成プログラムをそのまま適用するのではなく、自社の経営環境や課題に合わせた育成戦略を策定することが重要です。
特に現役の経営層が積極的に時間を割き、本気でコミットする姿勢は極めて大切です。ぜひこの記事の内容を参考に経営人材育成を実践し、優秀な経営人材を育成していきましょう。