リスクマネジメント研修とは?目的やおすすめの内容を解説
企業がさまざまなリスクに晒されている昨今において、リスクマネジメントはなくてはならないものとなりました。近年では、組織としてのリスクマネジメントを怠ってしまったことで経済的な損失を被ってしまったり、社会的信用が大きく低下してしまったりするケースも目立ちます。
リスクマネジメントを徹底するには、リスクマネジメント研修の実施がおすすめです。
この記事では、リスクマネジメント研修を実施する目的やおすすめの内容、研修を成功させるためのポイントを解説します。
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リスクマネジメント研修とは
リスクマネジメント研修とは、社内での適切なリスクマネジメントを目的とする、
- コンプライアンス研修
- ハラスメント研修
- 情報セキュリティ研修
などの育成施策のことです。
リスクマネジメントを行うために必要な能力を伸ばすのがリスクマネジメント研修である、と覚えておきましょう。
企業が抱えるリスクは、年々幅広くなってきています。そのため、リスクマネジメント研修でも幅広い内容を取り扱い、多様化するリスクに対処できるよう備えておく必要があります。
リスクマネジメント研修の内容
リスクマネジメント研修では、企業が直面するリスクを低減できるような内容が求められます。具体的には、コンプライアンス意識を向上させるコンプライアンス研修、ハラスメントについて学ぶハラスメント研修などです。
ここからはリスクマネジメント研修におすすめの内容を4つ、紹介します。
コンプライアンス研修
コンプライアンス研修では、仕事に関する法律や規律、さらには企業が抱えているリスクなどを学びます。
コンプライアンス研修で特許権や著作権、労働基準法といった仕事に関連する法律などを学べば、社員は何が法令違反なのかを認識でき、法的なトラブルの発生を防ぐことができます。また、法令について学ぶ機会を設けることによって、法令遵守意識が生まれ、コンプライアンスを守ろうという意識が生まれる点もメリットです。
コンプライアンス研修については下記ページもご覧ください。
『コンプライアンス研修とは?資料の作り方や事例を研修のプロが解説 』
ハラスメント研修
最近では、パワハラやセクハラの他、モラハラやマタハラなど、新しいタイプのハラスメントが社会問題になっています。ハラスメント事案が発生すると、離職や訴訟などのリスクが発生するほか、企業の社会的信用が大きく低下する懸念があります。
ハラスメント研修を行うと、ハラスメントに関する理解を深めることによって何が問題となるのかを認識し、ハラスメントを引き起こすリスクを低減できます。ハラスメントが問題になりがちな昨今、リスクマネジメント研修ではぜひ取り扱いたい内容の一つです。
ハラスメント研修については下記ページもご覧ください。
『【事例あり】ハラスメント研修とは?目的や内容を解説』
情報セキュリティ研修
企業の抱えるリスクの一つとして、情報漏洩が挙げられます。社員のUSBメモリ紛失や、サイバー攻撃などによって企業が管理している顧客データが流出してしまうと、企業の社会的信頼は大きく損なわれてしまうでしょう。
情報セキュリティ研修では、個人情報の管理方法や情報にアクセスする際のルールなど、情報セキュリティを推進するために必要な内容を学びます。また、最近ではSNSに関連するトラブルも多いため、SNSの使い方やルールを伝えるケースも多いです。情報セキュリティについて学んでもらうことで、情報漏洩やSNSに関連するトラブルのリスクを防ぐことができるでしょう。
情報セキュリティを含めたIT研修については、以下の記事も参考にしてください。
『IT研修におすすめの内容を紹介。ついていけない社員を出さないポイント』
海外赴任者向けリスクマネジメント研修
海外赴任拠点がある場合、国内では想定できないような様々なリスクを考える必要があります。たとえば、現地の法規制の変更への対応や社会情勢の悪化、デモやストライキの発生などです。
海外拠点で発生するリスクに対処するために実施されるのが、海外赴任者向けリスクマネジメント研修です。日本国内では馴染みのないようなリスクについて学び、海外で起こりがちなリスクへの対応策を身につけます。なお海外でのリスクについて考える際には、過去の事例をもとにしたケーススタディなどを取り入れると実感が湧きやすいでしょう。
リスクマネジメント研修の目的
リスクマネジメント研修を実施する目的は、社員のリスクに対する意識を向上させ、組織として直面する可能性がある様々な危機を回避することです。企業活動を続けていく際には、どうしても様々なリスクがつきまといます。例えば情報漏洩によるトラブルや、社内でのハラスメント事案の発生などです。
こうした事態は、一度起こってしまうと企業の社会的信用を大きく下げてしまうでしょう。事前にこうしたリスクを想定し、できる限り発生を減らすための対策は可能です。あらかじめ社員に想定されるリスクを伝えて対策することでリスクに対する意識を向上させ、企業としての危機を防ぐことができます。
マネジメントすべきリスクの種類
企業として直面する危機は、以下の4つに分けることができます。
- 法的リスク
- 金融・財務リスク
- ハザードリスク
- 情報リスク
法的リスクや金融・財務リスクは、企業の抱えるリスクの中でもメジャーです。このほか、潜在的な要因によるハザードリスクや、情報リスクなども存在します。企業がマネジメントしていく必要のあるリスクを種類別に詳しく解説します。
法的リスク
法的リスクとは、その名の通り法律に関連するリスクのことです。健全な企業活動を促進するため、企業は様々な法律を遵守する必要があります。例えば特許権や著作権、さらには下請法などです。また、社員の違法行為や脱税、粉飾決済なども法的リスクの一つです。
こうした法律違反が発覚してしまうと、企業の社会的信用が低下するだけではなく、会社としての存続の危機に繋がる可能性もあります。
法的リスクを防ぐためには、あらかじめ社員に対してコンプライアンス研修で法律に対する理解を深めてもらう必要があります。
金融・財務リスク
金融・財務リスクとは、為替の変動や競合他社の台頭によって企業の経営状況が悪化するリスクのことを指します。金融や財務のリスクは、主に企業の経営層が中心となって対処していくべきリスクです。
為替は世界情勢によって複雑に変動するため事前に予測することは難しいですが、あらかじめ予期しない変動を想定した対応策を考えておくといった対策は可能です。また、これ以外の金融・財務リスクとして預金の管理ミスなども考えられます。
ハザードリスク
ハザードリスクとは、災害など企業を取り巻く環境に依存して発生する潜在的なリスクのことです。例えば台風・地震による打撃や、新型コロナウィルス流行などがこれにあたります。
自然災害事態の発生を防ぐことは不可能ですが、拠点を分散させるなど、あらかじめ自然災害を想定した事業戦略を立てることは可能です。また、台風や地震によってインフラがストップしてしまった場合の対応策なども、ハザードリスクへの対処の一環として明確化する必要があります。さらに、リモートワーク体制を整えておくことで感染症の流行に対処するのも、ハザードリスクへの対処の一例です。
災害などのリスクが起こった場合でもいち早く事業を再開するための計画BCPについての研修は、以下の記事で詳しく紹介しています。
『BCP研修の内容とは?効果的な実施方法や対象者を解説』
情報リスク
最近では、社用パソコン・スマホの紛失や不適切なネットワーク管理などで、企業の抱える機密情報が流出してしまう事案が増えています。また、社員によるSNSへの不適切な投稿などもトラブルの元です。
情報漏洩やSNSに関連するトラブルなど、情報に関連するリスクを総称して情報リスクと呼びます。こうしたリスクに備えるためには、個人情報にアクセスできる社員を最小限にしたり、パスワードの設定ルールを定めたりする、さらにパソコンなどを常に最新版にアップデートしておくといった対策が必要です。
リスクマネジメントの全体の流れ
リスクマネジメントの研修を行う前に、自社にはどのようなリスクマネジメントがあるのか、どのように対策すべきかを洗い出しましょう。リスクマネジメントの把握と対策の流れについて説明します。
- リスクの洗い出し
- リスクの優先順位付け
- 目標と対策の設定
- 実行と評価
それぞれのステップごとに、詳しく見ていきましょう。
1.リスクの洗い出し
最初のステップは、リスクの洗い出しです。企業が直面すると考えられるリスクをすべて洗い出し、リストアップしていきましょう。
予想されるリスクの中には、これまで経験したことのないような事案も多く、なかなかリストアップが進まないこともあるかもしれません。そうした場合には、ブレインストーミングなどを活用するのがおすすめです。また、リスクを洗い出す際には、できるだけ多くの部署から様々な社員に参加してもらいましょう。幅広い視点からリスクを洗い出すことによって、抜け漏れに気づくことができます。
2.リスクの優先順位づけ
リスクのリストアップが終わったら、次に優先順位をつけていきます。優先順位の高いリスクとは、以下のようなリスクです。
- 発生する確率の高いリスク
- 発生してしまった場合に、企業に与える損害の大きなリスク
- 対策が簡単なのに、まだ対策をしていないリスク
特に発生する確率が高かったり、重大性が大きかったりするリスクには優先的に対処する必要があるでしょう。社員同士の話し合いを通じてリスクの評価を行い、対処する順番を決めていってください。
3.目標と対策の設定
リスクの優先順位づけの次は、目標と対策の設定に入ります。それぞれのリスクについて、どの水準までコントロールできれば目標達成なのか、また具体的にどういったアプローチで対策を進めていくのかを考えていきましょう。
なお、対策を設定する際には「リスクそのものの発生を防ぐ」「発生してしまった場合の損害をおさえる」という2点に分けて考えるのが有効です。例えばハラスメントや財務ミスといったリスクは、両方の観点からアプローチできます。一方で自然災害などは発生を防げないため、発生した場合にどういった対応を取るのかを優先的に考える必要があるでしょう。
4.実行と評価
最後に、リスク対策を実行し評価を行います。例えばハラスメント研修を実施することが決まった場合は、実際にハラスメント研修を行い、受講者に行動変容が起こったかどうか評価を行いましょう。
リスクマネジメントを行う際には、PDCAサイクルを回すのが有効です。「一度やったら終わり」という考え方ではなく、常に改善していくという意識を持ちながら、継続的にリスク対策を進めるようにしてください。
リスクマネジメント研修実施のポイント
社内でリスクマネジメントを行う際には、リスクマネジメント研修を実施することがおすすめです。それでは、リスクマネジメント研修を成功させるためには具体的にどういったポイントを意識するのがよいのでしょうか。
リスクマネジメント研修を実施する際のポイントを解説します。
新たな技術にも対応した内容にする
近年のAI技術の発展によって、今までにないリスクが発生しています。例えばAIで生成された文章やイラストに他人の著作物が含まれていることに気づかずに、それをそのまま広告に用いてしまうケースなどです。
リスクマネジメント研修を実施する際には、新たな技術にも対応した内容となるよう意識しましょう。企業の直面するリスクは常に変化するものだということを前提に、最新の事例やニュース、ITトレンドなどをキャッチアップする意識が必要です。
見えないリスクまで洗い出す
リスクマネジメントを考える際には、「これは発生しないだろう」などと無意識のうちに目を逸らしてしまいがちなリスクが存在します。しかし、リスクが発生した際に「想定外」という言葉は通用しません。潜在的なリスクでもあらかじめ想定しておき、事前に先回りした対策を打つのが重要です。
リスクマネジメント研修を実施する際には、見えないリスクまで洗い出すという点を意識しましょう。潜在的なリスクを見逃さないためにも、できるだけ複数人でリスクについて詳細に検討するのが重要です。
階層ごとに適切な内容の研修を行う
企業の抱えるリスクには経営層が中心となって対処すべきリスクと、現場が中心となって対処すべきリスクがあります。これらを混在させて研修を行うのは好ましくありません。リスクマネジメント研修を実施する際には、階層ごとに適切な内容の研修を行うようにしましょう。
例えば経営リスクの管理やハラスメントなどは管理職や経営層などが中心となって考えるべき施策です。一方でSNS関連のトラブルや情報セキュリティなどは、上層部も含めた会社全体で対処すべきリスクといえます。
リスクマネジメント研修の実施方法
リスクマネジメント研修を実施する際には、対面形式で実施する方法とオンライン形式で実施する方法、さらには社外サービスを活用する方法が考えられます。それぞれの方法にはメリットとデメリットがあるため、研修内容や社内のリソースに合わせて自社にあったものを検討しましょう。
リスクマネジメント研修の実施方法を3つ解説します。
対面研修
対面研修は、社員に研修会場へ集まってもらって実施する研修のことです。事前に会議室やホールなどの研修会場を用意して行われます。
対面研修の長所としては、双方向的なコミュニケーションが取りやすい点が挙げられます。インタラクティブなやりとりができるため、リスクマネジメントに対する意識も向上しやすいでしょう。一方で、研修会場の確保や参加者の交通費など、研修実施に時間的・金銭的なコストがかかりやすい点はデメリットです。特に遠方の社員へ研修会場まで来てもらう場合、日常業務に影響が出てしまう可能性があります。
オンライン研修
オンライン研修は、ZoomやMicrosoft Teamsなどを用いてオンライン上で実施される研修です。オンラインで実施されるため、会場確保や会場までの移動といった手間をかけることなく研修が実施できます。
長所としては、遠方の社員も含めて気軽に参加してもらえる点があります。特に情報セキュリティ研修など多くの社員が対象となる研修と相性がよいでしょう。ただし、双方向的なコミュニケーションは対面形式と比べると難しいです。また、対面形式と比べて参加者の集中力が続きにくいため、こまめに休憩を取ったり、チャット機能を活用したりといった工夫が求められます。
オンライン研修のポイントについては、以下の記事でも詳しく紹介しています。
『オンライン研修のやり方やメリット・デメリットをわかりやすく解説』
社外サービスを活用した研修
リスクマネジメント研修を実施する際には、社外サービスを活用した研修もおすすめです。
社外サービスを利用するメリットは、社内にはないノウハウを取り入れられることです。特にリスクマネジメント研修の場合、社内では想定されていなかったような潜在的なリスクにも気づくことができるため、有意義な研修となるでしょう。一方で、研修を外部委託する分、金銭的なコストが発生する点はデメリットとなります。またサービスの質にも幅があるため、社外サービスを活用する際には研修を委託している企業の実績などを事前にチェックするようにしましょう。
社外の研修会社に委託する場合のポイントについては、以下の記事でも詳しく紹介しています。
『研修は外部委託すべき?委託している割合や委託先選定のポイント』
リスクマネジメントの研修サービスを取り扱っている人材育成会社「アルー株式会社」の事例をご紹介します。
リスクマネジメント研修の成功事例
A社では、リスクマネジメントについての知識を体系だって教える機会がなく、海外赴任者のリスクマネジメントに不安があるという課題がありました。そこで、アルー株式会社による海外赴任者を対象としたリスクマネジメント研修を実施しました。
リスクマネジメント研修ではまずリスクマネジメントの概念について学んだあと、海外拠点で想定されるリスクを例示しつつ、事態の発生の予防と発生後の対策に分けてリスクマネジメントを考えました。他の拠点の事例について学んだ結果、対応できていないリスクを発見でき、リスクマネジメントにつながったという成功事例です。
アルーの海外赴任者への研修については、以下のページから詳しくご確認いただけます。
駐在員・海外派遣社員育成
リスクマネジメント研修はアルーにお任せください
リスクマネジメント研修をご検討の場合は、ぜひアルーへお任せください。アルーは、人材育成を専門に行ってきた企業で、研修の実施には幅広いノウハウがあります。
特に、お客さまの企業の抱える課題に合わせて柔軟にカスタマイズした研修プランを提供できる点が強みです。「海外展開に力を入れているため、海外でのリスクマネジメントを教育したい」「他拠点展開しているため、オンラインで研修を実施したい」といった様々な要望に対して、柔軟に対応させていただきます。以下のページからお気軽にお問い合わせください。
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