【成功事例あり】海外トレーニー制度とは?目的や成功させるポイント
企業のグローバル人材育成の手段の一つに「海外トレーニー制度」があります。
企業が社員を海外拠点や関連会社に派遣し、実務経験を積ませる制度のことで、若手社員や次世代リーダー層に海外経験を積んでほしい会社に人気の精度です。
しかし、海外トレーニー制度には課題があり、社員を海外に派遣しても期待していた効果が得られないケースも少なくありません。
本記事では、海外トレーニー制度を活用したい方に向けて成功事例を挙げながら詳しく解説します。
海外トレーニーの目的やメリットデメリットも合わせて解説しますので、海外トレーニー制度の成功ポイントを知りたい企業担当者の方はぜひ参考にしてください。
▼海外トレーニー・海外派遣研修のおすすめ3選
▼グローバル人材育成を検討している人事担当者向け資料はこちら
目次[非表示]
海外トレーニーとは?
海外トレーニーとは、企業が人材育成を目的に社員を自社の海外拠点(現地法人)へ派遣する制度です。数ヶ月〜数年程度で実施されるのが一般的です。
希望者を集めて選抜する「公募選抜型」と企業が対象者を決める「アサイン型」で運用されることが多く、海外OJTとも呼ばれています。
近年では海外赴任者の育成だけでなく、グローバルリーダーを効率的に育成できる手法としても注目されている制度です。
▼グローバル人材育成を検討している人事担当者向け資料はこちら
海外トレーニーの目的
海外トレーニーの目的として、以下の6つが挙げられます。
- グローバルタレントプールの育成
- 異文化ビジネス環境への適応力を得る
- 語学力の向上
- 海外現地でのビジネス経験を得る
- 経営を担う人材にグローバルな視点を持ってもらう
- 海外志向の若手社員のリテンション
それぞれの目的について詳しく見ていきましょう。
参考:グローバル人材育成としての「海外トレーニー制度」:その実情と諸課題(白木三秀)2014
グローバルタレントプールの育成
海外トレーニーの目的として、将来の海外駐在員候補となるグローバルタレントプールの育成が挙げられます。
タレントプールとは、潜在する有望な人材に対して企業が継続的にアプローチしていくためのデータベースのことです。これからの時代は業種や規模に関わらず、どの企業においてもビジネスや人材のグローバル化が求められることが増えていきます。
グローバル展開をする企業にとって課題となるのが、長期的なグローバル人材・グローバルリーダーの確保です。グローバルタレントプールを作り、グローバル人材への育成施策を行うことで、将来のグローバルリーダーや経営幹部候補となりうる人材を計画的に育成することができます。
グローバルタレントプールの育成のためには、海外トレーニーとしての経験を良質な学びにつなげる支援とモチベーション維持の支援が必要不可欠です。
異文化ビジネス環境への適応力を得ることも、海外トレーニーの目的の一つです。
▼自社のグローバル人材プール必要数を試算できるシートをダウンロードできます。
異文化ビジネス環境への適応力を得る
現代は国境の垣根がなくなり、先進国に加えて新興国も市場に参入する時代となっています。
そのため、国籍や民族、文化、慣習、ビジネスマナーなどが異なる多様な価値観に対応する必要性が生まれています。
異文化ビジネス環境への適応力を得る手段として海外トレーニーは有効であり、身につけることで日本での常識や慣習が通用しない海外の職場でビジネスを推進する力となるでしょう。
語学力の向上
海外トレーニーの目的の一つとして、語学力の向上も挙げられます。
海外トレーニー制度を利用することで海外のビジネスの場で必要とされるレベルの語学力を習得でき、異文化への理解をより深められます。
語学力の向上は、外国籍社員と働くことが当たり前になりつつある現代において欠かせない要素です。
社員の語学力を高める具体的な方法については、以下の記事をご覧ください。
『語学力とは?社員の語学力を高める方法』
海外現地でのビジネス経験を得る
海外トレーニーによって海外現地でのビジネス経験を得て、今後の学びに活かすことも目的の一つです。
たとえば、現地での経験を定期的に振り返ることや、現地での異文化体験を概念的に把握し持論化することで、学びを再現性のある教訓につなげられます。
このように海外での経験を得て今後の業務に活かせるようになれば、グローバル人材として確実な成長を遂げられるでしょう。
経営を担う人材にグローバルな視点を持ってもらう
海外トレーニーを利用すれば、経営を担う人材にグローバルな視点を持ってもらうことが期待できます。
グローバルにビジネスを展開している企業の経営者であれば、経営を担う人材育成を重要視しているでしょう。
一つの領域に特化した能力ではなく、幅広い要素やスキルを持ち合わせた人材育成のために海外トレーニーは利用されます。海外トレーニーは海外赴任者候補だけでなく、将来の経営幹部候補にもおすすめです。
グローバル人材育成については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
『【企業事例あり】グローバル人材育成の取り組みとよくある課題への対策』
海外志向の若手社員のリテンション
海外トレーニーは、海外志向の若手社員のリテンションや人材確保につながります。
近年、海外駐在を希望する海外志向の高い新入社員が増えてきています。しかし、入社してすぐに海外へ赴任できる社員はごく僅かです。「海外赴任に行けない」という理由で海外志向の強い優秀な社員が離職してしまわないよう、海外トレーニー制度をリテンション施策として活用することもできます。
▼グローバル人材育成を検討している人事担当者向け資料はこちら
海外トレーニーのメリット
海外トレーニーの利用で得られるメリットは主に4つです。
- 異文化交流で視野が広がる
- 海外ネットワークの構築
- グローバルビジネススキルの習得
- 海外赴任候補者の選別ができる
以下の項目では、各メリットを具体的に紹介します。
異文化交流で視野が広がる
海外トレーニーを実施することで異文化交流ができ、視野を広げることが可能です。
国内で得られる情報は断片的なものになりがちですが、現地に赴くことで先進国の文化的厚みに触れられ、新興国の急成長を目の当たりにできます。
多様性への理解や異文化への理解が深まれば、ビジネスにおいても斬新なアイデアが生まれる可能性が高まるでしょう。
海外ネットワークの構築
海外トレーニーは、海外ネットワークを構築する絶好の機会です。
現地の人や異なる国や地域で働く人と交流することで、貴重な人脈を拡大できます。
また、海外でビジネスパートナーの獲得が期待できたり同じプログラムに参加している日本人と交流したりなど、相互の信頼関係の構築にもつながります。
海外ネットワークが構築できると、通常だと知り得ない貴重な情報が入手できる可能性も出てくるでしょう。
将来の国際展開やグローバルプロジェクトにおいて、海外ネットワークは重要な支援となります。
グローバルビジネススキルの習得
海外トレーニーのメリットとして、ビジネススキルの習得も挙げられます。海外事業を展開している企業にとって、グローバル人材の育成は重要なタスクの一つです。
海外事業の拡大や外部パートナー企業の外資化が進んでいる昨今では、グローバル化に対応できるビジネススキルの習得を求められることが増えています。
海外トレーニーは、社員に多様な文化と価値観に触れる機会を提供するため、グローバル人材育成に有効な手段と言えるでしょう。
グローバル人材に必要なビジネススキルの一覧や習得のコツについては、以下の記事をご覧ください。
『グローバル人材とは?定義・必要な能力・育成方法等をわかりやすく解説』
海外赴任候補者の選抜ができる
海外トレーニーを設けることで、海外赴任候補者の選抜ができることもメリットです。
実際に海外現地で適応可能かどうか、ビジネス上でも現地と良好な関係を構築しながらコミュニケーションを図れるかなどを見ることで、海外赴任者としての適性を判断することが可能です。
また、海外赴任者には言語力や異文化への適応能力だけではなく、リーダーシップやビジネス知識など、さまざまなスキルも求められます。
海外赴任者の選別はビジネスの成功に直結し、組織の国際展開やグローバルな競争力を高める重要な要素と言えるでしょう。
海外赴任者の選別方法や育成方法について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
『海外で働く「駐在員(海外派遣社員)」。その育成方法と注意点とは?』
▼グローバル人材育成を検討している人事担当者向け資料はこちら
海外トレーニーのデメリット
海外トレーニーにはメリットがある反面、課題が残されていることも事実です。
現代における海外トレーニーのデメリットとして、主に6つ挙げられます。
- 自分から動かないと仕事にならない
- 帰国後に海外の経験が活かせるかわからない
- 社員が慣れるまで時間がかかる
- 受け入れ先によって効果がまちまちになる
- 受け入れ先に負担がかかる
- コストが高いため少人数の派遣になる
以下では、それぞれのデメリットを詳しく解説します。
参考:『グローバル人材育成としての「海外トレーニー制度」:その実情と諸課題(白木三秀)』(2014)
自分から動かないと仕事にならない
海外トレーニーに参加したとしても、自分から動かなければ仕事になりません。
海外トレーニーは、仕事を通じて成長していくことが大前提です。
そのため、仕事である以上、日本と同じく自分から主体的に動いていかなければならないでしょう。
研修先では、言葉の壁や文化の違いもあるのでフォローはあるかもしれません。しかし、早い段階で自分が求められている動きを把握し業務に取り組んでいくことが必要です。
自ら動くために必要な「主体性」を社員に身につけてもらうコツについては、以下の記事をご覧ください。
『主体性とは?自主性との違いや主体性のある人の特徴・高める方法を紹介』
帰国後に海外の経験を活かせるかわからない
海外トレーニーで得た語学力やコミュニケーション力、多様性への理解などが帰国後の環境で活かせるかどうかはわからず、国内企業では海外の経験を持て余してしまう可能性があります。
帰国後に経験を活かせる業務をアサインするといった対策が必要です。
社員が慣れるまで時間がかかる
日本とは文化や思想が異なる海外で慣れない言語を使いながら働くことはストレスが大きく、生活に慣れるまでにはどうしても時間がかかってしまいます。また、「現地スタッフとの人間関係」「時間外労働」「自身のキャリア形成」などのストレスものしかかります。
こうしたさまざまな重圧に対処するためには、「レジリエンス力」を強化してもらうことが重要です。レジリエンスとは、ストレスが多い状況に対して、前向きかつしなやかに適応していくことです。これには、自分が対峙している逆境をどのように捉えて対応していくかがポイントになります。
レジリエンス力については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
『ストレスフルな海外赴任者に身につけてもらうべき「レジリエンス力」』
受け入れ先によって効果がまちまちになる
海外トレーニーのデメリットとして、海外トレーニーに何をさせるかは受け入れ先によって異なるため、研修内容や研修の成果がまちまちになる傾向があることが挙げられます。
受け入れ先は事業を目的として存在しており、教育機関ではないことに注意が必要です。
また、体系的な育成のしくみができていないケースがあり、トレーニーは何をどこまでやればよいかがわからない可能性があるため、注意が必要です。
受け入れ先に負担がかかる
海外トレーニーは、受け入れ先に負担がかかることもデメリットの一つです。
海外トレーニーを受け入れるにあたって、現地の社員は海外トレーニーに業務を教える必要があります。
さらに現地のルールや価値観など業務以外にも教えることは多岐に渡るでしょう。
研修先の人的リソースに余裕があればいいですが、少ない人数で業務を行っている場合もあります。その場合、自分の業務を行いながら海外トレーニーの指導を行わなければいけないため、負担がかかってしまいます。
コストが高いため少人数の派遣になる
海外トレーニーは、コストが高くなる傾向にあります。
飛行機代や旅費、現地での滞在費など、国内で行う研修と比べるとコストが高くなるため、大人数を一度に派遣することができません。
また、コストが高い分、どのような人材を選抜するか、受け入れ先での学びをどのように得るかなど、制度自体もしっかりと企画する必要があります。
▼グローバル人材育成を検討している人事担当者向け資料はこちら
アルーが支援した海外トレーニー成功事例
アルーの海外トレーニー支援施策は、全員共通である「マインドセット」、「振り返り」に加え「個別型育成」を行い、グローバル人材としての成長をフォローします。
ここでは、実際にアルーが支援した海外トレーニー成功事例を3つ紹介します。
経験学習を促すコーチング
アルーは、海外トレーニーの経験学習を促すコーチングを実施しております。
「海外トレーニーでの経験をこのまま終わらせないようにしたい」「海外トレーニーの経験をどう位置づけるのかを考える機会がほしい」といった企業の課題に対応し、派遣前・派遣中・派遣後の3段階に分けて支援を行っています。
派遣前(1月の事前学習)の際には、グローバル人材としてのマインドセットの習得プログラムとアクションプランの設定を行います。派遣中には経験学習コーチングサポートを行い、先月のアクションの振り返り・当月のテーマの設定とコーチング・アクション策定を1ヶ月に1回実施します。8月の中間振り返り会で、目標達成のためのアクション策定・トレーニー制度の改善案・近況の共有を行い、派遣終了時まで1か月に1回の経験学習サポートを繰り返し行います。
また、派遣終了後の振り返りでは、経験の総括と未来に向けたマインドセットを改めて確認し、アクションプランの策定も行なってもらいます。
フィールドリサーチ中心のトレーニング
アルーでは、海外赴任をしてすぐに現地で活躍できるための「プール人材の育成」を目的とした、フィールドリサーチ中心のトレーニングを実施しています。
42日間の海外トレーニー期間中にフィールドリサーチの時間をふんだんに盛り込み、海外トレーニーの成長を促している点が特徴です。
具体的なカリキュラム例は以下の通りです。
実際に、海外での滞在経験や渡航経験が少なく、現地人とのコミュニケーションに対して抵抗感があった方でも、ショッピングモールにおいて1人で消費者アンケートを実施できるほど成長した事例があります。
また、英語が苦手でそれほど話せない状態の方でも、フィールドリサーチを経たことでためらうことなく英語を話せるようになりました。
海外トレーニーをオンラインで代替した事例
アルーが支援した海外トレーニー成功事例として、海外トレーニーをオンラインで代替した事例があります。
アルーのオンライン研修で設けている異文化対応力を高めるための仕掛けは下記の通りです。
- 日本人が少数派のグループ設計
- 複数プロジェクトを掛け持つマルチワーク
- 外国人混合グループ同士のフェアな競争
オンラインであれば、海外トレーニー制度の「費用が高額になってしまう」、「大人数の派遣ができない」などの課題を解消できます。
当事例で実施した各研修についての詳細は、以下のページからご覧いただけます。
短期海外派遣型オンライン研修
▼サービス資料をメールで受け取る
▼サービス資料をメールで受け取る
日東電工株式会社 海外トレーニー研修事例
日東電工株式会社では、グローバル人財の早期育成のため、複数のグローバル人材育成施策を行っています。そのうちの一つが、海外トレーニー研修です。
海外トレーニー研修では、海外現地法人に社員を一年間、派遣しています。目的は、自社の海外ビジネスの現場を知ること、日本ではなかなか得られない経験をしてもらうことの2つです。アルーからは、一年間の研修期間中、海外トレーニーとのオンラインコーチングを提供しました。トレーニー一人ひとりの現地経験の棚卸と学びの言語化を行い、翌月の挑戦に繋げられるようにするためです。
オンラインコーチングにより、研修参加者一人ひとりが、自身がやってきたことやできたこと、今後どういうアクションをとり、どうなりたいのかといった情報を言語化することができました。「社内リソースだけでは難しかったと思う」と、人事担当者様からは好評の声を頂いています。
当研修について詳しくは、以下のページをご覧ください。
日東電工株式会社 体系的にグローバル人財を育成するグローバル人財早期育成プログラム事例
▼事例資料ダウンロード
▼グローバル人材育成を検討している人事担当者向け資料はこちら
アルーでは海外トレーニー赴任支援を行っています
海外トレーニー制度を検討しているなら、アルーにお任せください。
アルーでは、グローバル人材育成の一環として「海外トレーニー赴任支援」を行っています。
具体的には、海外トレーニーの海外赴任中のモニタリングと海外実地経験を良質な学びにつなげるコーチングサポートを実施しています。赴任期間中の成長を促すためには、トレーニーの経験学習サイクルを支援することが必要です。
以下のようなお悩みをお持ちのご担当者様はぜひアルーへご相談ください。
- 現地法人に一任しているため、コストをかけて海外へ人員を派遣しているにも関わらず実務処理が中心となりトレーニーが良質な経験を得られていない
- 本社が期待している経験を海外トレーニーが得られていない
- 定期的な海外トレーニーの状況・学びのモニタリングが必要だが、育成対象者の多さなどが原因で本社人事のリソースを十分に割けない
アルーが行っている海外トレーニー赴任支援は、以下のページで詳しく確認できます。
海外トレーニー赴任支援
▼サービス資料をダウンロードする
▼グローバル人材育成を検討している人事担当者向け資料はこちら
まとめ
海外トレーニーは、海外赴任者の育成にとどまらずグローバルリーダーの効率的育成を可能とする制度です。
目的を明確にして利用することで、海外ネットワークの構築・グローバルビジネススキルの習得といった高い効果を得られるなど、さまざまなメリットが存在します。
ただし、海外トレーニーを成功させるには、日本本社の人事担当者による研修前後のフォローアップなど、欠かせない要素がいくつかあります。
海外トレーニーを成功させたいご担当者様は、ぜひアルーにご相談ください。
海外トレーニーを派遣して終わりではなく、海外トレーニーが海外での実務経験から学びを得て経験学習を回していくための適応支援をご提案します。