グローカル人材とは?必要なスキルや育成方法・事例をご紹介
グローカル人材とは、グローバルな環境下で通用するスキルや視点を持ちながら、地域社会の発展に貢献することができる人材のことを指します。グローバル人材との違いやグローカル人材に求められるスキル、育成方法について解説します。
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グローカル人材とは
グローカル人材とは、グローバルな環境下で通用するスキルやグローバルな視点、経験を持ちあわせており、且つ、地域社会や経済の活性化、持続的発展に貢献することができる人材のことを指します。
グローカルとは、グローバル(global)とローカル(local)を合わせた造語です。
イギリスの社会学者Roland Robertsonのグローカル化論によって学術用語としても広がりました。ロバートソンは、「グローカリゼーション(glocalization)」という新しい用語を用いて、ローカルなもののグローバル化とグローバルなもののローカル化が同時に起こることを明らかにしています。
「Think Globally, Act Locally(地球規模で考え、地域で行動する)」という言葉は、ビジネスや環境、教育など様々な分野で使われています。このコンセプトを体現できる存在として、グローカル人材は多くの企業で求められています。
グローカル企業とは
グローカル企業とは、地域に根ざしながら、グローバルに事業を展開している企業のことを指します。
世界を視野にいれて事業展開をする「グローバル企業」と、地域密着でサービス展開をする「ローカル企業」の特徴を兼ね備えている点が特徴です。
グローバル企業としても、ローカル企業としても、高いクオリティで事業を展開しています。
グローバル企業の場合、どの国でも本国と同じビジネススタイルをとっており、販売する商品やサービスも本国とほぼ変わらないケースが多いです。一方、グローカル企業の場合、地域に合わせたビジネススタイルや商品・サービスへと変化させていることが特徴です。
グローバル人材との違い
グローカル人材とグローバル人材の違いは、地域性を持つか否かという点です。
グローカル人材は、グローバルな視野と地域に密着した視点の両方を持ちあわせています。
一方、グローバル人材には語学力や異文化理解力、グローバルな視点での戦略的思考などが必要ですが、必ずしも地域性は必要ありません。
総務省によると、グローバル人材は以下のように定義されています。
日本人としてのアイデンティティーや日本の文化に対する深い理解を前提として、豊かな語学力・コミュニケーション能力、主体性・ 積極性、異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野で活躍できる人材
引用元:総務省|報道資料|グローバル人材育成の推進に関する政策評価 <結果に基づく勧告>
グローバルで活躍する人材全般をグローバル人材と呼び、グローバルで活躍できる経験、知識、スキル、視野を有しながらも地域に貢献する人材をグローカル人材として区別します。
グローバル人材について詳しくは以下のページをご参照ください。
『【企業事例あり】グローバル人材育成の取り組みとよくある課題への対策』
グローカル人材が注目される背景
グローカル人材が注目される主な背景としては、以下の2つが挙げられます。
- グローバル化の課題解決
- 現地化の重要性
それぞれ解説します。
グローバル化の課題解決
グローバル化が進み、海外進出を果たした日本企業も多くなっています。しかし、文化や信仰、慣習などが異なる地域において、世界的に画一化された水準は必ずしも受け入れられないという問題が表出してきています。
世界基準を保ちながらも地域に寄り添うことが、これからのグローバル企業には求められているのです。
ローカル化の重要性
グローバル化により海外進出をした後に重要なことは、ローカル化(現地化)です。自社のサービスが日本や他の多くの国で売れたとしても、そのサービスがどの国でも一律に同じ需要があるわけではありません。場合によっては、サービスの訴求内容を変える必要があるかもしれませんし、サービスそのものやブランドイメージ、価格設定、付加価値などを見直す必要が出てくる可能性もあります。その国で収益を上げてマーケットに根付いていくには、現地の文化やニーズに合わせて変化する必要があるのです。
企業がグローカル人材を育成するメリット
グローカル人材が企業にもたらすメリットは大きく以下の3つです。
- グローバル経営の安定化
- 現地の雇用・経済の活性化
- 企業全体の成長につながる
それぞれ解説します。
グローバル経営の安定化
グローカル人材がいることで、企業のグローバル経営が安定します。
たとえば、海外拠点の支店長がその国における文化や価値観などに対応した経営を行うことができれば、海外拠点での事業存続が可能となるでしょう。
現地のことを十分に理解し、先を見通すことのできる人材がいることで、その土地に合った戦略やトラブル時の対策を立てることができます。
現地の雇用・経済の活性化
グローカル経営を行うことで、現地の雇用や経済の活性化に寄与することができるのもグローカル人材を育成するメリットです。
現地社員を採用する、現地に合わせたビジネススタイルに変更する、といった方法をとることで、地域に貢献する企業というイメージを得ることができます。
地域に根ざした事業を行うことができれば、長期的、安定的に多くの利益を上げることができるでしょう。
企業全体の成長につながる
グローカル人材がいることで、企業全体の成長にも繋がります。
グローカル人材を始めとした多様な価値観を持つ人材が企業内にいることで、社内に新しい考えやアイデアが広がるきっかけとなるのです。グローカル人材は異文化理解力や異文化コミュニケーション力に優れているので、多様な価値観を受け入れる土壌作りをする際に役割を果たしてくれるでしょう。
グローカル人材に必要なスキル・マインド
グローカル人材には、グローバルで活躍するためのスキル・マインドと、地域性を把握し商品やビジネススタイルに結びつけるスキル・マインドの両方が求められます。
具体的には以下の8つのスキル・マインドが必要です。
- 語学力
- コミュニケーション力
- 異文化や異なる習慣への対応力
- 現地の魅力や課題を見つける力
- ローカライズ力
- 地域に貢献する気持ち
- 柔軟性
- 関係構築力
それぞれ解説します。
語学力
グローカル人材には高い語学力が必要です。外国人を相手に地域や産業の説明をしなければならないため、ビジネスレベルの現地語または英語の読み書きやスピーキング、リスニングがスムーズに行えることが前提です。さらに、現地語・英語でのプレゼンテーション力や部下マネジメント力など、現地語・英語でステークホルダーとコミュニケーションを取ることが求められます。
語学力について詳しくは以下のページをご参照ください。
『語学力とは?社員の語学力を高める方法』
コミュニケーション力
グローカル人材にはコミュニケーション力が必須です。
グローカル人材に求められる最大の役割は、企業を海外マーケットと結び付けるための「橋渡し」です。日本とは異なる文化や想像できないような価値観をもった住民と接する場面もあるでしょう。その際にトラブルにならないよう、相手を尊重しフレキシブルに対応できるだけのコミュニケーション能力が必要です。
相手の話をよく聞き的確に理解する力、自分の考えをわかりやすく伝える力は、海外で自社の魅力や強みを伝える上でも重要なスキルと言えます。
グローバルな環境下で求められるコミュニケーション力について詳しくは以下のページをご参照ください。
『グローバルコミュニケーション研修とは|内容や目的・効果的に行うコツ』
異文化に関する知識と対応力
グローカル人材に必要なスキルの一つが異文化対応力です。
国や地域によって習慣や文化は異なります。日本と海外の違いをしっかり認識できていないと、無自覚で失礼な言動をしてしまう可能性があります。
また、日本と海外では商習慣やコミュニケーションスタイルも異なります。日本でのやり方に固執することなく、現地に適応していく力が求められるのです。
地域との信頼関係を築くためにも、相手の習慣や文化を理解する力、尊重する姿勢が重要です。
現地の魅力や課題を見つける力
グローカル人材には、地域の魅力や課題を見つける力も求められます。
その地域の持つ魅力と課題を把握できていれば、相手に「自分たちを理解してくれる」という安心感を与えることができるでしょう。
ただし、相手の課題を指摘するだけでは受け入れられない可能性が高いので要注意です。
地域の魅力を自分の言葉で語った上で、さらによくするための課題解決案を提案する必要があります。
現地の魅力や課題をきちんと理解した上で、自社の商品やサービスがどのように地域に貢献できるのかを説明できると説得力が向上し、地域でのビジネスがうまくいくでしょう。
ローカライズ力
ローカライズ力とは、特定の国や地域に向けて作られたサービスを、ほかの地域や国でも使えるよう仕様変更するスキルのことです。
自国で培ったノウハウが絶対のものであると思い込まず、現地の人々の価値観や好みを理解し、受け入れられるためのマーケティング力や柔軟な発想が必要になります。
ローカライズ力は企業が海外で成功するために、最も重要なスキルとも言えるでしょう。
地域に貢献する気持ち
グローカル人材は、「特定の地域」の発展を目指してグローバルビジネスを行います。そのため、その地域に貢献したいと心から感じていることが重要です。
「地域に貢献したい」という気持ちを高めるには、地域の文化や価値観を積極的に学んで体感していくのが有効です。
柔軟性
柔軟性があると、現地の価値観や現地文化に直面しても自ら適応できるようになります。海外の文化の中には日本とは異なる考え方や習慣があります。そういった場面に直面した際に、現地の文化を否定したり、自身の考え方を押し付けたりせずに、受け入れることが重要です。柔軟性が高ければ高いほど、ローカルに溶け込みやすくなります。
関係構築力
関係構築力とは、現地社員や現地パートナーと自ら良好な関係を構築できる力です。ビジネスはもちろんですが、国によってはプライベートやランチ、ディナーなどで親睦を深める文化を有する国もあります。そういった国では、プライベート面でも現地の人と関係を構築できるとローカルに溶け込みやすくなります。
グローカル人材の育成・採用方法
グローカル人材の育成方法には主に以下3つがあります。
- 社員に対する海外留学制度の導入
- グローカル人材研修を実施する
- 海外経験を持つ人材を採用する
それぞれ解説します。
社員に対する海外派遣制度の導入
グローカル人材に必要なグローバルな視野や地域視点を身につけてもらうためには、海外派遣することが有効です。
日本国内での体験だけでグローバルな視点を持つことは難しいでしょう。
一定期間、海外でビジネスを行い、現地の人々と交流することで、現地の人の価値観や見方、考え方を実感できます。
海外派遣制度としては、社員を自社の海外拠点に派遣する「海外トレーニー制度」がおすすめです。海外トレーニー制度について詳しくは、以下のページをご参照ください。
『【成功事例あり】海外トレーニーとは?目的や成功させるポイント』
グローカル人材研修を実施する
グローカル人材研修を行うことで、必要なスキルや知識を覚え、実践に活かすことが可能です。研修を実施する際には、語学力やコミュニケーション力はもちろん、 グローバル環境下で成果を出すためのマインドセットも含めて網羅的にプログラムを組みましょう。
自社が求めるグローカル人材像を洗い出し、現在の社員の実態に沿って必要な研修プログラムを導入するのがおすすめです。
育成体系の構築について詳しくは、以下のページをご参照ください。
『【企業事例あり】グローバル人材育成の取り組みとよくある課題への対策』
海外経験を持つ人材を採用する
海外経験を持つ人材を採用し、グローカル人材へと育てる方法もあります。
既に海外で活躍した経験を持つ人材は、現地の魅力や課題を理解している可能性が高いです。また、語学力やコミュニケーション力も備わっていることが期待できます。採用後に自社理念や商品に関して理解してもらえば、即戦力として活躍してもらえるでしょう。
また、自社のグローカル人材育成に携わってもらえば、社内でのグローカル人材のタレントプール作りも可能です。
グローカル人材の育成研修事例
事例1: 【京都市×GLOCAL】突破しよう!もっと京都が好きになるプロジェクト
特定非営利活動法人グローカル人材開発センターとTOPPAN株式会社が連携し、大学生や大学院生のグローカル化に取り組んだ事例です。
TOPPAN株式会社のリソースを活用し、「京都市がマイノリティの住みやすい街になるには?」「京都市のオーバーツーリズムを解消するには?」といった課題に取り組むワークショップです。
即戦力となるグローカル人材育成ではありませんが、学生にグローカルの視点を学んでもらい、アイディアを提案してもらった事例です。次世代のグローカル人材育成のためには、このような自治体やNPOとの連携もおすすめです。
参考:【京都市×GLOCAL】突破しよう!もっと京都が好きになるプロジェクト | 学生向けプロジェクト一覧 | グローカルセンター|若者がワクワクする社会を創る。
事例2:愛媛グローカル人材育成プラットフォーム
独立行政法人国際協力機構 四国センターでは、少子高齢化が進む愛媛県の課題を解決しようと愛媛グローカル人材育成プラットフォームを運営しています。
愛媛県から海外協力隊へ参加したり、海外協力隊の経験者へ愛媛県での活躍の場を提供したりと、グローカル人材を育て活用する制度を整えています。
グローカル人材を育成する際には海外派遣研修が有効ですが、海外派遣研修に行くだけではグローカル人材にはなれません。独立行政法人国際協力機構 四国センターの取り組みのように、海外で学んだあとに知識や経験を活かせる場をいかに用意できるかが重要です。
一人ひとりに合ったプログラムで、実践につながるグローカル人材の育成を。
グローカル人材を育成するためには、育成対象者の選定と対象者に合った研修内容の選定が重要です。
アルーのグローバル人材育成研修なら、対象者一人ひとりに対して、どのスキルを伸ばすべきなのかを明らかにし、適切な育成プログラムや研修を用意することができます。
たとえば異文化対応力やグローバルコミュケーション力、ビジネススキルを育成するために外国人と共同でワークショップを実施したり、シミュレーションを中心とした実践力を身につける研修プログラムを実施したりと、課題に応じてカスタマイズが可能です。
グローカル人材・グローバル人材育成サービスについて詳しくは、以下のページをご参照ください。
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