異文化対応力とは?高めるために必要な要素と育成方法を解説
異文化対応力とは、様々な文化的背景を持つ人々を理解し、信頼関係構築のために適切な行動をとれる力のことです。異文化対応力を高めるためにはマインドセットと知識の双方が必要です。異文化対応力を高めるコツやおすすめの育成施策をご紹介します。
▼異文化対応力向上におすすめの研修・サーベイ3選
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異文化対応力とは
異文化対応力とは、様々な文化的背景を持つ人々を理解し、信頼関係構築のために適切な行動をとれる力のことです。具体的には、以下のような力が該当します。
- 異なる文化の習慣や慣習を理解する能力
- 異文化に対してオープンな姿勢を持って受容する能力
- 異文化と交流する際に適切な行動や態度を示す能力
- コミュニケーションの齟齬が生じたときに解決する能力
- 日本の商慣行を含めた日本文化を理解してもらう能力
- 日本文化や自身の価値観から離れ、相対的な視点で客観的に物事を捉えられる能力
全米の大学を代表する専門教職員によって作成されたVALUEルーブリックでは、以下のように定義されています。
様々な文化的背景を持つ人々との効果的かつ適切な交流・関わりを可能にする一連の認識・情緒的・行動的能力及び特性
参照:異文化知識・対応能力に関する VALUE ルーブリック
また、Byram (1997, 2008) は異文化対応力を「態度」「知識」「解釈と関連づけのスキル」「発見と相互交流のスキル」「批判的な文化意識/政治教育」の5つの構成要素からなるとしました。
参照:異文化対応力測定尺度の試験的運用による短期語学留学の効果検証
異文化をもつ人々と信頼関係を構築するには、語学力だけでは十分ではありません。異文化対応力を発揮し、積極的にコミュニケーションを取っていく必要があります。
異文化対応力が必要とされる背景
異文化対応力が必要とされる背景として、大企業を中心に海外進出が増え、ビジネスのグローバル化が進んでいることが挙げられます。
近年では、国・地域ごとの言語や文化に応じた事業を展開したり、国内の特定の地域に密着したりしながら世界に事業を展開する企業も増え、グローカルな人材のニーズも高まっています。
グローバルビジネスを円滑に進め収益を最大化するためには、円滑な対人関係が必要不可欠です。異文化間の誤解や対立を避けるためにも、異文化対応力は重要なスキルです。グローバル環境下で働くビジネスパーソンには必須のスキルと言ってよいでしょう。
グローカル人材について詳しくは以下のページをご参照ください。
『グローカル人材とは?必要なスキルや育成方法・事例をご紹介』
異文化対応力の土台となる文化的知性(Cultural Intelligence)
異文化対応力を身につけるには、土台となる「文化的知性(Cultural Intelligence)」が必要です。「文化的知性(Cultural Intelligence)」と、文化的知性を測る指標「CQ」について解説します。
文化的知性とは
グローバルな人材を育成する際に不可欠なスキルとされているのが「文化的知性(Cultural Intelligence)」と呼ばれる能力です。
簡単に言えば、様々な文化が入り混じる状況において、相手や今の状態を正しく理解し推論するスキルです。また、異なる文化をもつ相手を理解しようというマインドセットも重要です。
文化的知性(Cultural Intelligence)は「異文化適応力」と訳されることもあります。
文化的知性に優れた人は、自身が生まれ育った狭い文化的境界を飛び越えて、異文化がぶつかり合う場面において異文化同士の相互理解を促すことができます。自分自身が相手を理解しようとするのはもちろん、相手に自分の文化について分かりやすく説明することができるのです。
文化的知性はマネージャーなどの役職者に特に必要とされます。高度な文化的知性を持っていれば、偏見を持たずに異文化を受け入れることができます。異文化の部下や顧客ともスムーズにコミュニケーションを取れるので、グローバル環境下でのビジネスがスムーズに進むのです。
文化的知性を測る文化指数(CQ)
文化的な知能、つまり文化指数を評価する尺度として「CQ(Cultural Intelligence Quotient)」があります。日本語では「カルチャーインテリジェンス指数」とも呼ばれます。GoogleやStarbucks、Coca-Cola、ハーバード大学などの世界的な企業・組織が取り入れている尺度です。
CQは、2000年代初頭に Christopher Earley と Soon Ang によって初めて使用されました。その後、2015年にDavid Livermore がこれを発展させ、異文化間のパフォーマンスを測定する方法として「Leading with Cultural Intelligence」を発表しました。
Livermore は、文化的知性には大きく分けて4つの要素があるとしています。
- CQ 動機: 多様な文化的状況の中で効果的に役割を果たす能力に対する自信
- CQ 知識: 文化間の類似性と相違性に関する理解
- CQ 戦略: 文化的に異なる経験をどのように理解し、処理するか
- CQ 行動: 異文化に合わせて、言語や非言語での行動を適応させる能力
CQが高い人はこれら4つの能力をすべて持ち合わせています。ただし、現時点でどれかが欠けていたとしても、学びや経験を通して後天的に能力を獲得することができます。
異文化対応力を高めるメリット
社員の異文化対応力を高めると、企業には以下のようなメリットがあります。
- イノベーションを起こしやすい
- 多様な人材を活用できる
- 海外事業展開や事業拡大が見込める
それぞれ解説します。
イノベーションを起こしやすい
社員の異文化対応力を伸ばし、組織の中で異文化を受け入れる土壌ができあがると、イノベーションが起こりやすくなります。多様性があり、かつ異文化を本質的に理解する能力が高い組織は創造性に富んでおり、文化の違いを活かしたイノベーションの創出につながりやすいのです。
一方、多様性があるということは組織としての同質性は低いということです。多様性を推進すると、居心地の悪さを感じる社員は増えるでしょう。仕事の進め方やコミュニケーションの仕方に違いが生まれるため、異文化対応力を備えていない人材にとっては働きづらい職場になることに注意が必要です。
多様な人材を活用できる
異文化対応力の高い人は、さまざまなバッググラウンドを持ったメンバーと円滑に協業できます。そのため、社内に異文化対応力が高い人が多ければ、ボーダーレスに人材を採用し活用することができる。
特に、人材をマネジメントする管理職層の異文化対応力が重要です。管理職の異文化対応力が高ければ、さまざまな文化をもった部下を適切にマネジメントし、能力が発揮できるように支援できるでしょう。
海外事業展開や事業拡大が見込める
異文化対応力が高い人材がいれば、海外進出を行う場合もスムーズに展開させることができます。また、既に進出している海外現地法人での事業拡大をする際も、海外拠点で現地社員のマネジメントを行ったり、海外のステークホルダーと信頼関係を築いたりすることに繋がるため、異文化対応力は必須です。
また、海外に拠点を持たないとしても、外国籍社員の増加やインバウンド需要に対応するためには異文化対応力が必要です。異文化を理解することで円滑に協働したり、異文化の消費者のニーズに合ったサービスを開発したりできるでしょう。
異文化対応力を高めるために必要な要素
異文化対応力を高めるためには、「異文化に対する意欲」「異文化に対する知識」「多様な文化に対する客観的かつ俯瞰的な視点」の3つを伸ばすようにしましょう。それぞれ解説します。
異文化に対応する意欲
まず、異文化と積極的に交流し理解しようという心構えが必要です。
日本は他国と比較して、異文化と触れ合う機会が少ないと言われています。ビジネスを行う上でも、日本文化が土台となっている相手とのコミュニケーションの方が多いはずです。そのため、自ら異文化と関わろうとする意欲がないケースも多いでしょう。
自ら関わろうとする意欲がない場合、「仕事が終わったからといって勤務中にSNSを見ていた」「残業を依頼したら不満そうな顔をされた」など、日本文化からすると非常識な言動に遭遇した際に、相手を理解しようとせずに決めつけで判断してしまいます。相手からすれば「家族の予定が何よりも大切な文化なので残業を断った」だけなのに、「この人は不真面目だ」と誤った判断をしてしまうのです。
異文化対応力を高めるためには、日本とは異なる文化に遭遇した際に自分からコミュニケーションをとって理解しようと努めることが必要です。文化の違いによる壁を恐れずに、自ら異文化の人々と交流していくマインドセットを身につけましょう。
異文化に対する知識
異文化対応力を身につけるには、異文化に対する知識も必要です。
相手の国の政治や文化、経済システムなどに関する幅広い知識を持っていれば、コミュニケーションがスムーズに進みます。ビジネスを進める上での商習慣の違いも把握し対応できますし、教養がある人物だとして海外の高位役職者に一目おかれることもあるでしょう。
ただし弊害として、知識を有しているがゆえに、特定の文化に属する人をステレオタイプ化してしまう可能性があります。あくまでも、目の前の相手を一人の人間として理解しようとする姿勢が重要です。
多様な文化に対する客観的かつ俯瞰的な視点
異文化対応力を高めるためには、客観的かつ俯瞰的な視点で異文化を見ることも必要です。「○○人はみな時間にルーズだ」「□□人はみな明るく陽気だ」といった特定の文化に対するステレオタイプがあると、相手を正しく理解できなくなってしまいます。
自身のステレオタイプを積極的に見直し、異文化交流の中で偏った判断基準を持ち込まないようにする姿勢が必要です。自身の考え方に常に疑問を持ち、認識をブラッシュアップしていく力を身につけましょう。
異文化対応力が高い人材の育成方法
異文化対応力が高い人材を育成するには、次の4つの方法がおすすめです。
- 異文化交流の場を提供する
- 人材研修プログラムを利用する
- 海外の人材を採用する
- 海外現地研修、海外赴任など海外現地の機会を与える
それぞれ解説します。
異文化交流の場を提供する
異文化対応力を育てるためには、実際に異文化の人々と話す機会を増やすことが重要です。異文化の人々とコミュニケーションを繰り返すことで、それぞれの価値観や思考、行動様式などを知ることができます。すると、自身の持つ価値観を見直し、視野を広げるきっかけにできるのです。
語学学校や大学への社会人入学を推奨する制度を作るのもよいでしょう。異文化の人々と接することで、これまでの自身の価値観を変革し、異文化を受容する器の広さを身につけることができます。
人材研修プログラムを利用する
異文化対応力を高めるための研修を実施するのもおすすめです。
グローバル人材育成の一環として、異文化対応力を高めるためのプログラムを用意しましょう。グローバルマインドセットや各国のコミュニケーションスタイルなどを講義で体系的に学んだあと、シミュレーション演習などで実践の機会を設けると効果的です。
社内で異文化対応力について教えられる人材がいない場合は、社外の講師を呼んで研修を行うのも一つの手です。
アルーでは、主に駐在員に向けて異文化コミュニケーション研修を実施しています。詳しくは以下のページをご参照ください。
異文化コミュニケーション力研修
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海外の人材を採用する
異文化対応力を高めるために、海外出身の人材を積極的に採用するのも有効です。
近年はダイバーシティに対する取り組みとして、大企業を中心に外国人材を積極的に採用する流れが進んでいます。実務の中で多様な文化の人たちと関われば、実践的な異文化対応力が身につくでしょう。
職場の同僚に外国人のメンバーがいれば、相手を理解したいという思いが生まれやすく、異文化に対する理解が深まりやすいのもメリットです。
海外現地研修、海外赴任など海外現地の機会を与える
国内だけで異文化対応力を身につけるのには限界があります。社員に海外赴任や海外研修のチャンスを与え、海外現地での経験を与えるとよいでしょう。
自社の海外拠点に社員を派遣する「海外トレーニー制度」や海外留学、語学留学、海外に社員を派遣し現地でワークショップなどを行ってもらう「海外派遣研修」がおすすめです。
海外トレーニー制度について詳しくは以下のページをご参照ください。
『【成功事例あり】海外トレーニーとは?目的や成功させるポイント』
海外派遣研修については、以下のページをご参照ください。
短期海外派遣型研修
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アルーの短期海外派遣研修で、異文化対応力の高い人材を育成しよう。
アルーでは、外国人と協働して異文化対応力を鍛えるための短期海外派遣研修「Global Challenge Program」をご用意しています。
日本人少数派の環境に身を置き、異文化背景を持つ外国人と協働・競争をすることで、プロジェクトの進め方・時間感覚・スピード・アウトプットの違いを体感できるプログラムです。
実際に海外に派遣するオフライン版と、日本にいながら研修を行うオンライン版の2つがあります。オンライン版研修であれば海外での滞在費や渡航費が不要なため、研修コストを大きく削減することができます。
短期海外派遣研修について詳しくは以下のページをご参照ください。
オフライン版:短期海外派遣型研修
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オンライン版:短期オンライン海外研修
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また、自社の異文化対応力のレベルを測定したい方は、グローバル適性診断「ALPath_global(アルパス グローバル)」の利用がおすすめです。
ALPath_globalについて詳しくは以下の資料をご参照ください。