女性活躍推進とは?期待できる効果・具体的な施策・国の取り組みもご紹介
人材不足や多様な働き方の重要性が叫ばれる昨今、女性活躍推進はすべての企業にとって重要なテーマです。最近では2022年に女性活躍推進法が改正されるなど、国の動きも目立っています。
この記事では、女性活躍を推進することで企業が得られる効果や、女性活躍推進に向けた具体的な施策例を解説します。国の取り組みや企業事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
▼女性活躍推進におすすめの研修3選
目次[非表示]
- 1.女性活躍推進とは?
- 2.女性活躍推進法とは
- 3.女性活躍推進の背景
- 4.女性活躍推進により期待できる効果
- 5.企業ができる女性活躍推進の施策例
- 6.企業の女性活躍推進の進め方
- 7.女性活躍推進のよくある課題
- 8.女性活躍推進を成功させるコツ
- 9.国の女性活躍推進の取り組み
- 10.女性活躍推進を進めるならアルーにお任せください
- 11.アルーの女性活躍推進支援事例
- 12.まとめ
女性活躍推進とは?
女性活躍推進とは、企業において、女性が持つ個性や能力を十分に発揮できる環境を整えるために実施する一連の施策のことです。
最近では、グローバル化やIT化の進展により、企業を取り巻くビジネス環境の複雑さが増しています。そのため、ダイバーシティや多様性に配慮した企業経営が重視されるようになり、その一環として女性活躍に取り組む企業が増えてきています。また、人材不足や消費者ニーズの多様化も、女性活躍の必要性が増している一因です。
女性活躍推進法とは
女性活躍は昨今の日本において重要なテーマとなっており、2016年には女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)が制定されました。
10年の時限立法として施行された同法では、以下の3つの取り組みを企業に対して義務付けています。
- 自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析
- 状況把握や課題分析を踏まえた行動計画の策定・届出・公表
- 女性の活躍に関する情報公表
制定当時は「301人以上の労働者を雇用する事業主」のみが女性活躍推進法の適用対象でしたが、2022年には法改正が行われ、「労働者が101人〜300人の中小企業」まで適用範囲が拡大しています。
認定を受けると認定マークを利用可能
女性活躍推進法に基づく一定の基準を満たすと、「えるぼし・プラチナえるぼし」マークの認定を受けることができます。えるぼし認定は、プラチナえるぼしも含めて計4段階に分かれているのが特徴です。また、2022年4月からは、新たな認定制度として「くるみん・プラチナくるみん認定」「トライくるみん」がスタートしました。
こうした認定は対外的なPRに活用できるため、企業のイメージアップにつながります。また、落札方式や企画競争による公共調達の際には、こうした認定による加点を受けることが可能です。
女性活躍推進の背景
女性活躍推進が叫ばれている背景はさまざまです。代表的なものとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 労働人口の減少
- 日本の女性活躍推進の遅れ
- 顧客・消費者のニーズが多様化している
- 外国企業との競合や他業界の新規参入
女性活躍推進が必要とされている背景について、一つずつ詳しく解説します。
労働人口の減少
女性活躍が必要とされている背景の一つに、労働人口の減少が挙げられます。
少子高齢化は、日本の社会問題です。日本の働き手人口は減少を続けており、今後もしばらく企業の採用活動は厳しくなることが見込まれています。
こうした背景から、これまで活躍の機会が得られなかった女性を積極的に採用し、社内に優秀な人材を増やそうとする企業が増えてきています。
日本の女性活躍推進の遅れ
日本は他国に比べて女性活躍推進が遅れていることも、女性活躍推進が必要とされている背景の一つです。
世界各国の男女格差を数値化する「ジェンダー・ギャップ指数」では、2022年の日本のスコアは0.650となり、順位は主要先進国中で最低となりました。特に「経済」と「政治」の分野では、女性活躍の遅れが顕著です。
日本では、海外に比べて女性が管理職につく機会が少ないとされています。こうした現状を是正するため、積極的に意思決定の場面に女性の視点を取り入れ、多様な観点から判断できる組織を作ろうとする企業が増えています。
顧客・消費者のニーズが多様化している
顧客や消費者ニーズの多様化も、女性活躍が必要とされている理由の一つです。
企業はこれまで、テレビや新聞、雑誌といった広告媒体を通じて、画一的なマーケティングを行ってきました。しかし、インターネットが普及した昨今では、消費者それぞれにあわせてカスタマイズしたマーケティングが必要不可欠です。
最近では、口コミサイトやSNSを通じて、瞬く間に情報が広がります。顧客や消費者ニーズが複雑化する現状に対応するためには、社内に多様な視点を取り入れるのが重要です。そのための取り組みの一つとして、女性活躍が求められています。
外国企業との競合や他業界の新規参入
女性活躍が必要とされている背景として、外国企業や他業界との競合が激化したことも挙げられます。
インターネットの普及は、ビジネス環境のグローバル化を促進しました。こうした環境でビジネスを成功させるためには、外国企業との競争に勝ち抜く必要があります。また、新しいビジネスモデルが数多く登場している現代では、他業界への新規参入も比較的容易です。企業を取り巻く環境が厳しくなっているため、女性活躍を推進することによって企業の競争力を高める重要性が増しています。
女性活躍推進により期待できる効果
企業が女性の活躍を推進すれば、人材の確保や女性管理職の増加、男女平等といったさまざまな効果が期待できます。多様な働き方を実現したり、企業イメージを向上させたりすることにもつながるでしょう。
ここからは、企業が女性活躍を推進することで期待できる効果を解説します。
人材の確保
女性の活躍を推進することで、企業は優秀な人材を確保できます。
これまで活躍の場が用意されていなかった女性を積極的に採用することで、企業の競争力を高めることができるのです。
優秀な女性を社内に増やせば、社内に多様な文化を受け入れる風土を醸成することができます。また、意思決定に幅広い視点を取り入れることができるため、今まで出なかった斬新なアイディアが出やすくなったり、既存の価値観にとらわれたビジネスから脱却したりすることができるでしょう。
女性管理職の増加
女性管理職を増加させることができることも、女性活躍を推進するメリットの一つです。
女性管理職がいたとしても、人数が少なければ社内で少数派となってしまい、意見が反映されづらくなってしまいます。女性活躍を推進して女性管理職を増やせば、女性の意見が反映されやすい社内風土を形成できるのです。
なお、政府は女性管理職を増やすため、「女性管理職比率30%」という数値目標を掲げました。この30%は「クリティカル・マス」と呼ばれる、意思決定に影響を及ぼすことが可能な数値であり、この30%を目標に女性管理職の増加に取り組む企業も多いです。
女性管理職を対象とした研修のポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。
『女性管理職研修を成功させるポイント。動機づけと自己効力感がポイント』
女性管理職が増えない理由やその対策については以下の記事をご参照ください。
『女性管理職に向いている人は?女性を管理職にするメリットと増やす施策を解説』
採用や昇進機会の男女平等
採用や昇進機会における男女平等を実現できることも、女性活躍を推進する上で期待できる効果の一つです。
採用や昇進では、無意識のうちの偏見が判断に影響を及ぼすことがあります。こうした偏見は「アンコンシャスバイアス」とも呼ばれ、女性活躍を阻む一因となってきました。
社内に女性を増やせば、多様な観点から意思決定できるようになるため、このような偏見を取り除くことができます。その結果、採用や昇進機会の男女平等が実現され、誰もが等しく活躍できる環境を実現できるのです。
多様な働き方の実現
女性活躍を推進することで、多様な働き方を実現することができます。
例えば女性活躍推進のための取り組みとして、時短勤務やリモートワークの導入、残業時間の削減などが挙げられます。こうした制度を整えることで、仕事と家庭を両立しやすい環境が整います。多様な働き方を認め合う風土が形成されれば、女性はもちろん、社員全員が働きやすい会社を実現できるでしょう。
企業イメージの向上
女性活躍の推進は、企業イメージの向上にもつながります。
最近では、就職活動の際に女性活躍への取り組みを判断材料にする求職者も多いです。女性活躍を推進していることが社外から認知されるようになれば、男女問わず優秀な人材が集まりやすくなります。
また、投資家も投資判断の基準として、女性活躍やダイバーシティ&インクルージョンに対する取り組みを取り入れることがあります。女性活躍を推進している企業としてブランディングを進めることで、ビジネスチャンスの拡大にもつながるでしょう。
離職率の低下
女性活躍推進には、離職率を低下させることができる効果もあります。
以前は、出産や結婚など、ライフステージの変化を機に退職してしまう女性社員が多くいました。しかし、女性活躍を推進することで、ライフステージに左右されずに活躍できる環境が整います。その結果、女性の離職率が減り、社内から優秀な人材の流出を防ぐことができるのです。離職率の低下は、新規人材採用コストの削減や教育コストの削減など、さまざまなメリットをもたらすでしょう。
企業ができる女性活躍推進の施策例
女性活躍を推進するためには、「本人向け」「管理職向け」「組織」という3つの観点から、施策を並行して進めていくことが重要です。3つの観点から連動した施策を実施すれば、効果的に女性社員の活躍を推進することができます。
ここからは、「本人向け」「管理職向け」「組織」の3つに分けて、企業ができる女性活躍推進の施策例を解説します。
女性社員本人向けの施策
女性活躍推進に向けて実施すべき、女性社員本人向けの施策としては以下の3つが挙げられます。
- キャリアデザイン研修
- スキルアップの機会を提供する
- 相談窓口の設置
女性社員本人を対象とした施策例を一つずつ解説します。
キャリアデザイン研修
女性社員を対象とした施策として、キャリアデザイン研修の実施が挙げられます。
キャリアデザイン研修では、ライフイベントを踏まえたキャリアの構築方法を学んでもらいましょう。出産や育児など、ライフステージの変化に対応する意識を持たせることが大切です。
また、社内外からロールモデルとなる人材を招くのもよいでしょう。ロールモデルとして活躍する女性社員がいれば、自分自身が将来活躍するイメージを膨らませやすくなります。
キャリアデザイン研修の実施方法や設計方法は、以下のページで詳しく解説しています。
『キャリアデザイン研修とは?年代別の設計方法を紹介』
スキルアップの機会を提供する
スキルアップの機会を提供するのも、女性社員本人を対象とした施策の一つです。
女性社員の今後の活躍を見据え、スキルアップの機会を与えましょう。例えば、ロジカルシンキングやプレゼンテーションスキル、ファシリテーションなどについて学ぶ研修を実施する、自己啓発支援制度を整えるといった方法が考えられます。
また、女性社員の能力を伸ばすため、今まで経験していない業務を任せたり、部署異動を経験させたりすることも一つの手段です。難易度の高い業務も積極的に任せることで、中長期的なスキルアップにつながります。
相談窓口の設置
女性社員本人向けの施策として、相談窓口の設置も挙げられます。気軽に相談できる窓口を設置して、仕事やキャリアに関する幅広い悩みに対応する体制を整えましょう。
特に、周囲に女性社員が少ない場合、女性社員は一人で悩みを抱え込んでしまうことがあります。相談窓口を設置すれば、悩みを相談できる環境が整い、安心して働いてもらうことができるでしょう。
管理職向けの施策
女性社員の活躍を推進するためには、女性社員の上司である管理職を対象とした施策も大切です。管理職向けの施策としては、研修実施を通じたダイバーシティマネジメントの促進が挙げられます。女性活躍推進に向けた、管理職向けの施策を見ていきましょう。
ダイバーシティマネジメントの促進
管理職向けの施策として、ダイバーシティマネジメントの促進が挙げられます。
ダイバーシティマネジメントとは、組織内の多様性を強みとして活かすマネジメントのことです。管理職を対象とした研修を実施して、ダイバーシティを踏まえた組織づくりの必要性や方法を学んでもらいましょう。女性活躍推進だけでなく、国籍や価値観、文化などの違いを強みとして活用する方法を幅広く理解してもらうことが重要です。
ダイバーシティマネジメントを成功させるコツは、以下のページで詳しく解説しています。
『ダイバーシティマネジメントの成功事例8選!メリット・成功させるポイントは?』
制度・風土に関する施策
女性活躍を推進するためには、制度や風土に関する施策を行うことも大切です。制度や風土に関する施策としては、以下の3つが挙げられます。
- 休業制度や評価制度の最適化
- 復職に向けた支援制度
- 柔軟な働き方を許容する風土
こうした施策を女性本人や管理職向けの施策と連動させることで、より一層スムーズに女性の活躍を推進できます。制度や風土に関する施策を3つ解説します。
休業制度や評価制度の最適化
制度や風土に関する施策として、休業制度や評価制度の最適化が挙げられます。
例えば、育休や産休制度を整えれば、女性が活躍しやすい環境が整います。出産や育児をきっかけとした離職も減るため、優秀な女性社員に長く社内で活躍してもらうことができるでしょう。
評価制度に関しては、評価基準の見直しや、360度評価の導入などを通じて、男女間の平等を確保することが重要です。自社の評価制度を見直し、女性に不利な観点がないかどうか今一度確認しましょう。
復職に向けた支援制度
復職に向けた支援制度を整えることも、女性活躍を推進する方法の一つです。
育休や産休制度を導入しても、職場復帰後の活躍が思うように進まないケースがあります。「職場復帰後に居場所がない」「前と雰囲気が変わっており、活躍できない」と感じてしまった場合、育休や産休取得後の離職を招きかねません。
復職後に上司とのフォロー面談を実施するなど、復職に向けた支援を実施しましょう。育休の取得中に定期的な1on1ミーティングを実施したり、社内の近況をレポートとして情報提供したりするのも有効です。
柔軟な働き方を許容する風土
柔軟な働き方を許容する風土の醸成も、女性活躍を推進する上で重要です。
多様な働き方を実現する際にありがちな課題として、「制度は整っているが、利用しづらい雰囲気があり、形骸化してしまっている」というものが挙げられます。例えば「時短勤務制度があるが、周囲から迷惑に思われたくないから利用を躊躇してしまう」「フレックスタイム制があるのに、結局のところ全員が決められた時刻に出社している」といったものです。
こうした事態を防ぐためには、風土面からの改革が欠かせません。制度の社内周知を徹底したり、経営層が積極的に発信したりして、「一人ひとりにあった柔軟な働き方をしてもよい」というメッセージを伝えていきましょう。
企業の女性活躍推進の進め方
企業の女性活躍を推進する際には、以下の4つのステップで進めていくのがおすすめです。
- 現状把握と方向性の検討
- プランニング
- 施策の実施
- フォロー
企業で女性活躍を推進する際の進め方を、ステップごとに詳しく解説します。
Step1:現状把握と方向性の検討
女性活躍を進める際には、現状把握と方向性の検討から始めましょう。社内アンケートを通じた意識調査やヒアリングでの現状認識を行い、女性活躍推進に向けた方向性を明確にしておくことが大切です。
具体的に現状把握するべき項目は、以下の4つです。
- 採用者の男女比率
- 平均勤続年数の男女差
- 女性管理職の割合
- 社員の意識調査
採用者の男女比率
現状把握する際には、採用者の男女比率を把握しましょう。
採用者の男女比率は、企業における女性活躍がどれほど進んでいるかを端的に表す指標です。女性社員の数が少ないと、社内に女性が在籍していても、会社の方針に女性の声が反映されづらくなります。応募者と採用者、それぞれで男女が何割ずつなのかを把握してください。
平均勤続年数の男女差
平均勤続年数の男女差も、現状把握の際の調査項目の一つです。
一般的に、平均勤続年数が長ければ長いほど、社員は企業に対して満足していると考えることができます。反対に勤続年数が短い場合は、会社に何らかの問題がある場合が多いです。
平均勤続年数を男女別に調査して、差がないか確認しましょう。参考までに、企業における平均勤続年数は11. 9年です(厚生労働省のデータによる)。
女性管理職の割合
女性管理職の割合も、現状把握の際に調査しておくべき項目の一つです。
女性が多く働いている職場であっても、非正規雇用や一般社員がほとんどで、重要な意思決定に女性が携わっていないケースがあります。女性管理職の割合を調べれば、女性がどれほど社内で重要なポジションに関わっているかを知ることが可能です。なお、政府は「2030年までに女性管理職比率を30%にする」という目標を掲げています。
社員の意識調査
現状把握の際には、社員の意識調査を実施することもおすすめです。
女性活躍に向けた取り組みにどれほど協力したいか、取り組みに向けて何ができると思うか、などをアンケート形式で調査しましょう。女性活躍推進に向けた施策候補がいくつかある場合は、それぞれに対してどれほど協力できそうかを聞いてみるのも効果的です。
Step2:プランニング
女性活躍推進に向けた施策の方向性が定まったら、具体的な施策内容に関するプランニングを行います。施策は以下の3つの観点に分けて考えるのが大切です。
- 女性社員本人を対象とした施策……研修や1on1ミーティングの実施、相談窓口の設置など
- 管理職を対象とした施策……評価者研修やダイバーシティマネジメント研修など
- 制度や風土に関する施策……産休や育休制度、社内の風土改革など
それぞれの施策を連動させることで、より一層効果を高めることができます。
Step3:施策の実施
施策のプランニングが終了したら、その内容に従って施策を実行に移していきます。
施策を進める際は、施策の目的や意義、背景などを社員へ周知することが重要です。施策の意義を理解してもらえば、施策を進めるのに必要な協力を引き出すことができます。
また、施策を実施する際には、必要に応じて軌道修正も行いましょう。例えば法改正や政府の目標設定を機に施策内容を見直す企業は多いですし、現状を踏まえて数値目標を改定する場合もあります。
Step4:フォロー
施策が終了したら、フォローを実施しましょう。
例えば女性のキャリアアップに向けた研修を実施したあとは、フォロー研修や1on1ミーティングを実施して、キャリア実現に向けたサポートを継続的に提供することが大切です。管理職向けに評価者研修を実施した際は、実際の評価において研修で学んだ内容が活かされているかをチェックしましょう。
また、施策の改善を行うことも大切です。研修後にアンケートや上司へのヒアリングを実施して効果測定を行い、必要に応じて施策の見直しや追加を行ってください。
効果測定に関しては以下のページでも詳しく解説しております。
『研修効果測定の方法とは|4つの評価レベルや効果測定のポイント』
女性活躍推進のよくある課題
女性活躍を推進する際には、さまざまな課題が発生します。進め方を間違えると、他の社員から「女性活躍推進によって迷惑を被っている」と思われかねません。
ここからは、女性活躍推進においてよく耳にする課題と、女性活躍推進が進みづらい理由を解説します。
女性社員に管理職への昇進を断られる
女性社員の活躍を推進する際にありがちな課題として、女性社員に管理職への昇進を断られることが挙げられます。
最近の若手社員は男女問わず「管理職になりたくない」と感じる傾向がありますが、特に女性は管理職を敬遠する傾向が強いです。
女性社員が管理職になりたくないと感じる理由としては、仕事と家庭との両立が難しいといった管理職に対するネガティブなイメージや、出産後の復職に対する不安が挙げられます。
女性活躍を推進するためには、女性活躍のロールモデルを提示するなど、管理職に対するイメージを改善することが大切です。
社員が管理職になりたくないと思う理由や、人事部ができる対応は以下の記事で詳しく解説しています。
『社員が管理職になりたくないと思う理由と人事部が行うべき対応』
育休から復職した女性社員のパフォーマンスが上がらない
女性活躍推進では、育休から復職した女性社員のパフォーマンスが上がらないという課題もあります。
育休で長期間職場を離れた女性社員は、復職後に居心地の悪さを感じたり、必要な情報が入ってこないと感じたりすることが少なくありません。居心地の悪さや情報の不足が解消されないままだと、パフォーマンスの低下を招いてしまいます。
こうした状況を解決するためには、以下のようなサポートが必要です。
まず、人事部は復職者とその上司に対して、サポートをしましょう。上司に対しては、上司が復職者が働きやすい環境を構築するための支援を行います。復職者本人に対しては、復職前面談を実施して不安を取り除きましょう。
加えて、復職者以外の職場メンバーを巻き込むことも必要です。復職者以外のメンバーに対しては、現場の上司から働きかけ、復職者が働きやすい環境を作るのがおすすめです。
このようなサポートを意識して、育休から復職した女性社員が働きやすい環境作りをしましょう。
女性社員以外の社員に業務のしわ寄せがいく
女性活躍を推進する際にありがちな課題として、女性社員以外の社員に業務のしわ寄せがいくことも挙げられます。
女性活躍を推進する際には、時短勤務やリモートワークを容認したり、産休や育休を導入したりするケースが多いです。しかし、部署全体の業務量が変わらないまま一部の女性社員の労働時間を減らしてしまうと、当然ながら残された社員にしわ寄せが生じます。こうした状況が続くと、「女性活躍のせいで負担が増大している」といった印象を持たれ、女性活躍に向けた協力を引き出しづらくなりかねません。
長期欠勤時のフォロー体制を整える、業務量を調整するなど、他の社員にしわ寄せがいかないしくみを作りましょう。また育児がない人も、それぞれの事情があることを理解し合える雰囲気作りを行うことも重要です。
周囲が女性社員に気を遣いすぎてしまう
女性活躍を推進する際には、周囲が女性社員に気を遣いすぎてしまうという課題もあります。
周囲が女性社員に気を遣いすぎてしまった場合、女性は職場に対して居心地の悪さを感じることが多いです。また、負担を考慮して業務量を減らしすぎると、成長実感の不足や、職場に対する物足りなさを招きます。「女性だから」と必要以上に配慮するのではなく、あくまでも男女平等を意識しながら、必要な場面で必要なサポートを提供するという線引きが大切です。
女性社員にチャレンジングな業務がアサインされない
女性社員にチャレンジングな業務がアサインされないというのも、女性活躍を推進する際にありがちな課題の一つです。
特に管理職側が「成果を出すには長時間働く必要がある」といった思い込みがある場合、時短勤務をしている女性にチャレンジングな業務がアサインされなくなってしまいます。チャレンジングな業務がアサインされないと、女性社員の成長機会が減少し、女性活躍が実現しなくなってしまいます。管理職を対象とした研修などを通じて、男女問わずチャレンジングな業務をアサインする姿勢を持ってもらうことが大切です。
女性活躍推進を成功させるコツ
女性活躍推進を成功させるためには、組織、本人、管理職の3方向から施策を進めるのが大切です。また、ロールモデルとなる女性社員との交流を深めたり、継続的なフォローを実施したりするのも、女性活躍推進を成功させることにつながります。
女性活躍推進を成功させる3つのコツを紹介します。
組織、本人、管理職の3方向から施策を進める
女性活躍を推進する際には、組織、本人、管理職という3方向から施策を進めることを意識しましょう。
女性活躍推進というと、産休や育休、時短勤務制度といった制度面ばかりが注目を浴びがちです。しかし、女性を対象とした研修の実施や相談窓口の設置など、女性本人を対象とした施策も忘れてはいけません。また、管理職向けに評価者研修やダイバーシティマネジメント研修を実施することも、女性活躍を効果的に進める上では重要です。
3方向から施策を進めていることで、社内で一丸となって女性活躍推進に取り組む風土が醸成されます。
ロールモデルとなる女性社員との交流の場を作る
女性活躍推進を成功させるためには、ロールモデルとなる女性社員と交流する場を作るのもポイントです。
女性活躍のロールモデルが存在しない場合、「自分にはできないのではないか」「この会社では女性活躍できないのではないか」といった思い込みが生じてしまう可能性があります。社内で管理職として活躍している女性社員や、育休からの復職者など、先輩社員から生の声を聞くことのできる機会を設けましょう。社内にロールモデルがいない場合は、社外のロールモデルとの交流機会を作るのも有効です。
ただし、ロールモデルがあまりにも自分とかけ離れていると、「あの人だからできただけで、結局私にはできないのではないか」と思われてしまう可能性があります。交流の際はロールモデル社員の「すごさ」をアピールするよりも、職務内容や職場の風土、育児にありがちなトラブルなどを共有しながら、共感を重視した対話を行いましょう。
継続的にフォローする
女性活躍推進を成功させるためには、継続的なフォローを実施することも大切です。
一度施策をやって終わりにするのではなく、施策終了後のフォローも定期的に実施しましょう。
研修を実施する場合は、研修実施後のアンケートやヒアリング、現場での実践サポートなどが有効です。人事制度であれば、運用後に利用者からのフィードバックを得るとよいでしょう。施策の改善につながる意見が出た場合は、次回以降の施策へ確実に反映させてください。
国の女性活躍推進の取り組み
政府は、女性活躍推進に向けたさまざまな取り組みを実施しています。ここからは、政府が女性活躍推進に向けて実施している取り組みを3つ紹介します。
なでしこ銘柄
「なでしこ銘柄」は、女性活躍に向けて優れた取り組みを行っている上場企業を選定する制度です。2012年度から毎年、女性活躍推進に優れた企業を最大30社程度選定し、「中長期の企業価値向上」を重視する投資家に向けて公表しています。
選定の際には、キャリア形成支援の推進状況や共働きや共育ての推進状況、経営戦略と紐づいた取り組みなど、多面的な観点から企業を評価しています。なお、なでしこ銘柄へ選定されるためには、必要書類の提出が必須です。
えるぼし認定
えるぼし認定は、女性活躍推進法に基づいて運用されている認定制度です。女性活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良であるなど、一定の条件を満たした企業に「えるぼし認定」を行っています。
えるぼし認定は、取り組み状況に応じた3段階が用意されていることが特徴です。取り組みが際立って優良な企業は、さらに上位認定である「プラチナえるぼし認定」を取得することができます。えるぼし認定を受けている企業は2023年3月末時点で2,176社であり、プラチナえるぼしは37社が取得しています。
女性の活躍推進企業データベース
女性の活躍推進企業データベースは、女性活躍に関する情報を共有するWebサイトです。
企業は女性の活躍推進企業データベースにおいて、女性活躍推進に関する事例を登録することができます。求職者は、データベースに登録された女性活躍推進の情報を確認しながら、応募する企業を選択できるという仕組みです。サイト内では、女性管理職比率の高い企業ランキングや、推進に取り組む企業事例など、女性活躍推進に役立つ情報を確認することもできます。
女性活躍推進を進めるならアルーにお任せください
女性活躍推進なら、ぜひアルーへお任せください。
アルーでは、女性活躍推進に役立つ人材育成施策を豊富にご用意しています。例えば、女性社員に向けたキャリアデザイン研修や、ビジネススキルを磨く研修を実施することが可能です。また、管理職を対象とした評価者研修や、業務のアサイン方法について学ぶ研修を実施することもできます。
アルーでは研修の企画段階から丁寧に伴走し、それぞれの企業のニーズに応じて柔軟に研修内容をカスタマイズいたします。女性活躍推進に関することなら、お気軽にアルーまでご相談ください。
アルーの女性活躍推進支援事例
アルーでは、これまでにさまざまな企業で女性活躍推進に向けた施策を支援してまいりました。ここではそれらの中から特に参考となる事例を2つピックアップして紹介します。
ポーラ化成工業株式会社様
ポーラ化成工業株式会社様では、人事計画の中の重点計画の一つとして「女性の活躍を推進する組織風土の醸成」を設定しました。そこで、育成委員会の選抜人材となっている約18名の女性を対象とした研修を実施しています。
本研修は「Women Will Workshop」と銘打って行われ、リーダーシップや傾聴について学びを深めてもらいました。施策は合計で約4ヶ月にわたって行われ、研修の間には1ヶ月ずつの演習期間を設けています。現場で感じた課題を研修で共有することで、課題の解消や女性社員同士のネットワーク形成をサポートしました。
本事例の詳細は、以下のページから詳しくご覧いただけます。
【ポーラ化成工業株式会社研修導入事例】女性活躍推進の風土づくりに「リーダーシップ」「チームワーク醸成」の重要性を理解する
カルビー株式会社様
カルビー株式会社様では、女性社員に早期のキャリア教育を実施したいといった課題がありました。そこで、女性活躍推進に向け、食品メーカー合同の若手女性社員研修を実施しています。同業他社の女性社員と合同で研修を行うことで交流が生まれ、お互いにキャリア構築の気付きになったり仕事についての悩みを相談し合ったりする同志を作ることができました。同志の存在は刺激になり、自信や安心につながると考えています。
研修中では、自分自身のキャリアプランを策定してもらうワークや、キャリア実現に向けたアクションプラン策定に取り組んでもらい、キャリアデザインを進めました。研修内では女性先輩社員3名による講話も行い、将来社内で活躍するイメージを膨らませてもらっています。研修後には、自らキャリアを考えて異動して活躍する社員が出るなど、女性社員のキャリア構築が進みました。
本事例の詳細は、以下のページをご覧ください。
カルビー株式会社 人材育成研修 導入事例
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まとめ
女性活躍推進について、必要とされている背景やメリット、具体的な方法などを幅広く解説しました。
多様性の重視や人材不足が叫ばれる昨今、女性活躍はすべての企業にとって重要な課題といえます。一方で、スムーズな女性活躍推進が進んでいる企業はまだまだ少ないのも現状です。研修の実施や、上司も含めた多角的なアプローチを通じて、女性活躍を会社が一丸となって進める必要があります。ぜひこの記事をきっかけに女性活躍推進を進め、誰もが働きやすい環境を整えていきましょう。