
上手な褒め方とは?褒める目的や部下を育てる上手な褒め方を解説
近年、ダイバーシティ&インクルージョンが推進されていることもあり、 社員一人ひとりの個性が重要視されています。マネジメントの本には、部下の個性を尊重し、強みを伸ばすことの大切さが頻繁に紹介されており、そのために“褒めて育てる”ことがよくおすすめされています。
この、“褒めて育てる”は現在の人材育成のトレンドです。
リーダーや管理職には、部下を育成し、組織の生産性を上げるために、「褒める」コミュニケーション力が求められます。しかし、部下を褒めても思ったように生産性が上がらず、組織によい影響を与えていないのではないか、というリーダーや管理職からの悩みが増えています。皆さんの職場にも、
- とにかく褒めてみているけど、嬉しそうな顔はされないし、手ごたえが感じられない
- 上司である自分に褒められるために部下が行動している気がする
- 褒めるところをうまく見つけられないし、褒める行為も少し恥ずかしい
など、「褒める」コミュニケーションにお悩みのリーダーや管理職がいるのではないでしょうか。褒めることはとても大切なことですが、やたらに褒めればよいというものではありません。「褒め方」を知らないと、せっかく褒めても期待される効果が得られません。
こちらの記事でご紹介した「叱る」コミュニケーションも重要ですが、1つ叱るごとにその3倍は「褒める」ことが理想だといわれており、上手に「褒める」スキルは管理職にとって必須です。
そこで本記事ではリーダーや管理職に必須のコミュニケーションのひとつである、「褒める」について取り上げ、研修事例とともにご紹介します。
▼管理職育成におすすめの研修3選
目次[非表示]
「褒める」とは何か
褒めるとは、「人の行動を良いと評価すること」を意味します。たとえば、「今日、仕事で褒められた」という文章は、「今日、仕事での行動を良いと評価された」と言い換えることができます。努力や頑張りのような抽象的な行動ではなく、できる限り具体的に行動を褒めることがポイントです。なぜなら、「褒める目的」は「部下の好ましい言動を習慣化させる」ことだからです。
褒める目的とは何か
上述のとおり、「褒める目的」は「部下の好ましい言動を習慣化させること」です。間違われやすいこととして、人は褒められると、ドーパミンと呼ばれる快感ホルモンが放出され、気分が高まり幸せな気分になります。すると、モチベーションが上がり、よい人間関係につながる可能性があります。しかし実は、「褒める目的は」モチベーションを上げることではありません。部下の言動、その中でも特に好ましい言動を強化し、習慣化させることで、成長につなげるために、管理職は部下を褒めるのです。
上手な褒め方とは
相手の好ましい言動を習慣化するための
「褒める」コミュニケーションのポイントは大きく3つあります。
褒める対象は具体的にし、否定語は使わない
先ほども説明しましたが、褒める目的は「好ましい言動を習慣化する」ことです。褒めることが重要だと漠然と考えている方が多いですが、部下の何を褒めるのかという対象を明確にしなくては、相手はどの行動を習慣化していいのかわかりません。部下にどんな言動を習慣化してほしいのかをしっかりと考えたうえで、その言動に対して「褒める」必要があります。
たとえば、挑戦しやすい風土を作りたいのであれば、「小さくても何か課題を克服した」ときに褒めると、課題を克服する行動が習慣化されやすくなります。また、褒めるときも「よい仕事をしたね」や「この資料いいですね」のように抽象的な表現を使わず、「いつも最新のデータをすぐに入力してくれるよね。おかげで私もタイムリーに対策が考えられて助かるよ」や「先日作ってくれた企画書、強みやポイントが明確で説明しやすいからマネさせてもらったよ」のように、具体的に褒めないと相手には伝わりません。
さらに脳科学的には、人は否定語を理解しづらいと考えられています。ですので、褒めるときに、「いつも納期に遅れないよね」のように、〇〇しない、などの否定語を入れるのではなく、「いつも納期前に資料を提出してくれるよね」と肯定語で褒めると、何が好ましい言動か正しくインプットされやすくなります。
褒めるタイミングを見極める
褒めるタイミングも重要です。午前中に何か好ましい言動があったとして、ランチタイムに思い出したように「あのときはよくやったね」と褒めても相手の心には響きづらいものです。行動分析学では「60秒ルール」というものがあります。行動に影響を与えるには、その行動の直後60秒以内が勝負といわれています。褒めるべき言動が生じたら、とにかくその場で褒めることが効果的です。褒めることをためらってはいけません。
また、褒める間隔も意識しなくてはいけません。好ましい言動が生じるたびに、いつも同じように褒め続けていたら、部下が褒められることに慣れてしまい、褒められたとしても心に響かなくなっていきます。とはいえ、褒めなくなると「誰も認めてくれない」となり、言動を維持する気力が失われていきます。人や言動によって違うので一概にはいえませんが、言動を定着させる初期の段階ではなるべく連続して褒め、定着した後、その行動を維持する段階では数回に1回の頻度に減らして褒めると、効果が高いといわれています。
4つの要素を入れて褒める
褒めることが上手な人は以下の4つの要素を「褒める」コミュニケーションに盛り込んでいます。
①承認
承認は相手の存在を認めることです。相手がそこにいること、行動したこと、発言したことなどを、「気づいているよ」「見ているよ」などとしっかりと相手に言葉で伝えます。
- 「なるほど。そういう考え方もあるよね」
- 「最近、積極的に会議で発言するようになったね」
- 「新規の契約が取れたそうだね」
など主観を入れず中立的な表現を使うことがポイントです。
②共感
共感とは、他人の考え、主張、感情を、自分もその通りだと感じることです。
- 「その考え方は確かにそのとおりだね」
- 「最近うまくいかないことが多かったからうれしいよね。その気持ちよくわかるよ。」
など、楽しい経験だけでなく、辛い経験やそれを乗り越えてきた経験を共有することで、話がグッと伝わりやすくなります。
③称賛
称賛は、優れた点を褒めることです。
- 「とても勉強になったよ」
- 「うまくいかない時期を乗り越えるために、忙しいのにこんなにコツコツ努力できるなんてすごいね。感服だよ。」
など、行動や結果はもちろん、相手の信念や価値観を認めると、心に響きます。
④感謝
最後に「ありがとう」と感謝を伝えるとさらに褒める効果が高まります。単純に、「すごいね」と褒めるのと、この4つを組み合わせながら褒めるのとでは、まったく効果が異なります。
部下を“褒めて育てる”ができるリーダー、管理職を育成するためには
特に新任のリーダーや管理職にとって、部下を目的に沿って褒めるという行動は経験が浅く、上手に褒めることができず悩む方は多くいらっしゃいます。「褒める」ことも行動です。部下からの反応がよくないと、褒める行動がなかなか上達しない負のスパイラルに陥り、いつの間にか褒めることをやめてしまいます。
そこで重要なのが新任リーダーや管理職の上司です。新任リーダーや管理職が、部下を褒めることで好ましい言動を習慣化していくのと同じように、褒めるという行動もその上司によって習慣化されていく必要があります。褒めるという行動は、部下を育成し、組織の生産性を上げるマネジメント行動です。組織の中に好ましい言動を習慣化していくために、正しい方法で上司から部下へ、そしてまたその部下へとよい循環を生ませることが重要です。ただ、「褒める」行動に対する知識とスキルを練習する機会を与えなくては、効果的に褒められるようにはなりません。
部下指導スキルを身につけるならアルーにお任せください。
部下指導スキルを身につけさせる研修は、ぜひアルーへお任せください。人材育成を手掛けているアルーでは、部下指導スキルを伸ばすための研修プログラムを数多くご用意しています。
どんなに優れた管理職であっても、上手な褒め方ができなければ部下の成長を支援することはできません。アルーの提供するプログラムは、演習中心でスキルとマインドセットの両面にアプローチできることが特長です。指導方法や褒め方・叱り方のノウハウはもちろん、指導の際の心構えや考え方など、マインド面での成長を徹底的に引き出します。
アルーの提供する部下指導力研修は、以下のページからご覧ください。
部下育成力研修
アルーの部下コミュニケーション研修事例
アルーでは、これまでにさまざまな企業で部下とのコミュニケーションスキルを磨く研修を実施してまいりました。ここからは、それらの中から特に参考となる事例を3つピックアップして紹介します。
部下コミュニケーション研修の具体的な流れやプログラムについて知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
帝人株式会社 リーダーシップ研修事例
帝人株式会社様では、人事制度の見直しにより設けられた「AS職」という新たな管理職の職掌で、期待役割に見合ったスキルや意識を開発・醸成する必要がありました。そこで、リーダーシップと指導育成力を身につけるための新任AS職研修を実施しています。
本研修プログラムでは、部下との信頼関係を構築する方法や、部下指導に役立つフレームワークなどを体系的に学んでもらいました。研修のまとめとしてアクションプランを設定し、短い研修期間ながらも現場での実践を意識させたことがポイントです。
研修後には、これまで暗黙知とされていた指導スキルが共通言語化され、研修ゴールとして設定していた期待行動・意識の発現率も68%から95%へ向上しました。
本事例の詳細は、以下のページからご覧いただけます。
【帝人株式会社研修導入事例】現場管理者としての リーダーシップを強化する 「新任AS職研修」
▼事例資料をメールで受け取る
Wismettacグループ マネージャー研修事例
Wismettacグループ様では、上場後の新たなビジネス展開を加速する中で、自己流のマネジメントを共通言語に基づく最新のマネジメント手法へアップデートしたいという課題がありました。そこで、部下の成長支援を実現するための仕事アサインを行う方法を学ぶ研修を実施しています。
本研修では、部下の成長につながる業務アサイン方法を学んでもらうだけでなく、業務アサインの際の伝え方や、アサイン後のフォロー方法まで細かく学んでもらったことがポイントです。研修後には「部下の成長支援」という視点を持った業務アサインができるようになり、現場からも「まさに困っていた内容だったのでとても参考になった」といった声が上がりました。
本事例の詳細は、以下のページからご確認ください。
【Wismettacグループ研修導入事例】多様な「個」の特性や能力を活かし、部下の成長を支援するマネージャー育成
▼事例資料をメールで受け取る
コスモ石油株式会社 新任ライン長研修事例
コスモ石油株式会社様では、組織変更に伴って、会社の将来的なキーパーソンであるライン長に役割認識を深めてもらいたいという課題がありました。そこで、新任ライン長約30名を対象とした研修を実施して、部下指導のノウハウを学んでもらっています。
本事例では、「他責から自責」をスローガンに掲げ、部下指導の際のマインドセットにも重点的にアプローチしたことがポイントです。
研修後には、ライン長の間に「伝わったことがすべて」という意識が浸透し、現場での研修に役立っています。
本事例についてさらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
【コスモ石油株式会社研修導入事例】信じて任せる。 人をマネジメントする 新任ライン長研修の意義とは。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では、管理職に必須のコミュニケーションのひとつである、「褒める」について取り上げ、褒める目的や、部下を育てる上手な褒め方、研修事例をご紹介しました。
多様な人材の活躍、ハラスメントの防止、働きやすい環境の整備などが進んでいる昨今、部下指導に悩む管理職は非常に増えています。褒めるという行動は一見簡単なように思えますが、実際にやってみると手ごたえを感じられず、苦戦するリーダーや管理職は少なくありません。
ぜひ上司を対象とした研修を実施して、褒めるために必要なスキルや心構えを習得してもらいましょう。アルーの部下指導力研修は、以下のページからご覧いただけます。
部下指導力研修
この記事の内容を参考に、効果的な部下指導を実現していきましょう。