離職防止のための研修を効果的に行うコツ|成功事例や階層別の内容を紹介
少子高齢化の影響などにより新規採用コストが増加傾向にある昨今、離職防止のための研修を実施する企業が増えてきています。しかし、離職防止の研修では具体的にどういった内容を扱えばよいのか迷っている担当者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、離職防止のための研修の内容や効果的に行うコツを解説します。研修の成功事例も紹介しますので、離職防止のための研修の実施を検討している人事担当者の方はぜひ参考にしてください。
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離職防止のために研修を行うメリット
離職防止のために研修を行うと、さまざまなメリットが期待できます。例えば採用や教育にかかわるコストを削減できますし、定着率が向上するため採用活動が有利になるといった効果もあるでしょう。
まずは、離職防止のために研修を実施するメリットを見ていきましょう。
採用と教育コストを削減できる
離職防止のための研修を実施すれば、採用や教育にかかるコストを削減できます。
日本では、少子高齢化が深刻な問題となっています。そのため、新規採用にかかるコストは増加傾向です。せっかくコストをかけて優秀な人材を採用しても、離職が発生してしまえば採用コストは無駄になってしまいます。また、育成にかかった時間や費用も同じく無駄になってしまうでしょう。
離職防止のための研修を通じて優秀な人材を確保しておくことで、採用や教育コストを削減できるのです。
定着率が向上することで採用活動が有利に
離職防止のための研修を実施すれば、定着率が向上して採用活動が有利に進む効果もあります。
離職率が高い企業はそれだけで求職者から敬遠されてしまいます。応募者数が減ったからといってマッチしない人材を採用すると、さらに離職も増えてしまうという悪循環に陥ってしまうでしょう。
離職防止のための研修を実施しておくことで定着率が向上し、次回以降の新卒採用や中途採用を有利に進められます。
従業員エンゲージメントが向上する
従業員エンゲージメントが向上するというのも、離職防止のための研修を実施するメリットの一つです。
エンゲージメントとは、社員が会社に対して抱く愛着心のことです。社員が「自分と会社が相互に成長できる関係にあるな」と感じたとき、エンゲージメントは高まります。
エンゲージメントが高い環境では、業務効率が改善するとともに、やりがいやモチベーションが向上することが知られています。
離職防止の研修によって従業員エンゲージメントを改善すれば、組織全体のパフォーマンス向上が見込めるのです。
離職防止を目的に研修を効果的に実施するポイント
「ここで働き続けたい」と思う要因は、人それぞれです。そのため、「誰にとっても快適な職場」を目指そうとすると、「誰にとっても不快な職場」になってしまうおそれがあります。
全員にとって理想的な職場を目指すのではなく、一人ひとりが「ここで働き続けたい」と思える状態を作ることが大切です。
離職を防止するための研修を効果的に実施するために意識しておきたいポイントをいくつか解説します。
本人の自己理解を促す
一人ひとりが「ここで働き続けたい」と思える状況を作るには、自分自身が何を大切にしているのか、どのようなことにやりがいを見出せるのかを正しく理解してもらうことが大切です。
具体的には、自己理解を深める支援を行い、自分が必要とされていると思えるようにすることが挙げられるでしょう。
自己理解を促す方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
『自己理解とは?社員の自己理解を促すプログラムを事例付きで紹介』
職場や仕事への理解を促す
自己理解と同様に大切なのが、職場や仕事への理解です。自分が勤める職場はどのような職場なのか、自分の仕事を通じて何が得られるのかを正しく理解することが重要です。
具体的には、組織と個人の接点を見つける支援を行い、職場への帰属意識を持てるようにすることが大切です。
自社がこれまで提供してきた価値は何か、自社の社会における役割は何か、自社がこれから提供したい価値は何かを考え、自身の担当業務を捉え直すなどの支援が必要になります。
「やるべきこと」から離れる機会を設ける
常に目の前のやるべきことに追われてしまっている状態だと、視野が狭くなり、「自分がなんのために働いているのか」が見えなくなってきてしまいます。その結果、「ここで働き続けたい」と思えなくなってしまい、離職につながる可能性も高くなります。
自己理解を深め、職場や仕事への理解を深めるためには、目の前の「やるべきこと」から一旦離れ、自分自身が働く理由を振り返る機会を企業側が提供することが必要です。
管理職にもアプローチする
離職防止のためには、社員だけでなく、その上司や管理職に対してのアプローチも有効です。
上司自身が育成力を高めることや、組織作りの支援、上司とメンバーの対話促進などが重要になってくるでしょう。
上司が必要な知識とスキルを身につけることで、個々のメンバーに対して適切なサポートができるようにすること、職場のチームワークを高め、働き続けたいと思える職場を作ることはもちろん、業務以外のコミュニケーションを取ることで相互理解を深めることも大切です。
目標設定を明確にする
研修を実施する際には、目標設定を明確にしましょう。
研修の目標設定は、階層別に異なります。例えば新入社員を対象とした研修では、新入社員同士の横のつながりを作ったり、一体感を醸成したりすることが離職防止に効果的です。一方で中堅社員では、中堅時代に見失いがちなキャリアの方向性を考えてもらうのがよいでしょう。管理職向けでは、マネジメント能力やコーチング能力など、管理職特有のスキルを磨く支援をし、プレイヤーからマネージャーへの役割転換をスムーズにするのがおすすめです。
研修のターゲットも考えながら、目標設定を明確にしてみてください。
定期的にフォローアップ研修を行う
定期的にフォローアップ研修を実施するのも、離職を防止する効果があります。
せっかく研修での教育を充実させても、「やって終わり」になってしまっては効果がありません。現場での行動変容を促すためには、研修後のフォローアップが極めて大切です。
例えば研修終了後1ヶ月のタイミングでフォローアップ研修を実施して、再び研修参加者へ集まってもらいましょう。現場での実践を報告したり、実践期間を踏まえた質問を受け付けたりすれば、現場での行動変容を後押しできます。
ゲームやワークショップを取り入れる
ゲームやワークショップを取り入れるのも、離職防止の研修を成功させるポイントの一つです。
例えば人狼ゲームやNASAゲーム、バースデーラインなどのゲームを研修に取り入れてみましょう。こうしたゲームを取り入れることで、研修中のコミュニケーションを活発化できます。
ゲームをきっかけに社員同士の交流が生まれれば、研修外でのつながりも促進できるでしょう。こうした横のつながりの形成を促して、リテンションを進めてみてください。
ワークショップを取り入れた研修の内容や、実施する際のポイントは以下のブログ記事で詳しく解説しています。
『ワークショップを効果的に研修に取り入れるコツとおすすめの手法6選』
階層別で離職を防止する研修におすすめの内容
離職を防止する研修は、ターゲットとする階層ごとにおすすめの内容も異なります。ここでは、「新入社員」「若手社員」「中堅社員」「リーダー・管理職向け」の4つに分けて、それぞれの階層におすすめの研修内容を紹介します。
新入社員
新入社員を対象とした早期離職を防止するための研修では、いわゆる「リアリティショック」を緩和することに注力しましょう。リアリティショックとは、入社前に感じていた理想と入社後に感じる現実の間で起こるミスマッチのことです。リアリティショックを感じた新入社員は、入社後すぐに離職してしまう場合があります。
新入社員研修で社会人としてのスタンスを身につけてもらうことで、いち早く会社の風土へマッチさせましょう。また、企業理念について背景も含めて説明し、共感を得てもらうのも有効です。
新入社員導入研修でビジネススキルマナーや企業理念について学んだら、入社後半年などのタイミングでフォローアップ研修を実施することも大切です。新入社員として必要なスキルやスタンスがしっかり身についているか、やりがいを持って働けているかをチェックしましょう。
新入社員の早期退職を防ぐための研修内容は、以下の記事をご覧ください。
『新入社員が早期退職する理由は?対策の方法6選と効果的な研修について』
若手社員
若手社員を対象とした離職を防止する研修では、今までの自分のキャリアを振り返る機会を与えるのが大切です。
若手社員は一通り仕事も覚え、徐々に忙しくなる世代です。そのため、常に目の前の業務に追われ、自分や周りに対するネガティブな面ばかりが目についてしまうことがあります。
忙しくなりがちな若手社員だからこそ、一度「やるべきこと」から離れて、今まで自分が培ってきた経験を振り返ってもらう機会を設けましょう。経験の棚卸しができれば、会社の中での自分の立ち位置を客観的に把握できます。今後のキャリアの明確化とそのために必要なスキルや行動の言語化だけでなく、自社で活躍する機会を考えることで、離職防止につながります。
若手社員の離職を防止するための方法は、以下のブログ記事で詳しく解説しています。
『若手社員の離職を防止するには?早期離職の原因と対策方法』
中堅社員
中堅社員を対象とした離職防止のための研修では、毎日「やるべきこと」に追われてしまっている状況から、一度自身の価値や仕事の面白さに気付いて貰うことが大切です。
自分自身の価値を知るために、「専門家として自分の仕事を極めていく」ことと「人間力を高めることで、人を動かす立場になる」というどちらの道も選べることを知ってもらい、自分自身が目指したい方向について考えてもらいます。
自分のありたい姿を目指すために習慣としてできることを見つけ、仕事に対して前向きに捉えることができるようになるでしょう。
これまでの経験と、これから自分がどのようになりたいかを振り返ることで、仕事に対するモチベーションを高め、離職防止につなげることができるでしょう。
リーダー・管理職向け
リーダーや管理職の離職を防ぐためには、マネジメント能力やコーチング能力を伸ばしてもらう研修を実施するのがおすすめです。
管理職がストレスを感じる要因として、「自分のマネジメントに自信がない」「部下とのコミュニケーションがうまくいかない」といったものが挙げられます。管理職としてのスキルに自信がないと、管理職として働くこと自体が大きなストレスとなりかねません。
昇格前のタイミングで研修を実施するなど、管理職として必要な能力を伸ばす機会を与えるのが大切です。
管理職の離職を防ぐ方法や、人事部ができることについては、以下の記事で詳しく解説しています。
『社員が管理職を辞めたいと思っていたら…人事部の果たすべき役割』
離職防止研修の成功事例
ここでは、アルーが離職防止のための研修を支援した事例を紹介いたします。
自分自身の価値を知るためのセミナーを実施した例
毎日が同じことの繰り返しで、自分がやっていることが何につながるのか見えないという課題を持っていた社員に対し、自分自身の価値を知ることで仕事に対して前向きに取り組めるようになることを目的としたセミナーを実施しました。
1ヶ月おきに半日のセミナーを3回行い、セミナーでの学びを職場に持ち帰る機会を作りました。
目の前の業務から一時的に離れ、自分自身の価値や目指したい方向について考えることで、自分のありたい姿やこれからの仕事の取り組み方に気付けるセミナーになっています。
仕事の面白さを見つけるワークショップの例
日々の業務が忙しく、視野が狭くなってしまい仕事に対する熱意が下がってしまっている社員に対し、広い視野を持ち普段気付かない仕事の面白さに気付くことを目的としたワークショップを行いました。
業務の合間に職場のメンバーと対話するワークショップを3回行い、普段考えないことを考える機会を作りました。
自分の担当業務を捉え直し、自分自身ならではの価値を考え、自分と仕事のつながりを見つけることができるワークショップになっています。
アルーが提供している離職防止研修
人材育成のプロフェッショナルであるアルーでは、離職防止に向けたさまざまな研修・ツールを実施しています。ここではアルーが提供している離職防止のための施策として、「オンボーディングサーベイ」「Value Discover Program」「プロフェッショナルスタンスコミュニケーション研修」「eラーニング」の4つを紹介します。
オンボーディングサーベイ
オンボーディングサーベイは、組織へジョインした直後の社員を面談でフォローするツールです。
オンボーディングサーベイを取り入れることで、新入社員の成長を可視化することができます。それにより、新入社員が成長実感を得られ、仕事に対するモチベーションを向上させることができます。また、新入社員のOJTトレーナーも指導のヒントを得られるため、質の高い育成が可能になります。
具体的には、入社直後の4月から、約半年かけて継続的に1ヶ月に1回30分程度の面談を実施します。面談では、「納期について」「ミスについて」といった項目ごとに、面談時点までの仕事を振り返るのが特徴です。システム上で選択肢式で回答すれば、回答した選択肢に応じたリコメンドが表示され、回答時期ごとの成長段階がグラフで可視化されます。
新入社員とOJT指導者の質問回答から、OJT指導者に指導状況への助言をする機能である「対話ページ」を活用し、指導状況の把握も可能です。
オンボーディングサーベイの資料は、以下のページからダウンロードいただけます。
Value Discover Program
Value Discover Programは、担当部署における顧客への提供価値を検証するための施策です。プロジェクトやワークなどをZoom上で実施して、社会人として必要な仕事の進め方を網羅します。
Value Discover Programを活用することで、担当部門の役割、ミッションを理解することにより、仕事のやりがいに繋げることが可能です。
また、チームで課題に取り組むことを通じ、社内でネットワークを形成できるため、会社への帰属意識が生まれ、離職防止につながります。
本施策は、4人ごとにチームを編成し、1〜2ヶ月かけて実施するのが特徴です。それぞれの実践期間では各チームに課題が与えられ、チームは課題に沿って情報収集や議論、資料作成を進めていきます。各実践期間の間にはレビューが挟まっており、最後に成果発表会を実施して終了です。
▼サービス資料はこちらからダウンロードできます
プロフェッショナルスタンスコミュニケーション研修
プロフェッショナルスタンスコミュニケーション研修は、プロフェッショナルとしての仕事基準を理解し、計画力や実行力を磨くことを目的とした研修です。
この研修は、研修内で何度も実践とフィードバックを繰り返すことで、成長を実感できることができるため、離職防止につながります。
特に、新卒1年目の新入社員に実施すれば、仕事の進め方や社会人としての心構えを学べるため、スムーズに業務に接続でき、配属後のストレスを軽減できるでしょう。
研修は、午前と午後の2部構成となっています。午前はプロフェッショナルとしての仕事の基準を学ぶため、アンケート分析や会議準備を題材としたワークを実施します。午後には、会食準備や企画書作成を題材としたワークを通じて、さらにプロフェッショナルとしての仕事基準を体得していきます。
具体的な場面を想定した演習が数多く盛り込まれているため、社会人として必要不可欠な能力が幅広く身につく研修です。
『プロフェッショナルスタンスコミュニケーション ホウ・レン・ソウ7つ道具編』研修プログラムの詳細
▼サービス資料はこちらからダウンロード
eラーニング
eラーニングは、LMSと呼ばれる学習管理ツールを用いてオンライン上で学習を実施する研修形態です。受講者は、LMS上で配信された動画教材などを視聴して、学びを深めることができます。
例えば、新入社員の早期離職を防止するためには、新入社員を指導するOJTトレーナーにeラーニングを受講してもらうことがおすすめです。OJTトレーナーが自己流で指導したり、新入社員を放置してしまったりすると、新入社員の離職に繋がってしまいます。OJTトレーナーがeラーニングでスキルを身につけ、正しく指導ができるようになることで、新入社員のモチベーションの向上にもつながるでしょう。
アルーでは、LMSである「etudes」を活用したeラーニングを実施しています。etudesは、初めてeラーニングを利用する社員でもすぐに活用できるほどわかりやすい操作画面が特徴です。eラーニングと集合研修を一元管理できる機能も搭載されているため、ブレンディッドラーニングにも対応できます。
OJTトレーナーを対象としたeラーニングのセットプランは、以下のページから詳しくご覧ください。
eラーニングセットプラン|OJTトレーナー向け
まとめ
離職防止のための研修について、研修内容や研修を実施する際のポイントを解説しました。
人材の採用コストが高くなっている昨今では、一人の社員の離職が大きなロスとなってしまいます。そのため、研修を通じてリテンションを進めることは極めて大切です。新入社員や中堅社員、管理職といったそれぞれの階層ごとにぴったりな研修を実施して、社員の離職防止を進めていく必要があります。
ぜひこの記事をきっかけに効果的な離職防止のための研修を実施してみてください。