社員が管理職を辞めたいと思っていたら…人事部の果たすべき役割
「上司や部下との間で意見が食い違う」「部下が思うように指示に従ってくれない」など、さまざまな場面でストレスを感じてしまいがちな管理職。
管理職の転職や退職が発生しないようにするためには、ヒアリングを行う、研修を実施する、といった対策を人事部が主体となって行う必要があります。管理職を辞めたい、と感じてしまう原因や、それに対して人事部ができる対策について細かく紹介します。
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社員が管理職を辞めたいと感じる理由
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管理職ともなれば職場内での責任も大きく、何かとストレスを感じてしまいがちです。株式会社ビズヒッツでは、管理職を務める社員を対象に管理職がつらいと思う瞬間についてのアンケートを2021年に実施しました。
以下は、管理職がつらいと思う時の回答結果です。
引用:中間管理職がつらい瞬間と疲れた場合の対処法【男女238人アンケート調査】
管理職を辞めたいと思う主な原因について、アンケート結果を交えながら見ていきましょう。
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上司と部下の板挟みになりストレスが溜まる
管理職を辞めたい、管理職がつらいと感じる瞬間として最も多かったのは、「上司と部下の板挟みになる」というものです。特に上司と部下を持つ中間管理職の場合はいわゆる「サンドイッチ症候群」と呼ばれる板挟みの状態になってしまうことが多く、ストレスが溜まってしまいます。仕事の進め方に対する意見が上司と部下で食い違う、という状況の他にも、「残業に対する考え方」で意見が違って困った、という声もありました。
参考:中間管理職がつらい瞬間と疲れた場合の対処法【男女238人アンケート調査】
部下が指導に従ってくれない、成果をあげられない
部下が指導に従ってくれない、というのも、管理職ならではのよくある悩みです。特に、30代や40代の管理職へなりたての層を中心に、部下への指導でストレスを感じてしまうという回答が目立ちました。さらに、最近ではハラスメントに対する世間の目が厳しくなってきています。「指導する時、ことあるごとにハラスメントと言われてしまうのではないかとストレスを感じてしまう」という声も寄せられていました。
参考:中間管理職がつらい瞬間と疲れた場合の対処法【男女238人アンケート調査】
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仕事量が多く、残業が増えた
多くの企業では、30代や40代前後の管理職に仕事が集中する傾向があります。管理職へ就任するとこれまで行ってきた実務に加えて、チームのマネジメント業務や調整など、管理職だからこそやらなくてはならない仕事が増えるのです。
中には、
- 「上司と部下の両方から仕事がくるため、仕事量が多くて辛くなる」(30代男性)
- 「マネジメントだけでなく、自分も現場へ出る必要がある」(40代男性)
といった声がありました。
参考:中間管理職がつらい瞬間と疲れた場合の対処法【男女238人アンケート調査】
また、管理職は残業をするのが当たり前、という風土にストレスを感じている方もいました。
責任が重く、辛いと感じる
管理職は部下の失敗やトラブルの責任を取ることが多い、という点も管理職がストレスを感じやすい原因です。
具体的な回答として、
- 「部下は守ってあげたいと思うので、部下のミスは私の指示不足だと報告する」(30代男性)
- 部下がミスをしても、私の責任にされる(40代女性)
といったような声がありました。
参考:中間管理職がつらい瞬間と疲れた場合の対処法【男女238人アンケート調査】
部下がミスをしたときに、管理職として責任を取ったり、指導不足として自分が代わりに謝罪したりすることは珍しくありません。しかし、自分以外のミスで頭を下げる場面が続いてしまうと、「つらい」と感じてしまう管理職も少なくないようです。
悩みを相談できる相手がいない
管理職になると、悩みを身近に相談できる相手が少なくなってしまいがちなことも、管理職がストレスを感じやすい要因として挙げられます。プレイヤーとして働いていたときは、業務上で何か不安や悩みが生じた際に、直属の上司へすぐに相談できました。
しかし、管理職には自立してチームを引っ張っていく役割が求められることも多いため、悩みが生じた際に相談できる相手が少ないという欠点があります。社内で相談窓口を運用する、管理職同士のつながりを密にするなど、会社をあげて対策を進めることが必要です。
参考:中間管理職がつらい瞬間と疲れた場合の対処法【男女238人アンケート調査】
求められる能力が幅広く、負担に感じる
管理職は、チームのマネジメントをすることはもちろん、自身もプレイヤーとして現場へ出て働くことが求められる場面も多々あります。「求められる能力の幅が広いため、負担が大きい」という回答も多く寄せられていました。一言でマネジメント能力といってもその役割は多く、目標達成のための業務に加えて、部下の不満の相談、新人教育などさまざまな業務をこなさなければなりません。
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業務量が多いだけではなく、その内容が多岐にわたるのも管理職がストレスを溜めやすい要因です。
参考:中間管理職がつらい瞬間と疲れた場合の対処法【男女238人アンケート調査】
そもそも管理職に向いてないと感じる
管理職としての仕事を進める中で、「そもそも自分は管理職に向いていないのではないか?」と感じ、それがストレスになってしまう管理職も少なくありません。
また、自分の性格上、
「人から嫌われるのがストレスに感じる」
「1人でもくもくと作業をするのが好き」
「神経質でストレスを溜めやすい」
という方が管理職に向いていないと感じることが多いようです。
プレイヤーとして優秀だからといって、必ずしも優秀な管理職になれるというわけでもありません。
管理職に昇進させる前に、研修やセミナーを開催するなど、会社全体としても対策を進める必要があります。
参考:中間管理職がつらい瞬間と疲れた場合の対処法【男女238人アンケート調査】
女性の場合:育児や介護の負担が大きい
一般社団法人日本経営協会が実施した『女性管理職意識調査報告書 2021』によると、約8割の女性管理職が育児や介護において半分以上の負担を担っています。
その中でも、「育児や介護の負担が大きい」という問題点を挙げた女性管理職は実に4割近くに及びました。管理職ともなれば残業も増え、退勤する時間も遅くなるでしょう。そうなると家庭で過ごす時間を十分に取れず、育児や介護を行っている場合はますます負担が大きくなってしまいます。最近は働き方改革によって育児休暇や介護休暇が積極的に導入されてきているとはいえ、まだまだストレスに感じてしまう社員が少なくないようです。
女性の場合:男性中心の職場である
先述した一般社団法人日本経営協会による調査では、「男性中心の職場である」という点を働く上での障害と感じている女性管理職も2割程度いました。
最近では女性役員の比率を高めたり、新卒採用で男女を均等に採用したりしている企業もありますが、日本においてはまだまだ男性中心の職場も少なくありません。
中には、「男性がほとんどの部署のため、女性に発言権がなかった」という声もありました。管理職のストレスを軽減するためには、時代に合わせて柔軟に対応し、男女問わず活躍できる職場作りを行う必要があります。
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辞めたいと感じている管理職に人事部ができること
管理職は何かとストレスを感じることが多く、相談しようと思ってもなかなか相談できる相手がいない、ということも珍しくありません。管理職が抱える悩みを効果的に解消し、社員の退職や休職といった事態を防ぐためには、人事部が積極的に管理職の悩み解消に向けた施策を実施することが効果的です。辞めたいと感じている管理職に対して人事部ができるアプローチを7つ、紹介します。
管理職の状況を可視化するツールでモニタリングする
管理職社員に対して、自身のマネジメント状況を可視化するサーベイを取り入れることで、悩みや課題が明確になり、自身のマネジメントスタイルを改善するきっかけにしたり、改善状況を把握したりできるようになります。具体例としては、周囲のメンバーや上司にも回答してもらう360度サーベイや定期的な振り返りを目的としたパルスサーベイなどが挙げられます。管理職社員自身が、課題を認識しPDCAを回せるようにするためには、サーベイ結果を読み解く研修も合わせて実施することが効果的です。
アルー株式会社では、管理職層の期待行動の実践度の可視化や定期的な振り返りを促進するサーベイを行い、社員一人ひとりの成長の進捗や課題を可視化する取り組みを行っております。
社員へのヒアリング・面談を行う
悩みを抱える管理職に対する有効なアプローチとして、人事部が主体となってヒアリングや面談を実施することが挙げられます。先述したように、管理職はプレイヤーとは異なり、悩みを相談できる社員が少ないものです。そのような状況で悩みを聞き出して解決へ動き出すためには、人事部が定期的にヒアリングをしたり管理職向けの面談を実施することが効果的でしょう。ヒアリングの際には「最近悩んでいることはないか?」「どんなに細かいことでもよいので、気になることはないか?」と人事部から歩み寄ることで、言い出しにくい悩みも聞くことができます。
コミュニケーションを活性化させる
会社内で働く上で発生する悩みのほとんどは、社内の人間関係やコミュニケーション不足に起因するといっても過言ではありません。管理職の悩みをできる限り軽減するためにも、コミュニケーションを活性化させるような働きかけを実施するとよいでしょう。社内レクリエーションを企画したり、懇親会を企画したりすることはもちろん効果的ですが、それ以外にも例えば「ランチ代を補助する仕組みを整備する」「社内での挨拶を促進する」といった細かなアプローチも大切です。
労働環境を改善する
多くの職場において、管理職はプレイヤーとしての役割とマネージャーとしての役割を両方、求められます。業務量が多くなるため家庭での時間を確保できず、仕事をストレスに感じてしまうというケースが少なくありません。社内のワークライフバランスに課題がある場合は速やかに解消に向けた施策を実施しましょう。
「業務の棚卸しを行い、業務効率化ツールを導入する」「福利厚生を増やす」「在宅勤務制度を導入する」といったアプローチも効果的です。最近では労働環境の改善のためにフレックスタイム制を導入する企業も増えています。
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研修制度を整える
管理職がストレスを感じてしまう要因として、「自分が管理職へ向いていないのではないかと感じる」「自分のマネジメントスキルに自信がない」というものが挙げられます。管理職としてのスキルに自信がないと、そのこと自体をストレスに感じてしまい、管理職を辞めたいという結論に至ってしまうケースがあります。プレイヤーとして働いてきた社員がいきなりマネジメントを任されるのは、負担も大きいものです。
昇進する前の管理職候補を対象とした研修を実施するなどして、ハラスメントにならない指導のコツや部下の悩みとの向き合い方など、必要なマネジメントスキルを身につけてもらいましょう。
▼アルーの管理職研修について詳しくはこちらのページをご覧ください。
採用活動や入社後のオンボーディング施策を見直す
先ほど見たように、管理職の中には「部下が思うように指示に従ってくれない」「部下にやってほしいことがうまく伝わらない」という悩みを抱える社員も多いです。部下に対してストレスを感じる管理職が多いようであれば、人事部は採用活動や入社後のオンボーディング施策に関する見直しを行ってみましょう。中には、入社後に必要な研修や教育を全て管理職へ丸投げしてしまっているという場合もあるかもしれません。管理職に過度な負担が集中しないよう、できる部分は人事部によるサポートで補ってあげることが重要です。
とはいえ、オンボーディングのために人事部や配属先の人的リソースを割けないといった状況もあると思います。その際は学習管理システム(LMS)を用いて学習プラットフォームを用意することで、人的リソースが不足していても充実したオンボーディング環境を整えることができます。
アルーでは、学習者の進捗などを一元管理できるLMS「etudes」を提供しております。LMSの導入をお考えの方は是非一度ご相談ください。
適切な評価制度を確立する
管理職のよくある悩みとして、給与面や評価面が挙げられます。管理職は仕事量が増加するにも関わらず、労働基準法の関係上、残業代が支給されないケースがほとんどです。どれほど残業したとしても給与に計上されないため、割に合わないと感じてしまう社員が少なくありません。給与を全体的に底上げすることはもちろん、360度評価や定量評価といった適切な評価制度を確立することでも管理職の悩みを軽減することができます。
上司のマネジメントスキルを向上させる
上司と部下を持つ中間管理職においては、「上司と部下の意見が一致しなくてつらい」「理不尽な指示を部下に伝えるのがつらい」と感じる社員も多いです。このようなケースの中には、中間管理職の上司のマネジメントスキルに問題がある場合も少なくありません。中間管理職のストレスを軽減するためには、上司のマネジメントスキルを改善することが効果的です。マネジメント層を対象とした研修やセミナーを開催する、といった手段で、上司のマネジメント能力を向上させましょう。
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アルー株式会社の人材育成について
管理職に負担が集中しないようにするためには、研修の実施を通して部下・管理職双方に適切なスキルを身につけてもらうことが必要不可欠です。アルー株式会社では、さまざまな層をターゲットにした研修を展開しています。自社で研修を実施するコストが負担になってしまう際や、自社で実施する研修の質をさらに高めたいという場合は、ぜひ研修の外部委託をお任せください。
ここでは、アルー株式会社の人材育成について、事例を紹介します。
管理職に対する研修の事例
アルー株式会社では、部長や課長といった管理職をターゲットとした研修を実施しています。例えば部長向けの研修の場合、1日目には役割認識として「マネジメントとは?」「自身の業務の振り返り」といった項目に取り組んでもらい、その後労働時間の管理や職場環境の構築について扱います。2日目には1on1ミーティングの実施や面談といった実践演習を通して管理職に必要なマネジメントスキルを効果的に身につけてもらうことができるプランとなっており、管理職の能力の底上げを図りたい企業にはおすすめの研修です。
▼実際の研修事例については以下から確認してください。
管理職の補佐を行う中堅社員への研修の事例
管理職補佐は、管理職のフォローも行いつつプレイヤーとしても活躍することが求められる、やや曖昧な立ち位置です。そのため、実際に管理職補佐として働く上でも独自のスキルや気遣いが求められます。アルー株式会社では、そのような管理職補佐に向けた研修もご用意しています。「上位職の役割について考える」「ビジョン立脚で考える」といった豊富な課題・講義を通して、コミュニケーション能力や対立状況の乗り越え方などを身につけさせることが可能です。
▼実際の研修事例については以下から確認してください。
周囲を巻き込むリーダーシップを身に付ける~大手金融・保険・貸金業の研修導入事例
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まとめ
管理職を辞めたいと感じてしまう原因や、それに対して人事部が実施できるアプローチなどについて紹介しました。管理職は業務量が多くなることに加えて、上司や部下とのすり合わせを行わなくてはならない場面も多く、何かとストレスを溜めてしまいがちです。管理職がストレスを感じてしまって離職してしまう、といった事態を防ぐため、ぜひ研修などの活用も検討しながら、管理職が働きやすい職場づくりに力を入れてください。
▼アルーの管理職研修について詳しくはこちらのページをご覧ください。