事なかれ主義とは?何が悪いのかやデメリット、発生しやすい職場の特徴を解説
日本企業が陥りがちな考え方として、「事なかれ主義」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。事なかれ主義に陥った場合、企業としての成長が鈍化したり、職場の生産性が低下したりして、企業の競争力低下を招きかねません。
この記事では、事なかれ主義の定義やデメリット、事なかれ主義が発生しやすい職場の特徴などを解説します。
▼事なかれ主義から脱却するためにおすすめの研修3選
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事なかれ主義とは
事なかれ主義とは、波風を立てず、穏便に物事を済ませる考え方です。
事なかれ主義の考え方を持つ社員は、社員同士での衝突や反発、競争をできる限り避け、周囲に合わせて穏やかに物事を進めようとします。事なかれ主義を言い換えれば、当たり障りのない考え方のことです。
事なかれ主義の何が悪い?
事なかれ主義の職場は、スムーズに物事が進む良い職場のように思えるかもしれません。 しかし、事なかれ主義の社員が増えると、衝突を恐れ、他人のミスや誤りを指摘できなかったり、意味のないルールに縛られ、生産性が下がったりして、チームの成長が滞ってしまいます。
組織を活性化させるためには、事なかれ主義に陥る社員を極力減らす必要があります。
詳しくは次の項目で解説します。
事なかれ主義によるデメリット
事なかれ主義の社員が多いと、以下のような多くのデメリットが発生します。
- 社員のモチベーションが下がる
- チャレンジしない保守的な組織になる
- 社員が受け身になる
事なかれ主義は社員のモチベーションを下げ、組織の成長を鈍らせる原因となるため、できる限り避けることが重要です。事なかれ主義によって発生するデメリットを一つずつ解説します。
社員のモチベーションが下がる
事なかれ主義に陥る人が増えると、社員全体のモチベーションが低下します。
事なかれ主義の社員は、自分自身で仕事に創意工夫を施したり、業務改善に取り組んだりしようとする主体的な姿勢がありません。チーム全体に消極的な風土が出来上がり、仕事に対するモチベーションが低い社員が増えるでしょう。仕事の意義や目的を見失う社員も多くなり、業務が停滞する可能性もあります。
チャレンジしない保守的な組織になる
チャレンジしない保守的な組織になることも、事なかれ主義に陥る社員が増えるデメリットの一つです。
事なかれ主義の社員は、できる限り物事を穏便に済ませようとするため、チャレンジを避ける傾向にあります。こうした社員がチーム内に増えた場合、チーム全体としてチャレンジしない風土が出来上がってしまうでしょう。
しかし、VUCAとも呼ばれる現在のビジネス環境で企業が存続していくためには、前例にとらわれないチャレンジが必要不可欠です。事なかれ主義の社員が増えると、企業の競争力が低下し、時代に取り残されてしまいます。
社員が受け身になる
社員が受け身になる点も、事なかれ主義によるデメリットです。
事なかれ主義の考えが染み付いた社員は、自分自身のアイディアや工夫を活かして仕事に取り組もうとする姿勢がありません。「常に言われたことだけをやっていればよい」という思考に陥るため、仕事に対して受け身になる習慣がついてしまいます。「上司の指示があるまで動かない」という、いわゆる「指示待ち」の社員も増え、仕事が停滞したり、業務効率が低下したりしかねません。
指示待ち人間の特徴や指示待ち人間を減らすための施策は、以下の記事で詳しく解説しています。
『上司に問題?指示待ち人間の社員を活性化する直し方・特徴・原因を解説』
事なかれ主義に陥りやすい人の特徴
事なかれ主義に陥りやすい人には、いくつかの共通する特徴があります。
例えば自分に自信がなかったり、当事者意識がなかったりする社員は、事なかれ主義になりがちです。また、責任感が希薄だったり、向上心がなかったりする場合も、事なかれ主義に陥りやすくなります。
事なかれ主義になりやすい人の特徴を見ていきましょう。
自分に自信がない
事なかれ主義に陥りやすい人は、自分に自信がない場合が多いです。
「自分自身で判断してよいのだろうか?」と常に疑問に思っているため、波風立てないように自分で判断することがありません。「人に任せた方が安心だ」という考えから、過度に周囲の上司や同僚を頼ってしまうケースも目立ちます。
また、自分の業務スキルに対して自信が持てないため、積極的に物事へ関わるのを避け、事なかれ主義に陥る人も多いです。
当事者意識がない
仕事に対して当事者意識がない人は、事なかれ主義に陥りやすい典型的な例と言えます。
仕事を効率的に進めるためには、メンバーそれぞれが当事者意識を持って、積極的に仕事へ取り組むことが必要不可欠です。
しかしながら、事なかれ主義の社員には当事者意識がありません。「この仕事は誰か他の人がやってくれるだろう」「自分で積極的に動かなくても問題ない」という思考が染み付いているため、自分に必要なアクションを考えられなかったり、自分の意見を持てなかったりします。
無責任
責任感がない社員も、事なかれ主義に陥りやすいです。
仕事に対して責任を負っているという意識が薄く、常に「人や環境に責任がある」と考えます。例えばミスやトラブルが発生しても、「上司の指示が悪かった」「タイミングが合わなかった」といったように言い訳ばかりして、自分の責任を認めたがりません。
また、事なかれ主義の社員は、トラブルの種を発見した場合でもわざと見過ごしてしまうケースがあります。自分が積極的に物事へ関わろうとしないため、常に「人のせい」「環境のせい」という思考パターンになってしまうのです。
管理職が事なかれ主義だと、より問題は深刻です。嫌われることを恐れて部下に指摘ができず、部下の成長を支援ができなかったり、新しいチャレンジや改革に取り組めず、チーム全体の生産性を落としたりといったリスクがあります。
変化を嫌い向上心がない
事なかれ主義になる社員には、変化を嫌い向上心がないという特徴もあります。
事なかれ主義の社員は「現在の仕事をただ安定的にこなしていたい」と考え、変化を嫌います。面倒ごとが増えることを避けるため、さまざまな理由をつけて変化を拒むことも多いです。「さらなる成長をしたい」という意識も希薄で、業務効率を改善したり、職場環境をよりよくしたりといったアクションにも消極的な傾向が目立ちます。
争いを避けるため相手に合わせようとする
事なかれ主義になる人の中には、争いを避けるため相手へ合わせようとする習慣がついている人もいます。
仕事を進める際には、必ずしも他者と意見が一致するとは限りません。ときには他者との衝突や競争を行うことが、組織のさらなる成長に欠かせない場合もあります。
しかしながら、事なかれ主義の社員は「他人と争いをしたくない」という意識が強すぎるあまり、常に相手の意見へ賛同します。他者との競争や衝突を面倒に感じるため、状況によって自分の意見を変えたり、相手に同調したりするのです。また、相手に嫌われることを過度に恐れているケースもあります。
自身への批判を受け止められない
自身への批判を受け止めきれない社員も、事なかれ主義に陥りやすいでしょう。
仕事を進めていると、上司や周囲の社員から何らかの指摘を受けることもあります。こうした他者からの指摘や批判を受け止められず、思考や行動が停止してしまうのです。しかし、事なかれ主義から脱却し成長するためには、批判を素直に受け入れ、改善行動を起こしたり、相手との衝突を恐れず、意見交換をしたりする必要があります。
事なかれ主義が発生しやすい職場の特徴
事なかれ主義に陥る社員が多い場合、本人ではなく職場環境に問題があるケースも少なくありません。事なかれ主義が発生しやすい職場の特徴は、以下の5つです。
- 失敗やミスに厳しい
- 正当な評価がされない
- お互いに協力や感謝がない
- 同質性が高い
- 暗黙のルールが多い
事なかれ主義が発生しやすい職場の特徴を知ることで、事なかれ主義に陥る社員を減らすことができます。事なかれ主義になりやすい職場の特徴を一つずつ解説します。
失敗やミスに厳しい
事なかれ主義が発生しやすい職場の特徴として、失敗やミスに厳しい点が挙げられます。
例えば失敗やミスをした社員に対して、必要以上に厳しく叱責したり、評価を大きく下げたりするようなケースです。こうした職場では、失敗やミスを過度に恐れる社員が増え、「成功体験を積むこと」よりも「失敗を避けること」が重視されるようになります。
結果的に社員自身によるチャレンジが減り、厳しい叱責を恐れて失敗やミスをわざと見逃す社員も増えるでしょう。
正当な評価がされない
正当な評価がされない職場も、事なかれ主義が発生しやすいです。
仕事に対して正当な評価がされない場合、社員は「必要最低限のことしかしなくてよい」と考えます。その結果、仕事に対するモチベーションが低下し、波風立てないように仕事を進めようとする事なかれ主義が増えるでしょう。
特に、評価が特定の基準に偏っていたり、評価基準が曖昧だったりする職場は注意が必要です。360度評価を導入するなど、バイアスを排除した評価ができるように制度を整える必要があります。
メンバー間の協力や感謝がない
事なかれ主義が発生しやすい職場には、お互いに協力や感謝がないという特徴もあります。
例えば「困っている社員を助けない」「アイディアを出しても感謝されない」といった職場では、社員が積極的に行動するインセンティブがありません。こうした状況が続くと、社員は主体的に業務へ取り組まなくなり、事なかれ主義に陥ります。
社員同士のコミュニケーションを活性化し、互いに協力したり感謝したりする風土を作るのが重要です。
同質性が高い
同質性が高い職場も、事なかれ主義が生まれる原因となります。
同質性が高い職場では、同じ固定概念を持っている人が多く、多様な価値観がありません。その結果、社員が人と違った行動を取ることを恐れ、事なかれ主義に陥りやすくなります。
外部環境の変化が激しさを増している現代では、組織内に多様な価値観を確保して、意思決定の質を向上させることが重要です。組織の同質性が高い場合には、採用や配置などを見直して、組織内の多様性を確保するよう意識しましょう。
ダイバーシティーの取り組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。
『ダイバーシティの取組み事例10選。ダイバーシティとはなにかを簡単解説 』
暗黙のルールが多い
暗黙のルールが多い場合、暗黙のルールを極力破らないようにしようと考える社員が増え、事なかれ主義が発生します。
暗黙のルールの例としては、「有給を取るときは事前に周囲へ詫びる」「会議で思いつきの発言をしてはいけない」といったものが挙げられます。また、上意下達の風土が強すぎるあまり、「上司や先輩の指示に反論してはいけない」といった暗黙のルールがある職場もあるでしょう。
こうした職場では、メンバーが暗黙のルールに支配されてしまいます。その結果、主体的な行動や創造性発揮が阻害され、事なかれ主義が発生してしまうのです。
事なかれ主義の社員を減らす方法
事なかれ主義の社員を減らすためには、社員に自分たちの固定観念に気づかせたり、物事の捉え方を変えられるように支援したりするのが重要です。また、社員個人にアプローチするのではなく、風土改革を始めとした組織全体での取り組みも欠かせません。
ここからは、事なかれ主義の社員を減らす3つの方法を解説します。
自分たちの固定観念に気づかせる
事なかれ主義の社員を減らすためには、自分たちの固定観念に気づかせることが大切です。
自分の持っている固定観念には、自分だけではなかなか気づけません。特に集団の中で「当たり前」とされている概念について、「そもそもそれはなぜなのか?」と考える機会は少ないでしょう。
しかし、こうした概念について疑問を持たない状態が続くと、いつの間にか思考が事なかれ主義に陥ってしまいます。固定観念に染まっていない外部のファシリテーターの力も借りながら、自分たちが「当たり前」と考えていることに疑問の眼差しを向けるのが、事なかれ主義から脱却する第一歩です。
物事の捉え方を変えられるように支援する
事なかれ主義から脱却するためには、物事の捉え方を変えられるように支援することが大切です。
事なかれ主義から脱却するためには自分の固定観念を自覚する必要があります。しかし、固定観念を自覚するだけでは、そこから脱却するのは困難です。
固定観念から抜け出すためには、「物事を別の観点から捉えられないか?」と常に思考する習慣をつけてもらいましょう。ネガティブな解釈だけではなくポジティブな解釈も考える、自分の目には映らないことまで想像を巡らせるなど、物事の捉え方を変えるように意識することが重要です。
組織全体で変化する
組織全体で変化することも、事なかれ主義に陥らないために重要なポイントの一つです。
個人が物事の捉え方を変えるのは非常に大切ですが、一人だけでは心理的な負担が大きく、事なかれ主義に逆戻りしてしまうケースがあります。個々人が「点」で変わるのではなく、組織として「面」で変わることを意識して、組織全体として事なかれ主義からの脱却を目指すのが大切です。
なお、組織全体を変化させる際には、段階的に進めていくのがよいでしょう。
まずは上司が起点となって仕事のやり方を変化させ、そこで得られた成功事例を社内へ共有して変化を加速させるという流れがスムーズです。
事なかれ主義を解決する研修ならアルーにお任せください
事なかれ主義を解決するための研修なら、ぜひアルーへお任せください。
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また、アルーの研修ではマインド面にアプローチします。事なかれ主義に陥る根本的な原因である考え方を変化させるため、効果的に事なかれ主義からの脱却をサポートできるのが特長です。
事なかれ主義の解決におすすめの企業向け研修
アルーでは、事なかれ主義の解決におすすめの企業向け研修をご用意しています。ここでは、その中でも特におすすめの研修を4つ紹介します。
事なかれ主義からの脱却を促す研修の流れや内容を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
未知を切り拓く意識への転換研修
未知を切り拓く意識への転換研修は、部長層におすすめの研修です。
研修では、部長と課長に求められる役割の違いについて理解した上で、仕事において持つべき「問い」を深堀りします。
未来を自分自身の手で切り拓いていく意識が獲得できるため、事なかれ主義からの効果的な脱却が可能です。また、自分自身の思考に影響を与えるメンタルモデルや矛盾を解決する方法など、部長層に求められるマネジメントについて幅広く学ぶことができます。
「未知を切り拓く意識への転換」研修の詳細は以下のページでご確認ください。
「未知を切り拓く意識への転換」研修
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ひとりだち意識の獲得研修
ひとりだち意識の獲得研修は、新人~3年目社員を対象に、仕事へのオーナーシップを持ち、自ら仕事を進めていく「ひとりだち意識」を得ることを目的とした研修です。
新入社員や若手社員の中には、優秀な作業者であろうとする意識を持っており、指示されたこと以外は行わないという課題をもった社員もいるのではないでしょうか。
この研修では、プロフェッショナル意識を持ち、目的達成のために創意工夫して仕事に取り組むマインドセットを身につけることができます。また、自分が周囲に対してできるプラスアルファの行動を考え、実行する力を身につけてほしい企業にもおすすめです。
詳しくは以下のページをご覧ください。
ひとりだち意識の獲得(新入社員向け研修)
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志の獲得研修
志の獲得研修は、若手社員を対象に、「志」を持って仕事に取り組み、周囲の期待を超える価値を生み出すことを目的とした研修です。
相手の期待に対して自ら考え、自分の思いも含めて提案するといった行動を起こしていない社員や、自分なりのこだわりを持って仕事に取り組んでいない社員のマインドセットに最適な研修です。
詳しくは以下のページをご覧ください。
「志の獲得」研修(若手社員向け研修)
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コミュニケーション研修
コミュニケーション研修は、周囲と良好な関係を構築するためのコミュニケーションスキルを獲得できる研修です。
事なかれ主義から脱却するためには、職場のコミュニケーションを活性化することが非常に大切です。職場でのコミュニケーションが生まれることで、社員同士がさまざまな提案を行うようになり、仕事に対する主体性や積極性が向上します。
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アルーのコミュニケーション研修についてさらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
コミュニケーション研修
マネジメントベーシック
マネジメントベーシックは、新任管理職を対象とした研修です。
組織全体として事なかれ主義から脱却するためには、まず管理職を起点として意識改革を行う必要があります。アルーが提供しているマネジメントベーシック研修では、管理職の役割認識からスタートするのが特長です。
管理職として期待されている役割を正しく認識することで、自ら積極的に組織を牽引するマネジメントスタイルを身につけることができます。「正解のない問いについて考える」といった、実際のマネジメントの場面を想定した実践的なワークも豊富です。
アルーが提供しているマネジメントベーシックは、以下のページでさらに詳しく紹介しています。
マネジメントベーシック(管理職研修)
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ダイバーシティ研修
ダイバーシティ研修は、ダイバーシティを活用してよりよい組織を作るためのマインドやスキルを身につける研修です。
事なかれ主義から脱却するためには、組織の同質性を排除して、多様な価値観を認め合う文化を作る必要があります。組織の多様性を確保することで、暗黙のルールや固定観念から脱却し、事なかれ主義に陥らない柔軟な思考が展開できるようになるでしょう。
アルーのダイバーシティ研修では、ダイバーシティの定義や多様性の高い組織のメリット・デメリットについて学んだ上で、ダイバーシティについて考えるワークに取り組みます。自分の組織のダイバーシティについて考える機会が豊富に設けられているため、ダイバーシティを自分ごととして捉えることが可能です。
アルーが提供しているダイバーシティ研修の資料は、以下のページからダウンロードできます。
まとめ
事なかれ主義について、定義やデメリットなどを紹介しました。
事なかれ主義の社員はあまり目立ちたがらないため、組織内でも見過ごされがちです。しかし、事なかれ主義の社員が増えると組織の生産性は低下し、いつの間にか時代に取り残されてしまいかねません。
事なかれ主義を解消するためには、研修の実施を始めとした企業側の対策が効果的です。ぜひこの記事をきっかけに事なかれ主義に対する理解を深め、生産性の高い組織を実現しましょう。