
【事例あり】リスキリングとは?何を学ぶかや導入の際のポイントを解説
目まぐるしく変化するビジネスの現場に対応するための取り組みであるリスキリング。2018年のダボス会議において「リスキリング革命」が発表されたことを皮切りに、日本政府も積極的に推進するなど、急速に注目を浴びています。
リスキリングは個人で取り組むのはもちろん、企業が主体となって社員のリスキリングを推進することも多いです。この記事では、リスキリングで学びたい内容や、リスキリングを導入する際に気をつけたいポイントについて解説します。
より深く知るための『オススメ』お役立ち資料
目次[非表示]
- 1.リスキリングとは
- 1.1.リカレント教育との違い
- 1.2.アンラーニングとの違い
- 2.リスキリングが注目されている理由
- 2.1.岸田総理がリスキリング支援に言及したため
- 2.2.リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業費補助金を公募
- 2.3.DX推進のため
- 2.4.働き方の変化のため
- 3.「リスキリング」で起きがちな誤解
- 4.リスキリングでは何を学ぶべき?
- 4.1.データ分析
- 4.2.ITツールの知識
- 4.3.英語力
- 4.4.マーケティングスキル
- 4.5.ポータブルスキルも必要
- 5.リスキリングが企業にもたらすメリット
- 5.1.人手不足に対応できる
- 5.2.エンゲージメント向上につながる
- 5.3.自律型人材の育成につながる
- 5.4.社内の文化を知っている社員に取り組んでもらえる
- 5.5.新しいアイデアの創出ができる
- 5.6.業務効率化につながる
- 6.リスキリングを導入するステップ
- 6.1.企業の課題や事業戦略に基づいた人物像やスキルを定める
- 6.2.現状の課題を可視化し、認識させる
- 6.3.教育プログラムを計画・実施する
- 6.4.業務で実践を行う
- 6.5.フォローアップを行う
- 7.リスキリングの効果測定に有効な資格
- 7.1.データサイエンティスト向けの資格
- 7.2.デザイナー向けの資格
- 7.3.アーキテクト・エンジニア向けの資格
- 7.4.セキュリティエンジニア向けの資格
- 7.5.DX人材向けの資格
- 8.リスキリングを導入する際おさえておきたいポイント
- 8.1.社員の声を取り入れる
- 8.2.アウトソーシングを活用する
- 8.3.リスキリングの目標設定・評価を行う
- 8.4.受講者のマインドセットも大切
- 9.リスキリングを行った企業の事例
- 10.企業のリスキリングはアルーにお任せください
リスキリングとは
リスキリングとは、新しい職業につくため、あるいは今の職業で求められるスキルの変化に対応するため、必要なスキルを自ら獲得したり、所属する組織が獲得させたりする、学び直しの取り組みのことです。
特にリスキリングの代表格としてよく取り組まれるのが、DX推進に向けた取り組みです。
経済産業省ではDX時代のリスキリングを下記のように定義しています。
新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること
詳しく読みたい方は下記URL資料(PDF)からご参照ください。
DXの時代には、必要なITスキルやネットリテラシー、サイバーセキュリティといった知識をリスキリングによって社員に身につけてもらう必要があります。
リカレント教育との違い
リスキリングとよく似た意味の言葉として、「リカレント教育」というものがあります。どちらもスキルを獲得するための学習についての言葉ですが、リスキリングとリカレント教育はどう異なるのでしょうか。
両者の最も大きな違いは、会社が主体か個人が主体か、という点です。リスキリングでは組織に属し続けることを前提に、主に企業で活躍するのに役立つスキルを身につけます。一方でリカレント教育では個人の取り組みに重点が置かれており、自身の人生を豊かにするための学習サイクルを回すのが特徴です。
アンラーニングとの違い
リスキリングと同じ文脈で取り上げられる言葉に、「アンラーニング」というものがあります。アンラーニングとは、既に身につけた知識やこれまで行ってきた仕事のやり方、価値観などを変革させることを指します。
リスキリングに取り組む際には、これまで無意識のうちにとらわれてきたバイアスから脱却し、柔軟な視点で物事を捉えることが重要です。そのため、アンラーニングはリスキリングとセットで行うべき取り組みである、といえます。
リスキリングが注目されている理由
リスキリングは、ここ数年になってビジネスの現場で急速に注目が集まってきた取り組みです。リスキリングが最近注目されている背景として、政府主体となった取り組みが進められる見込みであることや、DX推進を目指している企業が増えてきたこと、また働き方が変化してきたことなどが挙げられます。
リスキリングが注目されている背景を解説します。
岸田総理がリスキリング支援に言及したため
岸田総理は2022年10月、日本経済新聞社主催のセミナーにおいてリスキリングに言及しました。同セミナーにおいて総理は以下の3つを柱に、大々的な政策拡充を行う方針を示しています。
- 転職や副業などを受け入れる企業、訓練後に非正規雇用を正規に転換する企業への支援を新設・拡充する
- 在職者のリスキリングから転職までのプロセスを一貫して支える制度を創設する
- 従業員を訓練する企業へ支給する支援金の補助率を引き上げる
これら3つの観点を基軸とした「人への投資」は5年間で1兆円規模となる見込みであり、経済産業省でも、リスキリングを通じた支援事業を実施しています。
リスキリングを通じたキャリアアップ⽀援事業について
令和5年6⽉ 経済産業政策局 産業⼈材課
https://www.meti.go.jp/information_2/publicoffer/review2023/kokai/overview_5.pdf
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業費補助金を公募
1次公募では、すでに51件の事業の補助金申請が採択されていることが報告されています。
こちらの追加情報もご参照ください。
令和4年度補正予算「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」(一次公募)の採択事業を採択しました ー 経済産業省
DX推進のため
業務効率を改善する上で欠かせない取り組みであるDXは、最近も業種や業界を問わず様々な企業で取り組まれています。一方でDXを下支えするのに必要なDX人材の不足が指摘されており、社員のITスキル向上にも課題を抱える企業は多いのが現状です。
DXをスムーズに実施するために、社員のリスキリングに取り組む企業も増えています。経済産業省の「デジタル時代の人材政策に関する検討会」が公表している資料では
- ビジネスアーキテクト
- デザイナー
- データサイエンティスト
- ソフトウェアエンジニア
- サイバーセキュリティ
の5つの領域での人材育成の必要性が指摘されており、企業と個人、研修事業者等が連携した人材育成の取り組みが求められています。
働き方の変化のため
新型コロナウイルスの流行を受け、リモートワークを導入する企業は大きく増えました。また、近年積極的に進められている働き方改革では柔軟な働き方が後押しされており、オフィスに出社せず自宅で働くという働き方を採用する企業はますます増えてきています。
テレワークの際には、従来のオフィスでのコミュニケーションとは異なる伝え方やマナーが必要です。また、リモートワークに必要なツールを使いこなす能力も求められます。こうした働き方の変化も、リスキリングの取り組みを後押ししている要因の一つです。
「リスキリング」で起きがちな誤解
リスキリングは、2016年ごろに欧米諸国で広がった概念であるため、まだまだ正しい理解が広まっているとは言えない状況です。ここでは、よくある誤解を4つ紹介します。
OJTの延長と捉えてしまう
OJTは既存の業務に必要なスキルや業務のやり方を職場での実践を通じて身につけます。 一方のリスキリングは、既存の業務を前提としておらず、これまでに存在しなかった業務や、できる人がいない仕事を今いる社員に担当してもらう際に必要なスキルを習得することを目的に行われます。両者は習得するスキルが大きく違うため、リスキリングをOJTの延長と捉えてしまうと、社内で誤解や育成やスキル習得がうまくいかない可能性が発生します。
DX人材育成だけに限ったリスキリングをしようとする
リスキリングをDX人材育成だと考えてしまうこともよくある誤解です。リスキリングは、DX人材育成に限った話ではありません。業務内容により、必要な知識・スキルは様々です。自社社員の現状把握を行い、今後のビジョンを見据えて、DX人材育成に限らずどのような目的でリスキリングを実施していくべきか検討しましょう。
「デジタル・IT人材の育成」を目的化してしまう
リスキリングの最終目的は、人材のデジタルスキル向上や、IT人材の育成と思われがちなところがあります。しかしそれはあくまで手段でしかありません。あくまでも事業の成長や、時代遅れの業務の効率化による生産性向上が最終目的であることを忘れてはいけません。
社内リソースでの開発にこだわってしまう
リスキリングの仕組みづくりで社内での開発にこだわりすぎることもよくある誤解です。リスキリングに該当するほとんどのスキルはこれまで教育を受けていない新しいスキルであることが多いため、各スキルを専門としている外部コンテンツを活用し、効率的に取り組みましょう。たとえばオンラインの学習コンテンツなどは普及が広まっており、質も向上しているので活用しない手はありません。アルーでは、人事の型でも学習進捗が管理できるクラウド型eラーニングシステム「etudes(エチュード)」を提供しております。オンライン学習コンテンツ導入をお考えの方は、ぜひご検討ください。
リスキリングでは何を学ぶべき?
リスキリングに取り組む企業は増えてきていますが、実際にリスキリングを実施する際にはどのような内容を学べばよいのでしょうか。
リスキリングの際に学習する能力の代表的なものとして、データ分析やITツールに関する知識が挙げられます。また、英語力を始めとした語学力を重視する企業も多いです。リスキリングで学ぶべき内容について紹介します。
データ分析
データ分析力とは、収集したデータを的確に分析し、分析した結果から仮説を導く能力のことを指します。ビジネスの様々な場面でデータが重視されるようになってきた昨今、マーケティング部門はもちろんのこと、広報部門や開発部門など職種を問わず幅広く求められるスキルです。
データ分析力は、リスキリングで取り組む代表的なスキルです。データの特徴を読み解いて起きている事象の背景や意味を捉えることに加え、それをビジネスに役立つ形で知識として抽出することが求められます。
ITツールの知識
ITツールの知識は、DXを進める上で必要不可欠です。PowerPointやExcelといったOffice製品の知識や、メールソフトやパソコン全般についての知識などを身につければ、業務効率化や業績向上といった効果が期待できます。
ITツールの知識も、リスキリングでよく取り組まれる能力です。最近では企業からの情報流出や、コンプライアンス意識の低下によるトラブルが社会問題化しています。単にITツールの使い方を教えるだけでなく、セキュリティに関する知識や意識まで踏み込んで身につけてもらうのが重要です。
英語力
少子高齢化が進んできた昨今、様々な分野で日本国内の市場縮小が指摘されています。最近ではそうした背景を受け、事業のグローバル化や海外進出に取り組む企業も増えてきました。
企業がグローバル進出する上で重要なのが、社員の英語力です。英語力はTOEICやTOEFLといった資格試験が充実しているとともに、英会話スクールや英語学習ツールなども幅広く展開されています。リスキリングを通じて英語力を高め、グローバルな視野を身につけてもらおうとする企業も多いです。
マーケティングスキル
個人の趣味や志向が多様化してきている昨今、マーケティングの重要性はますます高まっています。変化の激しいビジネス環境を勝ち抜くためには、常に市場ニーズを分析し、個々の顧客が何を求めているのかを正確に把握することが必要です。
マーケティングスキルも、リスキリングで身につけさせたい内容として常に上位にある能力です。売上データや取引履歴といった従来から活用されてきたデータを用いたマーケティングに加え、オンライン上で得られる利用履歴や移動履歴といったデータをマーケティングに活用する機会も増えています。
ポータブルスキルも必要
ポータブルスキルとは、環境が異なっても活用できる汎用性の高い能力のことです。技術革新が目まぐるしい昨今、リスキリングによって環境が変化しても活用できるポータブルスキルの獲得を目指そうとする企業も少なくありません。
具体的なポータブルスキルの例としては、まず課題発見力が挙げられます。職場や業務の課題を自ら見つけられるようになれば、業務プロセスの改善や業務効率の向上が期待できるでしょう。また、自ら学び続ける自律的学習力を高めてもらうことによって、常に知識をアップデートし続ける姿勢を身につけてもらおうとする企業も多いです。
リスキリングが企業にもたらすメリット
リスキリングは、リスキリングによって新しいスキルが身につく従業員にとってはもちろん、企業側にとっても大きなメリットのある取り組みです。リスキリングに力を入れることで、最近深刻化している人手不足への対応や新規アイデアの創出、エンゲージメントの向上といった効果が期待できます。
リスキリングが企業にもたらすメリットを紹介します。
人手不足に対応できる
少子高齢化が進んでいる昨今では、日本の働き手が減少傾向にあります。女性活躍や外国人労働者の受け入れといった取り組みは進んできているものの、高度なスキルを身につけた人材を採用するハードルは依然として高いのが現状です。
リスキリングによって従業員が新しいスキルを身につければ、新しい業務や職種に挑戦できるようになるため、企業は人手不足に対応できる可能性が高まります。例えば人工知能やブロックチェーンといった新しい技術が目まぐるしく登場するIT分野において従業員のリスキリングを進めれば、人材採用で人手不足を補う必要がなくなり、業務の幅を広げることができるでしょう。
エンゲージメント向上につながる
リスキリングは従業員のスキルアップやキャリアアップに直結します。そのためリスキリングをきっかけに従業員は自分自身の成長やキャリアアップに興味を持ち、自らの能力を高めることが可能です。従業員の成長環境を整えることで、個々のモチベーションの向上につながり、仕事に対する意欲やエンゲージメントが高まることが期待できます。
さらに、リスキリングで従業員が新しい技術を身につければ、これまで出来なかった仕事に取り組めるようになり、自信の獲得にもつながります。従業員が自己実現を実感することによって満足度の向上やストレスの軽減といった効果が見込めるため、エンゲージメントはさらに上昇するでしょう。
自律型人材の育成につながる
自律型人材とは、自分で業務の進め方を決めて主体的に行動できる、自己管理能力が高い人材のことを指します。自律型人材を育成すれば社員が個々でスキルアップに取り組めるようになるため、企業にとってもメリットは大きいです。
リスキリングを通じて従業員が自分自身のスキルやキャリアを見つめ直すことで、自律型人材として成長することができます。また、リスキリングで自己啓発や自己管理のスキルを習得することも、自律型人材としての能力を高める上で効果的です。
社内の文化を知っている社員に取り組んでもらえる
高いスキルを持った人材に働いてもらいたいと考える企業にとって、主な選択肢は2つあります。1つめは新たに高いスキルを持った人材を採用すること、2つめはリスキリングによって既存の従業員にスキルを伸ばしてもらうことです。
前者の場合はどうしても自社の価値観やビジョンを新たに浸透させる必要がありますが、リスキリングによって能力を高める場合にはその必要がありせん。既に社内の文化を知っている人材に能力を伸ばしてもらうことは、社内文化を維持しつつ能力を高めてもらう上でも有効です。
新しいアイデアの創出ができる
対話型のチャットボットであるChatGPTや画像生成AIであるStable Diffusionなど、最近の技術革新は目まぐるしいです。変化の激しいビジネス環境で生き残っていくためには、イノベーションを起こし続けることが欠かせません。
リスキリングによって新しいスキルを習得することは、業務に取り組む上での新しいアイデアを創出することに直結します。リスキリングで新たなスキルや知識を身につければ、より効率的な業務の実施や、新しい切り口からの商品やサービスの開発につながるでしょう。
業務効率化につながる
リスキリングによって新たな知識を身につければ、業務効率化に直結します。例えばITツールの使い方やリモートワークに必要なWeb会議ツールの使い方などを習得すれば、業務のオンライン化が容易になり、効率が改善するでしょう。業務を自動化するRPAといったさらに高度なツールの使い方を習得すれば、さらなる改善が期待できます。
また、リスキリングによって適切なコミュニケーション能力を身につけたり、従業員が自信を獲得したりすれば、仕事の際の抜け漏れやコミュニケーションのミスが軽減され、スムーズに業務が進むようになることも期待できます。
リスキリングを導入するステップ
リスキリングを導入する際には、いくつかのステップに分けて実施するとよいでしょう。リスキリングを実施する際に必要なステップは、主に5つあります。
リスキリングを導入する際の基本的な流れについて、ステップごとに詳しく解説します。
企業の課題や事業戦略に基づいた人物像やスキルを定める
リスキリングを行う際には、まずどのようなスキルを身につけてもらいたいのかを明確にする必要があります。また、リスキリングを通じて実現してほしい人物像を定めることも必要です。人物像やスキルなど、リスキリングのゴールを策定するところから始めましょう。
リスキリングによって実現したいスキルや人物像を決める際には、企業の課題や事業戦略を参考にしていきます。必要に応じて現場や経営陣にヒアリングを行い、どういった技術が不足しており、どのような人材が求められているのかを正しく把握するのが大切です。
現状の課題を可視化し、認識させる
リスキリングのゴールを設定したあとは、ゴールに向けた計画を策定するため、現状の課題の可視化を行いましょう。例えばリスキリングのゴールとして「業務効率化のためのITスキルの向上」を設定した場合は、実際にアンケートなどを実施した上で、現場に現状どの程度のITスキルがあるのかを把握します。
現状の課題を把握したら、社員にリスキリングの必要性を伝えるため、現状を可視化して認識させましょう。社員自身がリスキリングの重要性を感じれば、より学習サイクルがスムーズに回ります。
教育プログラムを計画・実施する
現状とゴールをそれぞれ把握したら、教育プログラムを策定し、実施していきましょう。教育プログラムの策定時には、例えば以下のような内容を盛り込むのが効果的です。
- どの程度の期間をかけてリスキリングを行うのか
- どういった手段でリスキリングに必要なスキルを身につけてもらうのか
- ゴールまでの段取りや、より細かなマイルストーン
また、教育プログラムを実施していく際に従業員任せとするのではなく、随時人事部や上司がリスキリングの進捗状況を把握するように心がけましょう。
業務で実践を行う
リスキリングの取り組みを実施したら、業務で実践してもらいましょう。例えばリモートワークに必要なWeb会議ツールの使い方を教育した後、実際に会議でリモート会議ツールを活用してもらう、といったことが考えられます。
せっかくリスキリングによって新たなスキルや知識を習得しても、それをどう業務に活用するのかがわからなければリスキリングの意味はありません。単に知識を教えるだけでなく、「日頃の業務にどう活用するのか?」「どういう場面で役立つ知識なのか?」といった点まで踏み込んで教えると効果的です。
フォローアップを行う
最後に、フォローアップを行います。リスキリングによって身につけた知識は、常にアップデートし続ける必要があります。また、リスキリングによって獲得した知識を忘れてしまうこともあるでしょう。
具体的には、リスキリングの取り組み終了後に、定期的にアンケートや現場へのヒアリングを行う、といった取り組みが考えられます。継続的にスキルや知識が活用できているかを把握した上で、追加で教育を実施するなど、状況に応じて必要なサポートを行っていきましょう。
リスキリングの効果測定に有効な資格
リスキリングの制度を導入したら、社員のリスキリングが進んでいるかどうか効果測定する必要があります。効果測定として有効な手法の一つに、ITベンダーの提供する検定・資格試験の合格を目指すものがあります。合格を個人の目標に設定することで、モチベーションの持続、向上効果も見込むことができます。ここでは職種別におすすめ資格を紹介します。
データサイエンティスト向けの資格
データ分析に必須のプログラミング言語といえば「Python」です。Pythonの基礎知識や、関数などがまとめられた「ライブラリ」を事前に学習しておくと、その後の学習が効率的になります。
そこでおすすめが、「Python3エンジニア認定データ分析試験」という資格です。
その学習を通して基本的な知識を網羅できるため、合格後の成長も期待できます。
デザイナー向けの資格
デザイナーとして成長するためには、Adobe製品への理解が必須です。「アドビ認定プロフェッショナル」は、アドビが公認する国際認定資格です。スタート地点から取得しておくのに申し分ない資格です。
アーキテクト・エンジニア向けの資格
企業のシステムがどんどんクラウド化するなかで、人気を集めているのがAWS(Amazon Web Service)です。AWSは、サーバーやデータベースなどのインフラからデータ分析手法(機械学習等)なども提供するサービスで、人気の高いクラウドサービスです。
そんなAWSを効率的に利用するために、公認資格が用意されています。多くの種類がありますが、まずは基礎レベルの「Cloud Practitioner」が良いでしょう。
セキュリティエンジニア向けの資格
サイバーセキュリティの必要性は日々高まってきますが、その中でセキュリティエンジニアの人気が高まっています。情報処理安全確保支援士試験は、経済産業大臣から合格証が甲府される国家資格で、合格すれば、「ITの安全・安心を支えるセキュリティの番人」へのスタートとしては申し分ない資格です。
DX人材向けの資格
最後に紹介するのは「デジタルトランスフォーメーション検定」です。こちらは、一般財団法人 全日本情報学習振興協会が認定する民間資格で、デジタル・トランスフォーメーション(DX)時代を⽀える、IT先端技術トレンドとビジネストレンドの両方を理解している人材を育てることを目的としています。DX初心者にもおすすめの資格です。
リスキリングを導入する際おさえておきたいポイント
リスキリングを実施する際には、いくつかの典型的な失敗事例が存在します。リスキリングを実施するのであれば、なんとしてもこうした失敗を避け、効果的なリスキリングを推進したいものです。
リスキリングを成功させるために必ず知っておきたい、いくつかのポイントを紹介します。
社員の声を取り入れる
リスキリングを実施する際には、従業員自身の主体性が何よりも重要です。リスキリングに取り組む本人がリスキリングの重要性を感じられるようにするためには、社員の声を積極的に取り入れるのがよいでしょう。
例えばリスキリングの計画を立てる際には、人事部の想像で求められるスキルや知識を決めるのではなく、現場へのヒアリングに基づいたゴールを設定するようにしましょう。社員の声が取り入れられることによって、育成プログラムの思わぬ問題点や改善点が見えてくることもあります。
アウトソーシングを活用する
リスキリングを実施する際には、様々な育成ノウハウが必要です。特にITツールや情報セキュリティといった専門性の高いトピックを学習する際には、社内で育成のためのリソースを確保できないケースも少なくありません。
こうした際に活用したいのが、リスキリングのためのアウトソーシングサービスの活用です。自社内で研修を完結させるのではなく、必要に応じて外部の優秀な学習ツールや学習管理システムを取り入れることで、より質の高いリスキリングに取り組めます。
▼アルーのテーマ別研修は、以下のページからご確認いただけます。
リスキリングの目標設定・評価を行う
リスキリングを実施する際によく陥りがちなのが、リスキリングの育成施策を実施したあと放置してしまう、ということです。リスキリングの効果を高めるためには、施策終了後の評価が必要不可欠ですし、評価を適切に行うためには事前に目標をしっかりと定める必要があります。
リスキリングを行う際には、しっかりと目標設定や評価を行うように意識しましょう。取り組み終了後の評価から取り組みの改善点を見出すことによって、次回以降より質の高い教育プログラムを用意できるようになります。
受講者のマインドセットも大切
リスキリングを行う際には、リスキリング対象者のマインドセットが非常に大切です。受講者がリスキリングに前向きな姿勢でない場合、知識の習得が遅れたり、そもそも話を聞いてもらえなかったりといった問題が発生してしまいます。
特にありがちなのが、「リスキリングは自分には関係ない」「文系なのでDXはできない」といったバイアスに社員がとらわれているケースです。リスキリングを行う際には、従業員にとってのメリットもあわせて伝えるようにするなど、前向きな姿勢を引き出すよう意識してみてください。
リスキリングを行った企業の事例
リスキリングは、業種や業界を問わず様々な企業で実施されている取り組みです。実際、リスキリングを実施することによって業務効率の改善や業績向上につながった企業は少なくありません。
リスキリングを行った企業の実例を3つ、紹介します。
富士通
富士通は、「ITカンパニーからDXカンパニーへ」という経営戦略を掲げ、成長投資の加速を発表しています。2019年にはESG説明会において「社会価値の創出を牽引する人財戦略」を発表するなど、近年ますます人への投資に力を入れている企業です。
現在特に力を入れて取り組んでいるのが、デジタルスキルを持つ人材の強化に向けた施策であるDX研修です。開発部門に限らず、国内グループ企業の全従業員16万人に研修を実施しており、業務効率の改善を図っています。
参考:Our progress:COOメッセージ - 富士通統合レポート2022
NTTドコモ
NTTドコモでは、企業内大学として「ドコモアカデミー」を創設しました。ドコモアカデミーでは新たな社会価値をもたらす「変革人材」を創出することを狙いとして、コロナ禍の2020年秋にスタートしています。
具体的なプログラムとしては、新しい事業開発に必要なスキルやマインド、さらに挑戦へのマインドを引き出す勇気といった内容を提供しています。「入社時の熱い思いを取り戻してほしい」という思いとともに、新規事業創出に向けたアイデアの創出を狙った取り組みです。
参考:社員たきつけるドコモの「大学」 平日午後の学び時間|NIKKEIリスキリング
キヤノン
大手精密機器メーカーであるキヤノンは、主力事業である事務機器やデジタルカメラの市場が縮小傾向にあることから、新規事業の展開に注力しています。そのために特に力を入れているのが、主にDXに向けたスキルを身につけることを狙ったリスキリングの実施です。
同社では、DXの際に見逃されがちな非デジタル人材を対象としたリスキリング推進を実施しています。社員のスキルチェンジを通じて、成長事業の成長を加速させることを狙っています。
企業のリスキリングはアルーにお任せください
リスキリングを行う際には、従業員に身につけてほしいスキルに合わせた様々な育成ノウハウが必要です。自社で研修を実施するのももちろん有効ですが、より高品質な研修を実施したい場合は研修の外部委託を検討するのはいかがでしょうか。
リスキリングのための研修を外部委託される際は、ぜひアルーをご検討ください。アルーは、人材育成を専門に手掛けてきた企業であり、豊富な実績に基づく様々なリスキリングに向けた育成ノウハウが蓄積されています。アルー独自の高品質な教育プログラムを活用した、効果的なリスキリングを実施させていただきます。
アルーの研修サービスについては、以下のページでご確認ください。
テーマ別研修一覧