新任管理職の悩み解決にはオンボーディングが必須!人事が取り組むべき施策
着任したばかりの新任管理職は「組織の特性がつかみにくい」「部下への指示が上手くいかない」といったさまざまな悩みを抱えがちです。そこで効果的な取り組みが、管理職業務への早期適応を促すためのオンボーディングです。この記事では新任管理職の悩みを解決するためのポイントや、そのためのオンボーディングの活用方法について解説します。
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新任管理職が抱える悩み
新任管理職は、マネジメント面や精神面でさまざまな悩みを抱えるものです。新任管理職の負担を軽減する効果的なオンボーディングを実施するためには、新任管理職にありがちな悩みを人事部がしっかりと把握しておくことが求められます。
まずは、管理職に着任したばかりの新任管理職がよく抱える悩みを見ていきましょう。
プレイヤーからマネージャーへの意識転換ができない
管理職に着任すると、評価軸が180度変わるといっても過言ではありません。プレイヤー時代は与えられていた仕事をしっかりとこなすことが求められましたが、管理職になると「的確な指示を与える」といった点が求められるようになります。
新任管理職にありがちな悩みとして、プレイヤーからマネージャーへの意識転換が上手くいかないというものが挙げられます。求められていることの変化に気づかず、「なぜこれまでのやり方で上手くいかないのか」と頭を抱えてしまうのは珍しくありません。
プレイヤーからマネージャ―への生まれ変わりを実現するためのコツについては、以下の資料で詳しくご覧いただけます。
マネジメントと業務のバランスが上手くとれない
管理職になると、責任とともに抱える業務量も大きく増えるものです。これまでこなしていた日常業務のほかに、部下の労務管理や組織全体のマネジメントも求められますし、ときには部下の悩みを聞く必要もあるでしょう。
業務量が格段に増えたため、マネジメントと業務のバランスが崩れてしまうというケースもよくあります。アルーが行ったアンケート調査によると、「管理職に就任後12ヶ月以内に、体調不良等で休職してしまう管理職が5%以上いる」と答えた企業は約30%に及びます。
マネジメントに追われ深夜までの残業が慢性化すると、心身に不調をきたしてしまうことさえあるため注意が必要です。
部下とのコミュニケーションが難しい
管理職は、部下とのコミュニケーションをとる必要があります。適切な指示出しをするのはもちろんですが、部下との1on1を実施したり適切なアドバイスを行ったりと、コミュニケーションの形は多いです。
新任管理職は、部下とのコミュニケーションにも悩みを抱えてしまいがちです。「言ったことが伝わっているか不安だ」のような悩みのほかに、「組織全体を牽引していけるようなリーダーシップに不安がある」というケースも少なくありません。
部下とのコミュニケーションのコツについては、以下の資料で詳しくご覧いただけます。
部下の育成方法がわからない
管理職の重要な役割の一つに、部下の育成があります。管理職が適切な教育を行うことで部下は仕事のノウハウや心構えを学び、次世代のリーダーが育成されていくものです。
新任管理職は、部下の育成方法についての悩みも尽きません。プレイヤーとして優秀だったからといって、部下の育成が上手いかどうかは別問題です。そもそもの業務量が多く、育成まで手が回らないというケースもあります。業務量の調整を行うとともに、管理職着任前に教育方法の研修を実施するなどのサポートが必要です。
目標設定・評価方法がわからない
管理職は、組織全体の目標を設定する役割があります。また、組織に所属するメンバーの人事評価を下し、昇進や昇給を決定するのも管理職の役割です。
新任管理職に対しては、部署や組織の目標設定のノウハウや、評価方法についても伝えるように心がけましょう。特に評価に関してはメンバーに不公平感を抱かれることが、管理職本人にとっての心理的負荷にもつながります。ルーブリックの導入や、360度評価の実施など、新たな仕組みを導入するのも効果的です。
評価面談のポイントについては、以下の資料で詳しくご覧いただけます。
会社からのサポート体制が整っていない
管理職に着任すると、多くの場合、企業からは「自立した存在」としてみなされます。そのため、管理職本人へのサポート体制は十分整っていないことも多く、会社内での孤独感から誰にも悩みを相談できなくなってしまうケースも多いです。
管理職が不安を抱える要因として、「会社からのサポートが整っていない」という点も挙げられます。新任管理職の孤独感を払拭するためには、相談窓口を設置する、上司との連携を密にするといった対策が有効です。
マネージャーに対してどのような支援を行なっていくべきか知りたい方はぜひ以下の資料もご覧ください。
新任管理職の悩みを解決するためにはオンボーディングが必要
新任管理職にありがちな悩みを見てきました。いずれも多くの新任管理職に共通する悩みであるため、これらを解決するためには人事部が主体となった施策を実施することが求められます。
また、アルーが行った調査によると、新任管理職の約30%が管理職に就任後、新しい環境・役割への適応に6ヶ月以上かかるというアンケート結果も出ています。
新任管理職の悩みを解決し、新しい役割への適応を早めるためには、オンボーディングが必要です。新任管理職の活躍を後押しする取り組みであるオンボーディングについて、詳しく見ていきましょう。
変化に適応する力を育てる
新任管理職の悩みを解決するためにはオンボーディングを通じて、変化に対する対応力をつけてもらうのが有効です。
変化は、「自己変容」「業務・課題への取り組み」「人や組織との関わり」という3つの枠組みに分けることができます。「自己変容」は仕事への心構えやキャリアプランといった自分自身に関する変化、「業務・課題への取り組み」は具体的な仕事への取り組み方、「人や組織との関わり」は部署を超えた組織全体との関わり方です。これら3つの観点から変化への適応力をつければ、管理職に着任するプレッシャーや悩みを和らげることができます。
技術的課題と適応課題の両方にアプローチする
変化に適応する力を育むためには、技術的課題と適応課題の双方にアプローチする必要があります。それぞれの課題の意味は、以下の通りです。
- 技術的課題:解決するために必要な知識や技術が存在しており、それらを身につけることで解決できる課題
- 適応課題:解決するためには価値観や信念の一部変化が求められる課題
例えば、「1on1面談の場面でうまく部下の考えを引き出せない」という課題をもった新任管理職がいるとします。この問題を技術的課題として捉えると、「この管理職には傾聴スキルが足りないんだろう。では、傾聴スキルをレクチャーしよう」という解決策を導きだすことになります。
一方、この問題を適応課題として捉えると、『この管理職はそもそも「部下は上司の指示に従うべきなのだから、部下の考えなど聞く必要はない」と考えているのかもしれない』という新たな課題に気づくことができます。
新任管理職が変化に適応するためには、足りないスキルを補うだけでなく、既に持っている考え方や価値観を変える必要があります。そのために、技術的課題と適応課題の両方に対応できるオンボーディングにする必要があります。
技術的課題に関しては、集合研修やeラーニングを通じて必要なスキルを学ぶのが有効です。一方適応課題については、研修や職場における実践、上司やメンバーとの関わりを通じた解決が求められます。これらの双方にアプローチすれば、新任管理職の効果的な行動変容や意識変容につなげることが可能です。
新任管理職向けオンボーディング施策で取り組む内容
新任管理職にありがちな悩みを解決するためには、変化への適応力をつけてもらうのが重要だとわかりました。それでは、具体的にどのような取り組みを実施すれば、管理職として活躍していくために必要なスキルを効果的に伸ばしていくことができるのでしょうか。
新任管理職向けにオンボーディングを実施する際、ぜひ盛り込みたい内容をご紹介します。
コミュニケーションの促進
そもそもオンボーディングとは、新入社員や新任管理職に組織へ早く馴染んでもらうために実施する施策です。組織へ馴染むためには、組織に所属しているメンバーや組織の周囲の社員とコミュニケーションをとることが欠かせません。
オンボーディング施策には、コミュニケーションを促進する施策を盛り込むとよいでしょう。具体的には、1on1の定期的な実施や、先輩管理職への質疑応答セッションといった取り組みが考えられます。
資源・情報へのアクセス
新任管理職にありがちな悩みの大きな原因の一つに、業務の負担が大きいという内容がありました。業務負担を軽減するためには、少しでも業務プロセスを改善し、一つあたりの業務にかかる時間を改善することが必要です。
社内で用いられている企業内ネットワークであるイントラの整備といった、資源・情報アクセスのサポートも重要なオンボーディングの取り組みです。業務プロセスの改善やコミュニケーションの円滑化に向けて、管理職向けのWebツールを導入するのもよいでしょう。
育成施策
新任管理職は、プレイヤー時代に求められたものとはまた異なる能力であるマネジメント能力や、部下への指導方法といった点にも悩みを抱えがちです。能力面を原因とする不安をできる限り取り除くため、オンボーディングでは育成施策も合わせて実施しましょう。
具体的には、OJTやOff-JTによって管理職として活躍するために必要なノウハウや心構えを伝授する、というものが考えられます。3日間〜数週間に分けて実施するなど、継続的に行うことが大切です。
歓迎・交流
新任の管理職が組織を効果的にマネジメントしていくためには、管理職と組織のメンバー双方が、互いについての理解を深める必要があります。既存メンバーとの交流や歓迎も、オンボーディングにおいてぜひ取り入れたい施策の一つです。
メンバー間での交流のみならず、既に管理職として活躍している社員との交流や、他社の管理職との異業種交流も視野に入れるとよいでしょう。なるべく広範囲に関わりを持ってもらい、話し相手や悩みの相談相手を広く持つことが大切です。
また、新任管理職に対して既存の管理職が歓迎の気持ちを示し、積極的に交流することも重要です。
制度・施策
最近では多くの企業において、組織への定着を促すためのさまざまな施策が実施されています。オンボーディングを実施する際には、制度面や施策面からのアプローチも取り入れていきましょう。
具体的な例として挙げられるのは、メンター制度やシスター・ブラザー制度といった取り組みです。メンターやシスター・ブラザーが新任管理職の悩みの相談窓口となることで、心理的な安心感を与えられます。
新任管理職向けオンボーディング施策のスケジュール例
オンボーディングを実施する際に必要な取り組みについて確認してきました。それでは、これらの施策を具体的にどのようなスケジュールで実施していけばよいのでしょうか。
オンボーディング施策を実施する際には、事前にスケジュールを組んだ上で、順序よく実施することが大切です。アルーのオンボーディング施策のスケジュール例は以下の通りです。
以下では、アルーのスケジュール例の流れに沿って、解説していきます。
心理検査
心理検査とは、新任管理職の心理的な特性を明らかにするテストのことです。具体的には、性格を知るために行われる質問紙調査である「Big Five」や、メタ認知能力の測定テストである「MCQ-30」といったものがよく実施されます。
オンボーディングを実施する際には、まずこの心理検査を実施するところから始めましょう。「粘り強いが視野が限られている」「良くも悪くも完璧主義者」といったような、自身の強み・弱みをしっかりと把握すれば、業務に活かしたり、改善点を見つけたりしやすくなります。
プチワークショップ(対話)
プチワークショップとは、対話を通じて適応課題の自覚や観察を後押しする取り組みのことです。オンボーディング施策の前半には、対話にフォーカスしたプチワークショップを実施するとよいでしょう。
プチワークショップでは、合計で1時間ほどの時間の中で「1週間の仕事の中で大変だったこと」「1週間の仕事で見えてきた課題」について、メンバーと共有します。課題の共有を通じて、客観的に見た自分らしさを把握できます。
リフレクション・アンケート
成長のためにはコンフォートゾーン(快適な空間)を出て、ストレッチゾーンに踏み出す必要があります。
コンフォートゾーンとは、自分のスキルで業務をこなすことができる位置にいることで、コンフォートゾーンから出ない範囲で仕事を続けていては成長しにくいとされています。
自分のスキル以上のことが求められたり、今までのスキルセットが通用しなかったりする「ストレッチゾーン」に身を置くことによって、成長が期待できるのです。
ですが、ストレスがかかりすぎると「ストレッチゾーン」を越えて「パニックゾーン」に到達してしまいます。パニックゾーンも、ストレスが溜まってしまい成長には結びつかないため、ストレッチゾーンにいることが学習のためには最適です。
リフレクション・アンケートを使うことによって、成長のためにちょうどよい「ストレッチゾーン」に新任管理職がいるのかどうかを確認できます。
リフレクション・アンケートとは、新任管理職にどれほどオンボーディングの効果があったのかを測定するアンケート調査のことです。リフレクション・アンケートは、オンボーディングの開始時から終了時まで、継続的に実施するのがよいでしょう。
具体的には、新任管理職に対して「計画していた仕事やミッションを達成できたか」「仕事に対する不安や焦りはあるか」といった11問の質問に1分程度で解答してもらいます。
リフレクション・アンケートでのヒアリングを通じて、新任管理職に対して適度なストレスがかかっているかどうか、つまり「ストレッチゾーン」にいるかどうかを把握することが大切です。
eラーニング
eラーニングは、オンライン上で配信される教材を用いて学習することを指します。オンボーディングの中にeラーニングを導入すれば、パソコンやタブレット端末を通じて受講者はいつでもどこでも知識やノウハウを身につけることが可能です。このためeラーニングは、主に技術的課題へのアプローチに効果的だといえます。オンボーディングの開始時から継続して実施するとよいでしょう。
なお、eラーニングを実施する際には、eラーニング上の学習管理システムであるLMSと呼ばれるツールが必須です。LMSの導入をご検討の際は、ぜひアルーの提供するLMSである「etudes」のご活用をご検討ください。
集合研修
オンボーディングの中で新任管理職に必要な知識を身につけてもらうためには、集合研修の実施も効果的です。集合研修は、オンボーディングの中頃〜後半にかけて実施するとよいでしょう。
新任管理職のオンボーディングにおける集合研修では、部下へのコーチングのスキルを磨く「コーチング研修」や、評価のノウハウを身につける「評価者研修」などが効果的です。各研修の実施方法については、以下で詳しく解説しています。
まとめ
新任管理職が抱えがちな悩みと、それらを解決するために有効なオンボーディングへの取り組み方について解説しました。オンボーディングを適切に実施すれば、孤立感を抱きがちな新任管理職へ効果的なサポートを行うことができます。
オンボーディングについてさらに詳しく知りたい方は、以下のセミナーアーカイブ動画「新任管理職にも必要とされるオンボーディングとは?」をぜひご覧ください。
この記事の内容を参考に効果的なオンボーディングを実施して、新任管理職の悩みを解消していきましょう。