【テンプレ付き】ジョブディスクリプションとは?記載例を英語/日本語で解説
職務内容を明確にする上で重要な役割を果たすジョブディスクリプション。これまで日本企業ではあまり馴染みのない書類でしたが、最近ではグローバル化やジョブ型雇用へのシフトに伴って、導入する企業も増えてきています。今回は、ジョブディスクリプションの意味や書き方、作成時の注意点などについて解説します。
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目次[非表示]
- 1.ジョブディスクリプションの記載例・テンプレート
- 2.ジョブディスクリプション(職務記述書)とは
- 3.ジョブ型雇用で活用されるのがジョブディスクリプション
- 4.日本企業におけるジョブディスクリプションの導入状況
- 5.ジョブディスクリプションが重要な理由
- 6.ジョブディスクリプションの書き方
- 7.トラディショナルなジョブディスクリプションとリザルトオリエンティッドなジョブディスクリプション
- 8.ジョブディスクリプション作成の注意点
- 9.ジョブディスクリプションを見直す方法
- 10.ジョブディスクリプションの英語表記で気を付ける表現
- 11.ジョブディスクリプションの記載項目の例
- 12.ジョブディスクリプションの目的・理由
- 13.ジョブディスクリプションによるデメリット
- 14.ジョブディスクリプションを活用している日本企業の事例
- 15.まとめ
ジョブディスクリプションの記載例・テンプレート
ジョブディスクリプションを作成する際には、仕事の概要を把握するために必要な情報をもれなく記載することが重要です。ジョブディスクリプションを作成する上で参考になる記載例を、英語と日本語に分けて紹介します。
英語でのジョブディスクリプションの例
英語でジョブディスクリプションを作成する際の構成例は、以下の通りです。
Position: (仕事のポジション名を記載) |
Department: (部署名を記載) |
Job Grade: (グレードを記載) |
Job Purpose: (仕事が必要とされる背景について、2〜3文程度で説明) |
Job Duties: (具体的な仕事の内容について、複数段落を用いて説明) |
Skills/Qualifications: (仕事に必要とされるスキルや資格を列挙する) |
仕事が必要とされる背景や、仕事の内容についてはできる限り具体的に記載するとよいでしょう。例えば営業部のマネージャーについてのジョブディスクリプションを作成する際は、営業形態や営業プロセス、他部署との連携手段など、詳細まで踏み込んだ記載をすることになります。
日本語でのジョブディスクリプションの例
日本語でのジョブディスクリプションの大まかな構成も、基本的には英語の場合と変わりません。日本語でジョブディスクリプションを作成する際は、以下の構成を参考にしてみてください。
ポジション名: (仕事のポジション名を記載) |
部署名: (部署名を記載) |
グレード: (職務のグレード) |
職務の目的: (仕事が必要とされる背景について、2〜3文程度で説明) |
職務内容: (具体的な仕事の内容について、複数段落を用いて説明) |
必要なスキル・資格: (仕事に必要とされるスキルや資格を列挙する) |
こちらも英語で作成する場合と同様、できる限り具体的に記載することが大切です。
ジョブディスクリプション(職務記述書)とは
ジョブディスクリプションとは、日本語にすると「職務記述書」を指します。わかりやすくいえば、仕事の内容を詳しく説明した書類のことです。
ジョブディスクリプションには、例えば以下の内容が記載されます。
- 職務のポジション名
- 仕事の目的や責任範囲
- 仕事の具体的な内容
- 仕事に求められるスキルや資格
もともとは欧米企業で一般的に用いられていた書類ですが、最近では日本企業でもジョブディスクリプションを導入するところが増えてきています。
ジョブディスクリプションと求人票の違い
人材を募集する際には、求人票を掲載することが一般的です。求人票にも、ジョブディスクリプションと同じく仕事のポジション名や、仕事内容などが記載されます。それでは、両者の違いはどのような点にあるのでしょうか。
一般的に、募集要項では雇用形態や勤務地、給与といった待遇を重点的に記載します。職務内容の説明も含まれますが、簡単な説明にとどまることがほとんどです。一方で、ジョブディスクリプションでは仕事が必要とされる背景や仕事の目的など、具体的な内容まで踏み込んで紹介されます。募集要項では「待遇」に重きが置かれているのに対し、ジョブディスクリプションは「職務内容」の説明が中心となっているという点が違いです。
ジョブディスクリプションを使用する場面
ジョブディスクリプションは、基本的に企業が人材募集を行う際や、人事評価を行う際に用いられます。それぞれの職種について、仕事の具体的な内容や必要とされる背景、求められるスキルなどについて詳細に記述し、仕事の概要を他者へわかりやすく共有することが主な目的です。
このためジョブディスクリプションは、仕事を担当する社員や、求人への応募を検討している人に向けて作成されているといえます。また、組織内のすべてのポジションについてジョブディスクリプションが作成される場合は少なく、基本的にはマネージャー以上の管理職など、組織にとって重要なポジションについて作成されることが多い
ジョブ型雇用で活用されるのがジョブディスクリプション
ジョブディスクリプションを効果的に活用できる企業は、日系企業によくあるメンバーシップ型雇用を採用している企業ではなく、ジョブ型雇用を採用している企業です。
最近になって日本企業でジョブディスクリプションが注目されるようになってきた背景として、日本でジョブ型雇用が浸透してきたという点があります。
日本では、古くから終身雇用や労働時間管理型の人事評価が一般的で、いわゆるメンバーシップ型雇用を採用する企業が多い傾向にありました。一方、最近では働き方改革の進展や、新型コロナウィルス感染症の流行によるテレワークの浸透などもあり、伝統的な雇用形態は崩壊しつつあります。
また、グローバル企業では国をまたいだ異動を行うことも増えてきました。海外現地法人にいる優秀な人材を日本本社や海外現地法人にアサインするために、グローバル人事制度の導入やグローバルでのタレントマネジメントを導入している企業も増えています。グローバル人事制度ではメンバーシップ型ではなくジョブ型が中心のため海外の人材向けにもジョブディスクリプションを活用することが必須になっています。
「人」ではなく「仕事」を中心としたジョブ型雇用が日本でも普及し始めたため、仕事内容を詳細に説明するジョブディスクリプションを導入する企業が増えてきているのです。
日本企業におけるジョブディスクリプションの導入状況
2021年1月~2月に行われた株式会社Works Human Intelligenceによる日本国内大手119の法人を対象としたジョブ型雇用調査では、ジョブ型雇用が普及し始めた日系企業でジョブディスクリプションを導入している法人は12.6%で、導入しておらず検討予定もしていない法人が最も多い39.5%となっています。
既に導入している企業の導入理由には以下のような理由が挙げられています。
- 脱年功序列をめざし職能資格制度から変更するため
- 専門性の高い能力を評価するため
- 人材育成や評価の納得性向上に活用するため
- 各部署の職務の棚卸や部門・グレードごとの職務の明確化、従業員のキャリアパス検討の参考資料として活用するため
また、「コロナ禍で在宅勤務/テレワークが一般的になる中、従業員の行動・成果が見えにくくなるため、業務で求められる内容を明確にしておく必要がある」といった理由で導入を検討している企業は多いですが、実際に導入に至っている企業は少ないことがわかります。
引用:株式会社Works Human Intelligence:ジョブ型に関する調査レポート|取り組み状況と導入に関する賛否の声
ジョブディスクリプションが重要な理由
ここでは、企業にとってジョブディスクリプションが重要な理由を3つご紹介します。
採用時のミスマッチを避けるため
企業がジョブにフィットしたジョブディスクリプションを用意することで、採用のミスマッチを減らすことができます。求職者にとっても、企業がどのようなジョブ・スキルを求めているかが一目瞭然になるため、自身はそのジョブを果たせるのか、スキルを保有しているのかという点を理解した上で選考へ応募できます。そのため、書類選考や面接時にはジョブディスクリプションにフィットした求職者からの応募が増えることになり、結果的に適切な人材を採用できるでしょう。
期待が明確になり、パフォーマンスマネジメントがしやすくなるため
社員に対してその職務の期待値を明確に伝えることができるため、社員は自分が達成すべき目標とそのために必要なアウトプットやスキル、行動を把握できます。雇用主側の企業やマネージャーにとっても、事前に社員のパフォーマンス・スキルを定義しておけば、従業員のパフォーマンスマネジメントを仕組み化することができます。マネジャーのスキルに依存せず、社員のマネジメントができる環境を作ることができるのです。
研修内容と能力開発に活かすため
ジョブディスクリプションがあれば、効果を上げるために社員に身につけてもらうべきスキルや知識を特定できるため、各職務において必要なスキル教育を設計しやすくなります。職能型で階層全員に一律に教育するのではなく、スキルギャップに対して適切な研修を用意することができるようになるのです。eラーニングや公募研修等で必要な社員に対して必要な教育を施すことで、効率的に社員の教育を進めることができるでしょう。
ジョブディスクリプションの書き方
ジョブディスクリプションの具体的な構成について紹介しました。それでは、実際にジョブディスクリプションを作成する際にはどのような手順で行えばよいのでしょうか。
ジョブディスクリプションを作成する際には、まず組織分析やゴール設定を行い、次に仕事内容を具体化していく、という手順を踏みます。ジョブディスクリプションの書き方について解説します。
ジョブディスクリプションの書き方の流れは、以下の通りです。
- 組織分析とゴール設定
- ジョブの選定
- 分析対象ジョブの情報収集
- 集めたジョブの情報構造化
- ジョブディスクリプション作成
流れに沿って、以下で詳しく解説していきます。
組織分析とゴール設定
ジョブディスクリプションを作成する際には、まずジョブディスクリプションを作成する対象となるジョブを洗い出すことが必要です。そのため、ジョブディスクリプションを作成する際は組織の現状を分析し、ゴール設定を行うところから始めましょう。
ゴール設定を行う際には、「〇〇部における30%の工数削減を目指すため、マニュアルの整備や業務フローの改善に取り組む」といったように、パフォーマンス重視で組み立てることがポイントです。「マニュアルの整備や業務フローの改善」といった、取り組む内容そのものがゴールにならないように注意しましょう。
ジョブの選定
組織分析とゴールの選定を行ったあとは、ジョブディスクリプションを作成する対象となるジョブを選定する段階に入ります。
ジョブを選定する際には、まず前段階で定義したゴールを達成するために必要なアクションを洗い出すことが大切です。そしてそのアクションを元に、ジョブディスクリプションが必要なジョブへと落とし込みます。「組織のゴールを達成するためにはどのジョブにアプローチすることが効果的なのか?」という点をよく考えながら選定しましょう。
分析対象ジョブの情報収集
ジョブディスクリプションの作成対象となるジョブを選定したら、次はそのジョブを分析していきます。ジョブの分析を行うため、必要な情報収集を行いましょう。
情報収集の手段としては、役員やマネージャー、さらにはそのジョブを担当している社員などへヒアリングを実施することが効果的です。同じ部署の中から少なくとも2〜3名程度には話を聞き、ジョブの具体的な内容を明確化していきましょう。
集めたジョブの情報構造化
情報構造化とは、集めた情報を「職務内容」「職務の目的」といった項目ごとに整理することです。情報収集を行ったあとは、ジョブディスクリプションの作成に向け、集めたジョブの情報の構造化を行っていきます。
実際にヒアリングした内容をもとに、ジョブディスクリプションの項目に沿って情報を分類していきましょう。場合によっては追加でヒアリングを実施するなど、「情報が足りない」と思った部分は詳細まで詰めることが大切です。
ジョブディスクリプション作成
ジョブの情報構造化で得られた情報をもとに、いよいよジョブディスクリプションを作成します。雛形に沿って、構造化した情報を順に記載していきましょう。
ジョブディスクリプションを作成する際は、A4一枚程度に収めることが一般的です。集めた情報が整理しきれていない場合は改めて必要な情報を洗い出し、情報量の調整を行いましょう。
ジョブディスクリプション作成時の具体的な注意点については、後ほど詳しく解説します。
トラディショナルなジョブディスクリプションとリザルトオリエンティッドなジョブディスクリプション
トラディショナルなジョブディスクリプションとは、タスクや義務といった、「仕事の際にやるべきこと」を中心に記載したジョブディスクリプションを指します。従来、ジョブディスクリプションを作成する際には、仕事の際に行うべき事柄を示したトラディショナルなジョブディスクリプションが作成されることが一般的でした。
一方、リザルトオリエンティッドなジョブディスクリプションとは、「求める成果や結果」といった「達成すべきゴール」を中心に記載したジョブディスクリプションのことです。達成すべきゴールに重きを置けば、社員の自律的な行動を促すことができます。ジョブディスクリプションを作成する際には、リザルトオリエンティッドなジョブディスクリプションを作成するように心がけましょう。
リザルトオリエンティッドなジョブディスクリプションを作るための方法
リザルトオリエンティッドなジョブディスクリプションを作成するためには、「結果」を中心とした記載を行うように心がけましょう。例えば職務内容について説明する際も、「顧客の獲得、アプローチの実施、人事部との連携」といった仕事内容の列挙ではなく、「営業部の工数を30%削減する」といった結果ベースの記載をするようにします。
リザルトオリエンティッドなジョブディスクリプションを作成する方法は、以下のセミナーアーカイブ動画でも詳しく解説しています。詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
ジョブディスクリプション作成の注意点
ジョブディスクリプションを作成する際には、従来の求人票とはまた異なるノウハウが必要です。そのため、ジョブディスクリプションを実際に作成する際には、「上司と部下の双方から情報収集する」「業務内容を網羅する」といった、いくつかの注意点が存在します。
ジョブディスクリプション作成時に気をつけておきたいポイントについて見ていきましょう。
▼動画で見たい方はこちら
上司と部下の双方から情報を集める
同じジョブであっても、「上司から期待されている役割」と「部下から期待されている役割」が異なることはよくあるものです。そのため、ジョブディスクリプションを作成する際には、上司から見たジョブと部下から見たジョブという、双方の視点を取り入れることが求められます。
ジョブディスクリプションを作成する際には、上司と部下の双方からヒアリングを行うように心がけましょう。幅広い視点からジョブの内容や役割を明確化すれば、組織の中におけるジョブの具体的な立ち位置も見えてきます。
業務内容を網羅する
ジョブディスクリプションの主な目的は、仕事の内容をわかりやすく共有することです。業務内容が網羅できていなければ、正確にジョブの内容を把握することはできません。
ある意味当然ではありますが、ジョブディスクリプションを作成する際には業務内容を網羅するように心がけましょう。業務に細かなタスクや手順がたくさん存在する場合は、業務の作業や手順について詳細に記述した指示書を作成(SOP化)するのも有効です。業務の大まかな流れをSOPで説明すれば、手順の抜けモレや伝達ミスを防ぐことができます。
やることだけ決めるのではなく、やってはいけないことも定義する
ジョブディスクリプションを作成する際のよくあるパターンとして、「仕事でやるべきこと」のみを記載するというケースが挙げられます。一方、やるべきことのみを記載していると仕事のマネジメントが行いにくく、権限移譲の妨げにもなってしまいます。
ジョブディスクリプションを作成する際には、「やるべきこと」とあわせて「やってはいけないこと」も定義するようにしましょう。「やってはいけないこと」については、違反した場合のペナルティもあわせて記載すると、さらに効果的です。
ジョブディスクリプションを見直す方法
ジョブディスクリプションを一度作成したら未来永劫使えるかというと、そうではありません。ジョブディスクリプションを運用する際には、定期的に見直しを行うようにしましょう。具体的には、経営計画やビジョンが変更されたタイミングや、組織体制やジョブの役割が変化したタイミングでの見直しを行うことが有効です。ここでは、ジョブディスクリプションを見直す方法をご紹介します。
定期的にレビューする
上司が半年から一年に一回ほどのペースでジョブディスクリプションをレビューしましょう。現在の業務内容に必要なスキルが反映されているかどうかがチェックポイントです。変化の激しい企業や業界の場合、戦略や組織体制が変化したり、組織の期待役割が変化したりすることがあります。こういった変化があると組織や社員に求められる役割やスキルも変わるケースが多いため、定期的なレビューが必要です。
フィードバックを収集する
レビューの際に本人、またチームメンバーなどからフィードバックを収集し、ジョブディスクリプションが現場の実態を正確に反映しているか確認しましょう。ジョブディスクリプションに記載されていることと実務面でのギャップがある場合は、ジョブディスクリプションを見直す必要があるのか、上長のマネジメントの仕方、依頼している業務内容にミスマッチがある可能性があるのかを見極める必要があります。
市場調査を行う
メンバーから収集したフィードバックだけを鵜吞みにしてしまうと、メンバーにとっては都合がいいが、会社や部署の戦略・期待役割の達成に繋がらないジョブディスクリプションになってしまう可能性があります。そこで、同じ業界で同じ職務のジョブディスクリプションを確認し、一般的に必要とされるスキルや業務内容も確認することがおすすめです。
もし、業界内の同じ職務のジョブディスクリプションには記載されているにもかかわらず、自社のジョブディスクリプションに記載がない場合は、ジョブディスクリプションを見直す必要があるかどうか検討してみましょう。
ジョブディスクリプションの英語表記で気を付ける表現
ジョブディスクリプションは、外国人の人材を活用する際にも有効です。外国人向けにジョブディスクリプションを作成する際には、英語で表記する場合も多いでしょう。
ジョブディスクリプションを英語表記で作成する際にも、いくつかの注意点が存在します。英語表記について、気をつけるべき点を見ていきましょう。
主観的な表現は避ける
ジョブディスクリプションを英語表記する際には、主観的な表現にならないように注意することが大切です。主観的な表現の例としては、例えば以下のようなものが挙げられます。
- This job is the hardest in the sales department.
- Installing an automation system will make this job more efficient.
「営業部の中で最も大変な仕事」と言われても、仕事で苦労する内容や程度が伝わりません。そもそもジョブディスクリプションの読み手は、営業部にある他の仕事の大変さも把握していない場合が多いでしょう。また、「〜だろう」「〜かもしれない」といった表現も、ジョブディスクリプションでは避けるようにします。
よくわからない表現は避ける
英語で記載されたジョブディスクリプションを見ていると、時たま読み手にとって伝わりにくい独特な表現を見かけることがあります。例えば、以下のようなものです。
- youthful
- able-bodied
原則として、ジョブディスクリプションはクローズドなものではありません。ジョブに馴染みがない人にとって、意味が把握しづらい表現は避けるようにしましょう。
曖昧な表現を避ける
ジョブディスクリプションを見ている際、例えば以下のような表現があったとします。
- Handling emergencies
- Taking care of employment
このような表現で、仕事の具体的な内容が思い浮かぶでしょうか。「緊急事態とはどのようなことを指すのか?」「給与計算や労務交渉まで、全部行うのだろうか?」といった、さまざまな疑問が生じるはずです。
ジョブディスクリプションは、仕事の内容を具体的に記述することが基本です。表現が曖昧だったり、漠然としすぎた内容になったりしないよう、注意をはらいましょう。
日本語の直訳英語を避ける
英語で表記されたジョブディスクリプションを見ていると時折、日本語の直訳となってしまっている表現も目にします。例えば、以下のようなものです。
- Support the director
- Assist the director
このような表現でも意味は伝わるかもしれませんが、特に外国人の人材を募集する際には、英語に不慣れな印象を与えてしまう可能性があります。先程の例の場合では”Support”の代わりに”Take the initiative to”を用いるなど、できる限り英語に即した表現を行うように心がけましょう。
ジョブディスクリプションの作り方について動画で見たい方は、こちらからご覧ください。
ジョブディスクリプションの記載項目の例
網羅性の高いジョブディスクリプションを作成するためには、必ず記載しておきたい項目があります。それらをすべて記載するように意識するだけでも、情報を網羅したジョブディスクリプションに大きく近づきます。
ジョブディスクリプションを作成する際に記載すべき項目の例について見ていきましょう。
職種、職務名/職務概要、職務等級/責任・権限の範囲に関する補足、直属の上司
ジョブディスクリプションには、必ず仕事の基本情報を盛り込むようにします。
具体的には、職務や職務名、職務等級などです。職務名には、実際に用いている肩書きを記載するようにしましょう。自社で用いている呼称が独自のものである場合は、適宜補足も加えます。
また、ジョブディスクリプションにおいては仕事の責任範囲や直属の上司を明確にしておくことも必要です。「このジョブの権限でどこまで決済できるのか?」をわかりやすく伝えましょう。
担当業務
日々の業務内容は、ジョブディスクリプションの中心となる項目です。取り組むべき業務内容を、できる限り具体的に記載するようにしましょう。
担当業務を記載する際には、重要度や実施頻度の高い仕事内容から順番に記載していきます。それぞれの仕事について、時間配分や求められるレベルなども書き添えると親切です。また、担当する業務が多岐にわたる場合は、先述したようにSOP化することも検討しましょう。
必要コンピテンシー
業務に必要となるコンピテンシーも、ジョブディスクリプションには必ず記載しておきたい項目です。業務に必要となるスキルや資格、経験などを具体的に箇条書きしましょう。
具体的には、例えば以下のようなものが挙げられます。
- 必要な実務経験
- 必要なマネジメント経験
- 必須の資格(普通自動車免許や、専門資格など)
- プログラミング能力(ツールやフレームワークの使用経験など)
- 英語能力(TOEIC〇〇点以上、など)
ジョブディスクリプションを読む求職者などが、「自分が応募条件を満たしているか」を判断しやすいように記載することが大切です。
採用時の募集条件
ジョブディスクリプションは待遇や募集条件についてはあまり重きが置かれませんが、これらの項目についても触れておくようにしましょう。例えば以下のような内容を記載することが考えられます。
- 給与
- 福利厚生
- 副業やリモートワークの可否
- 勤務地
特に、独自の福利厚生がある場合など特筆事項がある際には、重点的に説明を行いましょう。この項目に関しても、できる限り「求職者が読んでわかりやすいか?」という点を意識することが大切です。
ジョブディスクリプションの目的・理由
ジョブディスクリプションを作成する目的とは、どのようなものなのでしょうか。
ジョブディスクリプションによってジョブに期待される役割を明確にすることで、会社が期待する職務を社員に遂行してもらいやすくなるといった効果が期待できます。また、パフォーマンスのマネジメントがしやすくなるといった点もジョブディスクリプションの利点です。ジョブディスクリプションを作成する目的について解説します。
人事評価をわかりやすくするため
ジョブディスクリプションによってジョブに求められる役割やゴールを明確にしておくことで、人事評価もしやすくなるでしょう。ジョブディスクリプションを作成する目的の一つに、人事評価をわかりやすくする、という点が挙げられます。
事前にジョブに期待される役割を明確に伝えておけば、社員としては「何をやるべきなのか」を的確に捉えることができます。ジョブの役割や目的を明確化しておけば、評価に対する不満も出にくくなるでしょう。
従業員納得度の向上・定着率の向上のため
仕事のモチベーションを高めるためには、目の前にある仕事がどのような背景で必要とされていて、何の役に立っているのかの理解が欠かせません。ジョブディスクリプションを作成すれば、仕事が必要となる背景や、目的についてわかりやすく伝えることができます。
その結果、従業員の納得度の向上や、仕事に対するモチベーションの向上といった効果も見込めます。仕事の必要性を理解することで、人材の定着率も上昇するでしょう。
個人・企業の業績向上のため
ジョブディスクリプションはもともと欧米の企業において、ジョブの概要を明確化することで仕事を円滑に回す、という目的で使われ始めたものです。ジョブの概要をジョブディスクリプションを通して明確にすれば、仕事内容を逐一伝えるといった手間を省くことができ、組織全体のパフォーマンスが向上します。
ジョブディスクリプションを作成すれば、個人や企業のパフォーマンスが改善し、結果的に業績改善につながるといった効果も期待できます。特に、中途採用や仕事の引き継ぎといった場面で、ジョブディスクリプションは大きな効果を発揮するでしょう。
採用時の要件が明確になるため
ジョブディスクリプションには、「勤務地」「給与体系」「採用条件」といった項目を記載することが一般的です。採用の際に必要な情報をもれなく記載しておけば、採用時の条件を明確化することができるというメリットもあります。
採用時の要件が明確になることで、求職者は仕事に求められる能力や、仕事そのものの特性をしっかりと把握できます。その結果、ジョブと求職者のミスマッチも減り、より円滑な組織運営が可能となるでしょう。
スキル特化の人材を育成しやすくなるため
ジョブディスクリプションを読めば、ジョブに求められるスキルをひと目で把握することができます。ジョブディスクリプションに記載されているスキルと社員の現状を照らし合わせれば、内部人材の育成や研修の実施に活用することができるという点も大きなメリットです。
例えば研修を実施する際に、ジョブディスクリプションの内容と照らし合わせながら必要なスキルを選定する、といった活用法が考えられます。必要なスキルが可視化されることで、専門人材の育成もスムーズになるでしょう。
ジョブディスクリプションの作り方について動画で見たい方は、こちらからご覧ください。
ジョブディスクリプションによるデメリット
ジョブディスクリプションを導入することには多くのメリットが存在します。一方、反対にジョブディスクリプションにはいくつかのデメリットが存在するのも事実です。最後に、ジョブディスクリプションを導入するデメリットについて確認しておきましょう。
仕事内容に柔軟性が無くなる
ジョブディスクリプションを導入するデメリットの一つに、仕事の柔軟性が無くなるという点が挙げられます。
ジョブディスクリプションは、ジョブの内容を可視化し、責任範囲を明確化するために用いられる書類です。そのため、ジョブディスクリプションによってジョブの内容を把握した社員は、「この仕事に取り組みさえすればよい」といった固定観念に縛られがちになってしまいます。このデメリットを解消するためには、先述したようにリザルトオリエンティッドなジョブディスクリプションを作成するのが効果的です。
ジョブディスクリプションの作り方について動画で見たい方は、こちらからご覧ください。
ゼネラリスト育成に不向き
ジョブディスクリプションは、ジョブ型雇用を前提とした書類であるため、メンバーは与えられたジョブに集中するようになります。そのため、ジョブディスクリプションはスペシャリストを育成するのに向いている一方、ゼネラリストは育ちにくいというデメリットがあります。
組織を円滑に回すためには、幅広い視野を持ち多彩な仕事に取り組むことができるゼネラリストを育成するのも重要です。ジョブディスクリプションをどこまで適用するかは、育成したい人材の特性や組織の状況によって柔軟に検討しましょう。
ジョブディスクリプションを活用している日本企業の事例
ジョブディスクリプションを活用している日本企業の事例をご紹介します。それぞれの企業で、移行方法や運用方法が異なっています。ぜひ参考にしてください。
株式会社日立製作所
株式会社日立製作所では、「ジョブディスクリプション(JD、職務記述書)」を2022年7月から、対象を管理職だけでなく一般社員にも広げて導入を進めています。「グローバルな事業環境の変化」「日本の社会課題」「社員の価値観やライフスタイルなどの多様化」の3つの外的要因に対応しながら、持続的に成長を遂げるには、多様な人財の多様な働き方を支援し、「適所適財」を実現することが不可欠であり、ジョブ型を導入しています。グローバル市場で勝ち抜くために、多様な人財の多様な働き方と整合する仕組みを整え、時間や場所の制約を超えてOne Teamで業務を遂行するためにこのジョブ型に転換しています。
株式会社資生堂
株式会社資生堂では、社員の専門性を強化し「グローバルで勝てる組織」となることを目的に、2021年から日本国内の管理職・総合職(美容職・生産技術職を除く)を対象としたジョブ型人事制度を導入しました。社員のレベルを判定する基準を個人の「能力」から「職務(ジョブ)」に移行することで、グローバルスタンダードに沿った客観的な評価や処遇を可能にしています。各部署における職務内容と必要な専門能力を明確化することで、社員一人ひとりのキャリアの自律性を高めることを狙っています。
KDDI株式会社
KDDI株式会社は、新分野のキャリア採用拡大による価値観の多様化や、市場価値を高める職場環境やキャリア志向重視のWILLコースでの新卒採用に魅力を感じる若手の増加を受け、年功的なメンバーシップ雇用から「KDDI版ジョブ型人事制度」へとフルモデルチェンジを実施しました。「等級/評価/報酬/登用」については、KDDI版ジョブディスクリプションを新たに定義し、半期の「成果・挑戦評価」と年度の「能力評価」の掛け合わせによる「人財レビュー」で人財を可視化し、成果や専門性の発揮度合いに基づき評価を行っています。
参考:KDDI版ジョブ型人事制度が「HR Transformation of The Year 2022」最優秀賞を受賞 | 2022年 | KDDI株式会社
まとめ
ジョブディスクリプションを作成する手順やテンプレート、作成時の注意点などについて解説しました。日本においてもジョブ型雇用が一般的になってきている昨今、ジョブの内容を的確に伝えることができるジョブディスクリプションはぜひ作成しておきたい書類です。
ジョブディスクリプションを作成する際の具体的なコツについては、以下のセミナーアーカイブ動画でより詳細に解説しています。ジョブディスクリプションの作成をご検討の場合は、こちらもあわせてご覧ください。
また、アルーではジョブディスクリプションに関する研修も行っています。外国人部下をマネジメントする上で必要なジョブディスクリプションの基本を理解し、効果的な書き方や運用方法を学ぶ研修です。詳しくは以下のページをご覧ください。
外国人部下を持つ上司向け ジョブディスクリプション作成研修
また、外国人部下へのマネジメントを行う方に向けた、ジョブディスクリプションを用いた部下マネジメントの手法に関する研修も行っております。以下のページでご確認ください。
駐在員向け外国人部下マネジメント研修
ぜひこの記事の内容を参考に、自社用にカスタマイズした効果的なジョブディスクリプションを作成していきましょう。