EQとは?高い人の特徴やIQとの違い、測定方法を解説
「心の知能指数」とも呼ばれるEQは、仕事や人間関係に大きな影響を及ぼすことが知られています。ビジネスで周囲と信頼関係を構築し、スムーズに仕事を進めるためには、EQを高めることが欠かせません。
この記事では、EQの定義やIQとの違い、EQを構成する5つの力などを解説します。社員のEQを高めるための研修例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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目次[非表示]
- 1.EQとは
- 2.EQを構成する5つの力
- 3.EQが高い人の特徴
- 4.EQの測定方法
- 5.EQを高めることによる企業側のメリット
- 6.EQが低いことによる影響
- 7.社員のEQを高める方法
- 8.社員のEQを高める研修ならアルーにお任せください
- 9.まとめ
EQとは
EQとは、Emotional Intelligence Quotient(感情知性)の略称で、自身や周囲の人の感情を適切に察知し、上手に扱う能力のことです。EQは、1987年に米国の心理学者であるピーター・サロベイ氏とジョン・メイヤー氏によって研究された概念で、ケイズ・ビーズリー氏の論文で初めてEQという単語が使われました。
1995年には、心理学雑誌のジャーナリストであるダニエル・ゴールマンによって「EQ」というコンセプトが紹介されます。そして、同年10月に刊行された雑誌「タイム」誌においてEQが大々的に取り上げられ、世界中で話題となりました。
日本では、ダニエル・ゴールマンの著書が1996年に「EQ こころの知能指数」というタイトルで翻訳、出版されました。
ゴールマンは著書において、EQを構成するのは以下の5つの能力であると提唱しています。
- 自己認識能力(Self-awareness)
- 自己制御能力(Self-regulation)
- 内的な動機づけ能力(Internal motivation)
- 共感能力(Empathy)
- 社会的能力(Social skills)
そして、EQが低い人には「思いやりがない」「感情をコントロールできない」「ストレスから逃げてしまう」といった特徴が見られると紹介しました。
経営者の視点から見ると、このような特徴を持つ人材は、社員および管理職などには向いていないと判断されるでしょう。EQの高さは、より良い人材を登用する上で重要な指標となり得ます。
EQに関する研究は世界中で進められ、イタリアで行われた実験では「EQの高さによってストレス対処能力が予想できる」という結果が出ました。
EQが高い人は、常に思考だけではなく感情にフォーカスを当てて内省ができるので、特にストレスマネジメントスキルに長けていると言えるのです。
EQとIQの違い
EQとよく対比される概念に、IQが挙げられます。それぞれの定義は、以下の通りです。
- IQ……思考の速さなどを含む、知能指数
- EQ……自分の感情を把握し、コントロールする力
IQが主に自分の思考力や知能を測定するのに対し、EQでは主に自他の感情をコントロールする力を測定します。
なお、先天的な部分があるIQに対し、EQは周囲との関わりの中で後天的に向上させることができます。そのため、企業側が積極的に研修やコーチングなどの取り組みを実施することで、社員のEQを意図的に引き上げることが可能です。
EQを構成する5つの力
冒頭でご紹介した、EQを構成する5つの能力について、詳しくご紹介します。
EQは、周囲との人間関係を円滑にするために必要な、以下の5つの力から構成されています。
- 自己認識能力
- 自己制御能力
- 内的な動機づけ能力
- 共感能力
- 社会的能力
これらを伸ばすことで、自他の感情を上手にコントロールし、周囲と効果的に関わることができるようになるのです。EQを構成する5つの力を一つずつ確認していきましょう。
自己認識能力
EQを構成する一つめの要素は、自己認識能力(Self-awareness)です。
自己認識能力が高い人は、内的なストレッサーを見つけやすいとされています。どのような外的刺激があると心理的なストレスを受けやすいのか、直感的に認識できる力と言えるでしょう。
自己認識能力は、自分自身の感情を客観的に認識する力でもあります。そもそも自分自身の感情を的確に認識できなければ、他者の感情を理解することは難しいでしょう。また、自分自身の感情をコントロールするためにも、自分自身の感情を理解することが必要不可欠です。高いEQを持つためには、正確な自己認識能力が欠かせません。
自己制御能力
EQに含まれる要素として、自己制御能力(Self-regulation)も挙げられます。
先述した自己認識能力によって認識したストレッサーを、いったん内的世界から切り離すことができるスキルです。ストレスを受けた時、適切に気持ちを切り替えられる人は、この能力が高いと考えられます。
EQの高い人は、自分自身の感情を適切にコントロールして、場面に応じた振る舞いをすることができます。高い自己制御能力を持つことで、自分の感情に振り回される場面が減り、周囲と円滑に関われるようになるのです。
内的な動機づけ能力
内的な動機づけ能力(Internal motivation)も、EQに含まれる要素の一つです。
内的な動機づけ能力とは、自分自身の「やりたい」という感情に基づいて生まれるモチベーションを作る能力を指します。例えば、「自分自身がやるべきだと思うからやる」といった、自己実現に根ざしたモチベーションは、内的な動機づけの一例です。
一方で、「上司に褒められるために仕事をする」「評価を上げるために仕事をする」といったものは、「外的な動機づけ」と言われます。
内的な動機づけが上手だと、自分の感情やモチベーションを自分自身でコントロールできるようになります。こうした動機づけのスキルが、EQを発揮する上で役立つのです。
共感能力
EQには、共感能力(Empathy)も含まれます。
共感能力とは、相手の抱いている感情に共感するスキルのことです。例えば相手が悲しみの感情を抱いていれば、それに共感して寄り添います。相手が怒りの感情を抱いていれば、その怒りの背後には何があるのかを推察します。相手の抱いている感情を深く理解すれば、感情に寄り添った適切なアクションが明らかになり、人間関係がスムーズになるでしょう。
社会的能力
社会的能力(Social skills)も、EQを構成する要素の一つです。
社会的能力とは、幅広い対人状況において他者と上手く関わるスキルのことを指します。例えば、自分の意思を言葉や身振り手振りで相手へ伝えたり、さまざまな相手と協力して物事を前に進めたりといった能力のことです。高いEQがあれば、集団の中で適切に役割を果たせるようになり、周囲との信頼関係も深まります。
EQが高い人の特徴
EQが高い人には、ビジネスにおいて好ましいさまざまな特徴が見られます。具体的には以下のような点が、EQが高い人の特徴です。
- 素直で粘り強い
- 共感力がある
- 柔軟性が高い
- ストレス耐性が高い
EQが高い人に共通する特徴について、一つずつ詳しく解説します。
素直で粘り強い
EQが高い人は、素直で粘り強い特徴があります。
自分の感情を把握できているため、自信と誠実さを兼ね備えた振る舞いができます。例えば自分が失敗したときや間違えたときは、素直に自分の間違いを認めます。言い訳や責任逃れをしないため、周囲からの信頼を得やすいです。また、困難に遭遇して諦めそうになったときも、「やめたい」という自分の感情を上手く処理することができます。そのため、途中で投げ出したり挫折したりすることが少なく、今やるべきことに集中できるのです。
共感力がある
共感力があることも、EQが高い人の特徴です。
EQが高い人は、他人の気持ちを理解したり、寄り添ったりすることができます。相手と同じ目線で物事を考えることができるため、周りの人から信頼され、慕われることも多いです。
また、共感力が高いため、相手の心を開かせることもできます。EQの高い人と関わると、「あの人は自分の気持ちをよく理解してくれるな」と思わされる場面も多いはずです。
柔軟性が高い
EQが高い人の特徴として、柔軟性が高い点も挙げられます。
自分の感情をコントロールできるため、相手が自分とは異なる考えを持っている場合でも、反射的に否定することがありません。自分とは異なる意見が出た際も、「そういう考え方もある」と参考にした上で、状況に応じて適切に対応できます。
また、想定外の変化やアクシデントにも落ち着いて対応することが得意です。自分の想定とは違う状況に直面しても、パニックにならず柔軟に対処できます。
ストレス耐性が高い
EQとストレス耐性の相関性は、冒頭でご紹介したイタリアでの実験によって裏付けられています。
EQが高い人は、ストレスを受けた際に以下のステップで対処をしています。
- 自己認識能力を生かして、内的なストレッサーを見つける
- 自己制御能力が高いため、ストレッサーを内的世界から切り離す
- 内的な動機づけ能力と共感力が高いため、状況に相応しい気持ちや態度に自己を導く
元からEQが高い人は特別な訓練をしなくてもこのステップを踏むことができるため、仕事で失敗したり他者からネガティブな指摘を受けたりしたときも、すぐに切り替えができます。内容は素直に受け止める一方で、必要以上に落ち込むことがありません。失敗や指摘を成長の機会に変えることが上手なため、仕事の成長スピードも速いです。
そのため、結果としてストレス耐性が高いという特徴を持つこととなります。
EQの測定方法
EQは、以下の3つの自問自答によって自己点検ができます。
3つの自問自答
- 今、自分はどのような気持ちでいるのだろうか?それはなぜだろうか?
- 今、自分がとれる選択肢にはどのようなものがあるだろうか?
- 選択肢はそれだけだろうか?
- 今、自分が考える究極のゴールとはなんだろうか?
- 結局自分はどうしたい、どうありたいのか?
社内でEQを活用するには、この3つの自問自答が重要な鍵となります。
具体的には、以下のような質問で問うことができるでしょう。
- 「今、気がかりなことは何だろうか?」
- 「なぜ気がかりが続くのだろうか?」
- 「困ったと感じるのはどのようなときか?」
- 「なぜ困ったと感じるのだろうか?」
- 「ホッとした瞬間はあっただろうか?」
- 「“Happy” は足りているだろうか?」
- 「自分を褒めてあげたいと思う瞬間を最近感じただろうか?」
これらの質問は、自問自答だけではなく、管理職が部下に対して問いかけることもできます。
企業が社内リソースの状況を正確に把握するには、EQに関わる自己点検作業を追加することが効果的です。
EQを高めることによる企業側のメリット
社員のEQを高めることは、企業に対してさまざまなメリットをもたらします。
例えば、共感性が高く内省ができる人材が増えることでハラスメント防止につながり、社員にストレス耐性が身につくためメンタルヘルス対策にも役立つでしょう。
その他にも、
- 生産性の向上
- 不注意による事故防止
- 離職防止
- 顧客満足度の向上
- 従業員満足度の向上
- 変革意識の醸成と変革への推進行動
といったメリットが考えられます。
この中から、特に「離職防止」というメリットについて詳しく紹介しましょう。
EQの活用によって、人間関係に起因した離職を防ぐことができます。例えば、社員同士のコミュニケーションが「ただ状況を報告するだけの会話」に偏っていたとします。これでは、社員の承認欲求や社内での居場所感が満たされません。
このような状況でも、EQが高い社員が多くなれば
- ラポールトーク(関係構築のためのトーク)
- ペップトーク(励ましや気持ちを切り替えるトーク)
が積極的に行われるように変化します。
具体的には、管理職の社員が部下と話す時に週末の話題を交えて質問をするといった、部下が主役となる会話を心がけるだけで、これらのトークが実現できます。
EQを活用したコミュニケーションが社内で定着すれば、社員には「自分はこの会社にいてもよいのだ」という感覚が生まれるでしょう。
結果的に、離職率の低下が期待できるのです。
EQが低いことによる影響
EQが低いことには、多くのデメリットがあります。
例えば、周囲と信頼関係を構築することが難しくなり、人から信用されなくなってしまうでしょう。仕事が任されなくなり、会社内で評価されづらくなってしまうことも考えられます。
また、EQが低いと感情を適切にコントロールできなくなり、仕事のストレスを溜め込んでしまいます。感情に振り回された結果、モチベーションが維持できなくなり、パフォーマンスに悪影響を与えることも多いです。
EQは後天的に伸ばすことのできる能力だと言われています。EQが低いことによる悪影響を防ぐためにも、企業が積極的に研修やトレーニングを実施し、社員の人間的成長を促すことが重要です。
社員のEQを高める方法
社員のEQを高めるためには、傾聴力や他者を受容する力を鍛えることが効果的です。また、特に高いEQが必要とされる管理職には、EQに関する研修やコーチングを受けてもらうこともよいでしょう。
ここからは、社員のEQを高める方法を解説します。
傾聴力を鍛える
社員のEQを高めるためには、傾聴力を鍛えることが効果的です。
傾聴力とは、相手の話す内容に深く共感し、その背後にある価値観や考えを汲み取って寄り添うスキルを指します。傾聴力は、EQを構成する要素の一つである共感能力と深く関わっている、重要なスキルです。高い傾聴力があれば、相手の感情に寄り添い、状況に応じた適切な振る舞いができるようになります。
研修などを通じて社員の傾聴力を鍛え、EQの向上につなげましょう。
社員の傾聴力を鍛える方法を詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
『傾聴力とは?コミュニケーションで活かすコツと鍛える方法をご紹介』
他者を受容する力を鍛える
社員のEQを高めるためには、他者を受容する力を鍛えることも有効です。
高いEQを持つためには、自分とは異なる文化や属性、価値観の人を受容する器の広さを持つ必要があります。自分と違う相手と協働し、上手く関わり合っていくスキルを高め、EQの向上につなげましょう。具体的にはダイバーシティ研修などを実施して、多様性の重要性に関する理解を深めることをおすすめします。
企業のダイバーシティに対する取り組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。
『ダイバーシティの取組み事例10選。ダイバーシティとはなにかを簡単解説』
管理職にEQに関する研修・コーチングを受けてもらう
社員のEQを伸ばす施策の一環として、管理職に対する研修やコーチングを実施することも効果的です。
部下や他部署など、多くのメンバーと関わる管理職には、特に高いEQが求められます。研修やコーチングを通じて他者の感情に寄り添い、自分の感情をコントロールする力を伸ばしてもらい、EQを伸ばしましょう。
なお、管理職のEQを伸ばすことは、部下のEQを高めるのにも役立ちます。部下がEQを伸ばすためには、上司である管理職の関わり方が重要です。まずは管理職のEQを伸ばすことで、会社全体のEQが上がりやすくなります。
社員のEQを高める研修ならアルーにお任せください
社員のEQを高める研修なら、ぜひアルーへお任せください。
人材育成を手掛けているアルーでは、社員のEQを高めるのに役立つ研修プログラムを数多くご用意しています。高いEQが求められる管理職を対象にした研修はもちろん、若手社員向けの研修や、eラーニングでEQを高めるプログラムもおすすめです。
ここからは、アルーの提供している研修の中から、社員のEQを高めるために役立つものを3つ、ピックアップして紹介します。
管理職向けダイバーシティマネジメント研修
管理職向けダイバーシティマネジメント研修は、国籍や性別といった属性や、勤務体系にとらわれない、効果的なマネジメント手法を学べる研修です。多様性が重視される昨今では、自分とは異なる価値観やバックグラウンドを持つ相手と協働する場面が増えています。管理職向けダイバーシティマネジメント研修を通じて、自分と異なる相手を認める器の広さが身につき、EQの向上に役立てることが可能です。
アルーのダイバーシティマネジメント研修には演習も豊富に含まれているため、現場ですぐに使える実践的なマネジメント手法を身につけることができます。
アルーのダイバーシティマネジメント研修についてさらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
ダイバーシティマネジメント研修
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若手社員向け「他者の受容・尊重」研修
「他者の受容・尊重」研修は、主に若手社員を対象とした、職場のメンバーと協力しながら仕事を進めるための心構えを学べる研修です。
EQを高めるためには、相手を尊重し、理解しようとする姿勢が欠かせません。「他者の受容・尊重」研修では、相手とよい関係性を築く方法や、相手から信頼を得るための印象管理方法について学びます。相手と関わるときの心構えが身につけば、自然と相手の感情を察知した効果的なコミュニケーションができるようになり、EQの向上につながるでしょう。
アルーが提供している「他者の受容・尊重」研修の詳細は、以下のページからご確認ください。
他者の受容・尊重(新入社員向け研修)
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eラーニング「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」
「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」は、ダイバーシティの推進に必要な心構えやマインドセットを身につけることができる研修です。従来のダイバーシティ研修と比べ、「エクイティ(公平)」をより明確にした内容となっています。
本プログラムでは、他者を受容したり、自分とは異なる相手の個性を活かしたりする方法について、eラーニング形式で学ぶことが可能です。EQを高めるために欠かせない器の広さを、eラーニングを通じて時間や場所を選ばず効率的に身につけることができます。自分の将来像を考えたり、他者と関わる場面を実践したりする演習も豊富です。
ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンについて学べるアルーのeラーニングプログラムの詳細は、以下のページをご覧ください。
eラーニング教材 ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン
まとめ
EQについて、定義やIQとの違い、EQを高めるメリットや高める方法を解説しました。
ビジネスにおいて他者と効果的に関わるためには、「心の知能指数」とも呼ばれるEQを高めることが必要不可欠です。先天的な要素が強いと言われているIQと異なり、EQは後天的にトレーニングや研修によって伸ばすことができます。
ぜひこの記事を参考に研修やeラーニングで社員のEQを高め、コミュニケーション能力やネットワーキングスキルを伸ばしていきましょう。