
オーナシップとは?意味や社員がオーナーシップを持つメリット、オーナーシップを育むポイントを解説
現代は、外部環境が急速に変わり、先が読めないVUCAの時代です。そんななか、組織において求められるのが“主体性をもった”人材です。企業の組織力や変化対応力を高めるための、社員のオーナーシップを育む取り組みに今、改めて注目が集まっています。
“オーナーシップ”は、端的に言うと「仕事に当事者意識をもって取り組む姿勢」のことです。オーナーシップをもった社員が多い組織では、コミュニケーションが活発になり、リーダーシップを発揮するメンバーが増え、顧客満足度が上がるなど、さまざまな場面で好循環が生まれやすくなります。
本記事では、オーナーシップの概要とメリット、オーナーシップを育むマインドセットのポイントをご紹介します。
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オーナーシップとは? 〜仕事への向き合い方を変え、強い組織をつくる〜
オーナーシップは、個人と組織、あるいは個人と仕事との関係性を示す言葉です。自分が所属する組織の課題やみずからの仕事などに対して、「当事者意識をもって向き合い、主体性を発揮して取り組む」ことがオーナーシップをもっている状態です。
特に近年では、“受け身”の若手社員に悩まされている企業が増えています。社員が仕事を「自分ごと」としてとらえ、取り組んでもらうことを、多くの企業が望んでいます。
オーナーシップ(ownership)は、英語の「owner(所有者)」などと同じように、「own(所有する)」が元となった言葉です。オーナーシップのポイントは、仕事を「上司から言われたからやっている」という他人ごとではなく、「自分の仕事」と認識することです。
問題が起こったとき、多くのビジネスパーソンは、目にみえる分かりやすい部分、つまり自分をとりまく環境に注目しがちです。そして、自分がうまくいかない、変われないのは環境が変わらないからだ、とまず外側を変えることを求めます。
言い換えると、組織構造や戦略、制度、マネジメントのスタイルなどを変えてほしいと思ってしまうということです。ですが、グローバル化やテクノロジーの進化などにより企業をとりまく環境が複雑化している昨今、外側を変えるアプローチでうまく乗り越えられ続けるとは限りません。
社員一人ひとりが自分から主体的に動き、また、周りが変わることを待たずみずからを変えることによって、柔軟に問題に対応できる強い組織文化が醸成されていきます。自分の内面から変わることによって、仕事をとりまく人や組織との関係性がよくなり、成果を上げ続けられる人材になることができるのです。
フォロワーシップとリーダーシップとの違い
オーナーシップと似た言葉に、フォロワーシップやリーダーシップがあります。
これらは当事者意識と主体性をもつという点では共通ですが、それぞれ違う意味をもっています。これらの言葉を混同して使う方もいらっしゃいますので、簡単に違いをご紹介します。
フォロワーシップ
フォロワーシップとは、「組織やリーダーの方針や施策に自律的かつ主体的な姿勢で向き合い、メンバーに働きかけ支援する姿勢」です。
フォロワーシップは、「従う」という意味の言葉が入っていることから、一見受け身なイメージをもつかもしれません。ですが本当は、「フォロワーシップがリーダーシップ開発の原点である」とも言われるほど、主体的な意味を含んだ言葉です。
▼フォロワーシップについては、こちらの記事で詳しく知っていただけます。
フォロワーシップとは?リーダーシップとの違いを含めて用語の意味や必要な能力を解説
リーダーシップ
リーダーシップは、「組織やチームをまとめ行動をうながし、目標達成に向けて正しい方向へ導く力」を指します。指導力や統率力とも表現されることがあり、マネジメント要素の意味を含んでいます。
最近では、組織に所属する全員がリーダーシップを発揮すべき、というシェアド・リーダーシップのような考え方も広がってきています。ですが、一般的にリーダーシップは「組織を率いる立場の人」に特に必要といえます。
▼リーダーシップについては、こちらの記事で詳しく知っていただけます。
リーダーシップとは?5つの種類やある人の特徴、身につける方法を解説
まとめると、フォロワーシップやリーダーシップは、組織を統率するリーダーと支援するフォロワーがいてこそ成り立つ言葉です。
一方でオーナーシップは、個人がもっている課題や仕事に対しての関わり方を示すときに使われる言葉であり、組織にいる全員が習得すべきものです。
この点が、オーナーシップとフォロワーシップやリーダーシップとの大きな違いです。
社員のオーナーシップを育む効果と5つのメリット
オーナーシップが育まれると、自立して仕事に取り組み、能動的な姿勢をもつようになります。多くの社員がオーナーシップをもつことで、以下のようなメリットが生まれます。
ミスやトラブルが減る
社員のオーナーシップが発揮されない組織は、それぞれが受け身で「自分がやらなくても誰かがやってくれるだろう」と考える他責の文化になります。一方で、オーナーシップをもつことは、「この仕事は自分の仕事である」という責任感につながります。
一人ひとりの社員が「自分は今何ができるのか」と仕事に向き合うことで、ミスやトラブルが減り、品質が安定し、さらには向上することも期待できます。
コミュニケーションが活発になる
社員がオーナーシップをもつ組織では、自分の仕事をスムーズに進めるために、自然と周囲のメンバーとの関わりが増えます。視座を上げて自分がなにをしたらいいのか、を理解しないと、高いレベルで仕事を完結させることができないからです。
情報を共有することは、組織や仕事全体のことを把握し、最適な行動を選択するために必須です。コミュニケーションが活発になることは、自分の仕事のクオリティが上がるだけでなく、お互いに助け合うチームづくりにもつながります。
また、それぞれの成功・失敗体験やノウハウの共有を通じて、新しいアイデアの創出にもつながります。さらには、なれ合う関係ではなく、お互いに高め合う関係をつくろうと、フィードバックの文化が根付くことも期待されます。
顧客満足度が上がる
オーナーシップをもつと、会社や組織のミッションやビジョンを自分ごととしてとらえることができます。「何のために、自分は今何ができるのか(したいのか)」を社員一人ひとりが意識して仕事をすることは、アウトプットの質が高まることにつながりますので、自然と顧客満足度が向上します。
また、顧客へのサービス提供は、営業やカスタマーサクセスのように直接お客様と関わるメンバーだけでなく、製造や物流、開発、事務など、さまざまな部門が間接的に関わります。そんな多様な部署のメンバーの認識をそろえ、「顧客に満足してもらえるサービスを提供するのは自分の仕事」だと考えられる組織では、顧客に提供されるサービスの品質がさらに向上することが期待できます。
レジリエンスの高い組織になる
オーナーシップをもてない社員が多い組織では、仕事がうまくいかない理由を「外部環境の変化」に求めます。そして、その変化に対応するのは経営陣やマネジメント層の役割だと考え「自分以外の誰かが解決すべきだ」と他人ごとでとらえます。結果として、指示待ちの社員ばかりが増え、経営陣やマネジメント層だけがなんとかしようと指示をしても、思ったように動いてくれない組織になってしまいます。
一方で、社員一人ひとりがオーナーシップをもつことができると、「外部環境の変化」に対応するのは自分だと考えます。仮に役職がないメンバーであったとしても、各現場の仕事で主体的に変化を起こそうとします。それは、組織のレジリエンスを高めるとともに、積極的に情報を経営陣やマネジメント層と共有することで、良い刺激が生まれ、大きな変革につながる可能性も高まります。
高度経済成長期のように、組織のなかにいる数人の役職者だけが意思決定をする組織では、VUCAの時代を生き残ることは困難です。全員が対応を考える組織を目指すことで、企業の持続可能性が高まります。
人材育成の効果が高まる
人事の方が一生懸命社員のために研修を受講できる環境を整えたとしても、受け身の姿勢の社員ばかりだと、言われたから仕方なく研修に参加する意識になります。学ぶことに対するモチベーションも低く、「とりあえず表面的に参加すればいいか」と考え、人事の方が期待する効果は得られません。しかし、社員がオーナーシップをもてば「自分にはどんな成長が必要か」をみずから考えることができるようになります。自分を成長させたいという思いは、能動的な研修参加につながります。
目的をもって研修に参加することで、人事の方が期待する“研修後の受講者の姿”に近づきやすくなります。また、「現場でどう使うか」「成長のためにすぐにできることはなにか」などと考え、研修後の実践につなげられる可能性も高まり、高い研修効果が期待できます。
ですので、社員に対して人材育成の機会を積極的に提供したいと考える人事の方には、社員が新人~若手のうちにオーナーシップを身に付けさせることをおすすめしています。また、オーナーシップはリーダーシップにもつながりますので、リーダーを育成しやすくなるというメリットもあります。
オーナーシップを育む3つのポイント
オーナーシップを育むにはどうしたらいいのでしょうか。
それには、以下の3つのポイントがあります。
情報を共有する
オーナーシップをもってもらうためには、情報共有がなくてはならないものです。正しく情報を把握していないと、正しい行動や正しい判断はできません。情報を把握することで、組織や会社の結果に責任感をもてるようになります。
「もっと視座を上げて、経営層や管理職と同じ視線で考えて欲しい」というのであれば、そのために必要な情報を提供する必要があります。たとえば最近では、意思決定をする会議に経営層以外を参加させたり、経営層や管理職層での会議の話し合いをつぶさに共有したりするなど、情報に透明性をもたせ、風通しの良い文化を醸成しようとする企業が増えています。
ただし、情報は正しく理解できなくてはいけません。必要に応じて、アカウンティングやマーケティングなどの知識教育をすると、相乗効果が生まれます。
権限を委譲する
管理職などがもっている決定権や決裁権を委譲して、仕事に責任をもたせることで、オーナーシップをもつことができるようになります。自分で決めて、自分で責任を取れない仕事にオーナーシップをもつことは難しいといえます。人は「自分が決めた」ことにこそ、強い責任感を持てるものです。
いきなり権限を委譲しなくても、まずは管理職層や経営層が、自分の業務内容や仕事のスケジュールを共有することで、社員の視座が上げる取り組みもあります。オーナーシップがない社員に権限を委譲することはできない、と考えるだけでは、前進することはできません。
社員を信じ、どうすれば権限を委譲できるかを考える必要があります。たとえば、特に信頼できそうな特定の社員から権限を委譲していく、管理職がわざわざ決裁しなくてもよいと思う業務から自己決裁の範囲を広げていく、足りないスキルを補うための教育機会を増やす、など、いくつかの手段を実施することをおすすめします。
失敗を認める
社員がオーナーシップをもつためには、心理的安全性が確保されていることが重要です。失敗すれば責任を追及されるという思考が広がっている組織で、オーナーシップを発揮することはリスクです。そうなると言われたことだけやったほうが安全となってしまいます。
失敗に対して、真摯に反省をうながし、場合によっては適切に叱ることは必要ですが、失敗は最も大きな学びの機会です。失敗を許容し、経験学習できるような組織文化をつくることで、オーナーシップを育むことができます。
そのためには、OJTでの適切な指導やそれをできるようにするための研修機会の創出が必須です。ぜひ学ぶ機会を増やし、社員一人ひとりがオーナーシップをもてる組織風土づくりを目指してください。
社員のオーナーシップを育む研修ならアルーにお任せください
社員のオーナーシップを育む研修なら、ぜひアルーへお任せください。
人材育成を手掛けているアルーでは、社員のオーナーシップを育む育成プログラムを数多くご用意しております。アルーの実施する育成プログラムでは、グループワークや実践を通じてオーナーシップを育むことが特長です。例えば社員のオーナーシップを育むため、自分の担当業務を捉え直し、自分を再定義するワークをおこなうことで、オーナーシップを育むことができます。
お客様の企業の抱える課題に合わせて、研修内容を柔軟にカスタマイズすることも可能です。例えば、新入社員からベテラン社員を幅広く対象とした研修もあれば、次世代リーダー層を対象とした研修など、ターゲットを絞った研修を実施することもできます。社員のオーナーシップを育むための施策をご検討の際は、ぜひお気軽にアルーまでご相談ください。
社員のオーナーシップを育む研修事例
アルーでは、これまでに幅広い企業で社員のオーナーシップを育む研修の実施を支援してまいりました。
ここではそれらの中から特に参考となる事例を3つ紹介します。
社員のオーナーシップを育むための具体的な研修方法について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
NTTインターネット株式会社 6年間の若手社員研修事例
NTTインターネット株式会社様では、人事・評価制度の見直しにより、キャリア自律を促進する研修を実施する必要がありました。その一方で、現場ニーズに即した仕事に直結する内容に変更することも求められていました。
そこで、6年間の研修で、段階的に社会人基礎力とキャリア自律を促進する、一貫性のある研修を実施しています。
本研修プログラムでは、
- 段階的なプログラムで主体的な行動習慣が身につくようにした
- 学び合う風土醸成のために2世代の社員が研修に参加する学び合いの場をつくった
- LMSを活用して、学びやすく運営しやすい環境をつくった
ことがポイントです。
段階的かつ一貫性のある研修を実施することで、各年次に求められる主体的な行動が身につき、最終的には5・6年目社員がリーダーシップを発揮し、チームを引っ張っていくことができるようになります。
本事例の詳細は、以下のページからご覧いただけます。
【NTTインターネット株式会社研修導入事例】社員の学び合いを軸とした社会人基礎力強化とキャリア自律を促進する6年間の若手社員研修
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森永製菓株式会社 新入社員研修事例
森永製菓株式会社様では、2030ビジョンに向けて「環境変化に対応できる人材を育成すること」「キャリア自律して働ける社員を支援すること」「働きがいのある仕組みを作ること」を、人事部の方が目指しています。そこで新入社員に向けて、オーナーシップを育む基礎となる、「ビジネスパーソンの基礎習得」「会社理解」「コミュニケーションとチームワークの重要性」をテーマに研修を実施しています。
本プログラムでは、
1日目に成果を出すための必須の心構えを身につける「仕事の進め方」研修を実施
2日目以降に自社理解を促す「MSワーク」を実施
ことで、森永製菓株式会社で働く基礎を身につけます。特にMSワークでは、チームに分かれて情報収集、発表に取り組む実践的な内容となっていることが特長です。
MSワークは、森永製菓株式会社様で10年も続いており、研修目的は達成できたと実感いただけているプログラムです。
本事例の詳細は、以下のページからご覧いただけます。
【森永製菓株式会社研修導入事例】森永製菓が10年続ける新入社員研修「MSワーク」とは?自社理解を促すコツ
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ポーラ化成工業株式会社 女性リーダー育成研修事例
女性活躍推進の風土づくりを行うため、ポーラ化成工業株式会社様では次世代のリーダーを担うことが期待されている女性社員18名を対象とした研修を実施しました。
本研修は合計5回のプログラムに分けて実施されており、それぞれの間に約1ヶ月間の実践期間が設けられているのが特徴です。実践期間中には、周囲とコミュニケーションをとりながらチームワークを醸成するリーダーシップを現場で体現してもらっています。
それぞれの実践期間の間には中間報告会も設けられており、随時課題点などを共有しながら現場での効果的な実践につなげた研修事例です。
本事例の詳細は、以下のページからご覧いただけます。
【ポーラ化成工業株式会社研修導入事例】女性活躍推進の風土づくりに「リーダーシップ」「チームワーク醸成」の重要性を理解する
まとめ
いかがでしたでしょうか。
オーナーシップは、自分の仕事に対する責任感や当事者意識につながります。そして、社員一人ひとりがオーナーシップをもつことで、しなやかなで負けにくい組織をつくることができます。
また、研修などで思ったような学習効果が得られない、そもそも参加してくれない、などと悩んでいる人事の方には、まずは社員にオーナーシップを身につけてもらう研修もおすすめです。
ぜひ本記事を参考にして、オーナーシップ向上に取り組んでみてください。