フォロワーシップとは?リーダーシップとの違いや必要な能力を解説
企業内の組織運営やチームづくりをしていく上で、フォロワーシップが注目されています。
そこで今回は、フォロワーシップの概要、リーダーシップとの違いやフォロワーシップが組織にもたらす効果について詳しく解説します。
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フォロワーシップとは?
フォロワーシップとは、チームメンバーが組織のために上司やリーダー、他のメンバーを支援する姿勢のことです。 具体的には、以下のような内容を指します。
- 上司やリーダーの意思決定と異なる意見を持ったときに、臆することなく提言する
- 自分でできると思った仕事は、積極的に引き受ける
- 組織の成長や成果の向上のため、議論を促す
フォロワーシップは上司やリーダーだけではなく、組織やチームのメンバー全員に求められます。
リーダーシップとの違い
リーダーシップとフォロワーシップの違いを、「役割」「報告」「焦点」「人」「結果」の5つに分けて下記の表でまとめます。
リーダーシップ |
フォロワーシップ |
|
役割 |
模範となる |
補佐する |
報告 |
ビジョンや方向性を示す |
翻訳して具体化する |
焦点 |
決定する |
提言する |
人 |
影響を与える |
貢献する |
結果 |
責任を負う |
当事者になる |
リーダーシップとフォロワーシップは、組織を動かすための両輪となります。相互に影響しあうことで効果を発揮し、組織として成果をあげられます。
リーダーシップの種類やリーダーシップがある人の特徴については、以下の記事で詳しく解説しています。
『リーダーシップとは?種類やリーダーシップがある人の特徴、身につける方法』
メンバーシップとの違い
メンバーシップ |
フォロワーシップ |
|
働きかける対象 |
組織 |
チームメンバー |
重視するポイント |
組織に対する貢献度 |
リーダーへの支援 |
フォロワーシップとメンバーシップの違いは、働きかける対象となにを重視するかにあります。メンバーシップでは組織そのものに直接的に働きかけ、組織全体への貢献度を重視します。一方、フォロワーシップはリーダーへの支援を重視し、周囲のメンバーにも働きかけますが、最終的にはメンバーシップの一部として組織の成長や成果向上を支援します。
フォロワーシップに必要な2つの能力
米国カーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授は、フォロワーシップに必要な能力を「貢献力」と「批判力」としています。どのような能力なのか、以下で詳しく解説します。
貢献力
貢献力とは、フォロワーが上司やリーダーからの指示や与えられた役割を受け入れて、組織の目的達成のため献身的に行動することです。評価基準は「フォロワーが上司やリーダーに対して積極的に関与しているか」になります。
批判力
批判力とは、上司やリーダーからの指示や与えられた役割を問い直し、自分の見解を述べたり必要であれば上司やリーダーの方針を正したりできる力です。評価基準は「主体的に行動しているか」になります。
フォロワーシップの5つのタイプ
ロバート・ケリー教授は、フォロワーシップを5つのタイプに分けています。
- 模範的フォロワー
- 独立型フォロワー
- 順応型フォロワー
- 消極的フォロワー
- 実務型フォロワー
フォロワーシップは批判力と貢献力の高い模範的が理想のため、模範的を目指すことが重要です。自身や部下がどのタイプなのか把握することで、どの能力を伸ばせば模範的に近づけるのかが分かるようになっています。それぞれのタイプについて、詳しく解説します。
模範的フォロワー
模範的フォロワーは、主張と貢献を使い分けて成果を出そうとするフォロワーです。
自分の意見を持って上司やリーダーに進言できるだけではなく、メンバーをまとめあげて目指すべき目標に対して積極的に取り組んでいきます。
模範的フォロワーの批判は単なる批判ではありません。建設的な提言をリーダーに行いながら組織に貢献できるため、「もっとも理想的なフォロワー」ともいわれています。
孤立型フォロワー
孤立型フォロワーは、評論家のような鋭い批判力や建設的な提言が強みである一方、貢献意欲が薄いフォロワーです。孤立型フォロワーの中には、元々は模範的フォロワーだったものの、上司やリーダーに不当な扱いをされて嫌気がさし、貢献力を失ってしまっているケースもあります。批判力はあるものの組織への貢献意欲が低いため、自ら積極的に関与しようとしません。
ただし、組織に貢献することの必要性をきちんと伝えることができれば、模範的フォロワーに変わる可能性があります。孤立型フォロワーには、組織の方針やビジョンの丁寧な説明が必要です。
順応型フォロワー
順応型フォロワーは、従いすぎることによって組織あるいは自己をマイナスの方向に進めてしまうフォロワーです。組織に対して自ら積極的に関与しますが、言われたことに対して順応に従うのみで上司やリーダーへの進言は期待できません。そのため、「素直」や「真面目」などと評価されやすいタイプです。具体的な指示がなければ動かない「指示待ち人間」となりやすいため、考えを提案してもらうには積極的に発言の機会を与える必要があります。
消極的フォロワー
消極的フォロワーは、上司やリーダーとの関わり自体から目を背け、組織のために行動する意識が薄いフォロワーです。組織への批判はしないものの積極的に関わることはないため、貢献度も低くなりやすいタイプです。そのため、フォロワーとしての働きが期待できない可能性もあります。消極的フォロワーからは業務に対する目標や希望を聞き出し、やる気やモチベーションを高める努力が必要です。
実務型フォロワー
実務型フォロワーは、バランスがよいと言われるものの自分の業務以外には積極的に関わろうとせず、チャレンジ精神が薄いフォロワーです。与えられた仕事はしっかりと消化するものの挑戦意欲がほぼなく、上司やリーダーへの批判が少ないため、組織への貢献度は高くも低くもないタイプです。実務型フォロワーには、現状より高めの目標を設定しておくと実力を発揮してもらえる可能性が高いでしょう。
フォロワーシップが注目される2つの理由
フォロワーシップが注目されている理由は、大きく2つあります。以下では、フォロワーシップが注目される理由を詳しく解説します。
リーダー頼りの組織には限界
近年、国内企業の多くが深刻な人材不足という課題を抱えています。なかでも、リーダーや管理職が負う業務の負担が問題となっています。そのため、現代ではリーダー頼りの組織では限界があり、リーダーを支援していくフォロワーシップが注目されています。強力なリーダーの存在だけでなく、リーダーの下でメンバー全員がフォロワーシップを発揮する組織が求められています。
労働環境の変化
現代は働き方改革によってリモート勤務など柔軟な働き方が増えており、対面でリーダーシップを発揮しづらい環境に変化しています。そのため、対面であっても、リモートであっても組織として成果を出すためには、リーダーによるリーダーシップだけでなくリーダーを支えるフォロワー双方が協働していくことが必要です。
フォロワーシップ行動の具体例
フォロワーシップの具体的な行動例について、以下では「貢献力を示す行動例」と「批判力を示す行動例」にわけて解説します。
貢献力を示す行動例
貢献力を示す行動例は、下記のとおりです。何個当てはまるか、チェックしてみましょう。
- 会社や部門が進む方向と自分の目標に一体感を感じている
- 通常の役割以外のことでも、組織が成果を上げるために必要なら率先して担う
- 結局、上司や他のメンバーの手柄になるとわかっていても、組織のためなら全力で取り組む
- 他の部下が無理難題と受け取るようなことでも、目標達成に向けて重要と判断すれば労を惜しまず上司をサポートする
- 自分が持っている意欲や知識、ノウハウを出し惜しみせず、他の社員を助けたり動機づけたりしている
- 会社が求める人材、上司が期待する人材とは何かを意識し、期待に添えるよう努力している
- 上司から安心して仕事を任せてもらえており、痒いところに手が届くような働きぶりで上司を喜ばせている
- 上司の能力や性格に合わせて、より良い関係を築けるよう自ら工夫している
- 「やらされ感」なく積極的に仕事に没頭している
- チーム内に摩擦が起きた時は、解決のために自ら進んで行動する
批判力を示す行動例
批判力を示す行動例は、下記のとおりです。何個当てはまるか、チェックしてみましょう。
- 上司から指示を受けた時、それが適切な指示かどうかを自分なりに考える
- 上司が自信なさそうだったり迷っている時は、違う角度から意見を述べたり、助言することを心がけている
- 仕事のやり方や方針について上司から修正求められた時は、上司の考えに耳を傾けると同時に、自分の考えも伝えて最善の選択肢を模索する
- 組織の様子や上司、同僚の動きに注意を配り、気になる点があれば意見を述べるようにしている
- 仕事の改善案や新規の提案を積極的に出している
- 困って上司に助言や指示を乞うた場合でも、言われたことにもとづいて最善の選択肢をもう一度考え、納得の上で決定する
- 明らかに上司が暴走、迷走している時は、事実にもとづいて自分の考えを伝え、軌道修正に向かって行動する
- 仕事を自己実現の手段と捉えている
- 難問に直面して組織が立ち往生している時は、会社や上司を当てにせず自分で突破口を切り開こうと努力する
- 自分の信念にもとづいて正しいと判断したことは貫く
フォロワーシップがもたらす効果
ロバート・ケリー教授によると、組織が生み出す成果の80%はフォロワーが握っているとされています。以下では、フォロワーシップによって組織とメンバー個人にどのような影響をもたらすのか解説します。
組織への影響
フォロワーシップが組織にもたらす影響は、下記のようなものが挙げられます。
- 上位目標を共有して実行に移せる
- 上司の判断ミスや、ぬけもれを防げる
- 現場の意見や情報をボトムアップできる
- チームとして一体感を高められる
- 提案・提言する雰囲気や文化を作れる
個人への影響
フォロワーシップが個人にもたらす影響は、下記のようなものが挙げられます。
- 指示待ちの姿勢から、自律的に考えて行動する姿勢へ変わる
- 人の好き嫌いにこだわらず、仕事ができるようになる
- 上司の立場になって考えられるようになり、リーダーの予備的訓練になる
- 上司からの評価が向上して、より大きな権限を獲得できる
- 一匹狼的な動きが、他メンバーと協働する動きに変わる
社員のフォロワーシップを育成するポイント
社員のフォロワーシップを育てていくためには、4つのポイントがあります。
以下では、社員のフォロワーシップを育成するポイントを詳しく解説します。
研修でフォロワーの心構えを伝える
社員のフォロワーシップを育成するには、フォロワーシップ研修を実施しフォロワーとしての心構え・必要な能力を伝えることからはじめます。
チームメンバーをフォローしようとしても、具体的に何をすればよいのか分からないと何もできません。そのため、フォロワーシップ研修を実施しフォロワーとしての心構えを伝えることが大事です。フォロワーシップの心構えと併せて、フォロワーシップには、「貢献力」と「批判力」の2つの能力が必要だと伝えていきます。研修を実施すれば、社員はフォロワーの心構えや必要な能力、やるべき行動が理解できるでしょう。
自分がどのタイプのフォロワーか知ってもらう
社員に優れたフォロワーシップを発揮してもらうためには、5つのフォロワーシップタイプのうち、自分がどのフォロワータイプか知ってもらいましょう。自分のフォロワータイプを把握できれば、自ずと取るべき行動も分かってきます。そのうえで、どうすれば模範的フォロワーシップになれるのか各自で考えてもらうとよいでしょう。
フォロワーシップの具体的な行動例を伝える
社員には、どのような行動が「貢献力が高い」・「批判力が高い」とみなされるのか、フォロワーシップの行動例を知ってもらいましょう。行動例があれば、取るべき行動が明確になるのでフォロワーシップを発揮する近道になります。当記事で紹介した「貢献力を示す行動例」と「批判力を示す行動例」を参考に、どのような行動を取ればよいのか伝えていきます。
アクションプランを設定し取り組んでもらう
社員には、具体的にどのように行動していくのかアクションプランを設定してもらい、実践してもらいましょう。研修後しばらく経ってから、社員と上司にヒアリングして行動変容が起きているか確認することが重要です。研修を受講した社員本人とその上司からヒアリングを行うことで、どの程度達成できたのか、もっと良くしていくためにはどうすればいいのかを多角的に把握できます。必要であればフォローアップ研修や別の育成施策を取り入れ、社員のフォロワーシップを育てていきましょう。
間違ったフォロワーシップの危険性
フォロワーシップはチームの成功を支える重要な要素ですが、誤った認識で実践すると逆効果になることがあります。ここでは、誤解に基づいたフォロワーシップが引き起こす3つのリスクについて解説します。
受け身になる
フォロワーシップを単に「リーダーに従うこと」と捉えてしまうすぎると、自ら積極的に意見を述べたり行動したりする機会を失い、チームの創造力が低下します。特に、アイデアを共有しないことで、イノベーションが生まれにくくなり、チームどころか会社全体の成長を阻害することになりかねません。結果として、メンバー全体が指示待ちの受け身状態になり、柔軟な対応ができなくなるリスクが高まります。
コミュニケーション不足に陥る
フォロワーシップが消極的な「従順さ」として捉えられると、意見交換やフィードバックの機会が減少し、コミュニケーション不足が発生します。これにより、チーム内での情報共有がスムーズに行われなくなり、誤解や無駄な作業が増える可能性があります。
また、チームメンバー間の信頼関係が薄れ、連携が崩れることも考えられます。結果として、プロジェクトが停滞したり、目標達成が困難になったりといった事態に陥る可能性があるでしょうなるリスクが高まります。
リーダーに疎外感が生まれる
フォロワーシップが適切に実践されないと、リーダーが孤立する状況が生まれます。メンバーがリーダーに対して必要なサポートや意見を提供しない場合、リーダーは自分ひとりで意思決定を行うことを余儀なくされ、精神的負担が増加します。リーダーが疎外感を抱くとことで、チーム全体との信頼関係が希薄になってしまいます。なり、結果として、リーダーシップの効果が低下し、チームのパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性が高まります。
アルーが行っているフォロワーシップ向上の研修事例
人材育成を手掛けているアルーでは、フォロワーシップを向上させるための研修を数多く実施してまいりました。ここでは、それらの中から特に参考となる事例をピックアップして紹介します。フォロワーシップ向上を目的とした研修の具体的なプログラム例が知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
不動産業A社 新入社員研修
不動産業のA社では、新入社員が空気を読んでしまい、積極的に発言しないことを課題に感じていました。そこで、社会人として求められる自分で考えて行動し、フォロワーシップを向上させるためにプロフェッショナルスタンス研修を実施しています。
本プログラムでは、まず学生と社会人の違いについて重点的に説明し、社会人としての役割認識を深めました。そのあと、段取りやゴールの確認、チーム意識や報連相といった具体的なスキルを伸ばしてもらい、主体性を発揮するためのスキルを身につけてもらっています。
受講者からは、「実際にワークを使って講習をしたので、聞くだけの講習よりわかりやすく、覚えやすかった。今日の講習で学んだことを秋のフォロー研修までに実践、改善して今後に役立てて行きたい。」「前回学んだ基礎的なマナーがまだ身につけきれていないと言うことに気づいた。この経験についてPDCAサイクルを回し、同じことを繰り返さないようにしたいと思った。」などの声があがっています。ワークを使った研修を行うことにより、業務での活用イメージがつきやすくなり、今後の業務への取り組み方も明確になりました。
本事例のプログラム全体像は、以下のページからご覧いただけます。
【研修事例】相手に配慮しながらも主体的に行動できる新入社員を育成する
▼事例資料をダウンロードする
サービス業B社 若手社員研修
ジョブ型人事制度の導入を検討していたB社では、自律学習や主体性の向上を目標にかかげていました。そこで、若手社員を対象とし、公権力を高めるために自ら考えて行動する研修を実施しています。
本事例では、まず事前課題で1年間の振り返りを行い、主体性を発揮するうえで重要な自分自身のモチベーションを見つめ直してもらいました。そのあと、研修では主体性を発揮する方法を学んでもらい、2年目以降の成長に必要なことを確認しています。最後に事後課題としてアクションプランの実践を行い、業務との接続を行いました。
受講者からは、「今後自分がどのような行動をしていく必要があるのか、具体的なイメージをもって考えられる機会となりました。」「二年目の姿としてどのようなことができるようになればいいのか、またその方法の見つけ方を知ることができ、勉強になりました。」などの声があがりました。2年目を迎える若手社員はどのようなモチベーションで主体的に業務に取り組むべきなのかを明確にすることで、自身の課題を見直したり目標を明確にしたりすることができたようです。
本事例の詳細は、以下のページからご覧ください。
【研修事例】仕事へのオーナーシップを持ち、ひとりだち意識を得る
▼事例資料をダウンロードする
まとめ
フォロワーシップとは、組織やチームの成果を最大化させるために、部下や後輩の立場から上司や他のメンバーに対して主体的に働きかけて支援することです。人手不足によりリーダーの負担増加や労働環境が変化してきた現代において、フォロワーシップは今後も必要とされてきます。
社員のフォロワーシップを育てるためには、研修でフォロワーの心構え、「貢献力」・「批判力」を伝えることが重要です。リーダー一人に頼らない組織作りにしていくために、この記事を参考に組織全体でフォロワーシップを育てられるようにしていきましょう。