心理的安全性を高める研修の実施メリット3つ|流れや効果的に行うポイント4選
心理的安全性は、組織の生産性を高める上で欠かせません。
一方で、「心理的安全性が大切なのは理解しているが、それを高めるために何をすればよいのかわからない」という人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
心理的安全性を高める手段の一つに、研修の実施が挙げられます。
この記事では、心理的安全性を高める研修を実施するメリットや研修の流れ、研修実施時のポイントなどを解説します。
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心理的安全性とは
心理的安全性とは、立場や役職にとらわれずにメンバー同士が率直に意見交換できる、組織に対する安心感の高い組織風土を指します。
元々は1999年ハーバード大学のエイミー・C・エドモンドソン教授が提唱した概念です。
そのあと、Googleが生産性の高い組織に必要不可欠な要素として位置づけたことで注目を浴びました。
心理的安全性の高い組織では、メンバー同士で自由闊達な意見交換ができるため、意思決定の質が向上したり、業務をスムーズに進められたりします。
心理的安全性の詳しい定義や、心理的安全性を高める研修以外のアプローチは以下のページをご覧ください。
『心理的安全性とは?高める方法や人事が行うべき施策について』
心理的安全性が求められる背景
心理的安全性が求められる背景としては、「心理的安全性」という概念に対する認知度が高まっている点が挙げられます。
先述した通り、「心理的安全性」は元々1999年に提唱された概念でした。
その後、Googleのリサーチチームが2012年に発表したチーム分析のプロジェクトの中で、「心理的安全性」を重要視したことをきっかけに注目を集めています。
以前は個々の能力の高いチームがパフォーマンスを発揮すると考えられていましたが、Googleの研究結果はそれを覆すものでした。
こうした背景からさまざまな企業で心理的安全性に対する理解が深まり、今や国内外で多くの企業が注目する考え方となっています。
心理的安全性を高める研修の目的
心理的安全性を高める研修を実施する目的は、組織の心理的安全性を効果的に高めてパフォーマンスを最大限に引き出すことです。
心理的安全性を高めれば、コミュニケーションロスによる手戻りが減少するため、組織のパフォーマンスが向上したり、問題の早期解決につながったりします。
また、自由に意見交換できる風土が形成されれば、意思決定の質も向上するでしょう。
心理的安全性を高めるためには、現場任せにせず人事部が積極的に介入することが大切です。
心理的安全性を高めるために人事部ができるアプローチとして、研修の実施は効果的です。
心理的安全性を高める研修を実施するメリット
心理的安全性を高める研修を実施するメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 組織全体のパフォーマンスの向上
- 問題の早期発見につながる
- 人材の定着率が高まる
心理的安全性を高める研修を実施するメリットについて、それぞれを詳しく確認していきましょう。
組織全体のパフォーマンスの向上
心理的安全性を高める研修を実施すれば、組織全体のパフォーマンスの向上が期待できるでしょう。
心理的安全性の高い組織では、メンバーが感じたことをそのまま口に出せるようになります。自由闊達に意見交換できる風土があるため新しい考えが生まれやすく、効率化や業務改善が進むのです。
また、心理的安全性の高い組織では主体性が発揮されるため、メンバーが責任感を持ってそれぞれの仕事に臨んでくれます。
こうした積極性も、組織としてのパフォーマンス向上に役立ちます。
問題の早期発見につながる
問題の早期発見につながることも、心理的安全性を高める研修を実施するメリットの一つです。
心理的安全性が向上すれば、組織内での情報共有がスムーズになります。
その結果、発生した問題や課題に対して早期に対処できるようになるでしょう。部下がミスをしてしまった際も、上司が適切なタイミングで介入しやすくなります。
「ミスの報告を怠った結果、事態が悪化してしまった」といった事態を防ぐことができるため、大きなトラブルが発生しづらくなるのです。
人材の定着率が高まる
心理的安全性を高める研修を実施すれば、人材の定着率を高めることができます。
組織の心理的安全性が高いと、メンバーに「自分なりに組織へ貢献しよう」という気持ちが芽生えるため、仕事へのモチベーションが向上することが知られています。
一人ひとりが高いモチベーションを持って仕事に取り組むようになれば、人材の定着率も向上するでしょう。
働き手の不足している昨今では、さまざまな企業で働き手不足が深刻化しています。
心理的安全性を向上させて人材の定着率を高めれば、働き手不足にも手を打つことができるのです。
心理的安全性を高める研修を実施する流れ
心理的安全性を高める研修は、以下のような流れで実施するとよいでしょう。
- チームの状態にあった目的を設定する
- 対象にする層を決める
- 実施する手法を決める
- 実施する形態を決める
- 期間を決める
- 効果測定の方法を決める
- 現場でのフォロー体制を決める
心理的安全性を高める研修を実施する際のステップについて、それぞれを詳しく解説します。
チームの状態にあった目的を設定する
心理的安全性を高める研修を実施する際には、まず研修の目的を設定しましょう。
このとき、チームの状態にあった目的を設定することが重要です。
心理的安全性には、以下の4つの段階があると言われています。
- 第1段階(インクルージョン安全性)……自分という存在が組織に含まれているか?
- 第2段階(学習者安全性)……学習に向けて、積極的にリスクを取れるか?
- 第3段階(貢献者安全性)……相手へ貢献するため、積極的にリスクを取れるか?
- 第4段階(挑戦者安全性)……挑戦する際、失敗を恐れず取り組めるか?
組織の心理的安全性は上記の4つを段階的に進んで発展していくため、例えば第1段階が満たされていない状態で第4段階を達成しようとしても効果は期待できません。
組織の状況を見極めて、現状に合った研修目的を設定しましょう。
対象にする層を決める
研修の目的を設定したら、次に対象とする層を決定しましょう。
対象となる社員の層を決定する際には、管理職に対してアプローチするケースと、全社員を対象としてチームビルディング研修を行うケースの2つがあります。
前者の場合には、管理職の適応課題やコミュニケーションスキルを中心にアプローチを進めた上で、管理職を中心に現場での心理的安全性向上を進めてもらうことが一般的です。
後者の場合には、現場社員も含めたチームビルディング研修を実施して、心理的安全性を直接高めていきます。
組織の状況や研修の目的を見ながら、対象者の選定を進めましょう。
実施する手法を決める
研修の対象者を選定したあとは、実施する手法を決めていきます。
心理的安全性を高める研修を実施する際には、必ず知識のインプット部分とアウトプット部分を両方盛り込みましょう。インプットだけを重視しても、現場での行動変容になかなか結びつきません。
反対にアウトプットだけを重視しても、心理的安全性の概念を正しく理解してもらうことは難しいでしょう。心理的安全性は「ぬるま湯組織」と混同されがちです。心理的安全性についての正しい理解がインプットされない場合、間違った方向に組織が進んでしまいかねません。
インプット部分では、心理的安全性の概要や重要性、「ぬるま湯組織」との違いなどを理解してもらうことが重要です。アウトプット部分としては、心理的安全性を高めるワークショップやゲームなどを取り入れてみてください。
実施する形態を決める
研修内容が決定したら、研修の実施形態を決めましょう。
研修の実施形態には対面研修やオンライン研修、オンデマンド研修などさまざまなものが考えられますが、基本的には対面研修で実施することがおすすめです。
対面で実施すれば互いの表情や感覚といった細部を読み取ったコミュニケーションが取れるため、心理的安全性を効果的に高めることができます。
なお、心理的安全性に関する知識のインプット部分をeラーニングで実施して、対面ではワークやゲームを中心に取り組んでもらう、といったブレンディッドラーニングもおすすめです。
ブレンディッドラーニングに関して、詳しくは以下のページで詳しく解説しています。
『【事例あり】ブレンディッドラーニングとは?効果的な方法や注意点を徹底解説』
期間を決める
研修の形態が決まったら、次は研修期間を決めます。
心理的安全性は組織風土と結びつくため、一朝一夕で変えることはできません。
そのため、心理的安全性を高める研修は3ヶ月〜1年程度の長期で実施することをおすすめします。
内訳としては、まず研修のメインパートが半日〜1日程度となります。
そのあと、フォロー研修を数回に分けて長期で実施するという流れです。
なお、研修の準備にも1〜2ヶ月の時間がかかることを想定しておきましょう。
効果測定の方法を決める
研修のスケジュールが決定したら、次に効果測定の方法を決定します。
研修の効果測定を行う際には、エイミー・C・エドモンソンの提唱した7つの質問が参考になります。
7つの質問の具体的な内容は以下の通りです。
- チームの中でミスをすると非難されると思うか
- メンバーは課題や問題点を指摘し合うことができるか
- メンバーは、自分と異なることを理由に拒絶することがあるか
- チームに対してリスクのある行動をしても安全か
- メンバーに助けを求めることは難しいと思うか
- メンバーは自分の仕事を意図的におとしめる行動をしないか
- メンバーと仕事を進めると、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると思うか
アンケートや1on1面談を通じて上記の質問を投げかけ、心理的安全性がどれほど達成されているのかを把握しましょう。定量的・定性的の両面から分析することが大切です。
現場でのフォロー体制を決める
最後に、現場でのフォロー体制を決めます。
心理的安全性は研修が終了してすぐに高まるものではないため、中長期的なフォロー施策が大切です。例えば、研修を複数回に分けて実施したり、事後課題を設定して復習を促したりするとよいでしょう。
また、アンケートを実施する、1on1ミーティングで心理的安全性に触れるよう上司に促すなど、効果測定の仕組みを作るのも大切です。フォロー体制を多面的に整えることで、心理的安全性を効果的に向上できます。
心理的安全性を高める研修を効果的に実施するポイント
心理的安全性を高める研修を実施する際には、どういったポイントに気をつければよいのでしょうか。ここからは、心理的安全性を高める研修を成功させるために必ず知っておきたい4つのポイントを解説します。
リーダー・管理職から研修を行う
心理的安全性を高める研修を実施する際には、リーダーや管理職から研修を行うようにしましょう。
リーダーが変わればチーム全体によい影響を与えるため、心理的安全性を効果的に改善できます。一方でリーダーが心理的安全性向上のための行動ができていないと、部下であるメンバーが率直に意見を出したり気軽に質問をしたりすることは難しいでしょう。また、「リーダーができていないから自分もできなくていいんだ」という考えがメンバーに生まれてしまい、メンバー自身も心理的安全性の向上を心掛けなくなってしまいます。
まずはリーダーや管理職を中心にアプローチして、心理的安全性への理解を深めてもらうことを心がけてみてください。
心理的安全性を正しく認識してもらう
心理的安全性を正しく認識してもらうのも、心理的安全性を高める研修を実施する際のポイントです。
心理的安全性と混同されがちな表現として挙げられるのが、いわゆる「ぬるま湯組織」です。ぬるま湯組織は心理的安全性の高い組織と同一視されがちですが、馴れ合いがあったり刺激や緊張感に欠けたりする点で、心理的安全性の高い組織とは異なります。
研修を実施する際はこうした違いを意識して、心理的安全性について正しく理解してもらうよう心がけましょう。
「ぬるま湯組織」にならないよう、目指すべきゴールや目標設定を明確化することが大切です。
ゲームやワークショップを行うことも効果的
心理的安全性を高める研修では、ゲームやワークショップを実施することも効果的です。
ゲームやワークショップを取り入れれば、メンバー間のコミュニケーションを活性化させ、自由に意見交換できる雰囲気を作ることができます。
実際にメンバーとコミュニケーションを取る過程で、心理的安全性の高い組織を作るコツや重要性を体得できるでしょう。
また、ゲームやワークショップが研修の息抜きになり、集中力を持続してもらいやすいメリットもあります。
ワークショップを研修に取り入れる際のコツや、おすすめの手法は以下のページをご覧ください。
『ワークショップを効果的に研修に取り入れるコツとおすすめの手法6選』
研修を通じて、実務でどう活かすかまで考える
心理的安全性を高める研修を実施する際には、研修を通じて、実務でどう活用するのかまで考えてもらいましょう。
例えば研修の最後に、現場の心理的安全性を高めるためにこれから何に取り組みたいのかを、アクションプランとして宣言してもらうことをおすすめします。
研修中に実務でどう活かすかまで考えてもらえば、現場の心理的安全性を継続的に改善することにつながります。
研修に参加したこと自体に満足させるのではなく、現場での行動変容までフォローするよう意識してみてください。
心理的安全性を高める研修の事例
最後に、実際に実施した心理的安全性を高める研修の事例を紹介します。
若手社員のメンタル不調が増えているため組織風土の改善が必要だと感じていたA社では、心理的安全性を高めるために管理職を対象とした研修を実施しました。
まずは心理的安全性を高める際の前提として、マネジメントの原則や管理職の役割認識など、適応課題にアプローチしています。そのあと、ケーススタディを実施して、「自分だったらどうするか」を考えてもらいました。
最後に、相手と関係構築をする際のポイントとして、「コミュニケーションの量を増やす」「相手を知る」といった点を取り上げ、心理的安全性の向上を促しています。
管理職を起点とした心理的安全性の向上に取り組んだ研修事例です。
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