若手社員のモチベーションを上げるために人事・企業が行うべきこと
新入社員時代が過ぎ、一通りの業務に慣れてきた若手社員にありがちな悩みが、モチベーションの低下です。
モチベーションの低下は、本人のパフォーマンスを下げてしまうだけでなく、早期離職の原因ともなるため、一刻も早く対処する必要があります。若手社員のモチベーション低下を防ぐために、人事や企業は何ができるのでしょうか?
この記事では、早期離職の大きな原因である若手社員のモチベーション低下を防ぐために、人事や企業ができることについて解説します。
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若手社員のモチベーションが下がる要因
そもそも、若手社員のモチベーション低下はどうして起こってしまうのでしょうか。
若手社員のモチベーションには様々な要素が影響を与えていますが、モチベーションの低下の理由としては大きく7つ挙げられます。モチベーション低下を防ぐ施策を考えるため、まずは若手社員のモチベーションが下がる要因について考えてみましょう。
在宅勤務によるコミュニケーションの減少
NTTドコモのグループ会社であるemphealは、2020年6月8日、新型コロナウイルス感染症流行という状況下での仕事のパフォーマンスに関する調査を行いました。その中でも特筆すべきなのが、業務に対するモチベーションです。
同調査では、調査に参加したのべ2200人の社員のうち、実に34%が「活動自粛期間以前と比べて、業務に対するモチベーションが低下した」と回答しています。新型コロナウィルス流行によるリモートワークの普及は利便性が高い反面、社員のモチベーションに深刻な影響を与えているのです。
特に、20代の若手社員は38%が「モチベーションが減った・やや減った」と回答しており、これは他の年代より高い比率です。
また、モチベーションが減ったと回答した人は、モチベーションが上がったと回答した人より「業務に関するコミュニケーションが減少した」と回答する割合が多くなっていました。
このことから、在宅勤務に起因したコミュニケーション減少により若手社員のモチベーション低下が引き起こされている可能性があると推測できるでしょう。
参考:ASCII.jp:在宅勤務で若手社員の4割がモチベーション低下、emphealが調査
仕事のマンネリ化・飽き
上記の原因に加え、若手社員は仕事のマンネリ化や飽きも経験します。仕事に対する慣れによって発生するこういったマンネリ化も、若手社員のモチベーションが低下する原因の一つです。
新入社員の頃は目の前の仕事をこなすので手一杯だったのに対し、一通りの仕事を経験し終わった若手社員は「今までにやった仕事を繰り返すだけ」という状態に陥りがちで、ある種のつまらなさを感じてしまいます。また、業務に対する慣れが、成長実感のなさにもつながっていきます。
貢献感・成長実感が無い
若手社員のモチベーション低下の原因として、貢献感や成長実感がないという点も挙げられます。
新入社員時代は、目の前の新しいタスクをこなすだけでも成長が経験できました。しかし、入社からある程度の年数が経過すると、ただ目の前の業務をこなすだけでは成長できなくなってきます。また、組織に対する貢献感も薄れていくでしょう。
「このまま今までと同じ仕事をこなし続けていると、いつまでも成長できないのではないか」という漠然とした不安感や焦燥感も、若手社員のモチベーションが低下する要因の一つです。
承認欲求が満たされない
若手社員は、新しいことを覚えることがメインの新入社員とは違い、売上や商談数といった自分なりの目標数値を持つことも増えてきます。しかし、やはり中堅以上の社員と比べるとなかなか業務でうまくいかないことも多く、うまくできたとしても「できて当たり前」と評価されてしまい、承認欲求が満たされません。
承認欲求が満たされないという点も、若手社員がモチベーションを低下させてしまう原因の一つです。特に真面目な若手社員ほど、「ミスしてしまったからまだまだだ」と、必要以上に落ち込んでしまう傾向があります。
やらされ感がある
先ほども述べたように、若手社員は個人としての目標を持つことが多くなります。基本的に目標は上司と話し合いながら決めますが、まだ目標設定が上司主体で行われることも多い若手社員では、目標が押し付けになってしまっているケースが少なくありません。
課された目標に対して本人が納得できていない場合、どうしても業務に「やらされ感」が生じてしまいます。目標の意義を見失ってしまうため、仕事そのものに対するモチベーションも低下する可能性が高いです。
ロールモデルの不在
若手社員のモチベーションが低下してしまう場合、ロールモデルの不在が原因の一つとなっている場合があります。
周囲にお手本となるような先輩社員や上司がいれば、「あの先輩のようになるためには〇〇というスキルが必要だな」といったように、自分の成長の方向性をイメージしやすいです。一方で自分の将来像を投影できるような先輩社員が存在しない場合、自分が数年後、数十年後にこの会社でどうなっているのかが想像できず、将来に対する不安やモチベーションの低下につながってしまいます。
ロールモデルが存在しない場合、本人が目指すべき方向性を見失ってしまう可能性があるのです。
人間関係への不満
人間関係への不満が、若手社員のモチベーション低下の要因となっているケースもあります。
職場での人間関係に問題がある場合、仕事上でのコミュニケーションが若手社員にとっては大きなストレスとなります。困りごとが発生したときも誰に相談すればよいのかわからず、一人で悩みを抱えてしまうこともありうるでしょう。
なお人間関係に対する不満は、若手社員のみならず中堅、ベテラン社員のモチベーション低下の原因ともなりうるため、一刻も早く対処する必要があります。
若手社員のモチベーションをあげるポイント
若手社員のモチベーションが低下してしまう主な原因についてみてきました。
ここからは、先ほど紹介したそれぞれの原因を踏まえて、若手社員のモチベーションをあげるポイントについてみていきましょう。紹介するポイントをおさえれば、モチベーション向上に向けた効果的な施策を考えることができます。
内発的・外発的動機づけの両軸で考える
人が何かに取り組もうと考えるきっかけである「動機」には、外発的動機と内発的動機の2つが存在します。
外発的動機とは、他者からの承認や賞賛によって生じるきっかけのことです。一方で内発的動機とは、「成長したい」という気持ちなど自分から発生する動機のことを指します。
モチベーション向上の施策ではよく外発的動機だけが注目されますが、継続的にモチベーションを維持して成長してもらうためには内発的動機が欠かせません。
社員が自身の成長を実感できるよう短期で達成できる小さな目標を立て、それに沿って行動してもらったり、組織としてのルールは最小限に留め、ある程度社員に裁量を委ねたりすることで内発的動機づけを行うことも大切です。
コミュニケーションを積極的に取る
モチベーションを向上させるため、コミュニケーションを積極的に取るようにするのも大切です。職場でのコミュニケーションが充実していれば、それだけで仕事のストレスや負担が減り、働くことにやりがいを見出しやすくなります。
例えばコミュニケーションの中でうまく若手社員を褒めてあげることで、若手社員の承認欲求を満たし、モチベーションを引き上げることができるでしょう。また一方的に若手社員へ話をするのではなく、しっかりと若手社員の話を傾聴し、「自分の気持ちが尊重されている」という実感をもってもらうのが大切です。
仕事の話ばかりではなく、ミーティングの時間に雑談を振ったり、チャットなどでスタンプを送ったりなど、意図的に心の距離を近づけるのも効果的です。
若手社員の話を傾聴する姿勢は、特に上司である管理職に身につけてもらいましょう。
管理職の傾聴力を鍛える方法については以下の記事をご参照ください。
『管理職が傾聴力を高める育成方法とは?傾聴力を高めるメリットと目的』
≫若手社員のモチベーション向上に役立つ「若手社員研修」の資料を見てみる
小さな目標からチャレンジさせる
若手社員のモチベーションが低下してしまう要因として、目標未達による自信の喪失があります。目標達成に失敗してしまう場合、目標が能力に対して足りていないのではなく、そもそも立てている目標が高すぎる場合もあるでしょう。
まずは小さな目標からチャレンジさせて、成功体験を積み重ねてもらうのもモチベーションを向上させる上で大切なポイントです。目標達成という成功が重なることによって若手社員に成長実感が生まれ、モチベーションにも好影響を与えるでしょう。
目的・目標を押し付けにしない
若手社員がよく抱く不満の一つに、「目的や目標が押し付けられているように感じる」「上司に与えられた目標に意義を感じない」というものがあります。本人が目標の意義や意味をよく理解していない場合、自分はなぜ仕事に取り組んでいるのかが曖昧になってしまうため、モチベーションが低下してしまうでしょう。
目的や目標を押し付けにしないため、目標を決める際には管理職と若手社員が相談しながら決めるようにするのもポイントの一つです。目標を決める際には、うまく本人が納得できる目標を設定する上司側のスキルも求められます。
リーダーが考えるべき、目的・目標設定のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
リーダーの目標設定のポイントとは|必要なスキルや具体例を紹介
「自分で変えられるもの」に注力してもらう
仕事に取り組む際には、「自分で変えられるもの」と「自分では変えられない・変えづらいもの」が存在します。例えば、
- 変えられるもの:未来や自分自身の状況。自分の仕事の進め方や明日の商談の資料など。
- 変えられない・変えづらいもの:他人や過去の状況。昨日お客様にしてしまった失言、先輩社員や上司の仕事への価値観
などです。モチベーションを向上させるためには、仕事の中で発生する「変えられるもの」と「変えられない・変えづらいもの」を整理して、変えられるものに注力して取り組むのが大切です。過去は変えられませんが、自分や未来に関わることは変えられます。この点を意識して成果を出し、モチベーションが周囲に左右されづらい状況を作ることが求められます。
小さな習慣を変えてもらう
いきなり大きなことを達成しようと頑張っても、なかなかうまくいきません。何かを達成しようと考える際には、小さな習慣を変えることからアプローチしてもらうのがおすすめです。
例えばポジティブ思考ができるようになりたい場合、ただ漠然と「ポジティブ思考をしよう」と思っていてもなかなかうまくいきません。「日頃からポジティブな言葉を使うようにしよう」「別の観点からも考える習慣をつけよう」と意識することで、徐々に思考がポジティブになっていくものです。小さな習慣からコツコツ変えてもらうことで、モチベーションを低下させることなく成果を出すことができます。
若手社員のモチベーションを上げる方法
若手社員のモチベーションを上げるために大切なポイントを解説してきました。ここからは、それらのポイントを踏まえながら、若手社員のモチベーションを上げるために使える具体的な施策を紹介します。
人事や企業が以下の施策を積極的に実施すれば、若手社員のモチベーションを大きく改善することができるでしょう。
待遇・職場環境の見直し
仕事に対するモチベーションに大きな影響を与えるのは、待遇や職場環境です。もちろん一人の社員に対して支給できる給与の額には限りがありますが、そのほかにも福利厚生や残業時間、有給休暇など、改善できる部分は数多くあります。こうした部分にアプローチするのは、若手社員のモチベーションの改善に直結するでしょう。
特に、最近の若手社員は「キャリアだけでなくプライベートや家庭も重視する」という価値観を持っている場合も多いです。残業時間が多くなり過ぎていないか、有給休暇はしっかり取得できているかなど、定期的にこれらを数値でモニタリングするとよいでしょう。
≫若手社員のモチベーション向上に役立つ「若手社員研修」の資料を見てみる
人事制度の見直し
社員が正当に評価されるよう、公正で納得度の高い評価精度にすることも大切です。
結果だけでなく「頑張っているから」「飲み会によく来ているから」「仲がいいから」というような上司による恣意的な評価をしてしまうと、評価されなかった社員はモチベーションが下がってしまうでしょう。
モチベーションを向上させるために今一度人事制度を見直し、評価が公正に行われているかどうかを検証してみましょう。特に複数の社員を同時に評価している場合は、それぞれの社員間で評価軸にブレがないか、不公平感はないかをよく確認する必要があります。
評価の公正さを担保するには、管理職の評価スキルの向上が必要です。そのためには評価者研修の実施が効果的です。
アルーが行っている評価者研修については、以下のページでご確認いただけます。
評価者研修
▼アルーの評価者研修について詳しくはこちらの資料をご覧ください。
モチベーションマネジメント研修の実施
「モチベーション」というと、一般的には気持ちの問題と捉えられがちです。しかし、実際にはスキルを身につけることによって、モチベーションを自分で制御できるようになります。
自分のやる気を自分自身でコントロールすることを、モチベーションマネジメントといいます。モチベーションマネジメントの能力を身につけるための研修を実施すれば、社員に自分自身でモチベーション管理を行なってもらえるでしょう。具体的には、自己認識を深めたり、物事の視点を変えたりする技術を学んでもらうのがおすすめです。
キャリアデザイン研修の実施
モチベーションが低下してしまっている若手社員では、「この会社で働き続ける将来像が見えない」と、自分自身のキャリアプランを見失ってしまっているケースが少なくありません。キャリアデザイン研修を実施して、自分のキャリアについて見つめ直してもらうのもモチベーション向上には有効です。
キャリアデザイン研修では、若手社員それぞれに自分自身の強みや、組織における役割を再認識してもらいます。キャリアデザイン研修をきっかけに若手社員の持つキャリアプランが明確になり、モチベーションが改善する事例も多いです。
アルーが行っている若手社員向けのキャリアデザイン研修については、以下のページでご確認いただけます。
キャリアの可能性を拡げる 20代社員向け
▼アルーの若手社員向けキャリアデザイン研修について詳しくはこちらの資料をご覧ください。
挑戦ができるような制度・環境づくり
業務に慣れが出てきた若手社員は、日々同じ業務の繰り返しに飽きを感じてしまっている場合も多いです。若手社員が挑戦できるような制度や環境づくりに力を入れることも、モチベーションの改善に有効です。
例えば、自分の職種に関わらず様々な職種を体験できるようにする、信頼できる上司と一緒に大規模なプロジェクトへアサインするといった施策が考えられます。今までになかった大きな仕事に取り組むことで、成長実感ややりがいを感じてもらえるでしょう。
期待や役割を明確に伝える
若手社員のモチベーションを改善するため、期待や役割を周囲が明確に伝えるようにするのもよいでしょう。
例えば、若手社員が上司と1on1ミーティングをする際に、「君には〇〇の役割を期待しているよ」「君ならこのプロジェクトを完遂できると思って任せるよ」と伝えれば、若手社員は自分自身が組織から必要とされているというやりがいを感じるでしょう。
ただし、あまりにも期待をかけすぎるとかえってプレッシャーとなってしまいます。若手社員にとってストレスとならない範囲で、適度に期待を伝えるようにするのが大切です。
1on1を活用して若手社員のモチベーションを上げるためには、面談相手である上司のスキル向上が欠かせません。アルーが行っている、上司向け1on1ミーティング研修は、以下のページでご確認いただけます。
1on1ミーティングの基本
▼「1on1ミーティングの基本」研修について詳しくはこちらの資料をご覧ください。
お金以外のインセンティブを導入する
モチベーションを向上させるために報酬を引き上げるというのは有効な施策ではありますが、際限なく報酬を引き上げるのは現実的ではありません。お金以外のインセンティブを導入するのも、モチベーション向上に一役買ってくれます。
例えば、職場で日頃の感謝を伝え合う「サンクスカード」を導入するという事例があります。サンクスカードでなかなか普段は伝えていなかった感謝の気持ちを伝えられるようになった結果、若手社員が「人の役に立っている」という実感を持ち、モチベーションが改善したケースも多いです。
若手社員のモチベーション向上に役立つ研修
若手社員のモチベーション向上に向けた施策例について紹介しました。モチベーションを高めるためには、研修によって若手社員自身に自己理解を深めてもらうのが効果的です。
この記事の最後に、若手社員のモチベーション向上に役立つ研修プランについてご紹介します。
フォローアップ研修
フォローアップ研修とは、新入社員研修などの研修実施後に一定期間をおいて実施される研修のことです。研修で身につけた内容をもう一度復習し、業務で実践するきっかけを作るという狙いがあります。
若手社員に対してフォローアップ研修を行うことで、普段の自分の業務内容を振り返り、目標を再設定しやすくなります。目標が具体的に可視化されることによって、自分の目指すべき方向が明らかになり、モチベーションも向上するでしょう。
アルーが行っている新入社員に向けたフォローアップ研修については、以下のページでご確認いただけます。
新人フォローアップ研修
キャリアデザイン研修
キャリアデザイン研修は、所属する企業におけるキャリアの可能性を広げることを目的として行われます。これまでの自分の仕事や成長について見つめ直すことによって、これから自分がどのようなキャリアを歩むべきなのかを明らかにできるのが特徴です。
若手社員に対してキャリアデザイン研修を実施すれば、若手社員は長い目線で自分のキャリアについて考えることができるようになります。自分自身の目指す将来像が明確化すれば、モチベーションの向上につながるでしょう。
モチベーションの向上に役立つキャリアデザイン研修については、以下のページで詳しく解説しています。
キャリアの可能性を拡げる20代社員向け
モチベーションマネジメント研修
モチベーションマネジメント研修では、自分自身のモチベーションをコントロールする手法について学びます。若手社員がモチベーションを自分でマネジメントできるようになれば、社員と企業の双方にとって大きなメリットがあるでしょう。
モチベーションマネジメント研修では、例えば以下のような内容を盛り込むのがおすすめです。
- 受講者自身にこれまでのモチベーション曲線を描いてもらう
- 「上司からの手紙」セクションを入れ、上司からのメッセージを読んでもらう
こういった工夫を通じて、若手社員は徐々に自分のモチベーションを制御できるようになります。モチベーション向上によって結果を出し、成長体験を積み重ねることでさらにモチベーションが向上する、といった好循環を生み出せるよう、モチベーションマネジメントの手法について学んでもらいましょう。
まとめ
若手社員のモチベーション低下を防ぐためには、外発的動機づけのみならず内発的動機づけを行う、目標を押し付けにしない、自分で変えられるものに注力してもらうなどの今回紹介したポイントを踏まえて施策を行っていきましょう。
また、人事制度の見直しや研修を行うなど、若手社員に変わってもらうだけではなく、全社で取り組むべき施策も多くあります。自社に合った施策を見つけ、若手社員のモチベーションアップに努めましょう。
アルーでは、若手社員のモチベーション向上につながる「フォローアップ研修」や「キャリアデザイン研修」、「モチベーションマネジメント研修」などの研修を行っております。
若手のモチベーションを上げたい、研修を内製するのが難しいというようなお悩みのある方はぜひ一度ご相談ください。