意味がないと言われてしまう研修とは?効果のある研修をする10のコツ
人材育成のためにさまざまな研修を行っていても、受講者が「研修は意味がない」と思ってしまっていれば、研修の効果は薄れてしまいます。
実際、受講者やその上司から「研修の意味がない」「効果がない」という声が上がっていて困っている人事担当者の方も少なくありません。
今回は、「意味がある」「効果のある」研修にするためのポイントについてご紹介します。
もう「研修は意味ない」と言われないためにも、この記事を参考に研修企画を進めていきましょう。
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研修は意味がないと思われる背景とは
研修の受講者や受講者の上長から、「業務の邪魔だな」「時間の無駄だ」「役に立たない」「研修って意味あるの?」という声が上がることは少なくありません。
なぜ研修は役に立たないと思われてしまうのか、その背景について紹介いたします。
受講者が研修の必要性を理解していない
研修は必ず目的があって行われているものですが、その目的を受講者が理解できていない場合、「なんの意味があるのだろう?」と思われてしまいがちです。
この場合、人事担当者や研修の講師が最初に研修の目的や必要性を発信する必要があるでしょう。研修を始める前に、「研修を受けた後にどういう状態になっていることを目的とするか」という点を受講者に提示しましょう。さらに使用する教材内で明文化すると、口頭だけで伝えるより効果的です。
現場で求められることと研修内容が合致していない
現場で行う業務と研修内容が合致しておらず、「業務に必要ないことだ」と思われてしまうことも、研修が意味ないと思われてしまう原因です。
研修で学ぶ内容は、すぐには身につかないものや、業務で使えるようになるまでに時間がかかるものも多く、継続的に学習をする必要があることがほとんどです。
この場合は、研修企画側が職場での実践までをフォローしてあげることが必要です。OJTの中に落とし込んだり、アクティブラーニング(受講者が能動的に動き学習する方法)を導入したりするなどの対策があります。
受講者のスキルと研修内容が合致していない
受講者にすでに身についているスキルをもう一度研修で行ってしまったり、学ぶための事前学習が足りていなかったりするために、「意味がない」と思われてしまうこともあるでしょう。
これは、現在の受講者のスキルを確認せずに「毎年やっている研修だから」というような理由で研修を行っていると起こりやすい問題です。
人事担当者や企業側は、研修を計画する前に受講者のスキルを確認し、受講者をレベル分けしたり、スキルに沿った研修を計画したりすることが大切です。
知識のインプットのみでアウトプットの場がない
「ずっと座学のみでつまらない」「インプットだけしてそのままになっている」というのも、「研修に意味がない」と思われてしまう要因です。
もし座学のみの研修やインプットのみの研修になっている場合は、グループワーク、ケーススタディ、シミュレーション、ワークショップなど体感型の仕掛けを取り入れて研修自体をアウトプット中心の設計にすることもできます。
また、現場ですぐに研修の内容が使えるようにOJTに落とし込み、上司に報告をしてフィードバックを貰うようにするなどの仕組みづくりが必要です。
また、研修の理解度をチェックするためのテストなどもアウトプットの場として有効でしょう。
アウトプットの場を設ける場合には、研修後数か月経ってからフォローアップ研修を実施し、職場で実践できていることやできていないこと、これからの課題などを明らかにすることも大切です。
研修の目的が明確でない
「毎年新入社員が受けている研修だから」「他の企業で人気の研修だから」というような理由で研修を開催してしまうと、意味がないと思われてしまいます。
研修の目的が企業側で明確でないと、受講者側もどこがゴールで、研修のスキルをどこで発揮すればいいのかわからず、「ただ聴いているだけ」になりがちです。
また、研修を行っている講師の話が脱線しすぎてしまい、「結局何を伝えたかったのかわからない」ということにならないよう、講師の選定も重要になるでしょう。
研修を企画する時点で、研修の目的を明確にし、自社に合った研修を行いましょう。
研修は意味がないと思われないようにするには?
「研修は意味がないと思われる背景とは」で意味がないと思われる要因と人事担当者や企業側の対策をお伝えしました。では、「研修は意味がない」と思われないようにするには、具体的にどのような対策をすべきなのでしょうか。
研修を効果的にするためのポイントは、以下10個です。
- 研修効果を定義してから設計する
- 研修を安心安全の場にする
- 現場と目的・ゴールをすり合わせる
- 研修前に目的を理解してもらう
- 研修の内容をOJTに取り込む
- スキルの習得だけでなく価値観の変容も促す
- できていないことを洗い出してもらう
- 座学だけでない研修方法を取り入れる
- 研修後のフォローを行う
- 研修後にアンケートを実施し、次に活かす
ひとつずつ解説いたします。
研修効果を定義してから設計する
研修を企画する際は、研修のゴール、効果、成果を先に定義しましょう。
ゴールとしては、知識を習得することか、行動変容を促すことか、意識転換かによって企画も設計も変わります。また、知識習得がゴールだとした場合、その効果または成果は何かも定義するとよいでしょう。例えば、研修後に知識習得を測るテストを実施して、90点以上を合格とする場合、90点以上のスコアを得た受講者が100%となるまでが人事の仕事になります。そうすると研修の中身もそうですが、事後テストをどうするか、テストで合格ラインに達しなかった受講者をどうフォローするか、など企画する輪郭が明確になります。
研修を安心安全の場にする
研修は、批判や修正を行い、「このやり方が絶対だ」というように正当性を主張するディスカッションの場ではなく、対話のための場にすべきです。
研修のはじめに、以下のような注意事項を伝えると良いでしょう。
- 意見に勝ち負けをつけない
- 他の受講者の意見に耳を傾け、理解する
- 結論よりプロセスを重視する
研修を安心安全の場にし、受講者が意見を言いやすく、能動的に学習ができるようにすれば、学習内容も身につけやすくなります。
現場と目的・ゴールをすり合わせる
現場で使うスキルや現場で求められている人物像と研修の目的・ゴールをすり合わせることも重要です。
人事側や企業側のみで研修計画を立てるのではなく、必ず現場にヒアリングをするなどして、現場と研修の目的をすり合わせておきましょう。
研修前に目的を理解してもらう
研修前には、「この研修を受けてどうなってほしいのか」「この研修はこのスキルを身につけることができる」という、研修の目的を理解してもらうための時間を設けましょう。
受講者に、「この研修を受けて、どのようになりたいですか?」「この研修であなたが身につけたい力は何でしょうか?」と逆に質問するのも良いでしょう。
人事側の目的に受講者が自ら気付くことによって、「こうなるために、研修をしっかりと受けよう」という気持ちを起こさせることができます。
研修の内容をOJTに取り込む
研修内容がインプットのみでアウトプットが無いと、ただ聴くだけの研修になってしまいます。
研修内容は「必要なことを知る」「わかる」だけではなく、使えるようにならなければなりません。
「知っている」「わかる」の次の段階である「使える」ようになるためには、アウトプットの場が必要です。
そこで、研修で知ったことや分かったことをすぐ使えるように、研修内容をOJTに落とし込むことが大切です。
実践を積み、上司にフィードバックを貰ったり、定期的にチームで共有したりすることで、研修内容が身につきやすくなります。
スキルの習得だけでなく価値観の変容も促す
研修は「スキルを伝える」「情報を与える」場だと思われがちですが、受講者側の価値観にもアプローチしなければ現場でスキルや情報を十分に活用できないケースが発生します。
研修をする場合には、受講者側の価値観の変容も同時に促しましょう。
例えば、「1on1ミーティングを成功させるため、傾聴スキルを身につけてほしい」というような研修の目的があったとしても、受講者側が「部下は上司の指示に従うべき」「自分のやり方が正しいので、部下が変わるべき」と思っていては、研修の意味がありません。
研修を行う前に、「自分が変わる必要があると自覚する」「無意識に持っていた考え方に気付く」ということが大切です。受講者が自身のもっている価値観に気づくためのワークを積極的に取り入れましょう。
できていないことを洗い出してもらう
受講者が研修は意味がないと感じる理由の一つとして、「自分はスキルがあるし、実践できている」と受講者が思い込んでいることも挙げられます。
例えば、受講者に「部下の話を聴き、アドバイスをしてあげられていますか?」と質問をすれば、「できている」「心がけている」という回答が得られるかもしれません。ですが、「部下と接していて、こうなったらいいのにと思うことはありませんか?」「時間がかかるなと感じている業務はありませんか?」と質問をすると、「何もありません」と答えられる人は少ないでしょう。
たとえば、次のような事前課題やワークを行ってできていないことを洗い出してみることをおすすめします。
- 現状の時間の使い方を把握する
- 自身の業務で上手くいっていることと上手くいっていないことを把握する
- 自身の判断の傾向から現状を把握する
このような洗い出しをする際は、事前課題や研修の冒頭で行うと良いでしょう。
また、シミュレーション形式で演習を実施し、普段の業務で無意識に表れている判断の傾向を理解することも効果的です。他の受講者や講師からのフィードバックを受けることで、自分では気づけなかった課題に気づけることもあるでしょう。
座学だけでない研修方法を取り入れる
「座学で講師の話を聴くだけ」の形式の研修は、飽きられてしまったり、ラジオのように聞き流しながら業務を行ったりする受講者もいるかもしれません。
研修では、座学だけでなくシミュレーション形式の演習や、グループディスカッションを行い、受講者が発言したり、行動をしたりする形式を取り入れることも大切です。
実際の業務に近い内容でロールプレイを行ったり、他の受講者と意見を出し合ったりすることで、聴くだけの研修よりも記憶に残りやすく、スキルが身につきやすくなります。
研修後のフォローを行う
研修は、「受けて終わり」では身につきません。研修で知識をつける目的は、得た知識やスキルを現場で発揮し、パフォーマンスを上げることです。
そのためには、研修後に継続的に研修の内容を実践したり、学習を継続したりしなければなりません。
継続的な学習や職場での実践を行なってもらうために、人事側や企業側で研修後のフォローを行うことが大切です。数か月後にフォローアップ研修を行う、OJTに組み込み、定期的に研修内容に沿った行動の成果を発表しフィードバックを行うなど、フォロー体制を整えておきましょう。
研修後にアンケートを実施し、次に活かす
研修後に研修の理解度や、研修の満足度などをアンケートで集計することで、次の研修の参考になります。
「毎年やっているから」というような事務的作業で研修を決めてしまっていると、研修の目的や研修内容の改善すべき点を見直せないまま研修が行われてしまい、効果が薄くなってしまいます。
研修後に受講者からのアンケートで「この部分が分かりにくかった」「ここはよくわかった」などの声を次の研修に活かすことで、より効率的に研修を行うことができるでしょう。
▼研修アンケートにおける、受講者コメントの扱い方については、以下の資料でご確認いただけます。
"意味のある"研修を行うなら、外部研修もおすすめ
研修には、自社内で行う方法と外部の講師を招き行う方法の二つがあります。
これまでお伝えしてきたポイントを踏まえて、”意味のある研修”を実施するには、ワークの内容を最適なものにブラッシュアップしたり経験豊富な講師をアサインしたりと、多大な労力がかかります。また、苦労して企画した研修がうまくいくかどうか、人事部内だけでは判断できず、苦労したほどの効果が得られないこともあります。そのような場合には、外部研修をおすすめしています。
研修を提供している企業は研修のプロであり、研修の進め方や受講者への効果的な伝え方はもちろん、効果測定や研修後のフォローも充実していることが多いです。
ここでは、外部研修を依頼するメリットについてご紹介します。
なお、外部研修については下記の記事でも分かりやすくご紹介しています。外部研修にお悩みの方はぜひご覧ください。
研修は外部委託すべき?委託している割合や委託先選定のポイント
外部研修を依頼するメリットについては下記の記事でも詳しく解説しています。合わせてご参照ください。
新入社員研修は内製か外部委託か?メリット・デメリットと外部委託先の選び方を解説
研修担当者の負担を減らすことができる
自社内で研修を行う場合、「研修計画の立案」「研修目的の現場とのすり合わせ」「講師の選定」「テキスト・スライドの作成」など、研修担当者には多くの業務が発生します。
そのため、研修後のフォローまで手がまわらなかったり、効果的な研修ができなかったりするということもあるでしょう。
研修を外部に依頼することで、研修担当者の負担を減らし、その分研修後のフォローや次回の研修の立案に時間を使うことができます。
テーマに沿ってプロから学ぶことができる
外部研修は、テーマや目的から研修を選べることがほとんどです。
例えば、ビジネス英会話の研修を行う場合、自社内で研修をするとなると「業務で英語を日常的に使用しており、かつビジネス英語を教えるのが上手い人材」が必要になりますが、そのような人材が居ない、または業務で忙しく研修をする時間がないということもあるでしょう。
このような場合、外部に研修を依頼することで、ビジネス英語を教えるプロである講師から学ぶことができるため、効果的な研修を行うことができます。
自社にはない新たな視点を獲得できる
自社で研修を行っていると、内容が固まってしまいがちで、新しいテーマを取り入れることが難しいケースもあります。
外部研修では、社内にはないスキルや思考方法を学ぶことができるため、今までになかった視点を獲得することが可能です。
受講者にとっても、社外の人が話すことで新鮮味があり、より真剣に聴く体制ができるため、効率的にスキルを身につけられるというメリットもあります。
アルーが行っている研修について
アルーでは、1400社以上の企業の研修を支援してきた実績があり、新入社員研修などの階層別研修はもちろん、次世代を担うグローバル人材やDX人材の育成も行なっています。
受講者のポジションや役職に応じた「階層別研修」、海外駐在員の育成に特化した「グローバル人材育成」、自社に必要なテーマごとにお選びいただける「テーマ別研修」、eラーニングプログラムと学習管理システム(LMS)をご用意しております。
階層別研修
階層別研修では、新入社員や中堅社員、管理職などポジションや役職に応じた研修プログラムをご用意しております。
階層別に必要になるマインドセットや、スキルを学ぶことができる研修をワンパッケージでご提供しています。
▼アルーの階層別研修については以下のページからご確認ください。
グローバル人材育成
アルーでは、海外現地法人400社以上への人材育成実績があり、アジア10か国での研修を実施しています。
受講者の国籍に関わらず、実務的かつ実践的なグローバル人材を育成できる研修を数多くご用意しております。
▼アルーのグローバル人材育成研修については、以下のページからご確認ください。
テーマ別研修
意味のない研修にしないためには、自社に必要なスキルや課題にあわせた研修を行うことが大切です。
アルーでは、1社1社の課題・テーマにあわせた研修を行うことが可能です。
▼よくある課題やテーマについての研修内容は、以下のページで詳しく確認して頂けます。
eラーニング・LMS
アルーでは、集合研修のみならず、eラーニングやオンライン研修にも対応しております。
また、インターネットやパソコン・スマートフォンで学習を行うeラーニングを実施する際のベースとなるシステム(LMS)である、「etudes」を提供しています。
約20年にわたる人材育成のノウハウが詰まった使いやすいLMSで、多くの企業様にご利用いただいております。
まとめ
「研修は意味がない」と言われる原因は、研修企画の段階での目的設定の甘さや、受講者のマインドセットができていないことなどが挙げられます。
効果のある研修を行うには、職場での実践までつなげやすくする仕組みづくりや、受講者の価値観の変容、できないことの洗い出しや研修方法の工夫が必要です。
意味のある研修を行うためには、外部研修も効果的です。アルーでは、実践を中心にした研修や経験学習を支援し、「わかる」から「できる」ようになるまでの定着を支援しております。
「研修は意味ない」という受講者の声にお悩みの人事担当者の方は、ぜひ一度アルーにご相談ください。