管理職候補の育成ポイント|候補者の選定と研修の事例
次世代の企業を担う管理職候補を育成することは、企業が持続的に成長していく上で極めて重要です。優秀な管理職候補を育成することで、マネジメント層の能力が底上げされ、より適切な意思決定やマネジメントができるようになるといった効果が期待できます。
しかし、管理職候補育成のノウハウを持っている企業は少なく、効果的な管理職候補の育成はなかなか行われていないのが現状です。この記事では、管理職候補の育成ポイントや候補者の選定、研修の事例などについて紹介します。
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管理職候補とは
管理職候補とは、将来の管理職を担う入社3年目~15年目の中堅社員のことを指します。将来的には会社の幹部として、部下の指導や部署の方針決定を担う重要な存在です。
管理職のパフォーマンスは部署全体、さらには会社全体の仕事の質にダイレクトに影響を与えるため、企業にとって管理職候補を育成することは極めて重要です。また、管理職にはプレイヤーとしての能力や部下の指導能力といった面で人それぞれに向き不向きがあるため、公平な基準を設けて管理職候補を抜擢することも求められます。
管理職候補となる人材
管理職候補となる人材は、中堅社員と呼ばれる層の社員です。
一般的に中堅社員とは、入社3年目~15年目で、主任や課長などの役職についていない社員を指します。
具体的には、企画業務などを行い、後輩の相談を受けるメンターの役割を担っている社員などが管理職候補としてあげられます。
ただし、中堅社員と呼ばれる層は企業によって異なり、「入社3年目~15年目」のように社歴で決める企業もあれば、「20代~30代まで」と、社員の年齢によって決める企業もあります。また、身につけているスキルなどを加味されることも多いでしょう。
中途社員であれば、前職の経験なども加味して中堅社員、または管理職候補とすることもあります。
管理職候補に求められる変化
管理職として活躍するためには、プレイヤーとして仕事を進める際とはまた異なる能力が求められます。そのため、管理職へ昇進する段階ではマインドセットや必要な能力を変化させることが必要です。プレイヤーから管理職へと昇進する中で対応が求められる、具体的な変化の内容について見ていきましょう。
「優秀な作業者」から「意志を持って仕掛ける人」へ
プレイヤーとして仕事を進めている段階では、仕事の目的や進め方を理解し、それを的確にこなすことが求められます。作業内容をミスなく実行し、手順の再現性を高めることで、「優秀な作業者」として評価されるのです。
一方で、管理職として活躍するためには、まず自分自身が周囲に指示を与えられる人材となる必要があります。作業者ではなく、自分の考えや思いを言語化して、表現することができる「意志を持って仕掛ける人」として活躍することが必要です。自分自身でゴールを設定し、周囲も巻き込みながら仕事を進めることが管理職として活躍するカギとなります。
「自己満足・自己陶酔者」から「プロフェッショナル」へ
入社後15年目以降の中堅社員ともなると、周囲に指示を与えながら仕事を進めることはもはや当たり前のことの一つとなります。入社後6年目〜10年目前後にあたる社員は、他者の基準を包含した揺るぎない自分なりの価値観を持ち、周囲の手本として活躍することが重要です。
目標達成に向かってチームを牽引していける人材になるためには、プロフェッショナル意識を獲得することが何よりも重要です。
若手社員の頃は自分の基準やこだわりだけで仕事をしてもうまくいくことも多いでしょう。しかし、周囲と関わることの多い中堅社員ともなると、他のメンバーや他部署、社外の関係者と合意形成をしながら仕事を進めていくことが求められます。
「自分は○○だから」という理屈では仕事が進まなくなることも多くなるため、他者の基準を含んだ自分なりの基準を持つ必要があります。
自らの専門性を磨くとともに自らの価値判断の軸を築き上げ、合理的な行動選択を行えるようになってもらいましょう。
「得意技にこだわる人」から「技の引き出しを増やす人」へ
入社後10年以上が経過したベテラン社員は、多くの場合係長や主査といった役職についています。
会社でのキャリアも積み重なってきたこのポジションでは、どうしても過去の成功体験に固執してしまいがちです。しかし、これまでやったことのない新しいやり方を取り入れたり、未経験の範囲に取り組んだりすることは、継続的な成長の上で欠かせません。仕事の幅をさらに広げるように心がけてもらいましょう。
管理職候補がなかなか育たない背景
誰もが管理職候補になれるわけではありません。マネジメント能力やコミュニケーション能力など、プレイヤー時代とは一味違った能力が求められるため、なかなか優秀な管理職候補が育たないと頭を悩ませる企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
優秀な管理職候補が育たないことには、必ず理由があります。管理職候補の育成が難しい背景について解説します。
ステップアップのイメージがつかめていないことが多い
これまで管理職として働いた経験がない社員の場合、「管理職」というポジションがどのような役割を担っているのかが把握できていないことが多いです。管理職候補が育たない背景として、管理職となったあとのステップアップのイメージがつかみきれていないという場合があります。
管理職に昇進した後の道筋が見えていないと、どうしても管理職として活躍することに不安を覚えたり、モチベーションが低下したりしてしまいがちです。組織構成や部署間の関係などについて理解を深めてもらうなど、管理職となった後のステップアップのイメージを膨らませてもらいましょう。
チームとしての視野・視座が不足している
これまでプレイヤーとして働いてきた社員の中には、チーム全体を俯瞰的に見る習慣がついていない人もいるでしょう。特に十名〜数十名を超える大きな組織の中で働いてきた社員は、無意識のうちに姿勢が受け身になってしまいがちです。
個人としては意欲があり、十分な能力を備えている社員であっても、チームとしての視点や視座が欠けていると優秀な管理職候補とはなりません。個人プレーではなく、チームとして成果が出せるようになるためにはどうすればよいのか、という点を考えてもらう必要があります。
マネジメント経験が不足している
先述したように、管理職として活躍するためにはプレイヤー時代とはまた異なる能力が求められます。特にマネジメントについては、優秀な社員であっても未経験なことが多く、どのようにメンバーをマネジメントすればよいのか頭を悩ませてしまうものです。
管理職候補が育たない背景として、社員のマネジメント経験が全体的に不足しているということも挙げられます。まずは数名程度の小さな組織でマネジメント経験を積んでもらう、あるいは研修を実施することでマネジメントに関する知識を補うといった対策が必要です。
業務を完遂する経験や実績が不足している
プレイヤーとして働く場合、基本的には与えられた仕事を的確にこなすことが重要視されます。上司が大きなタスクを分割した状態で部下へ任せるため、必然的に部下は仕事の全体像を把握する機会が多くありません。
管理職候補が育たない原因には、業務全体を完遂する経験が不足しているというのもあるでしょう。管理職となる前に一度業務の全体像を把握してもらい、業務計画、タスクの分解やスケジュール設定、関係部門との合意・調整など、幅広い業務を経験してもらうなど、業務に対する幅広い知識や実績を積んで視野を拡げてもらうことが有効です。
管理職へのマイナスイメージがある
社員の中には、管理職に対してマイナスイメージを持っている人も少なくありません。
管理職になった後の業務量の増加や、責任の重さなどから、管理職になりたくないと考える人も多いようです。
社員が管理職になりたがらないことにお困りの方はこちらの記事もご覧ください。
『社員が管理職になりたくないと思う理由と人事部が行うべき対応』
社員が管理職に対してマイナスイメージを抱いている場合、優秀な管理職候補となることは難しいです。社員に対して管理職のロールモデルを示す、管理職になることのメリットを提示するなど、管理職になることへの不安を吐き出すなど、管理職に対するマイナスイメージを払拭するのがよいでしょう。
管理職候補育成の流れ
管理職候補は、会社の将来の舵取りを担う重要な存在です。プレイヤーとして活躍している段階からスムーズに管理職の仕事へとステップアップしていくためには、管理職候補の段階で適切な教育を行うことが欠かせません。
管理職候補の育成には、下記のようなステップが存在します。
- 誰が育成を進めるかを決定する
- 現在の管理職・経営陣にヒアリングをする
- 管理職候補となる人材を選定する
- 管理職候補の現状を理解する
- 必要となるスキルや目標を明確にする
- 目標に合わせた研修内容を選定する
- 研修後のフォロー・効果測定をする
誰が育成を進めるかを決定する
管理職候補を育成する際には、誰が管理職の育成を進めるのかをあらかじめ決めておく必要があります。管理職候補を育成する際は、まず管理職の育成に適任な人物を選定しましょう。
多くの場合、管理職としての経験が豊富なベテラン社員が適任です。一方で経験豊富なベテラン社員は日常業務を多く抱えていることも多く、育成に時間を割くことが負担となってしまうこともあります。現場の負担なども見ながら、管理職育成に適任な人材を調整していきましょう。社内に適任者がいない、適任者が忙しく育成まで手がまわらないという場合には、外注も視野にいれて決定していきましょう。
▼アルーの管理職候補のための研修に関してはこちらのページをご覧ください。
現在の管理職・経営陣にヒアリングをする
管理職の育成を進める人材を選定したあとは、現在管理職として働いている社員や経営陣にヒアリングを行いましょう。ヒアリングでは、例えば以下のような内容を聞き出します。
- 実際の業務では、どのようなことを行っているのか
- そのポジションに求められる能力はどのようなものか
実際に管理職を務めている社員に意見を聞くことで、組織図だけでは見えてこなかった業務の実態や、管理職に必要な能力が見えてくることも多いです。
管理職候補となる人材を選定する
管理職へのヒアリングを実施したら、管理職候補となる人材の選定に進みましょう。管理職にはそれぞれのポジションに適正があるため、時間をかけて慎重に見極めることが大切です。
一般的には、日頃から高い成果を挙げているハイパフォーマーが管理職候補として選定される傾向にあります。ただし、本人の意欲や、周囲からの信頼といったパフォーマンス以外の要素も重要です。一つの視点に偏らず、幅広い観点から管理職への適性を見極めるようにしましょう。
管理職候補の現状を理解する
管理職候補となる社員を選定したあとは、いよいよ管理職候補に対して教育を行うことになります。しかし、適切な教育を実施するためには、まず管理職候補の現状を理解することが重要です。管理職候補の教育に移る前に、必ず管理職候補自身へのヒアリングや周囲へのヒアリングを通じて、社員の現状を把握するように心がけましょう。
この段階で現在のパフォーマンスや周囲との関係構築の状況などをしっかりと把握することで、管理職候補に対して行うべき研修の内容も見えてきます。
必要となるスキルや目標を明確にする
研修内容を考えるためには、「管理職研修を実施する目的はなにか?」という研修のゴールを決める必要があります。具体的な研修内容の策定に移る前に、管理職として活躍するために必要な能力やスキルをここで整理しておきましょう。
マネジメント能力はもちろん重要ですが、部下の話を親身になって聞くコミュニケーション能力や、トラブル対応などの実務的な能力も重要な要素です。現在の管理職に対して行ったヒアリングの内容もヒントになります。
▼管理職が身につけるべきスキルについてはこちらのページも参考にしてください。
目標に合わせた研修内容を選定する
ここまで洗い出した管理職候補の現状や管理職に求められる能力を参考にしながら、管理職候補に対して行う研修内容を選定しましょう。管理職への研修としては、座学によるマネジメント能力の研修はもちろん、ティーチングなどのコミュニケーション能力の研修、問題解決などの思考力の研修などもよく実施されます。
管理職候補が既に一定のマネジメント経験を持っている場合は、「副部長」「係長」といったポジションへ抜擢して管理職の仕事を学んでもらうのも手です。管理職候補の現状や育成したい能力に合わせて、柔軟に検討しましょう。
▼アルーの管理職候補のための研修について詳しくはこちらのページをご覧ください。
研修後のフォロー・効果測定をする
管理職研修に限ったことではありませんが、研修を実施したままにしておいては効果が十分に上がりません。管理職候補に対して研修を実施した後は、必ずフォローや効果測定を行うようにしましょう。
具体的には、管理職研修の前後でスキルテストを受験してもらったり、研修についてのヒアリングを行ったりといった方法が考えられます。また、研修から時間をおいて研修内容の振り返りを行う「フォローアップ研修」を実施するのもよいでしょう。
管理職候補育成のためのポイント
ここまで、管理職候補の具体的な手順について解説してきました。しかし、管理職候補の育成が形式的なものになってしまっては意味がありません。実際に管理職候補の教育を実施する際には、効果を発揮するためのいくつかのポイントが存在します。管理職候補育成のための代表的なポイントを6つ、解説します。
管理職の仕事をOJTで体験させる
管理職には、トラブル対応やイレギュラー対応など、臨機応変な意思決定が求められます。その場で考えて判断を行うことが多いため、このような能力はマニュアルや座学の研修だけではなかなか身につきません。
管理職の育成を効果的に行うためには、管理職の仕事をOJTで体験してもらうのが効果的です。実際に管理職として働いている社員に仕事の進め方を見せてもらいながら、業務をこなす上で必要な細かい手順やコツなどを学んでもらうとよいでしょう。
自身の強み・課題を自覚させる
優秀な管理職候補を育成するためには、管理職自身の強みや課題を自覚してもらうということも重要です。管理職候補となる社員に「自分自身にはどのような特徴があるのか」という点を客観的に認識してもらうことで、実際のマネジメントもスムーズに進みます。
自身の強みや課題を把握してもらう際には、技術的な観点はもちろんのこと、「粘り強いか」「プレッシャーに強いか」「自分の意見を客観視し他者の視点を受け入れられるか」といった心理的な観点も忘れてはいけません。技術面と心理面をバランス良く把握してもらうように心がけましょう。
管理職候補の上司が育成に関わる
管理職候補となる人材が継続的に成長していくためには、自分自身にあった課題やサポートを受けることが大切になります。管理職候補となる社員の上司は、管理職候補の能力や特徴などをよく把握しているものです。
管理職候補をOJTで育成する際には、本人の上司にも育成に関わってもらうとよいでしょう。若手社員や中堅社員を近くで見ている存在でもあるため、相手に合わせた業務のアサインを行うことができます。また、日頃から接している機会が多いため信頼関係も構築されていることが多く、研修がスムーズに進むでしょう。
管理職候補育成がなぜ行われているかの意義付けをする
いくら効果的な研修を実施したとしても、研修自体の意義を管理職候補が理解していないと効果が半減してしまいます。管理職候補となる人材に研修の意義を理解してもらうことは、本人のモチベーションを向上させる上でも重要です。
管理職候補の育成を行う際には、必ず管理職候補の育成を行っていることの意義や目的を伝えるようにしましょう。本人に「自分は期待されている」という自覚を持ってもらうことで、より一層自発的な成長を促すことにもつながります。
個人差に目を向けつつ研修を行う
管理職候補となる社員も、一人ひとり違った人間です。これまでの経験やスキル、生まれつきの性格などによって、それぞれの社員には得手不得手があります。
管理職候補の育成を実施する際には、個人差に目を向けた研修を実施することが重要です。特に、マネジメント能力やコミュニケーション能力は社員間によって差があることも少なくありません。紋切り型の研修とならないよう、管理職候補となる社員それぞれの能力をきめ細やかに把握し、研修を実施するようにしましょう。
多様な学習手段を検討する
管理職候補となる優秀な社員の中には、既に多くの日常業務を抱えている場合が多いです。研修の実施が社員にとって過度な負担とならないよう、研修内容によって多様な学習手段を提供することもポイントです。
例えば、「基本的な知識を座学で身につけた後、OJTによる実践的な研修を行う」「eラーニングを用いて、スキマ時間で学習を進めてもらう」といったものが挙げられます。最近ではeラーニングと集合研修を使い分ける「ブレンディッドラーニング」の手法を取り入れる企業も多いです。研修内容に合わせ、多様な学習手段を確保するようにしましょう。
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アルーの管理職候補育成の事例
アルー株式会社は、人材育成を長年、専門に手掛けてきた企業です。グローバル人材育成を始めとした各種研修の実績を数多く持っています。
中でも管理職候補の育成においては、大手製造業や大手金融・保険・賃貸業などにおいて実施実績があります。アルーが実施した管理職候補育成の事例について紹介いたします。
大手金融・保険・貸金業の研修導入事例
大手金融・保険・賃貸業を営んでいたB社では、「中堅社員に管理職の補佐を任せたい」といった要望を抱えていた他、「受講生の研修に対する意欲が低い」という課題がありました。
そこで、アルーではまず「ケースワーク」と「自身の課題や強みを上司とすり合わせる」という2つの事前課題を実施。その後、「メンバーへのコミュニケーション」や「対立状況の乗り越え方」といったトピックを扱い、研修後にはフォローアップも行いました。研修3ヶ月後に成果を測定したところ、「全体最適を考え、周囲を巻き込んだ仕事ができている」という結果が出ています。
詳しくは「周囲を巻き込むリーダーシップを身に付ける~大手金融・保険・貸金業の研修導入事例」をご確認ください。
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