人材育成に活用できるフレームワーク8選|活用のポイントや注意点を解説
人材育成を成功させるためには、HPIやカッツモデル、カークパトリックモデルを始めとしたフレームワークを活用することが効果的です。
しかし、フレームワークの使い方を誤ってしまうと、人材育成が失敗してしまう可能性もあります。
この記事では、人材育成に活用できるフレームワーク8選や、フレームワークを活用する際のポイントを解説します。
人材育成にお悩みの人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
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人材育成フレームワークとは
人材育成フレームワークとは、従業員の能力やスキルの向上を目的に使われるフレームワークです。人材育成の課題発見や課題解決策の計画・実行・評価のガイドラインや枠組みを利用することで、より効率的に人材育成施策を進めることができます。
自社の課題に適した人材育成フレームワークを用いることで、従業員の成長を促し、組織全体を成長させることができます。
人材育成に活用できる代表的なフレームワーク8選
人材育成に活用できるフレームワークは、主に以下の8つです。
- HPI
- カッツモデル・カッツ理論
- カークパトリックモデル
- 氷山モデル
- 経験学習サイクル
- 思考の6段階モデル
- 70:20:10フレームワーク
- SMARTの法則
- 経験学習サイクル
これらのフレームワークは、特徴や活用しやすい場面がそれぞれ異なるため、場面にあったものを選択することが大切です。8つのフレームワークについて詳しく解説します。
HPI
HPI(Human Performance Improvement)は、経営計画と連動した人材育成を立てる際に役立つフレームワークです。組織の課題解決を実現するためにはどういった人材が必要かといった観点から、具体的な育成施策を洗い出していきます。
HPIを活用する際には、まず具体的な経営目標を設定します。経営目標としては、例えば「5年後までに売上高1億円を達成する」などの目的が考えられます。
そのあと、経営計画を実現するためには営業職や開発職、マーケティング職にどのような能力が必要かを洗い出しましょう。
最後に、リストアップした能力を身につけさせるための人材育成施策を企画・立案します。
カッツモデル・カッツ理論
カッツモデルは、ハーバード大学教授のロバート・カッツ氏が1955年に提唱した、マネージャーに必要なスキルを体系化したフレームワークです。
カッツモデルで提唱されているマネージャーに必要な能力は以下の3つです。
- コンセプチュアルスキル……起こっている問題の本質を見極める力
- テクニカルスキル……実際の業務を遂行する力
- ヒューマンスキル……信頼関係を築くための対人関係能力
カッツモデルでは、マネジメントが上位になるにつれて、必要とされるスキルがテクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルの順番で推移していくとされています。
各スキルについて詳しくは以下のページをご覧ください。
テクニカルスキル:『テクニカルスキルとは?3つの種類一覧と具体例・向上させるコツを解説 』
ヒューマンスキル:『【研修事例】ヒューマンスキルとは?8つの要素一覧と高める方法』
コンセプチュアルスキル:『コンセプチュアルスキルとは?高め方や具体例を一覧でわかりやすく解説』
70:20:10フレームワーク
70:20:10のフレームワークは、社員の成長に必要な要素の割合を端的にまとめたフレームワークです。具体的には、以下の3つの要素が70:20:10の割合で必要だとされています。
- 70%……社員が実際に取り組む業務や、そこから得られる直接経験
- 20%……他社から受けるフィードバックやアドバイス
- 10%……OFF-JTや読書など、知識のインプット
70%に該当する直接経験では、社員の成長にはどういった経験が必要なのかを考慮することが大切です。20%のフィードバック部分は、内省を促すスキルを持った社員に伴走させるよう心がけましょう。10%のOFF-JTに関しては、必要な時期に必要な内容を学ばせるようなプログラムを組むことが大切です。
カークパトリックモデル
カークパトリックモデルは、アメリカの経済学者であるカークパトリック氏によって提唱された、人材育成の効果測定のためのフレームワークです。
カークパトリックモデルでは、以下の4つの観点から人材の効果測定を行うことが有効であるとされています。
- レベル1……反応(Reaction)
- レベル2……学習(Learning)
- レベル3……行動(Behabior)
- レベル4……結果(Result
人材育成施策は、往々にしてレベル3の「行動」の段階が壁となります。
研修で知識を身につけさせるだけでなく、行動変容までつなげることを意識した研修設計が大切です。
氷山モデル
氷山モデルは、人材の特性を「見える部分」と「見えない部分」に分けて捉えるフレームワークです。
社員は、業績や成果、スキルといった目に見える部分以外にも、さまざまな特性を持っています。例えば仕事に対するモチベーションや適性、資質や価値観などは、なかなか普段の仕事では目に見えづらい部分です。氷山モデルでは、こうした要素を含めて人材を捉えます。なお、適用する対象となる社員の職種によって何を「見える部分」「見えない部分」に据えるかは異なります。
思考の6段階モデル
思考の6段階モデルは、教育学者であるベンジャミン・ブルーム氏が提唱した、教育を実施する際の段階を明確化したフレームワークです。 思考の6段階モデルでは、以下の6つの段階に沿った能力開発が必要だとされています。
レベル |
内容 |
意味 |
レベル1 |
知識 |
事実や言葉、方法を知っているか |
レベル2 |
理解 |
内容を理解し、自分の言葉で説明できるか |
レベル3 |
応用 |
知識を新たな場面でも活用できるか |
レベル4 |
分析 |
物事の具体的な部分について説明できるか |
レベル5 |
統合 |
具体的な事象から教訓を得たり、一般化できるか |
レベル6 |
評価 |
情報の価値を正しく判断できるか |
こうした思考の6段階は、社員の成長を引き出すための基本プロセスとなります。人材育成のプログラムを考える際には、どの段階を中心にアプローチするのかを決めましょう。
SMARTの法則
SMARTの法則は、目標設定の際に意識すべき5つのポイントを整理したフレームワークです。
SMARTの法則においては、目標に以下のような性質が求められるとされています。
- Specific(具体的)……例)朝8:00時に起きて顔を洗う
- Measurable(測定可能)……例)サッカーのリフティングを100回連続でできる
- Attractive(魅力的)……例)心から取り組みたいと思えるような内容
- Realistic(現実的)……例)1日20回、「ありがとう」と他者に言う
- Time-bound(期限がある)……例)宿題を3日後の13:00までに提出する
SMARTの視点を意識すれば、効果的な人材育成の目標が設定できます。
なお、Rの部分については「Reasult-oriented(成果に基づいている)」が用いられることもあります。
経験学習サイクル
経験学習サイクルとは、以下の4つのステップを繰り返して成長を促すフレームワークです。
- 経験する……仕事に取り組み、経験を積む
- 内省する……取り組んだ結果を振り返る
- 教訓化する……内省で得た振り返りの内容から、次につながる教訓を得る
- 試行する……教訓の内容をもとに、行動に変化を加えて試してみる
経験学習サイクルは、実践を通じて能力を伸ばす際に最適なフレームワークです。
経験学習サイクルを詳細や実践する際のコツ、具体的な施策例は以下の記事で詳しく解説しています。
『経験学習サイクルとは?実践のコツや具体的な施策例』
人材育成にフレームワークを活用するメリット
人材育成にフレームワークを活用すれば、人材育成が効率化したり、目標までのステップがわかりやすくなったりするメリットがあります。人材育成にフレームワークを活用するメリットを詳しく見ていきましょう。
人材育成を効率的に行える
フレームワークを活用することで、人材育成を効果的に行えるようになります。
人材育成に取り組む際には、さまざまな課題に直面するものです。そうした際にフレームワークを活用すれば、現場の課題や状況を素早く整理できます。
また、フレームワークを活用すれば、現在抱えている課題に対してどういったアプローチが有効なのかも見えやすくなります。そのため、ゼロから考えるよりも問題解決に向けた効果的なアプローチが取りやすくなるでしょう。
目標までのステップがわかりやすくなる
目標までのステップがわかりやすくなる点も、人材育成にフレームワークを活用するメリットの一つです。
人事部内でフレームワークに基づいた人材育成のプロセスを共有すれば、メンバーは「自分たちが今何をすべきなのか」が行動レベルで把握しやすくなります。
その結果、メンバーのモチベーションが向上したり、役割認識が醸成されやすくなったりするのです。
また、部署間でフレームワークを共有すれば、それぞれの部署の抱えている課題も見えやすくなります。その結果、目標達成に向けた戦略が立てやすくなるでしょう。
人材育成にフレームワークを活用する流れ
人材育成にフレームワークを活用する際には、以下の6つのステップで進めていきましょう。
- 人材育成の状況確認
- 経営目標とのすり合わせ
- フレームワークの選定
- 人材育成計画の策定
- 人材育成に関する全体周知
- 人材育成の実施と定期的なブラッシュアップ
人材育成にフレームワークを活用する流れをステップごとに詳しく解説します。
人材育成の状況確認
まずは、人材育成の状況確認を行います。
現場へのヒアリングなどを通じて、どういった人材育成が求められているのかを明確にしましょう。管理職に対して、人材育成の現状を聞く機会を設けるのもおすすめです。
また、現在どういった人材育成施策が運用されているのかも把握しましょう。OJTやeラーニングなども含めて、すべての人材育成施策を洗い出すことがポイントです。
ここでしっかりと現状分析をしておくことで、質の高い人材育成体系の構築につながります。
経営目標とのすり合わせ
次に、経営目標とのすり合わせを行い、人材育成の方向性を決めていきます。
人材育成の最終的な目標は、経営目標を実現できるような人材を社内に増やすことです。
経営目標で掲げられている具体的な数値目標やKPIを参照しながら、どういった人材が求められているのかを明確にしましょう。
また、必要に応じて経営層と直接すり合わせを行う機会を設けることもおすすめです。施策に取り掛かる前に育成の大枠を共有しておけば、方向性の不一致を防ぐことができます。
フレームワークの選定
経営目標とのすり合わせが終わったら、人材育成に活用するフレームワークの選定を行いましょう。
フレームワークにはそれぞれ一長一短あるため、どういったフレームワークを活用することが有効なのかを見極めることが大切です。自社の現状と理想を分析し、最適なものを選択しましょう。
また、フレームワークを使うこと自体が目的化してしまわないように注意してください。適するフレームワークが見つからない場合には、無理に活用しないという判断も必要です。
人材育成計画の策定
フレームワークの選定が完了したら、次に人材育成計画の策定を進めていきます。
人材育成計画は、人材育成の目的を参考にしながら決めていきます。
前のステップで明確化した人材育成の方向性を参考にしながら、以下の観点から人材育成の進め方を整理していきましょう。
- 人材育成の対象は誰か
- 人材育成の実施時期はいつか
- 人材育成の実施期間はどれくらいか
- それぞれの施策の目的やゴールは何か
時期や対象などの基本事項を漏れなくリストアップして、人材育成を具体化していくことがポイントです。
人材育成に関する全体周知
人材育成の具体的な計画が定まったら、全体周知を進めていきます。
社内報や集会などの機会を活用して、人材育成施策の概要を社内周知しましょう。人材育成がどのように進められているのかを周知しておけば、社内からの協力も引き出しやすくなります。
また、管理職経由で周知を進めるのもおすすめです。現場をよく理解している管理職に人材育成の内容を説明してもらうことで、施策に参加してもらう前向きな姿勢を形成しやすくなります。
人材育成の実施と定期的なブラッシュアップ
最後に、人材育成を実施して、定期的なブラッシュアップを行いましょう。
人材育成を実施する際には、様子を見ながら適宜必要なフォローアップ施策を実施します。万が一計画通りに進まないことがわかった場合には、スケジュールの見直しも必要です。
施策を実施したあとには、振り返りテストや事後アンケートなどの結果を見ながら施策のブラッシュアップを進めます。研修を一度実施して終わりにするのではなく、継続的に内容を改善する姿勢が大切です。
人材育成でフレームワークを活用するポイント
人材育成でフレームワークを活用する際には、目的に合ったフレームワークを選定することがポイントです。また、PDCAを回すように意識したり、階層や部署ごとに使い分けたりするのもよいでしょう。
人材育成でフレームワークを活用する際に意識しておきたいポイントを解説します。
目的に合ったフレームワークを選定する
フレームワークを活用する際には、目的に合ったフレームワークを選定することがポイントです。
フレームワークにはさまざまな種類がありますが、それぞれに適した場面や目的があります。例えばマネージャーの育成にはカッツモデルが役立ちますし、人材育成の全体像を策定する際にはHPIが有効です。効果測定には、カークパトリックモデルを適用することがよいでしょう。
それぞれのフレームワークの特徴をおさえつつ、状況にあったものを活用してみてください。
PDCAを回す
PDCAを回すことも、フレームワークを活用する際のポイントです。
フレームワークは、一度活用したら終わりではありません。
一度フレームワークに沿った人材育成施策を実施したあとは、PDCAサイクルを通じて継続的に施策を改善することが必要です。
なお、効果測定の際には確認テストの結果だけでなく、研修実施後の行動変容までモニタリングするようにしてください。長い時間をかけて受講者を追跡することで、研修の潜在的な効果が見えてきます。
階層・部署で使い分けをする
フレームワークを活用した人材育成を進める際には、階層や部署によって使い分けることを意識してみてください。
先程も触れたように、フレームワークには適した階層や部署があります。
例えばマネージャーの育成を想定したフレームワークであるカッツモデルを無理やり現場社員へ適用しても効果は出しづらいです。
すべての部署や階層で同じフレームワークを用いるのではなく、対象者によって柔軟に使い分けることを意識してみてください。
人材育成にフレームワークを活用する注意点
人材育成にフレームワークを活用する際には、いくつかの注意点が存在します。
こうした注意点を意識しておかなければ、フレームワークの活用が逆効果になってしまう可能性も否めません。
人材育成にフレームワークを活用するときの注意点を解説します。
社員の成長は中長期的に見る
フレームワークを活用する際には、社員の成長を中長期的に見るよう意識してください。
人材育成施策は、効果が目に見える形で現れるまでに時間がかかる場合も多いです。
効果測定には、短くても数ヶ月、長ければ半年〜1年程度を見ておきましょう。
また、人材育成では「一度は行動変容が起きたように見えたが、時間が経てば元に戻ってしまった」という失敗も度々起こります。
短期的な成果ばかり見てしまった場合、こうした失敗を見逃してしまいがちです。すぐに成果が出ないからといって焦らずに、中長期的な視点で捉えてください。
フレームワークに固執せず、柔軟に対応する
フレームワークを活用した人材育成に取り組む際は、フレームワークに固執しないよう注意が必要です。
フレームワークを使うこと自体が目的になってしまうと、本来は効果的でない場面でもフレームワークを無理やり当てはめようとしてしまいます。その結果、個人の工夫や柔軟な発想が抑圧されてしまう結果になりかねません。
フレームワークを活用する際には、あくまでも思考を組み立てるための一つのツールだと捉え、本当にフレームワークの活用が有効な場面なのかをよく検討してみてください。
経営目標からぶれないように実施する
経営目標からぶれないように実施することも、フレームワークを活用する際のポイントです。
人材育成は、経営目標に沿って進めることが求められます。しかし、フレームワークを活用することで頭がいっぱいになってしまうと、つい本来の目的を見失った人材育成に取り組んでしまいがちです。
経営目標から離れた人材育成を進めてしまった場合、効果が上がりにくかったり、組織としての方向性がバラバラになってしまったりします。フレームワークを使う際は、経営目標を常に意識しましょう。
人材育成のご相談ならアルーにお任せください
人材育成のご相談なら、ぜひアルーへお気軽にお寄せください。
アルーは人材育成を専門に手掛けている企業で、フレームワークを活用した人材育成の支援も積極的に実施しています。アルーでは、研修の企画段階から丁寧に伴走することが特徴です。貴社にあった最適な研修プランを提案できるため、研修の効果を最大化することができます。
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