コアコンピタンスとは?意味・ケイパビリティとの違い・分析方法・事例を解説
企業の競争力を高める上で大切な概念として、コアコンピタンスが挙げられます。企業がコアコンピタンスを確立すれば、他社に真似されないような独自性の高いビジネスを展開し、競争力を確保することが可能です。
この記事では、コアコンピタンスの定義や分析方法、コアコンピタンスに必要な3要件などを解説します。コアコンピタンスを確立した企業事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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コアコンピタンスとは
コアコンピタンスとは、他社に真似できない企業の中核となる能力のことです。もともとはアメリカの経営学者であるC.K.プラハラードとゲイリー・ハメルによって提唱されました。
コアコンピタンスを確立すれば、他社に真似されないような、独自性の高いビジネスで市場優位性を確保することが可能です。コアコンピタンスを重視した経営スタイルである「コアコンピタンス経営」も改めて注目を浴びており、マーケティングや経営を考える上で欠かせない概念となっています。
コアコンピタンスとケイパビリティの違い
コアコンピタンスとよく似た言葉の一つが、「ケイパビリティ」です。どちらも他社との競争を優位にするという点では共通していますが、注目している対象が異なります。
ケイパビリティとは、企業が持つ組織的な能力や、企業にある固有の組織的な強みのことを指しており、組織そのものへフォーカスしています。一般的には、組織開発の文脈でよく用いられる言葉です。
一方でコアコンピタンスは企業の競争力の源泉となる技術にフォーカスしています。フォーカスしている対象が組織なのか、それとも技術なのかという違いをおさえておきましょう。
コアコンピタンス経営とは
コアコンピタンス経営とは、自社の強みとなる技術力を武器に競争優位性を築いていく経営手法のことです。
コアコンピタンス経営を行う際には、まず自社の中核となる技術を洗い出します。その後、洗い出した技術を分析しながら、他社が真似しづらい製品やサービスを展開し、市場優位性を確立していくことが特徴です。中長期にわたって安定的な利益を築きやすくなる、複数の商品や分野にまたがって事業展開しやすくなるといったメリットがあります。
コアコンピタンスに必要な3要件
ある技術が企業のコアコンピタンスとなるためには、以下の3つの要件を満たすことが必要です。
- 顧客に利益をもたらす
- 競合相手に真似されにくい
- 複数の商品・市場に推進できる
これら3つの要件を満たすことで初めて、技術は企業のコアコンピタンスとして市場優位性を発揮できます。コアコンピタンスに求められる3つの要件を解説します。
顧客に利益をもたらす能力
コアコンピタンスに求められる一つ目の要件は、顧客に利益をもたらすことです。
どんなに他社より優れた技術を持っていても、顧客へ利益をもたらさなければ意味がありません。なぜなら、顧客へ利益を提供できなければ、技術は市場価値を持たず、自社の競争力向上に貢献できないからです。
顧客に利益をもたらすような技術であれば、その技術を用いた付加価値の高い製品やサービスを生み出すことができます。その結果、自社の売り上げ向上につながり、市場で優位性を確保できるようになるのです。
競合相手に真似されにくい能力
競合相手に真似されにくいという点も、コアコンピタンスに求められる要件の一つです。
企業が高い技術力を持っていたとしても、それが簡単に他社に真似されてしまっては利益を生み出すことができません。模倣性の高い技術に依存した製品やサービスを展開した場合、その市場はすぐに価格競争になってしまうでしょう。
競合他社を寄せ付けない圧倒的な技術力を持つことで、長期にわたって優位性を確保できるコアコンピタンスを確立できるのです。
複数の商品・市場に推進できる能力
コアコンピタンスに求められる要件として、複数の商品や市場に推進できる能力であることも挙げられます。
高い技術力を持っていたとしても、それが特定の製品やサービスにしか応用できなければ、企業全体の競争力向上には寄与しづらいです。最近は外部環境の変化が激しいVUCAの時代とも言われており、特定の製品やサービスに依存することの経営リスクは高まっています。複数の市場にまたがって展開できるような汎用性の高い技術を持つことで、企業の競争力向上につながるコアコンピタンスを確立できるのです。
コアコンピタンスを判定する5つの視点
企業にとって価値のあるコアコンピタンスを確立するためには、以下の5つの視点が必要です。
- 模倣可能性
- 移動可能性
- 代替可能性
- 希少性
- 耐久性
コアコンピタンスを見極める際には、今から解説する5つの視点を意識してみてください。コアコンピタンスに必要な5つの視点を解説します。
1.模倣可能性
コアコンピタンスを考える際には、模倣可能性という視点が必要です。
模倣可能性とは、保有している技術や特性が、簡単に真似されるものかどうかという視点のことを指します。特に、同じ分野で競合している企業から真似されやすい場合には注意が必要です。
模倣できる可能性が低ければ、独自性が高く、企業にとって有用なコアコンピタンスを確立できます。一方で模倣可能性が高ければ、競合が同様の製品やサービスを展開することが考えられるため、市場を独占するような優位性を確立するのは難しいでしょう。
2.移動可能性
移動可能性という視点も、コアコンピタンスを考える上で重要です。
移動可能性とは、簡単に言えば技術の汎用性のことです。一つの技術が製品やサービス単体で完結せずに、他の分野にも応用できるかどうかという視点を指します。
移動可能性が高い技術は、一つの分野だけで完結しないため、利益を大幅に増やすことができます。また、特定の市場に依存することなく、より強靭な競争力を持つことも可能です。
3.代替可能性
コアコンピタンスを考える上で必要な視点として、代替可能性も挙げられます。
代替可能性は、他に替えの効かない、自社企業にしかない能力かどうかという視点のことです。代替可能性が低いと、「このサービスや製品は自社でなければならない」という理由が生まれるため、他社と競合する必要がなくなります。
例えば、ある製品と、自社が展開している他製品との間で強力な連携機能を提供するのは、代替可能性を低くする戦略の一例です。他社の製品では実現できないようなユーザー体験を提供することで、「自社でなければならない」という理由を生み出し、競争優位性を確保できます。
4.希少性
希少性も、コアコンピタンスを考える上で必要な視点の一つです。
コアコンピタンスにおける希少性とは、技術や特性がユニークであるなど、他社にはなかなか存在しないような珍しさがあることを指します。どんなに優れた技術を保有していても、競合が多ければいつかはシェアが入れ替わる可能性が高いです。希少性の高い技術は他社になかなか存在しないため、長期にわたって優位性を確保することにつながります。
5.耐久性
コアコンピタンスを考える際には、耐久性も考慮しましょう。
耐久性とは、長期にわたって他社の追随を許さない競争優位性のことです。耐久性が高い技術であればあるほど、長いスパンで利益を生み出しやすくなります。時代の変化や人々の需要の変化、生活スタイルの変化にも対応できるような技術は、耐久性の高いコアコンピタンスになりうるでしょう。
ただし、最近ではビジネス環境の変化が激しくなっており、市場の変化も見通しづらくなっています。こうした環境でも耐久性の高いコアコンピタンスを確立できればベストですが、長期にわたって安定的な利益を築く技術の確立は難しくなっている点に注意が必要です。
自社のコアコンピタンスの分析方法
自社のコアコンピタンスを分析する際には、まず強みの洗い出しから始めましょう。その後、強みの評価を行い、最後にコアコンピタンスとなりうる強みの絞り込みを行います。
ここからは、自社のコアコンピタンスの分析方法について詳しく解説します。
1.強みの洗い出し
コアコンピタンスを分析する際には、まず強みの洗い出しから始めましょう。自社の保有している資源や能力など、自社の強みになりうる要素をさまざまな角度から集めます。
このとき、SWOT分析やPPM分析といったフレームワークを活用するのもおすすめです。マーケティングや経営分析に役立つフレームワークを活用することで、さまざまな観点を考慮した論理的でバランスのよい分析を行うことができます。
2.強みの評価
次に、洗い出した強みを一つずつ評価していきましょう。
強みの評価を行う際には、前述した以下の5つの視点を考慮することが重要です。
- 模倣可能性
- 移動可能性
- 代替可能性
- 希少性
- 耐久性
それぞれを5点満点で評価した表やレーダーチャートなどを用意して、コアコンピタンスになりうる要素を整理することもよいでしょう。また、記事の前半でも解説したコンピタンスに必要な3つの条件を満たしているかどうかも必ずチェックしてください。
なお、評価は1度だけで終わらせず、何度も繰り返し行うことがおすすめです。市場の状況に合わせて再考したり、競合他社と自社の能力差をスコアで表して比較したりして、強みをより深掘りしていきましょう。
3.絞り込み
最後に、洗い出した強みの絞り込みを行います。前のステップで行った強みの評価結果をみながら、自社のコアコンピタンスに適している要素を抽出していきましょう。
なお、この段階は自社の経営方針にも関わる重要な工程です。ここで洗い出したコアコンピタンスを大きく変える頻度はあまり高くありません。自社の将来や市場の未来を思い描きながら、経営陣とともに行うことが一般的です。
コアコンピタンスの企業事例
コアコンピタンスを活用したマーケティングや経営を行うためには、すでにコアコンピタンスを確立した企業の事例が参考になります。ここからは、コアコンピタンスを確立した企業事例として本田技研工業株式会社と富士フイルム株式会社の2つを紹介します。
本田技研工業株式会社
本田技研工業株式会社は、低公害技術を駆使したCVCCエンジンを開発し、コアコンピタンスを確立しました。本事例では大気汚染対策の専門部隊を設立し、圧倒的な開発スピードを実現したことが特徴です。
本田技研工業株式会社が開発したCVCCエンジンは世界で一番早くアメリカ環境保護局の認定を取得し、その後の長期的な競争力の確保や世界的な知名度向上に貢献しています。このエンジンはオートバイや芝刈り機、除雪機などへ応用されるなど汎用性も高く、コアコンピタンスとして高い価値を発揮しました。
参考:HONDAを世界トップに押し上げたもの【コアコンピタンスによる成功事例】
富士フイルム株式会社
富士フイルムでは、「精密な技術力」「コラーゲンを生み出す技術力」の2つをコアコンピタンスとして確立しました。
カメラのフィルムを製造する際には、極めて精密な加工技術が求められます。富士フイルムは長年写真フィルム市場で優位性を確保してきた加工技術をスキンケア化粧品事業へ活用し、コアコンピタンスとして競争力の確保を実現しました。
他社には真似できないような肌の奥まで潤すコラーゲン含有の化粧品を市場展開し、異分野へのチャレンジを成功させた事例です。
参考:富士フィルムは2つのコアコンピタンスで生き残りを賭けた
3Mジャパン株式会社
3Mジャパン株式会社は、多様な技術の統合と革新による競争力を持ち、産業、医療、消費者向け製品で成功を収めています。特にナノ技術を駆使したフィルター製品は高評価を得ており、省エネルギーや環境配慮型製品で持続可能な社会に貢献しています。これにより長期的な市場シェアを確保しています。3Mジャパンの事例は、技術革新と環境対応が競争力強化に繋がる成功モデルです。
味の素株式会社
味の素株式会社は、アミノ酸技術をコアコンピタンスとし、健康志向の製品やバイオ関連ソリューションを提供しています。低塩・低脂肪・高タンパクの食品開発により市場シェアを拡大。環境対策にも積極的で、CO2排出量削減や資源効率の向上を推進しています。これにより、長期的な競争力を確保し、グローバル市場での地位を強化しています。
コアコンピタンスを確立するための施策ならアルーにお任せください
コアコンピタンスを確立するためには、企業の組織力を強化することが必要不可欠です。組織力を向上するためには、管理職のマネジメント力向上やリーダーシップの強化が求められます。
ここからは、コアコンピタンスを確立するのに役立つアルーの研修や人材育成施策を紹介します。コアコンピタンスを確立する施策について興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
ビジネスモデルイノベーション
ビジネスモデルイノベーションは、ビジネスモデルという観点から自分の仕事の意義を見つめ直し、仕事に全力で打ち込むモチベーションを形成するための研修です。
まずはビジネスモデル思考の考え方について学んでもらい、その後「ビジネスモデルキャンバス」や「パーソナルキャンバス」と呼ばれるツールを活用して自分のキャリアプランを構築していきます。自己理解やビジネスモデルの再構築を進め、最後に今後のアクションプランをまとめとして提出するという流れです。
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ビジネスモデルイノベーションについてさらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
ビジネスモデルイノベーションワークショップ
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マーケティング研修は、正しいマーケティングの基礎スキルを身につけることができる研修プログラムです。
研修中には外部環境分析や内部環境分析、SWOT分析やセグメンテーション・ターゲティングといったマーケティングのフレームワークについて学ぶことができます。グループワークが豊富に含まれているため、実践的なマーケティングスキルを身につけられることが特徴です。
マーケティングのフレームワークを実践したことがない社員はもちろん、知識はあるが業務に活用できていなかったり、マーケティングと自分の業務とのつながりを認識できていなかったりする社員にもおすすめの研修です。
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マネジメント研修は、管理職や次世代リーダーを対象とした、マネジメントの基礎について体系的に学べる研修です。
研修中には、マネジメントに求められる役割認識の強化を行う他、インサイドアウトのリーダーシップや充実度曲線といった、マネジメントに役立つスキルやツールを幅広く学びます。研修中には「部署のあるべき姿を言語化する」といったワークも豊富に含まれており、マネジメントをする上で欠かせないチーム視点を自然と身につけることが可能です。
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問題解決力研修は、問題の所在を特定し、解決策を立案して実行に移すという問題解決の一連のプロセスについて学べる研修です。
問題解決を行うためには、効果的な問題解決策を提案するだけでなく、問題解決に向けて周囲を巻き込みながら進める姿勢も欠かせません。
アルーの研修では、問題解決に向けて周囲へ働きかける重要性や方法について学べることが特徴です。「残業削減策を検討せよ」「ショッピングモールを立て直せ」といった具体的な事例を想定したケーススタディも豊富に含まれており、実践的な問題解決力を身につけることができます。
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まとめ
コアコンピタンスについて、定義や重要性、コアコンピタンスに求められる要件などを解説しました。
コアコンピタンスは、企業が長期にわたって競争力を確保する上で欠かせない存在です。コアコンピタンスを効果的に確立するためには、模倣可能性や移動可能性、代替可能性といったさまざまな点を考慮する必要があります。ぜひこの記事の内容を参考にコアコンピタンスについて理解を深め、企業の競争力向上につながる技術の確立に取り組みましょう。