テレワークの課題とは?解決策、スムーズな導入のポイントを解説
昨今では、テレワークを導入する企業が急速に増えています。場所の制約なく働けるテレワークは非常に便利な一方で、テレワーク環境だからこそ直面する課題が存在するのも事実です。テレワークの主な課題としては、労務管理の難しさ、コミュニケーション不足によるマネジメント負荷の増大が挙げられます。テレワークには、適切な労務管理とコミュニケーション体制の構築が不可欠です。
この記事では、テレワークで生産性を維持するためのポイントや、テレワークで直面しがちな課題とその解決策を解説します。テレワークの成功事例も紹介するので、テレワークの導入を検討している、または既にテレワークを導入しているが運用に課題を感じている方はぜひ参考にしてください。
▼テレワークの課題解決におすすめの研修3選
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テレワークの現状と普及状況
新型コロナウイルスの影響により、テレワークは急速に社会的な認知度を高め、普及が進んでいます。総務省の公表している情報通信白書によると、2022年時点でテレワークを導入している企業は50%以上です。2020年以降の導入率は横ばいで推移していますが、依然として多くの企業がテレワークを活用していることがわかります。
しかし、こうした急速なテレワークの普及とは裏腹に、すべての企業がスムーズにテレワークを運用できているわけではありません。
例えばWi-FiやパソコンをはじめとしたIT設備の整備やセキュリティ対策、さらには社員の労働環境の整備など、テレワークにはさまざまな課題があります。こうした課題にうまく対処できず、テレワークだと生産性を維持できないと感じる企業があるのも事実です。
企業側がテレワークで直面する課題と解決策
企業は、テレワークを推進する上でさまざまな課題に直面します。代表的なものは、以下の5つです。
- コミュニケーションが不足する
- 労務管理がしづらい
- 人材育成の方法を変える必要がある
- 勤務環境を整えられない社員がいる
- テレワークに向かない業務がある
ここからは、企業側がテレワークで直面する主な課題と、それらの解決策を解説します。
コミュニケーションが不足する
テレワークで企業側が直面する代表的な課題の一つに、コミュニケーションが不足することが挙げられます。
テレワークでは、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションが取れないため、情報共有や意思疎通が難しくなります。その結果、社員同士の人間関係が希薄になったり、信頼関係の構築が進まなかったりするのです。
解決策としては、定期的なオンラインミーティングの導入が挙げられます。一週間に一度程度、全員参加のオンラインミーティングを設けるなど、社員が定期的にコミュニケーションを取るきっかけを作りましょう。上司と部下間では、1on1ミーティングを実施するとより効果的です。
また、リアルタイムでのコミュニケーションを可能にするため、コミュニケーションツールの使用を検討するのも大切です。代表的なツールとしては、SlackやMicrosoft Teamsなどが挙げられます。また、チャットやメールなどを積極的に活用して、状況に応じたフレキシブルなコミュニケーションを促進するのもよいでしょう。
オンラインでのコミュニケーションにありがちな課題や、それらを解決する方法は以下の記事で詳しく解説しています。
『オンラインコミュニケーションの課題とその解決のための一工夫』
労務管理がしづらい
労務管理がしづらいことも、テレワークにおいて企業側が抱えがちな問題の一つです。
テレワークでは、社員の勤務時間や作業進捗を管理するのが難しくなります。その結果、誰がどの程度働いていて、どういった業務をアサインすればよいのかといった労務管理が難しくなってしまうのです。
解決策としては、タスク管理ツールの導入が挙げられます。ツール上で各自の状況を共有しておけば、全体の進行状況を一目で把握できるようになるでしょう。
また社員に対して、定期的に働き方に関する報告を依頼するというのも一つの手です。社員一人ひとりの働き方を把握することで、必要に応じたサポートが提供しやすくなります。
人材育成の方法を変える必要がある
テレワークにおいて企業が抱える問題として、人材育成の方法を変える必要がある点も挙げられます。
これまで集合研修で学んでもらっていたり、OJTで先輩社員の手元を見ながら学んでもらっていたりした場合、テレワーク下ではそうした教育の継続が困難です。また、「普段の何気ない先輩の様子を見て学ぶ」「先輩の技を盗む」といったことも、テレワークでは難しいでしょう。
eラーニングの導入やオンライン研修の実施など、テレワークでも対面と変わらない効果を出せるような教育のしくみづくりが必要です。
オンライン研修の実施方法やメリット、成功事例は以下のページで詳しく解説しています。
『オンライン研修とは?効果的な実施方法やメリット、成功事例を解説』
勤務環境を整えられない社員がいる
勤務環境を整えられない社員がいることも、テレワークで直面しがちな課題の一つです。
社員の中には、作業スペースやネット環境の整備が難しい人がいます。こうした社員に対しては企業が積極的にサポートするのが重要です。
例えば静かな環境が確保できない場合、ノイズキャンセリングヘッドフォンの導入や、家族との協調ルール作りを推奨するのがよいでしょう。快適な作業環境を作るため、専用のデスクや椅子の提案、照明の設定などを助言するのも手です。また、パソコンやモニター、インターネット環境の見直しなどを通じて、ITツールの整備を行うといったサポートも考えられます。
テレワークに向かない業務がある
テレワークに向かない業務があることも、企業がテレワーク時に直面する課題の一つです。
営業や接客の一部をはじめとした対面での対応を必要とする業務や、特別な機器を必要とする研究開発などの業務は、テレワークに適していません。こうした領域では、会社全体でテレワークを推進したとしても、テレワークが実現できないことが多いです。
解決策としては、業務内容を「テレワーク可能」「対面必須」「専用機器必須」の3つに分類し、それぞれの業務における対策を考えることが考えられます。テレワーク可能な業務に関しては、リモートでの作業を推奨しましょう。対面必須の業務に関しては可能な限りオンライン会議ツールを活用し、それも不可能な場合は人数を制限した上で実施するのがおすすめです。専用機器必須の業務に関しては、機器の持ち帰りやリモートアクセスの設定を行います。複数人で使う場合は、シフト制を考慮するのも手です。
社員側が直面する課題と解決策
テレワークで課題に直面するのは、企業側だけではありません。社員も、慣れないテレワークの状況に多くの課題を感じます。社員側が直面する代表的な課題は、以下の5つです。
- ワークライフバランスの維持が難しい
- 長時間労働につながりやすい
- モチベーションが維持しづらい
- 社員のコスト負担が増加する
- マネジメントの手法を変えなければいけない
テレワークにおいて社員側が直面する課題と、それらの解決策を解説します。
ワークライフバランスの維持が難しい
社員がテレワークで感じがちな課題の一つに、ワークライフバランスの維持の難しさが挙げられます。
テレワークでは自宅で仕事をすることが多いため、家庭と仕事の境界線が曖昧になりがちです。テレワークを導入したことで、プライベートの時間が侵食されることも少なくありません。
解決策としては、明確な勤務時間を設定し、その時間外は業務を行わないというルールを自分に課すのが重要です。これによって、プライベートの時間を確保しつつ、テレワークを進めることができます。また、テレワークによって節約された通勤時間を有意義に活用し、仕事の生産性向上につなげることも重要です。万が一テレワーク中にストレスを感じた場合は、適度な休息をとり、心身の健康を維持するよう心がけましょう。
長時間労働につながりやすい
テレワークで社員が感じる課題として、長時間労働になりやすいという点も挙げられます。
自宅で仕事を進めていると、仕事の終わりがはっきりしないため、長時間労働になるケースが少なくありません。前述した通り、「始業時間」「就業時間」をはっきりさせ、それを超える業務を過度に行わないことが大切です。
また、自宅での業務は集中しやすい一方で、「気がついたら何時間も休憩なしで作業していた」ということも起こりやすいです。必要な休憩時間を設け、生産性が落ちないようにリフレッシュしましょう。
勤怠管理ツールを導入するのも有効です。勤務開始から終了までの時間を記録しておけば、長時間労働を未然に防ぐことができます。
モチベーションが維持しづらい
モチベーションが維持しづらいことも、テレワークで社員が直面しがちな課題の一つです。
テレワークを導入すると、対面でのコミュニケーションを取る機会が減少します。その結果、一人で仕事を進めることに対するストレスや孤独感が増しやすいです。
対策としては、定期的なオンラインミーティングの導入が挙げられます。上司やメンバーとコミュニケーションを取ることで、モチベーション向上につなげましょう。上司が目標設定やフィードバックに力を入れ、常に目標意識を保てるようにするのも重要です。
さらに、働きやすい環境を企業側が積極的にサポートするのも重要です。必要なIT機器やオフィス家具の提供、通信費用の補助など、働きたいと思える環境を作れるよう支援しましょう。
社員のコスト負担が増加する
社員のコスト負担が増加するのも、テレワークにおいて社員が直面しがちな課題の一つです。
自宅の環境整備にかかる費用や通信費用など、テレワークでは社員が負担しなければならないコストが増えます。解決策としては、以下の2つを検討しましょう。
- 企業が直接負担する
- テレワーク手当を支給する
企業が直接負担する場合、企業側が機器の提供や通信費の補助を行い、社員の負担を軽減しましょう。テレワーク手当によって支援する場合は、一定のテレワーク手当を設け、その中から必要な費用を捻出してもらいます。
マネジメントの手法を変えなければいけない
マネジメントの手法を変えなければいけないというのも、社員がテレワークに感じる課題の一つです。
テレワークを導入する場合、管理職はテレワーク特有のマネジメントを実践する必要があります。オンラインで部下の進捗状況を把握したり、部下の心身の不調にいち早く気づいたりするためには、対面と同じやり方を続けるだけではうまくいきません。定期的にオンラインでコミュニケーションをとるようにする、チャットを活用したコミュニケーションを図るなど、テレワーク特有のマネジメントスタイルを学んでもらうのが効果的です。
管理職のテレワーク特有のマネジメントについては、以下の資料をご覧ください。
テレワークの成功事例4選
テレワークを導入する際には、既にテレワークの導入に成功した事例が参考になります。
ここからは、テレワークの成功事例4選を紹介します。テレワーク導入時の流れや、テレワークで直面しがちな課題の解決方法などをぜひ参考にしてください。
株式会社NTTドコモ 新入社員研修事例
株式会社NTTドコモ様では、テレワーク推進の一環として、新入社員研修のオンライン化に取り組みました。
本事例では、新入社員研修のうちビジネスマナー・スキル研修のパートを弊社アルーがサポートしています。対面での研修でのプログラムと内容を変更し、オンラインで実践しやすい内容を中心にしたカリキュラムに再編成しました。
集中力が継続しづらいオンライン研修のデメリットを克服するため、グループワークを積極的にとり入れていることがポイントです。研修講師のサポートや資料作成も入念に行い、オンライン研修のスムーズな運営に成功しました。
研修後には、「今できる最高のやり方であった」「非常にスムーズな運営が行われていた」など、オンライン研修を評価する声をいただいています。
本事例についてさらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
株式会社NTTドコモ 新入社員研修 導入事例
楽天グループ株式会社
楽天グループ株式会社では、会議やイベント、新入社員研修などのオンライン化に取り組んでいます。
楽天グループ株式会社では以前からICTツールを積極的に活用していたこともあり、ビデオ会議システムを全社員が使用できる状況にあったのが功を奏しています。全スタッフを対象としてWeb会議システムのアカウントを付与したり、講習会の実施やマニュアルの整備に力を入れたりして、リモートワークがスムーズに実施できる環境整備を続けているのが特徴です。また、「取引先にもリモートワークを」というアライアンスにも賛同し、複数社で足並みを揃えてリモートワークを浸透させる取り組みを進めています。
引用:【新日常】リモートワークの課題を企業の枠を越えて共に向き合う ~「#取引先にもリモートワークを」~
味の素株式会社
味の素株式会社では、2014年からテレワークをいち早く推進しています。
2017年からは「どこでもオフィス」という味の素株式会社ならではの制度を導入し、社員が場所を選ばず働ける環境を整えました。テレワークの実施場所や利用回数の上限に関する制限も大幅に緩和し、さらなるテレワークの普及を促しています。こうした取り組みは社外でも評価され、2018年には「第18回テレワーク推進会長賞」を受賞しました。
また、テレワークを導入したことで、社員の働き方にもポジティブな変化が出ています。具体的には、残業ありきの働き方から脱却し、自律的で柔軟な働き方が浸透しました。
引用:テレワークをいち早く実施!味の素グループの働き方改革
アルー株式会社
弊社アルーは、総務省が実施している「テレワーク先駆者百選」に選出されるなど、テレワークの導入や活用が社外から高く評価されています。
2020年には、2017年より運用してきた在宅勤務制度の拡充に全社で取り組み、出社日数や出社時の始業時刻などを柔軟に運用しました。コミュニケーションが希薄化しがちなテレワークの課題に対応するため、オンラインツールを活用しながら全社で知見を共有するしくみを設け、管理職を巻き込んでコミュニケーションの課題解決を行っています。顧客へ提供するサービスの質の担保や質の向上、社員の心理的安全性確保のため、さまざまな角度から検討を重ねている事例です。
スムーズなテレワーク運用のポイント
スムーズにテレワークを運用するためには、明確なテレワークポリシーを作成したり、社員へのサポート体制を整備したりすることが重要です。また、コミュニケーションのタイミングを決めることで、人間関係の希薄化を防ぐのもよいでしょう。
スムーズにテレワークを導入するために意識しておきたいポイントを解説します。
明確なテレワークポリシーを作成する
スムーズにテレワークを導入するには、明確なテレワークポリシーを作成するのがおすすめです。
テレワークポリシーとは、テレワークに対する企業の考え方を明確にしたものです。テレワークポリシーを通じてテレワークに関するルールやガイドラインを定めれば、社員へ一貫したメッセージを伝えることができます。テレワークポリシーの中には、以下のような内容を明文化しておきましょう。
テレワークが求められる職種や業務内容
- 適用可能な時間帯
- 通信費や機器費用の負担
- セキュリティルールと対策
- 勤務時間と休憩時間のルール
- コミュニケーションの方法とツール
こうした内容を明確化しておくことで、社員の混乱を避けるとともに、テレワークにおいても高い生産性を維持できるようになります。
社員へのサポート体制の整備
社員へのサポート体制の整備も、テレワークの導入を成功させるポイントです。
例えば物品の提供やテレワーク手当の支給など、テレワークに必要な環境整備を支援することが考えられます。テレワークに集中できる環境が整えば、テレワークに前向きに取り組んでくれる社員も増えるでしょう。
また、社員の中にはテレワークに不慣れな人もいます。こうした社員に対しては、オンライン会議ツールの使い方を教育するなど、テレワークについて学ぶ機会を提供するのが大切です。
コミュニケーションのタイミングを決める
コミュニケーションのタイミングを決めるのも、テレワークの導入をスムーズにするためのポイントです。
テレワークでは、どうしてもコミュニケーションが希薄になります。そのため、報連相や雑談の時間をあらかじめ決めておくのがよいでしょう。定期的にコミュニケーションをとる時間があれば、テレワークでも徐々に信頼関係が構築できます。
また、上司と部下の間で定期的に1on1ミーティングを実施するのもよいでしょう。進捗状況の共有や困りごとの相談など、社員のサポートを充実させるのがポイントです。
オンラインにおけるコミュニケーションにありがちな課題や、それを解決するための方法は以下のページで詳しく解説しています。
『オンラインコミュニケーションの課題とその解決のための一工夫』
テレワークでのマネジメントのコツを研修で伝える
テレワークにおけるマネジメントのコツを研修で伝えることも、テレワークの導入をスムーズに行うためのポイントです。
テレワークでは、対面とは異なるマネジメント手法が求められます。しかし、テレワークに不慣れな上司が、いきなりオンラインに適したマネジメントを実践するのは困難です。
あらかじめ研修を実施して、テレワークにおける部下とのコミュニケーション方法や、1on1ミーティングの進め方などを学んでもらいましょう。テレワークの際のマネジメントのコツを伝えておけば、テレワークにありがちな生産性の低下を防ぐことができます。
アルーが提供している管理職研修の詳細は、以下のページで詳しくご覧いただけます。
管理職研修
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テレワークの課題解決ならアルーにお任せください
テレワークにありがちな課題の解決なら、アルーへお任せください。
アルーでは、リモート環境でもオンライン研修やeラーニングの受講が可能です。テレワークを導入した際の研修にお悩みの場合は、アルーが徹底的にサポートいたします。管理職研修やリーダーシップ研修など、お悩みに合わせたカリキュラムの作成が可能です。
また、一般的にオンライン研修は「集中力が続きづらい」「講義中心になりがち」といった課題があります。アルーのオンライン研修は、オンラインでも効果を出すためのカリキュラムを設計できるのが強みです。また、テレワーク下でのマネジメントやファシリテーションなど、テレワークで必要とされる新たなスキルを身につけることに特化した研修を実施することもできます。
まとめ
テレワークにありがちな課題とその解決策について、会社側と社員側という双方の観点から解説しました。
テレワークは効果的に活用できれば非常に便利な一方で、テレワークならではの課題が多いのも事実です。特にテレワークではコミュニケーションが希薄になるため、マネジメントや信頼関係の構築において課題を感じる上司も多いでしょう。ぜひ研修の実施や1on1ミーティングの導入などを通じて、生産性を落とさないテレワークの導入を実現してください。