レジリエンスとは?ビジネスで注目される理由や高めるポイントを紹介
近年ビジネスの現場で注目を集めているレジリエンス。レジリエンスを高めれば、ビジネスで直面するさまざまな困難をしなやかに乗り越えることができるようになります。
この記事では、レジリエンスの意味やレジリエンスが必要とされている背景、レジリエンスを高めるメリットなどを幅広く解説します。レジリエンスを高める際に意識しておきたいポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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レジリエンスとは
レジリエンスとは、普段直面するさまざまなストレスとうまく付き合いながら、ストレス自体も自分自身の糧としながら成長していく「しなやかさ」のことです。
高いレジリエンスがあれば、困難に直面しても時間の経化とともにモチベーションが回復し、前向きな気持ちになることができます。
「ストレス自体をなかったことにする」「気にしない」というスタンスではなく、あくまでも困難を自分で一度冷静に受け止め、最終的な成長につなげるのがレジリエンスの特徴です。
各分野におけるレジリエンスの意味
レジリエンスはビジネスで注目を集めている概念ですが、それ以外にもさまざまな分野で注目を集めています。「組織」や「災害」と組み合わせて、「組織レジリエンス」「災害レジリエンス」といった使われ方をすることが多いです。
各分野で使われる代表的なレジリエンスを紹介します。
組織レジリエンス
組織レジリエンスとは、企業や組織における外部環境の変化によってもたらされるリスクや困難への対応力を意味します。
例えば組織レジリエンスの高い企業は、技術革新やイノベーションといった外部環境の大きな変化が起こっても、変化に素早く対応して安定的にパフォーマンスを出すことができます。一方で組織レジリエンスの低い企業の場合、外部環境の変化が企業の根本を揺らがす事態になる可能性が高いです。
組織としての困難に対するしなやかさが、組織レジリエンスであると覚えておきましょう。
災害レジリエンス
災害レジリエンスとは、地震や津波などによってもたらされた被害からしなやかに復興する力のことです。主に都市に対して使われるレジリエンスで、災害レジリエンスの高い都市は都市機能が損失した場合でも速やかに復旧できます。
全国の市町村では災害レジリエンスを高めるため、実効性の高い防災計画を策定したり、防災意識の啓発を行ったりするなど、さまざまな取り組みが行われています。
環境レジリエンス
環境分野では、「環境レジリエンス」という言葉が用いられています。代表的な環境レジリエンスは、以下の2種類です。
- 気候変動レジリエンス……地球温暖化などの気候変動によってもたらされる困難への対応力
- 生態学的レジリエンス……自然生態系における復元力や適応能力
両者は異なる意味を持っていますが、「困難への適応力」という意味ではどちらも共通しています。
サイバーレジリエンス
サイバーレジリエンスとは、サイバー攻撃による被害からの回復力を指します。「サイバー攻撃を完全に防ぐことは困難である」という前提のもと、サイバー攻撃を受けた後の対応を重視した概念です。
サイバーレジリエンスの高い組織では、サイバー攻撃を受けた際のマニュアルが策定されていたり、被害を最小限に食い止めるための対策がなされていたりなど、事前のリスクマネジメントが充実しています。
このように、レジリエンスという言葉は様々な領域で使われる言葉です。ここからは、ビジネスの中でも社員個人に焦点を当てた「レジリエンス」について説明していきます。
レジリエンスがビジネスで注目されている背景
レジリエンスがビジネスで注目を集めている背景には、時代の激しい変化があります。
最近は、IT技術の進歩やグローバル化の進展により、外部環境が目まぐるしく変化するようになりました。新型コロナウィルスによるパンデミックやウクライナ情勢など、グローバル規模でビジネスに影響を与える出来事も頻発しています。
こうした不安定な状況において、企業はさまざまな困難に直面します。前例のない事態に対処するためには、危機や困難に直面しても柔軟に対応し、乗り越える組織レジリエンスが欠かせません。
また、社員個人レベルでのレジリエンスも必要です。最近では「健康経営」という観点が注目を浴びており、社員のメンタルヘルスに配慮する企業が増えています。こうした背景から、個人と組織の両面でレジリエンスという概念が注目を浴びているのです。
レジリエンスと似た意味の用語との違い
レジリエンスには、似たような意味を持つ単語がいくつかあります。レジリエンスの概念を正しく理解するためには、これらの単語との違いを知っておくことが大切です。
ここからは、レジリエンスと混同されがちな単語との違いを解説します。
レジリエンスとメンタルヘルスとの違い
メンタルヘルスとは、「心の健康」「精神的な健康」といった意味を持つ単語です。レジリエンスと似たような意味で、心の健康を管理することを「メンタルヘルスケア」と呼びます。
メンタルヘルスケアは、大きなストレスがかかった「後」におこなう適切なケアを指す臨床心理学の言葉です。一方でレジリエンスは、ストレスがかかる「前」の予防策として対応力を高めることを指します。どちらも社員の心理的健康を確保する上で欠かせない概念ですが、前後関係に違いがある点をおさえておきましょう。
メンタルヘルスについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
『【事例あり】メンタルヘルス研修の内容や目的。管理職や新人に適した内容とは』
レジリエンスとストレス耐性との違い
ストレス耐性とは、精神的なストレスや心理的なストレスに耐え、適切に対処できる力のことです。ストレス耐性が高いと、大きなプレッシャーや心理的負荷がかかる状況でも心理的健康を損ないづらくなります。
レジリエンスとストレス耐性は密接な関係にあり、ストレス耐性はレジリエンスを構成する一要素、という位置づけです。ストレス耐性を始めとしたいくつかの能力を高めることで、レジリエンスの向上が期待できます。
レジリエンスとストレスコーピングとの違い
ストレスコーピングとは、問題やトラブルによって発生するストレスへ適切に対処する方法を指します。「コーピング」とは、「対処する」「切り抜ける」といった意味を持つ単語です。
レジリエンスが心理的なしなやかさを指すのに対し、ストレスコーピングはストレスへの対処法を意味します。具体的には、ストレスの捉え方を変える「情動焦点コーピング」や、ストレスの原因へアプローチする「問題焦点コーピング」などが代表的です。ストレスコーピングは、レジリエンスを高めるための手段だと捉えておきましょう。
レジリエンスとハーディネスとの違い
ハーディネスとは、大きな心理的負荷がかかる状況でも心の健康を損なわない特性のことです。心理的負荷に対する耐性は人それぞれ異なります。同じ状況に直面しても、「もうどうしようもない」と悲観的に捉える人もいれば、「なんとかなるだろう」とあまり気にしない人もいるでしょう。
こうした違いを生む要因が、ハーディネスです。ハーディネスが「ストレスそのものを感じづらい特性」であるのに対し、レジリエンスは「ストレスを感じてもしなやかに立ち直る力」であるといえます。
企業におけるレジリエンス向上のメリット
最近では、研修などを通じて個人レベルのレジリエンス向上を目指したり、戦略的に組織レジリエンスを高めたりするなど、レジリエンスに注目する企業が増えてきています。それでは、企業においてレジリエンスを向上させるメリットはどういった点にあるのでしょうか。
企業におけるレジリエンス向上のメリットを解説します。
社会環境の変化に対応しやすくなる
企業のレジリエンスを高めることで、社会環境の変化に対応しやすくなるというメリットがあります。
最近では、ChatGPTに代表される生成系AIが台頭しており、ビジネスにも大きな影響を与えています。また、働き方改革やリモートワークの推進など、企業を取り巻く環境は大きく変化しつつあります。
こうした状況では、組織として変化へしなやかに対応することが求められます。未曾有の事態でも適切な意思決定を下し、柔軟に対処するためにはレジリエンスが欠かせないのです。
社員の心身の健康を維持しやすくなる
社員が心身の健康を維持しやすくなる点も、レジリエンスを向上させるメリットです。
社員が心身の健康を維持できるようになれば、社員は仕事に集中できるようになり、組織全体としてパフォーマンスが改善します。また、社員の健康に配慮していることは、企業としての存在価値を向上させることにもつながります。
社員の心身の健康を確保するためにはストレスの原因を解消するのも大切ですが、ビジネスで直面する心理的負荷を完全になくすことはできません。そのため、レジリエンスを高めることで心理的負担からのしなやかな回復を促し、心身の健康の維持につなげる必要があるのです。
社員の目標達成力の向上につながる
社員の目標達成力の向上が期待できるのも、企業においてレジリエンスを鍛えるメリットです。
キャリアがステップアップするにつれて、難しい状況に直面したり、困難な案件を任されたりする場面も増えるでしょう。高いレジリエンスがあれば、こうしたチャレンジングな状況も前向きに受け止め、適切に対処できるようになります。ステップアップした難しい目標でもしっかりと実現できるようになるのが、レジリエンスを高めるメリットの一つです。
レジリエンスが高い人の特徴
レジリエンスが高い人には、以下のような特徴があります。
- 感情をコントロールできる
- 思考が柔軟である
- 自尊感情が高い
- 挑戦を諦めず、前向きである
まず、レジリエンスの高い人はむやみに感情に振り回されることがありません。目の前の状況に一喜一憂しないため、感情の起伏によるストレスを抑えることができます。
また、思考が柔軟なことも、レジリエンスが高い人の特徴です。レジリエンスの低い人は、困難に直面すると「どうしようもない」というネガティブな考え方しかできなくなってしまいます。一方で、高いレジリエンスを身につけている人は多様な観点から物事を考えられるため、ネガティブな中にもポジティブな側面を見出したり、発想の転換で事態を打開したりできるのです。このほかにも、レジリエンスが高い人には自尊感情が高い、常に前向きに挑戦を積み重ねられるといった特徴があります。
レジリエンスを鍛えるポイント
レジリエンスを鍛えるためには、ABCDE理論と呼ばれるフレームワークを活用して捉え方を変えたり、自分の考え方の傾向を客観的に把握したりするのが大切です。レジリエンスを鍛えるために知っておきたいポイントを3つ解説します。
ABCDE理論を活用して捉え方を変える
ABCDE理論を活用して捉え方を変えるのが、レジリエンスを鍛える際のポイントです。
ABCDE理論とは、アルバート・エリス氏によって提唱された、レジリエンスを高めるのに役立つ心理モデルの一つです。ABCDEの頭文字には、それぞれ以下のような意味があります。
- A(Affairs, Activating Event)……客観的な外部の出来事、生活環境や人間関係
- B(Belief)……外部の事象をどう受け止めるか、信念や考え方、価値観や解釈
- C(Consequence)……信念や解釈を通じて起こった、気分や感情、行動
- D(Dispute)……非合理的な信念に対する反論や否定
- E(Effective New Belief, Effective New Philosophy)……効果的な新たな信念・価値観
ABCDE理論を活用する際には、これらの観点に沿って現在の心理的状況を整理してみましょう。自分の持つ信念を客観視することで、新たな捉え方や考え方が見えてきます。
自分の考え方の傾向を理解する
レジリエンスを鍛える際には、自分の考え方の傾向を理解するように意識してみましょう。
人は誰しも、考え方のクセや偏りを持っているものです。例えばビジネスにおいては、「取引先から理不尽な対応を受けた」という状況が考えられます。こうした場面に直面したら、自分がこの場面をどう感じ、どう受け止めたのかを客観的にノートなどへ書き出してみましょう。
自分の考え方を書き出すだけでも客観視につながりますし、後から内容を振り返ればより第三者の目線から自分の考え方を振り返ることができます。こうしたプロセスを通じて自分の考え方の偏りに気づけば、必要以上に落ち込んだり考えすぎる機会が減り、レジリエンスの向上が期待できるのです。
成長サイクルを回す
レジリエンスをを鍛える際のポイントとして、成長サイクルを回すということも挙げられます。
ネガティブな状況に直面したら、状況を柔軟に捉えるよう意識してみましょう。そうすることで、「この点は次から改善できるな」「この教訓を次に活かそう」といった、ポジティブな側面も徐々に見えてきます。
見えてきた改善点を次に活かすことができれば、ネガティブな状況が最終的には「ポジティブな結果をもたらした」と捉えられるでしょう。こうした成長サイクルを通じて、ネガティブな状況から成長につなげる姿勢が身につき、レジリエンスが向上するのです。
レジリエンスを高めるレジリエンス研修について
レジリエンスを高めるためには、研修の実施が効果的です。人材育成を手掛けているアルーでは、レジリエンスを高めるための研修を実施しています。
ここからは、アルーが実施しているレジリエンスを高めるための研修プログラムを紹介します。
新入社員~入社3年後までの中期的レジリエンス研修
新入社員〜入社3年後まで継続的に行う中期的レジリエンス研修では、社歴の浅い社員を対象にレジリエンスを高めるためのプログラムを毎年実施しました。
まず、1年目に自分の感情に気づくワークに取り組んでもらっています。2年目には、これまでの経験を振り返りながら、自身のモチベーションを感じた出来事を書き出すワークに取り組んでもらいました。3年目には、自立に向けた準備と覚悟を養うことを目的に自分の体験を観察し、最後に行動宣言としてまとめてもらっています。
月報やアンケートも活用しながら継続的に施策を実施し、入社後4年目までにレジリエンスを向上させた事例です。
若手社員・リーダー層へのレジリエンス研修
若手社員・リーダー層へのレジリエンス研修では、クレーム対応によってメンタル不調を起こしてしまう若手社員や、人間関係などのストレスからメンタル不調を起こしてしまうリーダー層を対象とした研修を実施しています。
まずは、レジリエンスを高めるための意識転換に取り組んでもらいました。その後、レジリエンスを高めるためのシンプルな原則を学んでもらい、ワークを実施しています。
また、この研修では事後課題として若手社員、リーダー社員のそれぞれに別々のeラーニングを提供したのが特徴です。若手社員には、これまでの経験を振り返ったり、考え方を変えたりする方法をeラーニングで学んでもらいました。リーダー層には、メンバーのレジリエンスをサポートする方法を学んでもらっています。社員の階層を考慮しつつ、それぞれに最適な内容を学んでもらった研修事例です。
レジリエンス研修には、eラーニング教材と集合研修の組み合わせも有効です。レジリエンスのeラーニング教材については、以下のページで詳しくご確認いただけます。
レジリエンス(eラーニング教材)
海外駐在員のレジリエンス研修
海外駐在員のレジリエンス研修では、文化の違いなどからストレスを感じやすい海外駐在員を対象としてレジリエンスを高めるための方法を学んでもらいました。
赴任先で文化の違いに直面する海外駐在員の特性を考慮して、まずは赴任先での適応力を高めることに力を入れています。自分の感情を自覚したり、捉え方を変えたりするなど、レジリエンスを高める具体的な方法を学んでもらいました。その後、ディスカッションも交えながら、レジリエンスを高めるためのアクションプランをまとめています。
海外駐在員に向けた研修については、以下のページで詳しくご確認いただけます。
駐在員フォロープログラム
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レジリエンス研修ならアルーにお任せください
レジリエンス研修なら、ぜひアルーへお任せください。
アルーは人材育成を幅広く手掛けてきた企業で、これまでにテーマ別研修や階層別研修などさまざまな研修を実施してまいりました。レジリエンス研修も豊富な実績があり、海外駐在員や管理職、若手社員などそれぞれの社員の特性を考慮した研修内容を用意しているのがアルーの強みです。
レジリエンスに関することなら、何でもお気軽にアルーまでお問い合わせください。ぜひこの記事の内容を参考にレジリエンスに対する理解を深め、企業と個人双方のレジリエンスを効果的に高めていきましょう。