
SOGIとは?LGBTとの違いやSOGIハラスメントの具体例、企業の取り組み事例、研修事例を解説
SOGIとは、性的指向(好きになる性)や性自認(心の性)などの概念を表す言葉です。2011年ごろから国際社会で使われ始め、日本では2015年ごろから認知が広がっています。
とはいえ、LGBTQ+のような言葉と比べてまだまだ認知度が低く、正確に意味をご存知ない方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、SOGIの意味やLGBTQ+との違い、SOGIハラスメントの具体例、企業の取り組み事例、SOGIハラスメント研修事例について解説します。
▼ダイバーシティ推進におすすめの研修3選
▼LGBTQ+活躍推進の成功事例に関するサービス資料はこちら
目次[非表示]
SOGIとは
SOGIとは好きになる性=性的指向(Sexual Orientation)と心の性=性自認(Gender Identity)の大文字部分を組み合わせてできた言葉です。ソジ、あるいは、ソギ、と呼びます。
なぜSOGIなのか
なぜ、LGBTQ+ではなく、SOGIという表現をするのでしょうか。
SOGIという言葉は、自分がどんな性別だと感じていて、どんな性別の人を好きになるのか、という意味です。これは、セクシャルマイノリティの方だけでなく、マジョリティである異性愛の人も当てはまります。つまり、SOGIと表現することによって、性の問題の対象が“すべての人”となるのです。
そうすることで、性の問題は、“すべての人”の対等・平等、人権の尊重に根ざした課題として捉えることができるようになります。だからこそ、SOGIという言葉が使われるようになりました。
SOGIの意味
SOGIの「SO」と「GI」には、それぞれ以下のような意味があります。
SO:Sexual Orientation=性的指向(好きになる性)
自分がどういう性別の人を好きになるのか、ということ。異性愛や同性愛、無性愛などが含まれます。
GI:Gender Identity=性自認(心の性)
自分がどういう性別だと感じているかということ。トランスジェンダーやXジェンダーなどが含まれます。
SOGIESCとは
SOGIに、
E:Gender Expression=性表現(表現する性)
SC:Sex Characteristics=性的特徴(身体の性)
を加えた言葉がSOGIESCです。ソジエスクと呼ぶのが一般的です。
これら、性を構成する4つの要素の組み合わせ、グラデーションで、その人の性のあり方を知ることができます。
LGBTQ+とは
SOGIとLGBTQ+は、同じような場面で使われる言葉なので、よく混同されます。そこでここからは、LGBTQ+の意味と、SOGIとLGBTQ+との違いを簡単にご紹介します。
LGBTQ+の意味
LGBTQは、「Lesbian(レズビアン)」、「Gay(ゲイ)」、「Bisexual(バイセクシュアル)」、「Transgender(トランスジェンダー)」、「Questioning(クエスチョニング)/Queer(クィア)」の頭文字を取って名付けられた、幅広い性のあり方を総称する言葉です。
このLGBTQに、それ以外の多様なセクシャルマイノリティの方をプラスし、LGBTQ+という言葉が使われています。
▼LGBTQ+については、こちらの記事で詳しく知っていただけます。
LGBTQ+とは?意味や種類、当事者の悩み、企業を取り巻くリスクや対策事例を解説
SOGIとLGBTQ+との違い
SOGIとLGBTQ+は、どちらも性の多様性を表す言葉として使われていますが、その概念が異なります。SOGIは性的指向と性自認の状態を表す言葉で、LGBTQ+も含めたすべての人を対象としています。一方でLGBTQ+は、セクシャルマイノリティの方をカテゴライズするときに使われる言葉です。
SOGIハラスメントとは
相手が嫌がる行動をしたり、言葉をぶつけることを、ハラスメントといいます。ですので、SOGIハラスメントとは、性的指向や性自認に対しておこなわれる嫌がらせを意味します。
たとえば、性的指向や性自認を理由とする、
- 無視やいじめ、暴力
- 差別的な言動
- 不当な異動や解雇、内定取り消し
などが、SOGIハラスメントに該当します。
SOGIハラスメントの具体例
SOGIハラスメントには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。ここからは、5つの具体例を簡単にご紹介します。
性的指向や性自認を理由とする暴力やいじめ
レズビアンやゲイ、トランスジェンダーであることを理由に無視や嫌がらせ、暴力をおこなうような事例です。
差別的な言動や呼称
「ホモ」「レズ」「オカマ」などの差別的な言葉をぶつけたり、セクシャルマイノリティであることを理由に同僚の前で笑ったりすることです。また、SOGIを尊重しない発言もハラスメントに当たります。たとえば、
- トランスジェンダーを気持ち悪いと思うのは個人の自由だ、のような公言
- 男らしく、あるいは女らしくしろ、などの発言
- 一度病院で診てもらったら、のような、無知ゆえの善意から出ている発言
はSOGIハラスメントに当たります。
不当な異動・解雇・入社拒否
セクシャルマイノリティであることを理由に内定を取り消したり、退職を強要することです。また、たとえば上司が変わったタイミングで「自分を女性だというなら営業に向かない」などと不当に異動させられる事ケースもあります。
他人のSOGIを許可なく公表する
ある人がセクシャルマイノリティであることを勝手に同僚に暴露することです。カミングアウトを強要してしまうケースもあります。また、他者の性のあり方を噂したり、探ろうとするような発言もハラスメントに当たる恐れがあります。
望まない性別での生活の強要
身体の特徴で決まる性別によって、服装や身だしなみを制限したり、トイレや更衣室の利用を一方的に禁止したりすることです。
SOGIハラスメントに対する国の取り組み
SOGIハラスメント防止については、国際社会の動きにあわせて、日本でも積極的に取り組みが進められています。2020年6月にはいわゆる「パワハラ防止法」が改正され、厚生労働省によって「パワーハラスメント防止対策を義務付ける指針」が発表されました。
そこでは、SOGIハラスメントやアウティングを含むハラスメントの防止対策が、各企業や自治体などの義務とされています。2022年4月からは中小企業も対象となっているため、どのような企業であっても対策をしなくてはいけなくなっています。
取り組みが推奨されている対策には、
- ハラスメントの内容、方針等の明確化と周知・啓発
- 相談窓口の設置
- 事実関係の迅速かつ適切な対応
などが挙げられています。
SOGIハラスメントのデメリット
ここからは、SOGIハラスメントのデメリットを簡単にご紹介します。
モチベーションダウンやメンタル不調
SOGIハラスメントをされた側は、精神的に、ときには肉体的にも苦しみます。そうすれば当然、仕事に対するモチベーションが大きく低下し、良いパフォーマンスも発揮できなくなります。この状態が続くと、メンタル不調になり、休職や退職につながる恐れも高まります。また、最悪自殺してしまうケースもあります。こうなった場合、関係者や企業の責任が追及され、大きな問題に発展してしまいます。
離職率の増加
SOGIハラスメント当事者がメンタル不調などによって退職することはもちろんですが、周囲にも負の影響が広がります。とくに最近の若手人材は、子どものころから多様性の尊重を当たり前に受け入れています。企業風土が合わないと判断されれば、離職が続くこともあり得ます。また、ハラスメント対応に疲れ果てた管理職が離職するパターンもあります。
企業ブランドの失墜
職場での差別や偏見をなくし、人権を尊重することは企業の社会的責任です。SOGIハラスメントが発生し、たとえば訴訟になった場合には、金銭的な損失もありますが、大々的に報じられ、これまで築いてきた企業ブランドに取り返しがつかないような傷がつく恐れがあります。
また、訴訟までいかなくても、不適切な広告や対応が、SNSなどを通じて拡散され、大きなダメージを負うこともあります。
SOGIハラスメントに関する企業の取り組み事例
企業ができるSOGIハラスメントの対策には、
- 社員の意識変革やスキルアップ
- 風通しの良い風土醸成
- 制度や環境整備
の3つの切り口があります。
社員の意識変革やスキルアップ
SOGIハラスメントの防止を目指しておこなわれる対策のひとつが、研修などによる社員教育です。たとえば、
- 全社員を対象としたSOGIやLGBTQ+理解促進研修
- 管理職を対象としたハラスメント防止研修
- 中堅社員から管理職を対象とした、SOGIもテーマに入れた対話力向上研修
などが挙げられます。企業は人によってつくられていますので、人の意識や行動を変えるアプローチをすることは、SOGIハラスメント防止に非常に効果的です。
風通しの良い風土醸成
何か疑問や不安があったときに相談しやすい風土を醸成することも有効な対策です。たとえば、多様性を応援するメッセージを社内外に発信したり、多様性を応援するイベントへの参加などが、具体例として挙げられます。
LGBTQ+でないけれど、LGBTQ+を支援する人たちのことを、「アライ(Ally)」といいます。LGBTQ+当事者、アライ、人事が一体となりコミュニティをつくっている企業もあります。また、1on1などを通じて対話活動を促進することで、心理的に安全な職場づくりをすることができます。
▼1on1の進め方や話す内容についてはこちらの記事で詳しく知っていただけます。
1on1とは?話すことの例や意味がないと言われないための進め方
制度や環境整備
セクシャルマイノリティの方が活躍しやすい環境を整えることも、SOGIハラスメントの防止に一役買います。
- 就業規則でハラスメントを禁止し、プライバシーが保護される相談窓口を設置する
- 同性パートナーでも福利厚生を受けられる制度をつくる
- 男女共用のトイレを設置する
などの制度や環境があると、社員の意識も変わっていきます。
アルーのSOGIハラスメント防止支援事例
アルーでは、これまでにさまざまな企業でSOGIハラスメント防止に向けた施策を支援してまいりました。SOGIハラスメントを防止するための研修には、
- 全社員を対象としたSOGIやLGBTQ+理解促進研修
- 管理職を対象としたハラスメント防止研修
- 中堅社員から管理職を対象とした、SOGIもテーマに入れた対話力向上研修
があります。
ここでは、最もオーソドックスな、「管理職を対象としたハラスメント防止研修」の事例を1つピックアップしてご紹介します。
SOGIハラスメント防止研修
SOGIハラスメントに対して危機意識が薄い管理職を対象に、 SOGIへの理解を促進し、SOGIハラスメントのリスクや事例、管理職として求められる対応などを学んでいただく4時間の研修事例です。
ハラスメント防止が主なテーマですが、カミングアウトや相談をされたときの対応も学ぶことで、管理職として安心安全な職場づくりを目指せるようにしたのが特長です。
▼研修内容
①オリエンテーション
研修のねらいを説明し、研修受講のレディネスを醸成します。
②なぜSOGIハラスメントを取り上げるのか
SOGIについての基礎知識をインプットします。また、企業を取り巻く環境の変化や、企業がSOGIハラスメント防止に取り組む意義を理解し、“なぜ”この研修を受講するのか腹落ちします。
③SOGIを知る
多様な性のあり方や、セクシャルマイノリティ当事者が実際に抱える悩みを知ることで、SOGIハラスメントの問題を自分ごとで考えます。
④SOGIハラスメントを知る
SOGIハラスメントについて具体的に学び、企業に損失を与えた事例を知ることで、SOGIハラスメント防止に対する意識を高めます。
⑤アンコンシャス・バイアスを知る
自分や、自分の周囲がSOGIハラスメントの当事者にならないように、セクシャルマイノリティを取り巻くアンコンシャスバイアスを知ります。そして、セクシャルマイノリティという言葉に振り回されないために必要なことを学びます。
⑥管理職としてどう対応するか
管理職としては、カミングアウトされたときの対応や、相談されたときの対応を学び、ハラスメント防止だけでなく、信頼関係を構築するコミュニケーションにつなげられるようにします。
SOGIハラスメント防止研修ならアルーにお任せください
SOGIハラスメント防止研修なら、ぜひアルーへお任せください。
人材育成を手掛けているアルーでは、SOGIハラスメント防止研修を数多くご用意しています。例えば、全社員に向けてSOGIに対する理解を促進する研修や、管理職に向けたハラスメントを防止するための研修などの実施も可能です。セクシャルマイノリティ当事者が登壇することもできます。
SOGIハラスメント防止に関することなら、何でもお気軽にアルーまでご相談ください。
▼LGBTQ+活躍推進の成功事例に関するサービス資料はこちら
まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では、SOGIの意味やLGBTQ+との違い、SOGIハラスメントの具体例、企業の取り組み事例、SOGIハラスメント研修事例について解説しました。
ダイバーシティ&インクルージョンが重視される昨今では、LGBTQ+の方をはじめ、多様な人材の活躍推進が多くの企業で進められています。同質性の高い日本企業において、多様性は企業の競争力を強化する強力な手段のひとつです。
ぜひこの記事の内容を参考に、セクシャルマイノリティを含む多様な人材活躍の意義を考え、効果的な施策を進めてください。