
オールド・ボーイズ・ネットワークとは?影響力や弊害、シニア男性のジェンダー意識への対策を解説
皆さんは、「オールド・ボーイズ・ネットワーク」という言葉をご存知ですか?
女性活躍を阻む要因のひとつとして、今、注目を集めています。
世界経済フォーラム(WEF)が発表した、2024年の日本のジェンダー・ギャップ指数は、146か国中118位と、前年までと同様、低迷しました。特に長年改善の必要性が指摘されている、政治や経済分野での指数が上昇せず、根強い問題が残っていることがうかがえます。その問題のひとつが「オールド・ボーイズ・ネットワーク」です。そこで本記事では、「オールド・ボーイズ・ネットワーク」を形成するシニア男性のジェンダー意識を紐解き、その対策をご紹介します。
- オールド・ボーイズ・ネットワークとは何か
- 男性のジェンダー意識の変遷
- 男性の持つ、子育てや介護におけるジェンダー意識
- シニア男性に向けた研修事例
がわかります。ぜひご参考にしてください。
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オールド・ボーイズ・ネットワークとは
オールド・ボーイズ・ネットワークとは、マジョリティである男性が築いてきた暗黙のルールや、いわゆる“お約束”に満ちた仕事の進め方や人間関係のことです。たとえば日本企業では、社内外にある男性同士のコネや人脈が重要視され、飲み会やゴルフの場など、非公式の場で出た話で仕事が進むことがあります。このような人間関係は明文化されることはなく、男性メンバー間で共有、伝承されているのが普通です。
非公式でなくても、たとえば公式の会議やチームでの仕事のときの発言の仕方などに、“こだわり”を持っている男性上司が、あなたの周りにもいるのではないでしょうか。こうした、男性が作る暗黙のルールをもつネットワークには、社内派閥や飲み仲間、ランチ仲間、ゴルフ仲間、タバコ部屋での仲間、業界勉強会でのつながり、役職者や経営者同士の親睦団体などさまざまあります。
オールド・ボーイズ・ネットワークの弊害
オールド・ボーイズ・ネットワークはマジョリティである男性が築いている組織ですので、女性や外国籍社員のようなこれまでにはいない異分子が入る余地がほとんどありません。これは、ときとして強みになることもありますが、変化の激しい現代においては、さまざまな弊害を生み出す要因となり得ます。
女性活躍推進を阻害する
女性活躍推進は、内閣府男女共同参画局より2023年6月に公表された『女性活躍・男女共同参画の重点方針2023』にもあるとおり、官民一体となって取り組むことが求められている、重要な経営課題です。女性活躍推進は、1980年代の男女雇用機会均等法にはじまり、これまでもずっと進められてきましたが、思ったように進んでいないのが現状です。
オールド・ボーイズ・ネットワークでは、無意識のうちに旧態依然とした価値観が残されていることがあります。日本企業の多くは、新卒一括採用と終身雇用のもと、年功序列で長時間働くことが前提の雇用システムを採用しています。こうした環境下では、男性中心のネットワークが形成されやすく、女性社員は人脈づくりから除外されやすくなります。そうすると、昇進・昇格のチャンスが遠くなるなど、女性活躍推進を阻害してしまいます。
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若手社員の成長を阻害する
オールド・ボーイズ・ネットワークでは、飲み会の場やゴルフの場など、非公式の場が重要視されます。一方で今は、働き方に対する多様な価値観をもつことが認められています。家庭やプライベートを重視する若手社員も増えており、そうした若手社員は飲み会や休日でのゴルフへの参加を嫌がります。オールド・ボーイズ・ネットワークが根強く残り、非公式の場に参加する社員でないと認められないと思われたら、若手社員のモチベーションを大きく下げ、成長意欲を減退させてしまいます。
企業の成長を阻害する
オールド・ボーイズ・ネットワークは、多様な人材の活躍を阻害する可能性があります。VUCAの時代といわれる現代では、ダイバーシティ&インクルージョン推進による、企業競争力の強化が必要です。実際、マッキンゼーやボストン・コンサルティング・グループの調査では、ダイバーシティ&インクルージョン推進が、イノベーションや企業の収益性強化につながるという結果も出ています。多様な人材の活躍を引き出せないオールド・ボーイズ・ネットワークの影響が強い企業は、競争力を維持できない危険性があります。
オールド・ボーイズ・ネットワークのもつ影響力
シニア男性が中心となり作る、これらのネットワークの企業への影響力は無視できません。なぜなら、オールド・ボーイズ・ネットワークを形成するシニア社員の多くが、成功体験をもっているからです。そして、その成功体験は尊重されるべきものでもあります。
一方で、このオールド・ボーイズ・ネットワークに女性が参画することができれば、これまで以上に女性が活躍することにつながります。また、多様な意見が加わることで新たなアイデアが生まれることなどが期待できます。
これまで女性活躍といえば、女性の意識を変えようとしたり、女性をサポートしようとする施策が多く展開されてきました。ですが、オールド・ボーイズ・ネットワークを築いてきたシニア男性のジェンダー意識を変えることでも、女性活躍を推進することができるのです。
男性のジェンダー意識の変遷
シニア男性のジェンダー意識は、男尊女卑的で画一的だと思われがちですが、実はそうではなく、多様です。シニア男性自身も、自分のもつジェンダー意識が正解か分からず悩んでいるのが実情です。シニア男性のジェンダー意識は、なぜ多様になったのでしょうか。ここからは、男性のジェンダー意識の変遷を紐解きます。
お金を稼ぐのは男性、という当たり前の形成
ジェンダー・ギャップ指数からもわかるとおり、日本では男性は仕事中心、女性は家庭中心という、ジェンダー役割観が根強く残っています。つまり、「家族をつくったときに、お金を稼いでくるのは男性」という意識が強いということです。
多くのシニア男性が就職したころは、まだバブル崩壊前で、そのときの完全失業率は2%台前半と非常に低い数字でした。今後シニア世代となる男性が就職した、バブルが崩壊した後でも、2001年には完全失業率が5%台となりましたが、それでも諸外国からみれば顕著に高い失業率とはいえず、比較的安定して働くことが可能な環境だったといえます。
そして、新卒一括採用や終身雇用など、日本企業はいまだ長期で働くことが前提の雇用システムです。ホワイトカラーであってもブルーカラーであっても、年功序列で昇給・昇格を目指すことが一般的といえます。つまり自然、強固な男性同士のネットワークが形成されやすくなります。
また、特にバブル崩壊前は、日本社会は大きく成長しており、組織を引っ張ってきた男性の成功体験から形成される“当たり前”=“稼ぐのは男性”の意識が共有されていきます。
キャリア意識とジェンダー意識の多様化
バブル崩壊後でも、比較的安定して働くことが可能だったといえますが、一方で派遣のような非正規雇用が広がり、男性のキャリアが不安定化します。もともと日本での非正規雇用は、家計責任がないと考えられていた女性向けの雇用という認識がありました。そこに男性が参入することは、現在のシニア社員にとって、“男性なのに稼ぐことができない”=“よくないこと”に感じた人もいたと考えられます。
また、1999年には男女共同参画社会基本法が成立し、国際化や少子高齢化など社会的な背景も後押しとなり、女性が正社員として働くことが当たり前となっていきます。男女平等の考え方は力強く広がり、男性のジェンダー意識に影響を与えました。結果、男性のキャリア意識もジェンダー意識も画一的ではなくなりました。これは男性全体でみてもそうですし、シニア男性だけで考えても、これまで以上に人によって思考が違うようになった、ということもいえます。
キャリア意識でいえば、稼ぐのは男性という意識を持ちつつも、出世を目指す人もいれば、そうではない人もいますし、稼ぐのは男性という意識を持っていない人もいます。ジェンダー意識でいえば、男女平等の考え方は一様に持ちつつも、女性にどんな期待をするかは人によってさまざまです。
現在は、よりジェンダーフリーの考え方が当たり前に育っているZ世代の方も入社し、さらにLGBTQの方々に対する認知も広がりました。副業・兼業が認められるなど、キャリア形成の幅も広がっています。当然、シニア男性も影響を受け、ジェンダー意識がさらに多様になっています。一方、こうした多様化はときに不安を呼びます。そうした悩みを共有できる場としても、オールド・ボーイズ・ネットワークは存在感を保ち続けています。
シニア男性の子育て意識
キャリア意識やジェンダー意識が変わると、子育てに関する意識も当然変わります。そして結果として、育児と仕事の両立への考え方も変わります。1995年12月に総務庁青少年対策本部が公表した「子供と家族に関する国際比較調査の概要」では、当時0歳~15歳までの子どもを持つ父親、または母親に「子育ての意味」を聞いています。比較対象は日本、アメリカ、韓国です。ちなみに、1995年生まれの方は、2025年で30歳になります。
日本では、「次の世代をになう世代をつくる」や「家族の結びつきを強める」が高く、逆に海外では「子どもを育てるのは楽しい」や「家の存続のため」が低くなっています。
現在のシニア世代の子育て意識として、伝統的な家の継承意識が弱くなる一方、子育てを楽しむまではいかないという、複雑な心境がうかがえます。
2005年に国立女性教育会館が公表した「家庭教育に関する国際比較調査報告書」をみると、1995年から10年後の子育て意識の変化が分かります。そこでは「子どもを育てるのは楽しい」という問いに対し、「とてもそう思う」と答えた親が46.0%、「ややそう思う」と答えた親が44.8%と、90%以上の親が、「子育てが楽しい」と答えています。
こうした意識の変化にともない、育児と仕事の両立の意識も変わっていきます。つまり、若い世代ほど、どちらかといえば働くことを優先する意識から、育児を優先する意識が強くなります。事実現在では、男性育休の取得が促進されるなど、積極的に子育てに参加したい男性は、どんどん増えています。
子どもを大切に思っていることは変わりませんが、シニア世代の子育て意識が、若手や中堅世代の子育て意識とは違うことが伺えます。
シニア男性の介護意識
ワークライフバランスを考えたときに、シニア世代でよく取り上げられるテーマが、「介護」です。高齢者の介護は、従来から主に女性、特に「配偶者」や「娘」がその役割を担うことを期待されてきました。近年では、男性の介護者が増えてきましたが、それでもその比率は30%~40%程度といわれています。
こうした介護への意識は、ジェンダー意識にもつながります。つまり、女性には何かあったときには家にいてほしいと考え、家事や育児、病気の世話などを求めるのです。このように、シニア世代のジェンダー意識を取り上げる際は、介護をテーマにすることも必要です。
オールド・ボーイズ・ネットワークを変える10か条
これまで説明してきたとおり、シニア男性もジェンダー意識や子育て意識、介護意識の変化に悩まされてきています。考えを変えろと言われても、簡単に変えられないのが現状です。それでも考えを少しずつ変えていくためには、男性自身が自分や周囲に特有な行動に築くことが重要です。
そこで、ダイバーシティマネジメントを推進するNPO法人J-Winでは、次の10か条を掲げて男性の行動変革を呼びかけています。
変えられる行動10か条
第1条:行動(成功体験)の押し付け
成功体験はあなたの宝物として心にしまっておきましょう
第2条:上司への忖度
上司の顔色よりも部下の行動の成果を見ましょう
第3条:男女間の不公平
仕事の進めやすさ、振りやすさに関係なく、平等に仕事が分担できるよう、マネジメントしましょう
第4条:傾聴がない
話の腰を折らず、最後までしっかり聴きましょう
第5条:理解不足
一人ひとりの仕事に対する価値観を尊重しましょう
第6条:放置
仕事の目的、背景をしっかり説明した上で、部下に仕事を任せ、伴走しましょう
第7条:男性固有のネットワーク
部下から誤解を招くような固有のネットワークは避けましょう
第8条:男性固有のイベント
物事はオープンな場所で決めましょう(喫煙所、飲み会、ゴルフ場等では決めない)
第9条:生活リズムの男女差
・歩行や食事のスピードに配慮しましょう
・冷房のかけ過ぎに注意しましょう
第10条:合間(ランチタイム、移動時)の使い方
歩行中もランチタイムも(部下との)貴重なコミュニケーションの機会と捉えましょう
出典:NPO法人J-Win「J-Winレポート37号」
アルーのシニア男性向け研修事例紹介
アルーこれまでにさまざまな企業で女性活躍推進に向けた施策を支援してまいりました。シニア男性を対象にした研修も豊富にございます。ここではそれらの中から特に参考となる事例を1つピックアップして紹介します。
50代シニア社員向けダイバーシティ研修
▼テーマ
50代シニア社員向けダイバーシティ研修
▼ねらい
ダイバーシティ推進を不安視している状態から脱却する
これからの働き方の軸をつくり、あらためて仕事に向き合うことができるようにする
▼内容:
①オリエンテーション
トレーナーからダイバーシティを推進する必要性を説明し、これからの仕事のために各自が何を取り組むべきかを意識してもらいます。また、目下の悩みを共有することで、受講者同士話やすい場をつくります。
②自分を整える
これまでの自分を大切に、“自己承認”するワークに取り組みます。また、自分のもつアンコンシャスバイアスに気づき、オールド・ボーイズ・ネットワークがあることを認めます。
③家族をつくる
子どもが成長し、孫が生まれる一方、介護をする必要も出てくるなど、家族のライフスタイルは変化していきます。仕事のパフォーマンスを上げるためにも、パートナーとの関係を見直し、大切にすることを討議します。
④職場の関係性を見直す
若い世代や女性との人間関係について学びます。関係性を良くするコミュニケーションや、後輩の成長を大切にするキャリア形成支援について討議します。
⑤まとめ
研修全体を振り返り、具体的におこなうワンステップを決め、全体共有します。
⑥お悩み・質問コーナー
トレーナーに対して、個別で相談や質問を受け付け、悩みや不安を解消します。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では、オールド・ボーイズ・ネットワークを形成するシニア男性のジェンダー意識を紐解き、その対策を解説しました。
ダイバーシティが重視される昨今では、女性を始め、多様な人材活躍の重要性がますます高まってきています。一方で、ダイバーシティ&インクルージョン推進では課題に直面している企業が多いのも現実です。ダイバーシティに対する社内理解を促進しないまま施策をスタートさせてしまうと、形ばかりのダイバーシティ&インクルージョン推進になってしまいかねません。
ぜひこの記事の内容を参考に自社の状況に合わせたダイバーシティ&インクルージョン推進を応援する研修を企画し、効果的に施策を進めていきましょう。
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