
対話とは?対話の意味や必要な理由、対話のやり方、対話と会話の違いを解説
- 部下に対して育成視点を持って接することができない
- 多様な価値観を持つ社員が増え、職場の関係構築が難しくなった
- 多様な働き方が広がったはいいが、コミュニケーションしづらくなった
このような管理職の方のコミュニケーションに関するお悩みがあります。そんなとき、必ずといっていいほど話題に上がる言葉が、“対話”です。
「管理職に昭和の関わり方をやめてもらって、部下と対話できるようになってほしい」という思いをお持ちの人事・教育担当者は多くいらっしゃいます。
一方で、「わかっているけどうまくできない」というのが多くの管理職の方の本音です。
対話は、うまく活用できれば部下との信頼関係を構築し、部下はもちろん自分も成長させることができますが、なかなかうまくいかないのが多くの管理職の実情です。
本記事では、そんな“対話”に焦点を当てて、その意味や必要な理由、対話のやり方、対話と会話の違いなどをご紹介します。
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目次[非表示]
- 1.対話とは
- 2.1on1研修事例紹介
- 3.対話と会話の違い
- 4.対話と議論の違い
- 5.対話が必要な理由とは
- 6.対話によって得られるメリット
- 7.対話の土台をつくるポイント
- 8.管理職の対話力を向上させるならアルー株式会社へ
- 9.まとめ
対話とは
対話とは、相手と向かい合って、2人でお互いに話すことです。対話では、自分の考えをきちんと伝えた上で、相手が話す内容の意味も追求しながら話を進めます。
対話の特徴は大きく2つです。
ひとつは相手と“2人”で話すことです。そしてもうひとつは、お互いに共通する状況の「意味」を共有することです。
たとえば、事前連絡もなく会議に遅刻したのに、ろくに謝罪をしない社員がいたとします。会議後、上司は当然叱ります。叱られた部下は、「そんな言い方をしなくてもいいのに」と上司と話すのも嫌になり、上司に嫌われていると思い込んでしまいます。そうなると両者の関係は悪化するだけです。上司は部下の行動に対して、「仕事でもプライベートでも遅刻しそうなら事前連絡、遅刻したなら謝罪ができないと、周囲から見放されてかわいそうだ」という感情が、無自覚に働いていることに気づきません。
ですが、その本心を伝えられたなら、部下は、「自分に対する思いやりから生じた言動だ」と気づくことができます。このように、状況に対する意味が共有化されると協調的な行動につながりやすくなり、理由に完全に納得していなくても前向きな行動をとれるようになります。
発生した状況に対して、自分の考えや価値観を押し付けるように話をしても、それは決して“対話”にはなりません。お互いが話す内容や、その裏にある感情の理解をしようとしながら、相手の思考に気を配り、相互理解を目指しておこなわれるものが“対話”です。
1on1研修事例紹介
企業において対話を活用したいというときに、よく導入されるのが“1on1”です。上司や部下との関係性をより良くしたり、対話を通じて風通しの良い組織風土をつくることを目的として、1on1がおこなわれます。そんな1on1ですが、うまく活用できている企業はまだまだ少数派といえます。
そして、うまくいかない1on1を改善しようと取り組まれるのが、“1on1研修”です。
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生産性向上のための1on1シミュレーションプログラム
対話と会話の違い
対話と似た言葉に「会話」があります。対話は会話の一種ではありますが、両者は異なる意味合いで使われることが多いです。対話と会話の違いは大きく3つです。
参加する人数
ひとつ目は、参加する人数です。
多くの場合で2人で向かい合って話し合う対話と異なり、会話では相手が1人とは限りません。職場の同僚や友人、家族と集まって談笑するなど、多人数でおこなうことも多いのが会話です。
コミュニケーションの目的
2つ目はコミュニケーションの目的です。
対話は相互理解を目指しておこなわれますが、会話は必ずしもそうとは限りません。会話では、商談や報告のように一方向で何かを伝えることもあれば、友人や家族との談笑のように交流することが目的となることもあります。
話される内容
そして3つ目は、話される内容です。
対話では自分の内面と向き合い、言動の根源にある感情や価値観とともに話をします。一方会話では他者のできごとについて、その事実や、そのときに生じた思考をもとに話をする場合が多いです。言い換えると、会話は浅く広い話し方になる、ということです。
ただ、会話が駄目というわけでは決してありません。むしろ日常的には会話で十分な場合がほとんどです。ただ、ビジネスの場面で、相手に十分に話が伝わらないときや、会話中の相手の話が理解できないときは、相互理解のための対話が必要です。
対話と議論の違い
コミュニケーションの目的
対話と議論の最も大きな違いは、その目的です。
議論は、お互いの意見や主張を交換して問題を発見したり、問題の解決策に関する合意形成をすることを目的におこなわれます。つまり議論の目的は、解決策や結論を導きだすことです。
一方、対話では、解決策や結論を出すことだけが目的ではありません。対話の目的は、お互いの立場や違いを理解し、そのずれをすり合わせながら、相互理解を深めることです。
立ち位置や話し方
また、話をする際のお互いの立ち位置や話し方にも違いがあります。議論の場では、職場の上下関係がそのまま残ります。ですので、偉い人や立場が上の人、声が大きい人の意見に流されがちです。また、議論における話し手は、ロジカルに自分の主張をハッキリと伝えることが求められます。
一方で、対話の場では、お互いに平等な立場で話をします。その際、対話における話し手は、
自分の内面に向き合い、言葉の意味を全員と共有しながら話すことが求められます。
どちらが良い悪いということではなく、目的によって使い分けることが大切です。仕事では決断することが求められます。それなのにずっと対話をしても前進しませんし、お互いを理解しあおうとしているなかで、解決策の話をしても逆効果になってしまいます。
対話が必要な理由とは
ビジネスにおいて“対話”がなぜ必要なのでしょうか。対話が注目を集めているのには、以下の3つの理由があります。
- コミュニケーションが不足しがちになっているから
- 多様な価値観の社員が働いているから
- 生産性を上げることが求められているから
コミュニケーションが不足しがちになっているから
近年の企業では、人手不足が当たり前になりつつあり、業務の忙しさからコミュニケーションが不足しがちです。また、リモートワークなどの多様な働き方が広がったこともあり、メールやチャットなど、文章でコミュニケーションをすることも増えています。そうした背景から、対面での深いコミュニケーションが減っています。そうしたコミュニケーション不足を補うために、身近で実践しやすい手法として、対話が注目を集めています。
多様な価値観の社員が働いているから
ダイバーシティ&インクルージョンや働き方改革が推進されていることもあり、企業には多様な価値観を持つ社員が集まるようになりました。そんななか、管理職に求められているのが、“相手から信頼を得る”ことです。対話は、考えの異なる相手とおこない、相手への理解を深めるだけでなく、自分の考えも深め、ときには自分の考えを変化させます。そうしたプロセスを通じて相手と信頼関係を結ぶことができるのが、対話の特徴です。
生産性を上げることが求められているから
現在はVUCAの時代といわれ、企業が持続可能性を高めるためには、変革が必要です。上意下達といった、昭和から続く組織の人間関係を変革し、社会変化に対応できる組織にするための手段のひとつが対話です。
組織で仕事を進める際、コミュニケーションの質と量の不足は、生産性を下げる要因になります。対話を通じて相手と信頼関係を築くことは、組織内のコミュニケーションの質と量を高め、仕事の質を高めることにつながります。
対話によって得られるメリット
対話をするメリットは、相手との関係性を良いほうに変え、信頼関係を構築することです。この信頼関係を構築するというメリットを、もう少し紐解くと、以下の2つに分けることができます。
相手の価値観を見出すことができる
たとえば今後の事業計画の方向性に悩んでいるとします。片方は広告予算を投入し、短期的な成果を追いかける方向性です。そしてもう片方は今期は予算を使わず、時間はかかるが我慢して今後の土台をつくる方向性で計画を立てたとします。こうした場合、意見が真っ二つに分かれてどちらも譲らない、という状況になりがちです。そんなときに有効なのが対話です。
対話が深まるほど
- こんな考え方が土台になっていたんだ
- 会社のことを真剣に考えていてくれたんだ
などと、相手の価値観を見出すことができ、相互理解と信頼関係の構築につながっていきます。
自分の考えを深めてくれる
自分の考えを深めたり変えたりできることも、対話の大きなメリットです。組織を良い方向に動かそうとしても、管理職である自分の主張や価値観が足かせになってしまうことがあります。本人は相互理解のうえ仕事を進めていると思っていたとしても、部下からしたら、主張や価値観を押し付られたと感じ、モチベーションが上がらない、ということはよく発生します。
対話によって自分の価値観や考えを開示し、共有することで、自分の考えを深めていくことができます。また、相手の価値観に触れることで視野が広がり、自分の考えを変えることにもつながります。このように、相手の価値観を理解し、自分の考えを深め、ときには変えることを通じて、相手との信頼関係を構築することができるのです。
対話の土台をつくるポイント
では、実際に対話をするときにはどのようなことに注意したらいいのでしょうか。
ここでは、対話の土台をつくるポイントとして、以下の4つをご紹介します。
- 相手を大切にする
- 矛盾を許容する
- 自分を客観的にみる
- 誠実である
相手を大切にする
対話をする際には、お互いに尊重しあうことが前提となります。相手にはこれまで生きてきたなかで培ってきた価値観があり、その価値観と自分の価値観とのあいだに優劣はありません。相手が大切にしているものを自分も大切に思い、相手の話を聴き、否定せずに受け入れようとする姿勢が、対話の土台をつくります。
とくに管理職の方は、部下のためを思って、自分の意見を言いがちです。そこをグッとこらえて、相手の話をしっかりと聴くだけで、相手を大切にしていることが伝わります。
矛盾を許容する
行動経済学でもあきらかにされているように、人間は論理だけでなく、感情で判断する生き物です。たとえ仕事であったとしても、誰もが矛盾を内包しながら働いています。そんなとき、矛盾点を指摘して正そうとするのではなく、矛盾を許容して、そのときにより良い選択ができるように支援する姿勢が重要です。
自分を客観的にみる
自分を客観的にみるとは、問題や状態を自分から切り離して客観的にみたり、考えたりすることです。「外在化」といわれることもあります。問題を自分の思考と切り離して俯瞰して考えることで、問題について冷静に向き合えるようになります。そして、自分の言動と向き合えるようになると、言動の根源にある感情や価値観を相手に伝えられるようになります。
自分を客観的にみるときのポイントは、社会的な価値観とは切り離し、自分自身の価値観に目を向けることです。
- なぜ自分はこのような気持ちになったのか
- なぜ自分はこのような発言や行動をしたのか
- なぜ意見が噛み合わなかったのか
のような問いについて一つひとつ考えることで、自分自身がどのような価値観を持っているのかがみえてきます。
誠実である
対話を成立させるためには、普段から誠実であることが最も重要です。嘘をついて隠しごとをしたり、言行が一致しなかったり、相手に感謝しなかったりする上司に、自分のことを正直に話す部下はいません。信頼は蓄積されていきます。普段から信頼を“貯金”できるように、誠実であることを意識し続けることが大切です。
管理職の対話力を向上させるならアルー株式会社へ
アルーでは、「管理職の対話力を高めたい」という企業さまに対話力向上の研修を支援をしています。1on1の品質にお困りの方はお気軽にご相談ください。
アルーの対話力向上研修事例
アルーでは、大企業・上場企業を中心とした多くの企業に管理職の対話力向上をテーマに研修を提供してきました。
金融業界のA社では、育成する意識の大切さはわかっているものの、実際に対話をしても思ったようにうまくいかない管理職が増えていました。
そこで対話をするために必要な「質問法」に焦点を当てて、4時間のスキルアップ研修を実施しました。詳しいカリキュラムを以下に記載しますので、ぜひ参考にしてください。
▼テーマ
育成スキル向上研修
▼ねらい
- 部下のやる気や能力を引き出すために必要な要素を理解する
- 部下のやる気や能力を引き出すために必要なスキルを習得する
▼内容
①オリエンテーション
研修の目的を共有し、受講者の目線をそろえます。また、インタラクティブな研修にするためにアイスブレイクをおこない、発言しやすい場をつくります。
②部下のやる気や能力を引き出す関わり方とは
なぜ人がやる気になるのかを学び、相手のやる気を引き出す質問法を習得します。また、相手の価値観や望みを理解するためにマンダラチャートを活用できるようにします。
③コーチングの科学的根拠
コーチングを裏付ける科学的な根拠について学び、学んだことが実際に現場で役立つことに納得してもらいます。
④どんな質問が機能するのか
相手に対する理解を深め、相手と対話するために必要な質問について議論します。また、ベストな質問を考える演習を通じて、現場でどうしたらいいのかのイメージを固めます。
▼このほか、組織力強化に役立つ1on1活用資料はこちらから読んでいただけます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では、“対話”に焦点を当てて、その意味や必要な理由、対話のやり方、対話と会話の違いなどをご紹介しました。
風通しの良い職場風土の醸成を目指し、対話を大事にする企業が増えている一方、実際にやってみたけどうまくいかないと悩む管理職も増えています。
対話は、うまく活用できれば、自分も部下も成長させることができるコミュニケーション手法です。本記事を参考に、ぜひ効果の高い対話活動の推進を目指してみてください。
▼組織力強化に役立つ1on1活用資料