DXの課題"DX人材不足"の現状と解決策。人事が取り組むべき施策
企業におけるDXは、今や業種や業界に関係なく注目されている重要なトピックです。
そのため、DXを推進するべく、社内でDX人材の確保に取り組む企業も少なくありません。
しかし、多くの企業ではDX人材は不足しているのが現状です。
十分なDX人材を確保するためには、DX人材の育成ノウハウを社内に蓄積する必要があります。
今回は、DX人材が不足する原因や現状、育成のために実施できる施策について解説します。
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DX人材の不足を課題としている企業は多い
DXを進めるためには、最新のテクノロジーについて豊富な知識を持つDX人材が必要不可欠です。
しかし、先述した通り、多くの企業ではDXを先導できるDX人材は不足しています。
また、最近ではインターネットを通じて自社のサービスをクラウド形式で提供する企業も増えてきており、多くのエンジニアや技術者が必要とされるようになりました。
さらには、IT市場の急拡大も日本企業におけるDX人材の不足に拍車をかけています。
まずは、DX人材不足の現状について見ていきましょう。
日本企業の5割がデジタル人材不足を痛感している
総務省は、2021年7月30日に公表した「令和3年版情報通信白書」のなかで、日本、米国、ドイツの3か国におけるDX人材の不足を指摘しています。
そのなかでも日本では、5割を超える企業が「人材不足」を課題として掲げており、これは米国の2倍に当たる数値です。
特に「DXの主導者」や「新たなビジネスの企画・立案者」といったリーダーシップの求められる人材が不足している傾向が強く、ビジネスの現場におけるDX人材不足が浮き彫りになっています。
参考:https://www.sbbit.jp/article/cont1/68883
DX人材は最大79万人も不足すると言われている
最近ではIT市場が急拡大しているにも関わらず、労働人口が減少傾向にあり、DX人材の不足は今後も当面続くといわれています。
経済産業省は平成28年6月に「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査」を実施し、そのなかで将来のIT人材の需要と供給について予測を行いました。
それによると、2030年には最大で79万人ものIT人材不足が発生するとされています。
特にAIやビッグデータといった分野では人材不足が深刻化すると予想されており、「第4次産業革命」に対応した新しいビジネスモデルの担い手不足が深刻な問題となっています。
参考:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf
DX人材への課題は人手不足だけではない
日本においては、DX人材は大幅に不足していることが分かりました。
DX人材がこれほどまでに不足している原因は複雑であり、なかには「労働人口が減っている」や「IT市場が拡大し、相対的に人材不足が加速している」といった一つの企業だけでは対処しきれないものもあります。
しかし、DX人材については企業で対処できる課題も数多くあるのが事実です。
人手不足以外のDX人材が抱える問題点について見ていきましょう。
DX人材の育成方法が分からない
DX人材を確保する手段としては、主に「採用」と「育成」の2つが挙げられます。
DX人材を確保する際、「採用」ばかりに注目してしまいがちですが、企業側が積極的に人材を育成していくことも有効な施策です。
しかし、DX人材の育成に関するノウハウが蓄積されている企業はそう多くありません。
「そもそもテクノロジーについての知識を持っている社員が少ない」や「主力となる技術系の社員が多忙で教育に時間を割けない」といったように、育成に関する課題を抱えている企業も多いです。
DX人材のための人事評価制度などが整っていない
DX人材を正しく評価するためには、DXの結果や進展具合をある程度定量化して評価する必要があります。
しかし、多くの社員にとってDXははじめての試みであり、「DXがいかに成功したか?」を評価するのが難しい場合も多いです。
また、DX人材のための評価制度が十分に整っていないという課題点も挙げられます。
特に人事部は「DX人材を適切に評価する基準を定める」「DXの進展状況を正確に把握する方法を見出す」などの施策の実施が必要です。
組織改革を行っていない
DX人材が活躍できる場所を確保するためには、DXが推進できる環境を整えることが重要です。
しかし、日本企業のなかには組織形態が極端に縦割りである場合や現場の裁量が小さい場合があるなど、旧態依然の体制を維持しているところも少なくありません。
DXが思うように進まない原因として、組織改革を行っていないということが考えられます。
DXに成功している企業のなかには、DXの専門部署を設置して課題解決に取り組んでいるところも多くあります。
DXをスムーズに進めるためには、これまでの体制にとらわれない柔軟な組織運営が必要です。
DX研修を行っても現場のDX化が進まない
DXを推進するためにDX研修を実施する企業が多くあります。
DX研修を実施することで、社員のITスキルやITリテラシーの向上、AIやビッグデータに関する知識の獲得といった効果が期待できます。
しかし、DX研修がそのまま現場のDXにつながるというわけではありません。
DX研修が上手くDX化につながっていない場合も、結果としてDX人材不足を招いてしまいます。
DX研修を行ったがなかなか現場のDX化が進まない場合、業務量の調整や組織改革など、別の切り口から解決策を考えることが必要です。
また、研修内容が実務から遠く、職場での活用イメージが抱けないことも現場のDX化が進まない原因の一つです。
研修を行う場合には、実務に近いケーススタディを実施したり、研修後の実践とそのフォローまで研修プログラムに組み込んだりすることが重要になるでしょう。
一部の社員・部署しかデジタル化しない
社員のITリテラシーやIT技術への理解には人によって幅があります。
若手社員の場合は、学生時代にIT技術やプログラミングについて勉強していたという方も少なくないでしょう。
しかし、なかにはこれまでIT技術について深く考えたことがなく、DX化の必要性をよく理解していないという方も少なからずいます。
そのような状況のなかでDX推進チームや企画系部署がデジタル化の推進をしても、ほかの部署へ広がりづらく、なかなか浸透しないということも珍しくありません。
そのため、社員のITリテラシーの底上げを図るべく、段階的にDXを進めるというような工夫が必要です。
DX人材個人における課題
DX人材育成の際には、DX人材個人がいくつかの課題を抱えている場合があります。
人事部がDX人材を育成する際、DX人材それぞれが抱えている課題をしっかりと汲み取ることが重要です。
ここでは、DX人材個人が抱えがちな課題について、代表的なものを3つ紹介します。
学習内容が難しすぎて学ぶ意欲が長続きしない
DX人材は、幅広いトピックについて学ぶ必要があります。
ソフトウェアやITツールといった基本的なものはもちろん、最近ではディープラーニングや人工知能(AI)といった技術も進歩しています。
これらのトピックを深く理解するためには、数学や統計に関する専門知識が必要不可欠です。ところが、日本の企業には「高校卒業以来、数学に触れていない」「統計を学んだことがない」という社員が多いのが実情ではないでしょうか。
そのため、多くの社員にとって専門的なDX研修の学習内容は難しく、学ぶモチベーションが長続きしないケースも少なくありません。
その場合は、受講者が興味を持てるような身近なデジタル活用から学んでもらうとよいでしょう。たとえば、いつも手作業で行っているExcelへの入力作業を自動化する、自分宛のメールが届いたらチャットに通知が届くようにする、といった内容です。
また、資格取得支援や成功体験を分かち合うなどの工夫を行い、モチベーションを維持することも有効です。
スキルを活かす場を見つけられない
いくらDX人材が豊富な知識を身につけたとしても、職場でそれを活かす場を見出せなければ意味がありません。
DX人材は、ITの力を活用した業務改善などを自ら提案することではじめて企業にとって有益なDXを実現できます。
スキルを活用する場を見つけられないといった問題も、DX人材に関する育成課題としてはありがちです。
「企業側が積極的に活躍の場を提供する」「まずは小さな業務からDXを任せてみる」など、しっかりとした育成体制を整えると良いでしょう。
キャリアに対する当事者意識が希薄
人材の流動性が増し、多様なキャリアプランが実現できるようになった昨今では、社員が自分自身でキャリアプランを抱くことが重要です。
しかし、DX人材のなかにはキャリアに対する当事者意識が薄く、自分のなりたい将来像がはっきりしていないケースも少なくありません。
そのため、DX人材を育成する際には、キャリアの形成支援も合わせて行うことが求められます。
具体的には、「ロールモデルとなるキャリアを提示する」や「DX研修と同時にキャリアプラン研修を実施する」といった対策が効果的です。
▼アルーのキャリアに対する研修については、以下の資料をご確認ください。
▼こちらのページでも詳しく解説しています。
DX人材不足を解決する方法
DX人材が不足している要因は複雑であり、さまざまな背景が絡み合って現在の人材不足につながっています。
現状のDX人材不足には、どうアプローチしていけば良いのでしょうか。
以下では、DX人材不足を解決する方法について細かく紹介します。
全社員のDX化に取り組む
DX人材を育成する際、どうしてもITスペシャリストやDX推進チームなど、高度なIT知識を持った人材育成に注力してしまいがちです。
しかし、そのような人材を育成しただけではなかなか現場にDXが浸透せず、一部の優秀な社員のみに仕事が集中してしまったり、DX推進チームの企画が現場で実践されなかったりといった問題も発生します。
DX人材不足を解消するためには、ITスペシャリストやDX推進チームといった人材だけではなく、現場で働く社員を含めた全社員のDX化に取り組むのが効果的です。
そうすることで、現場社員がデジタル活用の知識を身につけることができ、現場で取り組んでいる仕事に直接DXの考え方を応用できるようになります。
また、DX推進チームの企画を実践し、現場ならではの知識を活かしたフィードバックを行うことで、より効果的なDX推進を行えるでしょう。
企業全体で危機感を持って取り組む
DXは、今や業種や業界を超えて重要視されている概念ですが、社員のなかには「DX」と聞いてもあまりピンとこないという人も多いかもしれません。
DXを効率的に進めるためには、企業全体で危機感を持って取り組むことや意識醸成の視点が非常に大切です。
具体的には「そもそもDXとは何か?」「DXはなぜ必要か?」といった基本的な内容を研修でレクチャーするなどの施策が考えられます。
DXの啓蒙には、eラーニングによる学習も効果的です。
アルーでは、eラーニングで受講可能なDXのためのプログラム「DXビギンズ!」を提供しています。
▼詳しくは、以下のページをご確認ください。
外部のコンサルタントに委託する
最近では、企業のDX支援を行うコンサルティング企業も増えてきました。
これらの企業にDXを委託することで、より効果的で質の高いDXを実施することができます。
外部のコンサルタントに依頼する場合は、業務効率改善に向けた施策など、基本的な事柄を委託するケースと、新規事業の創出段階から委託するケースの2つに分けることができます。
一言でDXコンサルといっても、それぞれの企業のノウハウや得意領域は千差万別です。
まずは小規模な案件を委託して、その結果を見ながらより付加価値の高い抜本的なDXを委託するのがおすすめです。
DX人材を中途採用する
最近は働き方改革の進展もあり、人材の流動性が高まっています。
なかでもDX人材の中途採用市場は注目度が高く、ITに関する知識を持った多くの求職者が転職を志しているのが特徴です。
そのため、DX人材確保のために中途採用を検討するのも良い施策です。
中途採用のDX人材は、新卒で自社が採用した社員にはないユニークな経験や知識を持っているケースも多く、思いもよらないアイディアが生まれるかもしれません。
DXの成功事例を共有する
DXを進める際は、成功事例を社内で共有しながら進めていくと良いでしょう。
どんなに小さい成功体験でも、まずは「DXが上手くいった」ということを分かち合うことが大切です。
ほかの社員のDX成功体験を耳にすれば、「〇〇部でこのようなデジタル化が成功したのだから、我々の部でも応用できるのではないか」や「〇〇部にはこのノウハウがあるから、困ったら聞いてみよう」といったように、デジタル化の成功イメージがつきやすくなります。
また、部署間でお互いに刺激し合うことで、DX化へのモチベーションの向上も期待できるでしょう。
資格取得支援制度を充実させる
DXに関連する知識は幅広く、途中で挫折してしまうケースも少なくありません。
この場合は、企業側が資格取得を支援することが効果的です。
IT領域には数多くの資格試験が存在します。
たとえば、「ITパスポート」や「データサイエンティスト検定」、「G検定」といったものが有名です。
これらの資格を取得した社員へ補助を行うことで、資格取得を促進するのも有効です。
資格取得者数がデジタル化進展の指標にもなるとともに、「〇〇試験合格」といった具体的な目標があることで、学習のモチベーションを維持することができるでしょう。
DX人材を育成する方法
DX人材に関するありがちな課題と、その解決策について見てきました。
DXの人材不足を解消するためには採用と育成の大きく2つが考えられますが、なかでも育成は企業のITノウハウを底上げできる効果的な対策です。
ここでは、DX人材を育成する方法について解説します。
なお、DX人材育成方法についてより詳しくは以下の記事をご参照ください。
『DX人材の育成ステップとポイントをわかりやすく解説【育成事例あり】』
育成の優先順位をつける
DX人材を育成する際には、まず「どの社員を対象として教育するのか?」を明確にしましょう。
育成の際に優先順位をつけることで、具体的にどのような内容を教育すれば良いのかが見えてきます。
また、デジタル知識の習得には長い時間と努力が求められるため、意欲が低い人は学習を続けられないかもしれません。
優先順位をつける際には、意欲の高い人を優先することがポイントです。
また、会社全体へ与える影響の大きい管理職などを優先的に教育するのも手です。
今のデジタルスキルの有無にとらわれず、幅広い観点から優先順位を決定しましょう。
自業務の課題解決とデジタルとの繋がりをイメージしてもらう
いくらITツールの使い方や人工知能についての知識を身につけてもらったとしても、それを業務に活かせなければ意味がありません。
DX人材を育成する際には、「自業務の課題解決にどうすれば繋げられるのか?」という視点を常に意識してもらうようにしましょう。
また、「上から指示されて行う学習」ではどうしても学習意欲を保ちにくいものです。
自分が今学んでいる内容と普段取り組んでいる業務との関わりが見えてくれば、「学習を続けよう」というモチベーション向上にもつながります。
基礎知識の習得にはeラーニングも効果的
デジタルに関する知識は多岐にわたります。
データサイエンスなど数学的な知識から、ITツールの使い方まで幅広い内容を教育するためには、eラーニングを活用するのも効果的です。
特にインターネットに関連する知識や近年研究の盛んな人工知能については日々の技術進歩も目覚ましく、「数年前に出版された本が既に時代遅れ」という場合も少なくありません。
eラーニングを用いれば最新の動向をキャッチアップした教育ができるため、DX人材育成とも相性が良いといえるでしょう。
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まとめ
DX人材育成に関する課題と、その解決策について解説してきました。
冒頭に紹介したようにDX人材育成に課題を抱えている企業は多く、特に半数近くの企業がDX人材は不足しているといわれています。
DX人材不足を解消するためには、DX人材育成に力を入れることはもちろん、DX人材育成において発生している課題を一つ一つ解決していくことが重要です。
ぜひこの記事の内容を参考にDX人材育成に取り組み、効果的なDXを進めていってください。DX人材の育成・研修についてお悩みの方は一度ご連絡ください。
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