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エビングハウスの忘却曲線とは?復習のタイミングや活用方法をわかりやすく解説

エビングハウスの忘却曲線という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
エビングハウスの忘却曲線を正しく理解すれば、人材育成の効果を向上させることができるようになります。この記事ではエビングハウスの忘却曲線の定義や、エビングハウスの忘却曲線を研修に活用する方法について解説します。

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目次[非表示]

  1. 1.エビングハウスの忘却曲線とは
  2. 2.エビングハウスの忘却曲線を活用した事例
  3. 3.ビジネスにおけるエビングハウスの忘却曲線
  4. 4.ビジネスにおいてエビングハウスの忘却曲線を活用する方法
  5. 5. エビングハウスの忘却曲線を活用する際のポイント
  6. 6.エビングハウスの忘却曲線を活用した研修事例
  7. 7.理論に基づいた人材育成ならアルーへお任せください
  8. 8.まとめ


エビングハウスの忘却曲線とは


エビングハウスの忘却曲線とは、人が忘却するメカニズムを表したグラフのことです。ドイツの心理学者であるヘルマン・エビングハウス(Hermann Ebbinghaus)が考案したものであり、中長期の記憶や忘却の仕組みを示す参考文献として、現在でもビジネスに限らずさまざまな分野で活用されています。
エビングハウスの忘却曲線には、復習にかかる時間がグラフ形式で示されています。

エビングハウスの忘却曲線


縦軸には「節約率」、横軸には「時間」を取っており、グラフには反比例の形が現れるのが特徴的です。これは、時間が経てば経つほど、人間は記憶を忘れていくことを示しています。


エビングハウスの忘却曲線では、復習によって記憶の忘却の仕方が徐々に緩やかになります。これは、復習すればするほど、徐々に短い時間で記憶を取り戻せるようになることを示しています。また、復習までの時間が短いほど、素早く記憶を取り戻せるのもポイントです。


節約率

節約率とは、「知識を再び学習する際、どのくらい時間を節約することができるか」という復習効率を表す数値のことです。具体的には、以下の式で求めることができます。

節約率={(最初に要した時間) – (覚え直すのに要した時間)}÷ (最初に要した時間)

例えば、初めて学習する際に10分かけて覚えた物事があるとします。同じ物事を60分後に再び記憶する時、5.6分で記憶することができたとしましょう。この場合、節約率の式に当てはめて計算すると、節約率は44%となります。つまり、60分後に復習した際には、最初の学習に比べて44%の時間を節約できたということです。この「節約できた割合」が、節約率に相当します。


復習のタイミングは3回に分けるのがベスト

研修内容を復習するタイミングは、3回に分けるのがベストです。
研修で扱った内容を復習しない場合、多くの人は30日後にはほとんどの知識を忘れてしまいます。一方、定期的に復習を行うことで、徐々に知識を思い出す時間を短縮することが可能です。
具体的には、以下の3つのタイミングで復習するのがおすすめです。

  • 研修から24時間以内に10分の復習をすると、記憶が100%(研修直後の状態)に戻る
  • 研修から1週間後に2回目の復習をすると、5分で記憶を取り戻せる
  • 研修から1ヶ月後に3回目の復習をすると、2~4分で記憶を取り戻せる

1日後、1週間後、1ヶ月後のそれぞれのタイミングで復習を行えば、研修内容を効率的に思い出せるようになり、知識が長期的に定着します。

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エビングハウスの忘却曲線を活用した事例


エビングハウスの忘却曲線は、さまざまな分野で活用されています。ここでは、エビングハウスの忘却曲線を活用して、記憶の定着を支援した事例を2つ紹介します。


忘却曲線に合わせた復習システム


日本デジタルゲーム学会の第13回年次大会では、忘却曲線に基づくテスト対策支援システムを開発する研究が発表されました。
本研究では、エビングハウスの忘却曲線を学習教材へ応用することを目的に、エビングハウスの忘却曲線の理論に基づいた復習を行うゲームを開発しました。具体的には、以下のようなタイミングでの復習フローが提案されています。

  • 24時間経過後に、間違えた問題の復習を行う
  • 1週間、1ヶ月経過後には、学習したすべての問題の復習を行う

最適なタイミングでの復習を行うことで、学習者の学習効率向上を目指している応用事例です。
参考:

日本デジタルゲーム学会「忘却曲線に基づく CBT テスト対策支援システムの試作」


記憶定着を助けるVRシステム


米国のメリーランド大学では、エビングハウスの忘却曲線を応用した記憶の定着を補助するVRシステムの開発研究を行っています。


本事例では、「メモリーパレス」と呼ばれる記憶法に着目しています。メモリーパレスとは、馴染み深い場所に物事を配置する様子をイメージして、記憶の定着を行う記憶法のことです。本研究ではメモリーパレスを「VRで行う場合」と「デスクトップ画面で操作して行う場合」の2つで比較し、どちらが記憶の定着率が高いか実験しています。


その結果、VRシステムを活用したグループの方が、平均して8.8%ほど平均の正答率が高いという結果が得られました。これにより、VRなどの没入型の仮想現実は、人間の記憶定着を高める可能性があることが明らかになっています。


VR技術との組み合わせにより、忘却曲線を現代のテクノロジーと融合させ、より実践的な活用イメージを示した事例です。
参考:Virtual memory palaces: immersion aids recall


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ビジネスにおけるエビングハウスの忘却曲線

エビングハウスの忘却曲線は、ビジネスにも活用することが可能です。
これまで、エビングハウスの忘却曲線は中高生の勉学や資格取得などの学習面に活用されてきました。これは、記憶定着に有効な復習方法がわかれば、テストや試験までの学習計画を立てやすくなるためです。
一方、専門的な知識・スキルが必要になる業界でも、エビングハウスの忘却曲線とビジネスとの関係性は深いと考えられています。エビングハウスの忘却曲線をもとに最適なカリキュラムを組めば、人材教育のコストや手間を抑えることが可能です。
例えば、社内教育や外部のセミナーを受けたあとに、エビングハウスの忘却曲線をもとにした復習プログラムを実施するといった活用法が考えられます。こうした復習プログラムがあれば、効率的にスキルアップを図れるようになるでしょう。また、経営者や教育担当者自身の学習にも、エビングハウスの忘却曲線を活用した復習を取り入れることが可能です。


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ビジネスにおいてエビングハウスの忘却曲線を活用する方法


ビジネスにおいてエビングハウスの忘却曲線を活用するためには、以下のような方法があります。

  • 研修後に復習の機会を設ける
  • 日報などで1日の振り返りを行う
  • フォローアップ研修を実施する

エビングハウスの忘却曲線を活用して最適なタイミングでの復習を実施すれば、研修内容を効果的に定着させられるようになり、学習効率が向上するでしょう。エビングハウスの忘却曲線をビジネスにおける人材育成に活用する方法を解説します。


研修後に復習の機会を設ける


エビングハウスの忘却曲線を活用する方法として、研修後に復習の機会を設ける方法が挙げられます。
例えば新入社員研修を実施したあとは、1日後に前日の内容を復習する機会を設けましょう。そして、1週間後、1ヶ月後にもそれぞれ復習の機会を設け、記憶の定着をサポートします。こうすることで、研修内容の定着がスムーズに進み、研修の効果が上がりやすくなります。
また、学んだ内容を毎回その次の日に復習するようにすれば、それに続く内容も飲み込みやすくなります。「わからない状態で先に進んでしまった」という事態を防げるため、学習意欲の低下を防ぐことも可能です。


日報などで1日の振り返りを行う


日報などを利用して1日の振り返りを行うのもおすすめです。
例えば毎日業務時間の最後に日報を書く時間を設け、その日に学んだことやポイントをまとめてもらうようにしましょう。日報にまとめる際には、その日に学んだことを頭の中で再度整理する必要があるため、記憶の定着が進みます。また、あとから以前書いた日報の内容を読み返すことで、一から学習し直すよりも効率的に復習を進めることができるでしょう。


フォローアップ研修を実施する

エビングハウスの忘却曲線を活用する方法として、フォローアップ研修を実施することも挙げられます。
例えば研修実施後1ヶ月のタイミングで再度社員に集まってもらい、学んだ内容を復習してもらうのがよいでしょう。フォローアップ研修を通じて研修内容を思い出すことで、以前学んだ記憶を長期的に定着させることができ、研修参加者同士の関係構築を後押しすることもできます。特に新入社員の場合は、横のつながりを維持する意味でも、フォローアップ研修の実施が重要です。

フォローアップ研修は、特に新入社員研修では必ず実施しましょう。新人フォローアップ研修の目的やおすすめの内容は、以下のページで詳しく解説しています。
新人フォローアップ研修とは?目的やおすすめの内容を解説
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監修者からの一言
ビジネスにおいてエビングハウスの忘却曲線を活用する方法の一つは、マイクロラーニングです。集合研修やeラーニングを実施した後に「1〜5分程度で終わる動画やWebコンテンツ等で、従業員が好きなタイミングに自学する学習スタイル」を取り入れることで研修での学びを忘れずに定着させることができます。LMSのような学習管理システムやスマートフォンのアプリ、ツールを用意できると、運用もスムーズに行えます。

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エビングハウスの忘却曲線を活用する際のポイント


エビングハウスの忘却曲線を活用する際には、いくつか意識しておきたいポイントが存在します。具体的には、以下の5点を意識しながら取り組むとよいでしょう。

  • 事前調査をしてから研修スケジュールを立てる
  • 忘れることを前提に研修プログラムを設計する
  • マイクロラーニングを取り入れる
  • インプットとアウトプットを繰り返し行う
  • フィードバックを必ず行う

ここからは、エビングハウスの忘却曲線を活用する際に気をつけておきたいポイントを解説します。


事前調査をしてから研修スケジュールを立てる


エビングハウスの忘却曲線を活用した研修を企画する際には、事前調査をしてから研修スケジュールを立てるようにしましょう。


例えば繁忙期に研修を実施するケースでは、24時間後、1週間後、1ヶ月後のすべてに復習を行うことは現実的でないでしょう。フォローアップ研修を実施する際も、日常業務に追われて都合がつかない社員がいる可能性が考えられます。


また、エビングハウスは忘却曲線を作成する際に「意味を持たない音節の記憶」に関する実験を行っています。そのため、エビングハウスの忘却曲線は、対象者が全く興味を持っていない情報を記憶した際のグラフと言えます。対象者が強い興味を持っている内容を扱う場合には、エビングハウスの忘却曲線に示されている忘却率は異なる結果になるでしょう。


研修を実施する際には事前調査を徹底し、エビングハウスの忘却曲線を活用できるスケジュールなのか、エビングハウスの忘却曲線の適用が適した分野なのかを見極めるのが大切です。


忘れることを前提に研修プログラムを設計する


研修プログラムは、社員が内容を忘れることを前提に組むのが大切です。
研修担当者は、ついつい「一度研修で扱ったから覚えているだろう」と考えてしまいがちです。しかし、一度研修を受けただけの状態だと、時間が経つとほとんどの内容を忘れてしまいます。「研修時間の最初に、前回学んだ内容の復習を組み込む」「研修から1ヶ月後にフォローアップ研修を実施する」など、研修内容は時間が経てば忘れることを前提にしたプログラムを組みましょう。


マイクロラーニングを取り入れる


研修内容を定着させるためには、マイクロラーニングを取り入れるのもおすすめです。
マイクロラーニングとは、1〜10分程度で行う短時間での学習のことです。マイクロラーニングを実施すれば、学習者の負担を軽減しながら、効率よく学習を進めることができます。


マイクロラーニングは、エビングハウスの忘却曲線を活用した復習とも相性が良いです。例えばコンテンツが細分化されていれば、ピンポイントで必要な内容を復習しやすくなります。また、復習を3〜4回と繰り返し行う際も、コンテンツが短尺化されていれば負担が少ないです。マイクロラーニングを取り入れて、エビングハウスの忘却曲線に沿った復習をしやすい環境を整えてみましょう。


インプットとアウトプットを繰り返し行う


エビングハウスの忘却曲線を用いた復習を行う際には、インプットとアウトプットを繰り返し行うのもポイントです。
研修というと、どうしても知識を習得するインプット偏重の内容となりがちです。しかし、講師の話を聞くインプットだけでは、なかなか記憶が定着しません。また、一度に大量の内容をインプットしたとしても、それを記憶し続けるのは難しいでしょう。
研修プログラムを組む際には、アウトプットの内容も重視するのがおすすめです。例えば周囲の社員とディスカッションを行う、グループワークでプレゼンを実施するなど、社員が主体的にアウトプットする機会を増やすとよいでしょう。

フィードバックを必ず行う


研修の復習を行う際には、フィードバックも必ず実施しましょう。
例えば、単に「研修の復習をして欲しい」と伝えるだけでは、なかなか復習が習慣化しません。復習には一定の労力を割く必要があるため、社員自身に復習の必要性を感じてもらうのが大切です。
フィードバックを行えば、社員に自然な流れで復習の大切さを認識してもらうことができます。社員のできていた点、できていなかった点を丁寧に指摘することで、社員は指摘された点を丁寧に見つめ直すため、効果的な復習につながるでしょう。
なお、フィードバックを提供する際には、日頃から相手との信頼関係を構築しておくことが大切です。

フィードバックの際の効果やポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。
フィードバックの意味とは?効果・実施する方法・ポイントをわかりやすく紹介

監修者からの一言

エビングハウスの忘却曲線を活用する際のポイントとして、上述のようなマイクロラーニングやフィードバックなどがあります。また、アウトプットの1つとして小テストを行うのもおすすめです。100点を取るまでは学習を完了できないようにし、必ず復習を行える環境を用意すると効果的です。


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エビングハウスの忘却曲線を活用した研修事例


エビングハウスの忘却曲線を活用する際には、すでに活用に成功した研修事例が参考になります。ここからは、弊社アルーがこれまでに実施した研修の中から、エビングハウスの忘却曲線を活用した代表的な事例を2つ紹介します。
エビングハウスの忘却曲線を活用した研修の具体的な流れやポイントについて知りたい方は、ぜひ参考にしてください。


新入社員研修後の振り返り事例


アルーでは、新入社員研修を実施したあとに振り返りを実施して、記憶の定着を後押ししています。
A社では、新入社員研修期間中に「学びっぱなし」「やりっぱなし」という状態が続いているという課題がありました。そこで、アルーでは徹底した振り返りの機会を設け、新入社員の定期的な復習を習慣化しています。具体的には、毎週30分の時間を割き、以下のような合計17個の観点で振り返りを実施しました。

  • 学びのポイント
  • 自己成長力
  • グループワーク
  • 成長度

これにより、研修後に実施したアンケートでは、8割を超える社員が自身の成長を感じたと回答しています。また、「相手の意見を尊重する姿勢が身についた」「業務効率が向上した」など、学んだ内容が習慣化することで効果を実感できたという声を多くいただきました。


サーベイを利用した振り返り事例


B社では、研修後のフォローアップが不十分で、社員一人ひとりに合ったサポートを提供できていないという課題がありました。
そこで、サーベイを利用した振り返りを促進し、研修内容の定着を実現しています。社員を対象としたサーベイを実施する際には、アルーの提供しているサービスである「Compath」を活用しました。Compathを用いて、社員の能力の伸び、学習内容の定着度合いを可視化した結果、社員一人ひとりの状態に合わせたフォローができるようになり、学習効率の向上に成功しています。


Compathの導入後には、「研修後のフォロー施策が効率化した」「育成効果を可視化できるようになり、経営層への結果共有がスムーズになった」など、人事担当者様から多くの講評の声をいただきました。

アルーが提供しているCompathについてさらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
Compath(職場学習支援サーベイ)


▼サービス資料ダウンロード


  『compathのご紹介』資料ダウンロード 行動変容にこだわる職場学習支援システムのご紹介資料です。 アルー株式会社


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理論に基づいた人材育成ならアルーへお任せください


理論に基づいた人材育成の実施なら、ぜひアルーへお任せください。
人材育成を手掛けているアルーでは、エビングハウスの忘却曲線を始めとした、さまざまな理論に基づく人材育成を実施しています。研修内容の定期的な復習はもちろん、インプットとアウトプットを併用した学習効果の高い研修を行っているのが特長です。
また、研修カリキュラムはお客様の企業が抱える課題に合わせて、柔軟にカスタマイズすることができます。理論に基づく効果的な研修プログラムの立案段階からサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。



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まとめ


エビングハウスの忘却曲線について、定義や活用方法、活用事例などを中心に解説しました。
研修で一回学んだだけの知識は、時間が経つとどうしても忘れてしまうものです。エビングハウスの忘却曲線を活用した最適なタイミングでの復習を実施すれば、研修で学んだ内容を長期にわたって効率よく記憶することができるようになります。ぜひこの記事で解説した内容を参考にしながら、研修内容の復習に力を入れた効果的な人材育成を実現してみてください。

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アルー株式会社
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20年以上、企業向けに人材育成コンサルティングや研修を提供してきた。新入社員・管理職といった階層別研修や、海外駐在員やグローバルリーダーなどのグローバル人材育成、DX人材育成に強みを持つ。その実績は取引企業総数1400社以上、海外現地法人取引社数400社以上に及ぶ。京都大学経営管理大学院との産学連携など、独自の研究活動も精力的に行っている。
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