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経験学習型リーダーシップ開発とは?経験学習型リーダーシップ開発の事例や効果、留意点を解説
みなさんは、「リーダーシップ開発」という言葉を聞いたことがありますか?
リーダーシップを発揮する、という言葉はよく聞きますが、リーダーシップを開発する、という言葉はなかなか耳にしないのではないでしょうか。
シェアド・リーダーシップのコラム では、“リーダーシップとは誰でも発揮可能である”ということを紹介しました。この前提に則って、“リーダーシップをどのように開発(強化)するのか”ということを研究した分野が、リーダーシップ開発です。
今回は、リーダーシップ開発の手法について分かりやすくご紹介しつつ、その中でも経験学習型リーダーシップ開発にスポットライトを当てていきます。
目次[非表示]
リーダーシップ開発の2つの型
Off-JTでリーダーシップを開発する手法には、2種類の型があります。
知識・スキル型
知識・スキル型は、リーダーシップ自体に関する知識や論理思考・コミュニケーションといった、スキル面を強化する形の学びです(舘野 2019) 。 これにより、知識・スキルという表層的な面から、リーダーシップの発揮を促進することができます。
こちらのコラムでご紹介している通り、リーダーシップを発揮できる人は高い能力・スキルを持っています。それらの能力・スキルを養うための学びの場が、知識・スキル型のリーダーシップ開発にあたります。
経験学習型
もう1つは、リーダーシップを発揮する経験を通して学ぶ、経験学習型です。
経験学習型は実際にリーダーシップを発揮した後、その経験をもとに内省することでリーダシップを学ぶ手法のことです(舘野 2019)。これにより、深層的な自己の価値観を見直したり(セルフアウェアネス)、それにもとづいてリーダーシップ行動の変化・定着を促すことができます。
経験学習とは
そもそも経験学習とは、デイビッド・コルブによって提唱された理論です。
上の図にあるように、経験学習とは、
- 能動的で具体的な経験を積む
- それらを内省して自身の中に概念として定着させることで、次なる経験に活かす
というサイクルからなっています。
つまり、経験をもとに成長するフレームワーク、ということです。
このように、リーダーシップ開発には「スキル・知識型」と「経験学習型」の2つの型があります。本記事では、2つ目の型である、経験学習型リーダーシップ開発についてさらに詳しくご紹介します。
経験学習型リーダーシップ開発の事例
経験学習型リーダーシップ開発について簡単にご紹介してきましたが、まだ具体的なイメージが湧かない方もいらっしゃるのではないでしょうか?ここからは、経験学習型リーダーシップ開発の実例についてご紹介しながら、経験学習型リーダーシップ開発がどのように実践されているのかをご理解いただきたいと思います。
今回取り上げる事例は、北海道の美瑛町でおこなわれた、異業種5社の民間企業に勤める若手管理職を対象にした、アクションラーニング型のリーダーシップ開発研修です(中原 2019)。
この研修は、異業種の企業から幹部候補を5人程度ずつ集め、美瑛町の地域課題解決をおこないます。つまり、地域課題解決が「経験」の部分にあたります。
具体的には、集められた異業種の幹部候補で4〜5人のグループに分かれ、最終的に美瑛町長にグループごとにプレゼンテーションをおこないます。これにより、受講者が本気で地域課題解決に挑める状況を作り、リーダーシップを自発的に発揮してしまう環境を作り出します。そして、その経験を内省することで、幹部候補らのリーダーシップの成長を促すのです。具体的には、地域課題解決を共にしたグループメンバーで相互にフィードバックをおこない、それを踏まえて個人で振り返ります。これにより、ジョハリの窓における「盲点の窓」を開くことができるので、自身のリーダーシップ発揮についての自己認識が促進され、振り返りの質が格段と向上します。
この研修を、先述した経験学習型リーダーシップ開発のサイクルに照らし合わせると、以下のように置き換えることができます。
- リーダーシップを発揮する経験の場=美瑛町の地域課題解決のプランを、異業種の幹部候補が集められたグループで発案する
- その経験を内省する場=課題解決を共にしたグループ内でお互いにフィードバックし、それを踏まえて自身のリーダーシップ行動を振り返る
このように、経験学習型リーダーシップ開発は基本的な型として
- リーダーシップを発揮する経験の場
- その経験を内省する場
のサイクルで構成されており、その「経験の場」と「内省の場」をいかにデザインするか、によって研修の内容が変わってくるのです。
経験学習型リーダーシップ開発の4つの効果
ここまで、経験学習型リーダーシップ開発の基本的なサイクルや、事例についてご紹介してきました。それでは、そんな経験学習型リーダーシップ開発にはどのようなメリットがあるのでしょうか?経験学習型リーダーシップ開発には以下の4つの効果が期待できると言われています。
リーダーシップへの理解が深まる
リーダーシップの基本的な考え方、つまり”リーダーシップとは誰もが発揮可能である”という考え方を体感できます。知識・スキル型と経験学習型の最も大きな違いは、「リーダーシップを体感できる」という点です。頭では分かっていても、いざ職場に行くとリーダーへの固定観念を感じてしまう方もいるのではないでしょうか?経験学習型で「リーダーシップは誰もが発揮できるものだ」という認識を、自身の経験と共に落とし込んでいくことで、リーダーシップへの理解が深まります。
自己理解が深まる
実践を通して、自分らしいリーダーシップとは何かを知ることができます。経験学習型は、リーダーシップを発揮して終わりではなく、「内省」することで成長を促します。そして、自身のリーダーシップが発揮されている場にいる同じグループのメンバーからフィードバックをもらうことで、「盲点の窓」が開き、さらに自己理解が深まります。
協働性が身につく
自分だけが良い思いをするのではなく、グループやグループメンバーのために何ができるかを考えるようになります。グループメンバーと一定期間を共にし、グループとして成果を出すことが求められるので、独りよがりではなく、仲間と協働しながら成果を高める姿勢が身につきます。
専門知識・スキルが身につく
実践を通して、経験の内容にもとづいた専門知識やスキルを獲得できます。ここでの専門知識・スキルとは、「経験の場」で必要となる知識やスキルのことを指します。例えば美瑛町の地域課題解決であれば、課題発見スキルや分析力、美瑛町についての理解も深めることができます。
このように、経験学習型リーダーシップ開発では多くの効果があることが分かります。そして、受講者はこれら4つの効果を獲得することで、職場でもリーダーシップを発揮できるようになっていく、つまり行動変容を促せるのです。
経験学習型リーダーシップ開発の3つの留意点
経験学習型リーダーシップ開発には多くの効果があることが分かりました。それでは、留意点となるデメリットはあるのでしょうか?留意点は、3つ挙げられます。
コスト
1つ目は、実施するために費用面・時間面においてコストがかかることです。運営側は、リーダーシップを発揮できる環境作りをおこなうため、綿密なオペレーションを組んだり、受講者が所属する企業との連携を図ったりする必要があります。受講者側も、業務時間外に課題に取り組んだり、自身のあり方やグループメンバーとの関係性と向き合う必要があります。
研修時間外にもグループワーク等の時間が確保できるなら問題はありませんが、普段の業務がある中で、並行して経験学習型リーダーシップ開発の研修をおこなうことの難しさはハードルになるといえます。
失敗するリスク
2つ目は、「経験の場」として失敗してしまうリスクがある、ということです。具体的には、グループ内でフリーライダー(手抜きをしてしまう人)が発生することなどにより、リーダーシップを発揮する機会が失われてしまう可能性もある、ということです。一方で、「内省の場」をしっかりと作ることができれば、その失敗から学ぶことも可能なので、運営側のフォロー次第で取り返しはつくといえます。
体系的な学びとならない可能性
最後に3つ目は、リーダーシップについて体系的に学べるとは限らない、ということです。受講者は経験をもとに学ぶので、経験の内容によってリーダーシップへの捉え方や学びの内容が変わってきます。そのため、リーダーシップの種類などについて体系的に学ぶことはできません。これについては、冒頭でご紹介した知識・スキル型と並行しながら経験学習型を実施することで、それぞれのリーダーシップ開発手法において不足している部分を補い合うことができます。
リーダーシップ開発ならアルーにお任せください
アルーは、人材育成を専門に手掛けている企業です。階層別研修やテーマ別研修はもちろん、リーダーシップを開発するための研修も数多く実施した実績があります。
リーダーシップ研修をご検討の場合は、ぜひアルーへお任せください。豊富なノウハウに裏打ちされた、質の高い研修のご提供が可能です。ここからは、アルーのリーダーシップ研修の内容を紹介させていただきます。
リーダーシップを開発する研修事例
アルーでは、これまでに業界を問わず数多くの企業でリーダーシップ研修のお手伝いをしてきました。いずれの事例でも、それぞれの企業様の抱えているビジネス課題に合わせて、柔軟にカスタマイズした研修を提供したのが特徴です。
ここでは、アルーがサポートしたリーダーシップ研修の事例を1つご紹介します。
東急株式会社 リーダーシップ研修
社会やビジネス環境の重要な変化に対応するため、東急株式会社様は育成施策の見直しを行っていました。この取り組みの中でアルーがサポートさせていただいたのが、「インサイドアウトのリーダーシップ」を実現するための研修プログラムです。
この事例では、2022年の8月から12月にかけて、計10日間にわたるプログラムが展開されました。8月〜9月の研修の初期段階では、課題設定や戦略策定に必要な知識を中心に提供し、その後は実際の業務現場での実践を重視しました。2回のワークショップでは、実務経験をもとにした振り返りを行い、更なるリーダーシップの向上を図っています。
詳しい事例は、以下のページをご確認ください。
経営人材の鍵は、矛盾を両立するインサイドアウトのリーダーシップ(東急株式会社)
まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では、リーダーシップ開発の2つの型のうち、経験学習型リーダーシップ開発を特に取り上げ、事例や効果、留意点、研修事例をご紹介しました。
かつては天性のものだと考えられていたリーダーシップですが、近年では研修を始めとした教育施策によって社員のリーダーシップを伸ばすことを重要視する企業が非常に多いです。アルーでは、社員のリーダーシップを伸ばすための研修を豊富にご用意しております。外部環境を活用した経験学習型の研修も可能です。
ぜひこの記事の内容を参考に経験学習型リーダーシップ開発への理解を深め、社員のリーダーシップを効果的に伸ばしていきましょう。
● 参考文献
○ 舘野泰一、高橋俊之、2019、『リーダーシップ教育のフロンティア【研究編】:高校生・大学生・社会人を成長させる「全員発揮のリーダーシップ」』北大路書房
○ 中原淳、2019、『リーダーシップ教育のフロンティア【研究編】:高校生・大学生・社会人を成長させる「全員発揮のリーダーシップ」』北大路書房、113-128
○ Kolb, D. A. 1984. Experiential Learning: Experience as the Source of Learning and Development, Prentice Hall.