
トリプルシンキングとは?社員が3つの思考法を使うことのメリットと使い分け方、鍛え方を解説
この十数年のうち、さまざまなものが急速に変わりました。技術の進化、市場の変化、パンデミックの影響による生活の変化など、もはや全てのものが常に変わり続ける世の中になったともいえます。常に変わり続ける世の中とは、これまで通用した常識がすぐに廃れてしまうことを意味しており、その中で働く私たちも常に新しい情報を取り入れながら、最善の道を考えることが求められています。また、ビジネスパーソンとしての評価も、知識量やこれまでの経験だけでなく、「どんな状況でも自身の判断で情報を処理し適切に行動できるか?」といった思考力とそれに基づいた行動力が重要視されるようになりました。
本記事のテーマは、「トリプルシンキング」。今持っている情報と新たな発想を最大限に活用し、最適な答えを導き出す3つの思考法について解説します。
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トリプルシンキングとは
トリプルシンキングとは、その名称のとおり3つの思考法をひとつにまとめた呼称です。その3つの思考法とは、「ロジカルシンキング」「クリティカルシンキング」「ラテラルシンキング」です。これらは論理的思考、批判的思考、水平思考と言い換えることができます。
以前からこの3つの思考法は、それぞれがビジネスパーソンにとって必要とされていました。しかし、近年この3つは同時に必要という意味から、3つの思考法をあわせて「トリプルシンキング」と呼ばれるようになりました。
トリプルシンキング(3つの思考法)の違い
ロジカルシンキングは「情報の整理」、クリティカルシンキングは「思い込みの排除」、ラテラルシンキングは「新たな発想」など、ポイントとしているところが異なっています。状況に応じて、この3つの思考法を使い分けることで、より精度の高い思考ができるようになります。
また、この3つの思考法の関係はお互いのウィークポイントを補う関係にもなっています。たとえば、情報の整理はうまくできても、今ある前提や自身が考えたい方向性でしか考えられないようなとき。これは、ロジカルシンキング(論理的思考)は強化できているが、クリティカルシンキング(批判的思考)が不足しているケースです。今ある前提や思い込みは排除して考えようとしているが、肝心な新しい発想がなかなか出てこないとき。これはクリティカルシンキング(批判的思考)は強く意識しているが、ラテラルシンキング(水平思考)が不足しているケース。これまでとは違う考え方や新たな情報を参考にして、色々とアイデアは出てきているが、それらをうまくまとめられず、整理した結果にダブりや漏れが生じているとき。これはラテラルシンキング(水平思考)は出来ているが、ロジカルシンキング(論理思考)による情報の構造化ができていないケースです。
何かを考えたり多くの情報を整理して結論を出すときは、
- 情報の誤りや必要以上のバイアスは事前に排除し(クリティカルシンキング)
- これまでの考え方に囚われず広い視野で情報を集め(ラテラルシンキング)
- 因果関係の明確化や情報の構造化が適切にできれば(ロジカルシンキング)
結果は間違いなく今の時代にも通用する価値あるものになります。これがビジネスパーソンにトリプルシンキングが求められる理由です。
トリプルシンキングの使い分けと具体例
ここからは、トリプルシンキングの使い分けと、それぞれの思考法が求められる具体的な事例をご紹介します。
ロジカルシンキングの特徴と使いどころ
ロジカルシンキングとは「論理的思考」ともいわれ、思考法としては最もポピュラーなものです。そしてロジカルシンキングの特徴(ポイント)が、「情報の構造化」と「因果関係の明確化」です。
情報の構造化とは、ひとつの情報に対し構成要素を見極め分解したり、複数の情報を共通点ごとにまとめたり、時系列による整理、結論と理由の関連付けなど、さまざまな情報と情報の結び付きを明らかにして整理することです。
因果関係の明確化とは、結論や事象に対して、「それはなぜか?」という根拠や原因を明らかにすることです。また、根拠や原因から「だから、◯◯◯となる」という原理や先の展開を考える場合もあります。
ビジネスパーソンとして、仕事やプロジェクトを開始するときや誰かに説明するときなど、仕事で何らかのアクションを起こす際は、必ずその目的であり行動の根拠が必要です。この目的や根拠があいまいなアクションは、実行できたとしても結果が不完全だったり、誤った内容になることがあります。そうならないために、日頃のコミュニケーションからロジカルシンキングを意識し、自身のアクションの質を向上させることが必要です。
ロジカルシンキングが特に必要とされる場面
<プロジェクト計画作成>
プロジェクトの背景、目的、対応方針、実施内容、対応期限、リスクなど、さまざまな情報を取り扱い、それを明示するのがプロジェクト計画です。またプロジェクト計画では、それらすべての情報が、「それはなぜか?」「だから、◯◯◯となる」というかたちで正しく関連づける必要があります。このような場面ではロジカルシンキングでの情報の構造化が特に必要となります。
<問題解決の検討>
通常業務、チームビルディング、プロジェクトの推進など、仕事の場面や状況に関わらず、そこで何らかの問題が生じ、それを解決したいときは、問題の原因分析がとても重要です。この原因分析が間違ったり、不十分な場合は、仮に問題解決策をプランどおりに実行できたとしても、問題が解決しなかったり、問題の一部しか解決しない場合があります。この原因分析を十分に行うためには、「その問題が起きた直接の原因はなぜか?」「その直接原因がうまれてしまうような背景や環境はどうして出来上がったのか?」といった視点で考える必要があります。そしてこれはロジカルシンキングでの因果関係の明確化そのものになります。
クリティカルシンキングの特徴と使いどころ
クリティカルシンキングとは「批判的思考」ともいわれ、今ある前提や自身が考えたい方向性、感情的なバイアスを排除して考える思考法です。仕事で何かを考えるとき、たいていものにはそれを考える上での前提条件や参考とするインプット情報が存在します。たとえばプロジェクト推進であれば、そのプロジェクトが発案された背景や、計画を考える上での、過去のプロジェクトの実績などです。もちろんこれらの情報は有効活用されることで、これからの計画やアクションそのものの質を何倍にもあげるものです。
しかし、もしもこれらの前提条件や参考情報が誤っていたら、どうなるでしょうか?当然ながら、誤った情報のもとに考えられた計画には、多くの考慮漏れや間違った選択があり、その結果も想定とは異なるものになってしまいます。また情報そのものが間違っていなくても、その情報を扱う当人がそれを軽視し、必要な対処をしなければ、これも同じく良い結果にはなりません。たとえば、「このプロジェクトは簡単だから当然成功するだろう」といった自身の思い込みが強い人などは、このケースに該当します。
このような誤った情報や自身の思い込みを排除し、今ある情報を客観的に検証し、そこから考え始めるのがクリティカルシンキングです。また前提条件や参考情報に対して、その真偽を検証するだけなく、それをもとに考えた自身の結論に対しても「それは本当にそう言えるのか?」という視点で検証し、自身の結論をブラッシュアップさせます。
クリティカルシンキングが特に必要とされる場面
<提案内容(プレゼンテーションなど)の検討>
何らかの提案をこちらからするとき、その提案の先には必ず自分たちの「◯◯◯したい」という提案の目的があります。たとえば、新しいプロジェクト計画やデザインの提案であれば、その先には、その計画やデザインを採用してもらうことで、「新たな仕事を受注したい」という提案の目的です。これは自分たちの「思惑」という言葉にも言い換えられます。仕事としてやっている提案なので、そこに思惑があるのは当然のことですが、この思惑に強く囚われすぎると、その提案を採用する相手のメリットを忘れてしまうことがあります。相手のメリットを第一に考えず、自分たちの思惑を優先した提案がどうなるかは言うまでもありません。
このようなケースに陥らないためにも、こちらから何かを提案する際は、クリティカルシンキングを意識し、自分たちの思惑や願望を一旦捨てて、相手視点で考えることが必要です。
<提案内容(プレゼンテーションなど)の精査>
相手から提案をされる場合も同様にクリティカルシンキングを意識することが大切です。ここでは相手の思惑を見抜くという意味でも必要ですが、まずその提案内容を、自分たちの願望どおりに解釈してしまわないことが大切なポイントです。自分たちの願望や相手に対する良い印象が、提案内容を理解する際に強く影響してしまうと、提示された情報を客観視できないまま決断してしまうことがあります。詐欺メールのような怪しい誘いだとわかっていれば、最初から疑ってかかるのですが、「これは大丈夫」「この相手は信用できる」という感情があると、細かい情報を確認しないまま判断してしまい、後になってからこちらの想像とは違うことに気付かされます。
ラテラルシンキングの特徴と使いどころ
ラテラルシンキングとは「水平思考」ともいわれ、これまでの思考パターンや情報源とは異なるものを取り入れて、より自由な発想をする思考法です。たとえば、何らかの問題を解決したい時、通常はその問題にフォーカスし、原因を深く掘り下げたり、その原因から直結する解決策を考えます。このラテラルシンキングは、自身がフォーカスしている視点をそのまま水平にスライドさせ、自身が見ている外側のところから、解決策のヒントを得るというものです。たとえば、自分たちとは完全に畑違いの業界で行われている問題解決の手法をヒントにするなどです。
また、問題解決の一般的な手法である問題の特定から原因分析という流れをやめて、あえて解決策から考えてみるといったこれまでの発想とは違う方法を取り入れることも、ラテラルシンキングのひとつのかたちです。
ラテラルシンキングが特に必要とされる場面
<新しい企画の検討>
新しい企画やこれまでとは違った取り組みを考えたいとき、今までのアイデアや考え方を捨ててゼロから考えようとしても、なかなかうまくいきません。なぜならこれまでに自分たちが培ってきた経験や、そこから作られた価値観があるため、ゼロから考えようとしても、どうしても同じようなものを考えてしまいます。このような場面では、今あるものを捨てるだけでなく、「今あるもの以外」にフォーカスし、これまでの発想の外にあるものに対して積極的に目を向けていく必要があります。そしてこれを強く意識するのがラテラルシンキングです。
3つの思考力(スキル)が同時に必要な理由
世の中にあるほぼ全ての仕事が「情報」を取り扱います。なぜならそこには「コミュニケーション」「意思決定」「問題解決」などが存在し、これらには必ず「情報」があるからです。そして情報を扱う仕事であれば、そこには情報の整理や思い込みの排除、新たな発想の取り込みが求められる場面があることは必然的といえます。そして
- 因果関係に矛盾がある
- 整理した結果に漏れやダブりがある
- 思い込みが強く新しい発想がうまれない
など、これらは仕事の一連の流れの中にあるもので、これらが同時に起きたり、それぞれが絡みあって問題となることすらあります。ロジカルシンキングだけがあれば大丈夫、クリティカルシンキングだけを強く意思する必要があるなどとは考えずに、トリプルシンキングとして、ロジカルシンキング、クリティカルシンキング、ラテラルシンキングをバランスよく意識することが必要です。
トリプルシンキングの鍛え方
トリプルシンキングを高いレベルで身につけるためには、ロジカルシンキング、クリティカルシンキング、ラテラルシンキングのそれぞれについて基本から理解し、日々の仕事で意識的に実践することが必要です。また、仕事での実践だけでなく、何かを考えるときは、必ず「3つの問い」で自問自答する習慣をつけることでもトリプルシンキングは鍛えられます。
3つの問いとは
- 「それはなぜか?」
- 「本当にそうか?」
- 「それ以外は?」
の3つです。これは考えている事柄に対して「根拠」「真偽」「対象外」を明確にするということです。世間のニュースや、仕事での会話など、ふとした時に耳に入ってくる情報に対して、この3つの問いを意識できるようになると、情報の精査ができるだけでなく、情報の処理能力自体が高まります。最初は頭の中で呪文のようにセリフにしないと意識できないかもしれませんが、これに慣れてくると自ら意識しなくても、自然に「それはなぜか?」「本当にそうか?」「それ以外は?」が気になるようになります。
アルーのトリプルシンキングに関する研修事例
人材育成を専門としているアルーでは、これまでにトリプルシンキングの定着を支援する研修を数多く実施してきました。
これまでにアルーが実施した研修事例の中から、特に参考となるものを2例ピックアップして紹介します。
トリプルシンキングを鍛える研修の具体的な内容やプログラム構成を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
ロジカルシンキング研修との組み合わせ事例
ロジカルコミュニケーションとロジカルシンキングの両者を伸ばしていきたいと考えていたA社では、入社二年目の社員を対象としたロジカルシンキングとの組み合わせ研修を実施しました。
本事例では、まずロジカルシンキングのフレームワークについて講義でインプットしたあと、「論理関係の把握」「メッセージ・論点の分解」などの五つのノックに取り組んでもらっています。
その後、フォロー研修では現場での実践を振り返りながら、ロジカルコミュニケーションの実践をサポートしました。ロジカルシンキングとロジカルコミュニケーションを同時に引き上げ、現場での実践までフォローした事例です。
クリティカルシンキング研修事例
ロジカルシンキングは使いこなせているものの、これまでの延長線上でしか思考できない社員に悩んでいるB社では、クリティカルシンキングをテーマに研修を実施しました。
本事例では、確実に社員のクリティカルシンキングの能力を伸ばすために、アウトプットの場を多く用意しました。参加者間のディスカッションやケーススタディを通じて、クリティカルシンキングに必要な考え方が徐々に育まれていきます。
▼詳しい内容はこちらの資料で知っていただけます。
トリプルシンキング研修ならアルーにお任せください
アルーは、人材育成に向けたさまざまな施策を支援している企業です。トリプルシンキングを鍛える研修なら、ぜひアルーへお任せください。
トリプルシンキングのスキルを高めれば、今持っている情報と新たな発想を最大限に活用し、最適な答えを導き出すことができるようになるなど、さまざまなメリットがあります。アルーでは、職種や階層、年数別などさまざまなタイプのトリプルシンキング研修を実施しております。
トリプルシンキングに関することなら、お気軽にアルーまでご相談ください。