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“言われたことしかできない”主体性を発揮できない若手社員が一皮むけて成長するための人材育成と働く環境づくり
仕事ではその過程で様々な人と関わります。そこには上司、同僚、後輩、顧客など、立場も違えば性格も違ういろいろなタイプの人がいるため、どんな相手でも十分なコミュニケーションをとり、円滑に仕事を進めていくことはなかなか難しいものです。
そして相手とのコミュニケーションがうまくいかないとき、相手に対して「それは先に言ってよ」とか「そういう内容ならちゃんと説明してよ」と感じた経験は誰にでもあるものです。
その一方で、「そこまで言わないとわからない?」「なんで言われたことしかできないの?」といった相手の察しの悪さにストレスを感じた経験もあると思います。とくに相手が若手社員になると、強く注意する訳にもいかないと考え、「今はしょうがない」とあきらめるリーダーも少なくありません。今回はそんな若手社員に対して歯痒い思いをしているリーダーのために、言われたことしかできない若手社員を一皮むかせる方法について解説します。
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言われたことしかできない若手社員の傾向
「言われたことしかできない」とは、「指示されたもの以外はやらない」ということです。たとえば、指示された仕事のゴールを考えれば、やるべきことは明らかに残っている状態でも、指示された部分が済んでしまえば、とりあえず自分の仕事は終了したと考え、そこで手を止めてしまう若手社員がいます。また、いざ仕事を始めて、指示の内容と実際にやることに違う点があれば、そこでも手を止めてしまうこともあります。
指示されたとおりにできたか否かは関係なく、自分の手が止まったら即座にリーダーや上司に次の指示をもらいに行けば良いのですが、そういった次の動き出しも鈍いため、結果的に新たな指示を受けるまでの時間を無駄にしてしまいます。チームリーダーが多忙な現場では、リーダーと若手社員のコミュニケーションが少なめということもあり、指示が滞り若手社員の手も止まりがちです。リーダーは期待どおりに動いてくれない若手社員に対してストレスを溜めます。また、若手社員も自分だけ放置されていると感じて不満を持つようになります。
当事者である若手社員は「自分は言われたことしかできない」という自覚がないため、なかなか現状が変わることもなく、周りのリーダーや先輩社員は彼らに対して歯痒い想いを感じながら、モヤモヤとした日々を過ごすことになります。
言われたことしかできない人になってしまう原因
「いつも言われたことしかできない」
「指示の内容と実際の仕事が異なればそれだけで手を止めてしまう」
このような状態になってしまう原因は、その人の意識、能力、環境の3つに分類して考えることができます。
原因1(意識):期待されている役割を認識できていない
わからないことがあったり、判断に迷ったりした際、どうすべきか自分では考えられなくても、その状況を伝え、次の指示をもらうことは誰にでもできます。そして、その確認や指示はできるだけ早く受けることが望ましいことも、普通のビジネスパーソンであれば、誰もがわかることです。
しかし、実際の仕事の現場では、この確認や指示を受けるまでのスピードは、若手社員それぞれで異なり、確認が早い人と遅い人の間には大きな差があります。いつも確認が遅い人は、自分に間違いがないか必要以上に慎重になって確認することを躊躇したり、確認の手間を省くために、何か他の用事があった際についでに確認をしようとします。これらは仕事の目的や、会社や周りの人よりも、自分の都合を優先している状態です。
これとは逆に確認の早い人は、自分の都合よりも、仕事の目的や周りの人のことを第一に考えるため、確認や指示を受けるのに躊躇することがありません。また、確認が遅い人は、仕事において自分の都合を優先していることに、自分自身で気づいていません。これはまだ会社で期待されている役割を十分に認識していない、もしくは責任感が十分に育っていないことの表れです。
原因2(能力):思考力(垂直思考・水平思考)が不足している
垂直思考とは、考察対象について、「なぜそうなるのか?」「この先どうなるのか?」といった原因や予測について考えることです。水平思考とは、考察対象について、それまでの考え方から視点を変えて新たな発想をして、自分の考え方を柔軟に変えることです。
そして仕事ではひとつのことを深く掘り下げて考えたり、さまざまな角度でものや人をみる必要があるため、ビジネスパーソンには常にある程度の高い水準で垂直思考と水平思考が求められます。
言われたことしかできない人は、この垂直思考と水平思考が不足しているため、仕事の指示を受けた際に「なぜこの仕事が必要なのか?」「この仕事をした結果、なにがどうなるのか?」といったことが十分に考えられません。また指示内容とは違うものに直面したり、それに気づいたときも、これまでの自分の考え方を見直すことができません。
これらの思考力は仕事での失敗や苦労がきっかけとなり、それを改善しようとすることで、少しずつレベルアップしていくものです。しかし、まだ仕事を始めて日が浅い若手社員は、失敗や苦労の経験に乏しいため、思考力も不足しています。
原因3(環境):指示の内容や指示の出し方が不適切
言われたことしかできない若手社員の原因の大半は、本人の意識の高さと能力が占めていますが、指示を出す側の問題というケースもあります。指示を出す側の上司やリーダーからしてみれば、いつも細かな指示を出せるとは限らないし、そんな時間的猶予もありません。そのため、若手社員には不十分な指示でも、自ら考えて、わからないところを適宜確認しながら動けるようになってもらいたいと考えています。
もちろん、若手社員たちも上司やリーダーがそのような期待を持っていることは理解しています。しかし、経験が少なく仕事に対する十分な知識を持っていなければ、どんなにやる気があっても、指示や上司の意図を誤解することがあります。上司やリーダーは細かな指示が出せない時も、相手が若手社員であれば、彼らが仕事の目的と段取りを誤解していないかまで確認する必要があります。
また、上司やリーダーが苦手意識を持たれており、「この人となるべく話したくない」と思われているケースもあります。上司やリーダーは、信頼関係を構築することを意識して、日ごろのコミュニケーションをとらなくてはいけません。
言われたことしかできない若手社員が成長するための人材育成と働く環境づくり
言われたことしかできなかった若手社員が、みずから動き判断しながら能動的に仕事に取り組むようになるには、彼らの能力を向上させる後押しや、やる気を引き出すための環境づくりが必要になります。
思考力や仕事の実行力を高めるビジネススキル研修
指示の内容や仕事の段取りを正しく理解し、状況の変化にも柔軟に対応する力をつけるためには、思考力や情報整理のためのビジネススキル研修が有効です。たとえば、
- 垂直思考を高めるロジカルシンキング
- 視野を広げ発想力を高めるクリティカルシンキング
- 相手目線で考えることと試行錯誤を重視するデザイン思考
- 仕事全体を円滑に進めるためのプロジェクトマネジメント
などです。
まだ経験の浅い若手社員が、これらの研修を受けた翌日から人が変わったようになるかといえば、必ずしもそうとは限りません。しかし、ここで大切なのは、研修翌日からなんとなく習ったことをやってみるよりも、考え方や仕事のやり方には効率的な型があることを知り、今の自分のやり方とはギャップがあることを認識することです。自分の仕事のやり方は十分ではないとわかり、普段からその不足しているところを注意しながら仕事に取り組むことができれば、徐々に「言われたことしかできない」状態からも脱却し、自らできる範囲を広げていく仕事のやり方が身に付きます。
話しやすい先輩が一番のお手本となる環境づくり
若手社員が、特に指示がなくても自らやれることを探し、自発的に行動する人になるためには、その人自身のやる気がとても高まっていることが条件です。やる気が低いままでは、たとえ上司やリーダーが厳しく注意したとしても、仕事のやり方が変わるのは一時だけで、しばらくすればまた元に戻ってしまいます。しかし、彼らのやる気を高めるといってもそう簡単ではありません。上司やリーダーがいくら彼らのことを考えて、アドバイスを送ったとしても、それが響くかどうかは彼ら次第です。また、彼らの気持ちを引き出すために、ある程度の時間を確保したコーチングを実施することができたとしても、それを頻繁にやっていては、今度は上司やリーダーの負荷が大きくなってしまいます。
言われたことしかできない若手社員を成長させるためには、まずは周りにいるチームメンバーに気軽に話しかけられる状態をつくることです。このチーム状態が維持された仕事場の環境ができれば、若手社員は、わからないことに直面した時、躊躇せずに周りの人たち聞くことができ、間違っているかもしれないが、とりあえず口に出してみることができるようになります。こうしてチーム全体のコミュニケーションが活発な状態になると、若手社員も自然と周りにも目が向き、周囲の先輩が普段どのように仕事をしているかもわかるようになります。
自分の先を行く先輩たちの仕事のやり方を知ることは、ときに誰かの助言やスキル研修などの何倍もためになることがあります。このように周りの先輩の仕事ぶりを参考にできる環境づくりこそが、言われたことしかできない若手社員にとって、彼らの成長を助ける最も有効なものになります。
指示待ち若手社員が主体性を発揮できるようになるための人材育成とは
いわゆる“指示待ち”の若手社員を変えて、みずから主体性を発揮してもらうようにするためには、組織の課題に応じて以下の3つの人材育成研修を実施することが効果的です。
- 若手社員の意識を変える人材育成研修
- 若手社員のスキルを強化する人材育成研修
- 上司のマネジメント力を強化する人材育成研修
若手社員の意識を変える人材育成研修
主体性を発揮することができない若手社員の意識を変えるためには、
- 自分のキャリアに対する不安を取り除き、働くモチベーションを上げる
- 自分に期待されている役割を認識し、社会人としての「あり方」を見直す
の、2種類のアプローチ方法があります。
前者は若手社員の成長意欲を高め、キャリア自律をうながします。一方後者は、組織貢献に対する意識を高め、入社年次や役職によって求められる役割に対する責任感を醸成します。
「わざわざ研修を実施しなくても・・・」と考える人事の方もいらっしゃいますが、現在は人手不足が当たり前に定着しており、目の前の仕事に追われて自分なりの考えを持つ余裕がない若手社員が増えています。仕事の場をいったん離れられる研修の場は、若手社員にとって貴重な時間となります。おもに実施される研修としては、入社年次によって実施される階層別研修やキャリア研修があります。
若手社員のスキルを強化する人材育成研修
意識を変えたとしても、仕事を遂行するためのスキルが上がらなければ、職場での行動変容は期待できません。前述のとおり、若手社員には、
- 指示の内容や仕事の段取りを正しく理解する
- 状況の変化にも柔軟に対応する力
が必要です。
前者は社会人基礎力、後者は仕事の思考力と実行力です。若手社員はまだ社会人としての経験が浅く、職種によっては得られる経験やスキルが限られます。また、そもそも多様なスキルについて知らないこともあります。スキル研修は、そんな若手社員の視野を広げ、スキルを強化することにつながります。
社会人基礎力を高める研修には例えばビジネスコミュニケーション研修やプロフェッショナルスタンスを身につける研修などが挙げられます。また、思考力を高める研修には例えば、ロジカルシンキング研修やクリティカルシンキング研修、ラテラルシンキング研修などがあります。 さらに、仕事の実行力を高める研修テーマとして代表的なものには、タイムマネジメント、タスクマネジメント、プロジェクトマネジメント、問題解決力、巻き込み力などがあります。
上司のマネジメント力を強化する人材育成研修
若手社員が自分の上司に気軽に話しかけられる状態をつくろうとするときに、上司のマネジメント力が課題としてあげられることがあります。マネジャーとして求められる意識やスキルはさまざまありますが、
- 若手社員を巻き込み、うまく「動かす」スキル
- 若手社員の「育成」を支援するスキル
がとくに重要なスキルとして挙げられます。
“言われたことしかできない”若手社員を変えるための研修ならアルーにお任せください
“言われたことしかできない”若手社員を変えるための研修なら、ぜひアルーへお任せください。
人材育成を手掛けているアルーでは、“言われたことしかできない”若手社員を変えるための育成プログラムを数多くご用意しております。アルーの実施する育成プログラムは、実際に行動変容を起こさせることにこだわり、グループワークや実践を通じて学べるようにしていることが特長です。例えば若手社員を対象に実施する研修では、メンバーの主体性を引き出すため、講師が逐一指示を出さずにメンバー同士の話し合いを重視するワークを繰り返すことで、主体性を向上させることができます。
また、お客様の企業の抱える課題に合わせて、研修内容を柔軟にカスタマイズすることも可能です。例えば、新入社員や若手社員を幅広く対象とした研修もあれば、一般女性社員を対象とした研修など、ターゲットを絞った研修を実施することもできます。“言われたことしかできない”若手社員を変えるための施策をご検討の際は、ぜひお気軽にアルーまでご相談ください。
“言われたことしかできない”若手社員の主体性を向上させる研修事例
アルーでは、これまでに幅広い企業で“言われたことしかできない”若手社員を変える研修の実施を支援してまいりました。ここではそれらの中から、主体性をテーマに、特に参考となる事例を1つ紹介します。
“言われたことしかできない”若手社員を変えるための具体的な研修方法について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
【サービス業】若手社員研修
システム会社のB社では、ジョブ型人事制度の導入に向けて、主体的に行動できる社員の育成を目指していました。そこで、若手社員を対象として主体性を伸ばすための研修を実施しています。
本事例は事前課題と4時間の研修当日、事後課題の3つで実施されています。事前課題では1年間の振り返りを行い、主体性を発揮するうえで重要な自分自身のモチベーションを見つめ直してもらいました。研修では主体性を発揮する方法を扱い、事後課題としてアクションプランの実践を行っています。
受講者からは、「新入社員から2年目になることへの不安もあったが、今後自分がどのような行動をしていく必要があるのか、具体的なイメージをもって考えられる機会となった」、「個人ワークやグループワークが沢山あったことで自身の今までの行動を見直したり、新たな目標を考えることができた」などの声があがりました。今後の目標を立て、業務に対して前向きに考えてもらうことに成功しています。
本事例の詳細は、以下のページからご覧ください。
【研修事例】仕事へのオーナーシップを持ち、ひとりだち意識を得る
▼事例資料ダウンロード
まとめ
“言われたことしかできない”社員を放置することは、その社員自身にとっても、周囲のメンバーにとっても、上司にとっても良くない結果を生み出します。
“言われたことしかできない”社員を卒業することができれば、社員個人の生産性だけでなく、組織の生産性も高まります。また、自分で考えて自分で行動できるようになれば、社員幸福度の向上、定着率の改善に繋がりやすくなります。
ぜひ“言われたことしかできない”社員を変えるための研修や取り組みをできることから取り入れてみましょう。