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高度外国人材とは?受け入れの課題と活躍を引き出す研修のポイント
今、日本の生産年齢人口は減少局面に入っています。2020年に約8,000万人であった生産年齢人口は、2050年には5,000万人を下回ると予想されています。出生数を考えると、この想定よりもさらに下回る可能性もあります。
そこで今、注目を集めているのが外国人材の「受け入れ」です。
厚生労働省がまとめている2023年10月末時点での日本における外国人労働者数は約205万人で、約90万人であった2015年時点の2倍以上になっています。そして、外国人材の定着と活躍を促すために、研修を実施する企業が年々増加しています。
そこで本記事では、外国人材の中でもとくに「高度」外国人材に注目して、受け入れの現状やメリット、定着・育成施策をご紹介します。
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高度外国人材とは
高度外国人材とは、国内外の大学や大学院を卒業した人材で、高い技術を持ち、専門性の高い職種に就いている外国人のことです。
内閣府の定義によると、高度外国人材とは「国内の資本・労働とは補完関係にあり、代替することが出来ない良質な人材」であり、「我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに、日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し、我が国労働市場の効率性を高めることが期待される人材」とされています。
そして、この高度外国人材の認定件数は、年々加速度的に増加しています。
※出入国在留管理庁『高度人材ポイント制の認定件数の推移』をもとに作成
高度外国人材が活躍している職種
では、専門的・技術的といわれる仕事とは、どのような仕事・職種なのでしょうか。
全てを挙げることはできませんが、代表的な仕事は研究者、医師、企業の経営者・管理職、語学教師などです。そして、「技術・人文知識・国際業務」という仕事も含まれています。具体的には、システム設計や機械設計、電気・電子生産技術職、営業職、接客、マーケティング、商品開発、人事・総務、アプリケーション開発、社内SEなどで、非常に幅広い範囲の仕事が専門的・技術的とされています。
高度外国人材を多く受け入れている業界
現在、高度外国人材の多くは次のような業界で活躍しています。
- 金融
- 建設、土木、電気設備などのインフラ関係
- IT
- エレクトロニクス
- メディア
- メーカー
高度外国人材受け入れの課題
高度外国人材に期待されている仕事の範囲が非常に広く、幅広い業界で受け入れが進んでいますが、日本企業側の受け入れ体制はまだまだ整っているとはいえません。たとえば留学生にのみ絞ってみたときに、約65%の留学生が日本での就職を希望していますが、実際の就職率は35%程度にすぎないといわれています。
実際、株式会社ディスコが2020年に実施した調査では、回答した494社のうち約35%の企業しか外国人留学生を採用しておらず、今後採用予定があると答えた企業も40%弱と低迷しています。
ダイバーシティ&インクルージョン推進の重要性が叫ばれて久しく、政府も高度外国人材の受け入れを積極的に進めようとしていますが、思ったように進んでいないのが現状といえます。
理由には、入社後に人材の能力を活用、マネジメントできる日本人管理者の不足や、言語の違い、日本でのキャリア形成の難しさが挙げられます。さらに、長時間労働をはじめ、そもそも日本企業で働くということに対する魅力が欠けているという指摘もあります。
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高度外国人材受け入れのメリット
高度外国人材の受け入れには、生産年齢人口減少にともなう労働力減少を補うためだけではなく、企業や組織において様々なメリットがあります。
たとえば、
- 海外との取引におけるネットワーク構築や拡大
- 外国籍人材ならではの能力・発想を取り入れることができる
- 外国人向けサービス需要の高まりに対応するなど、ビジネスの競争力強化につながる
- 国籍に関係なく優秀な人材を獲得できる
- 日本人社員に外からの刺激を与えられる
などが挙げられます。
簡単にまとめてしまうと、企業の競争力を強化するメリットがあるといえます。
新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークが当たり前になったこともあり、人材移動の国際化は年々進んでいます。高度外国人材の国際的獲得競争は過熱しており、日本企業は、国際競争力を維持し、高めるために、外国人材の受け入れ体制を整える必要があります。
高度外国人材定着の課題
高度外国人材受け入れで最も大きな課題は、「定着」です。
2019年9月にパーソル総合研究所が発表した、「外国人雇用に関する企業の意識・実態調査」によると、とくに従業員の定着率が高い大企業において、外国籍の社員が日本人社員よりも定着しづらいことが分かっています。
海外に住む外国人のためのコミュニティ形成支援サイト「インターネーションズ」が、毎年まとめているランキング「外国人が住みたい・働きたい国ベスト・アンド・ワースト」の2021年1月での調査でも、日本はワースト6位で、特に「定着のしやすさ」の項目では59か国中58位でした。
その理由として、高度外国人材の早期離職につながる2つの大きな課題は、
- 入社前の相互理解の甘さ
- 入社後のビジネスコミュニケーションでのストレス
が挙げられています。
入社前の相互理解の甘さ
採用~入社前の間に必要な準備というと、在留資格や住まいに関するものなど、最低限やらなくてはいけないことにだけ目が向きがちですが、早期離職を防ぐためにはこの段階から企業は気を付けなくてはいけません。入社前に企業と採用した高度外国人材の認識が合っていないと、入社後「こんなはずじゃなかった」となり、早期離職につながります。
キーワードは、他者理解と自己理解です。
他者理解は異なる文化や価値観に対する理解なのでイメージしやすいと思います。日本人同士であってもそれぞれ違うのは同じですが、とくに外国籍の人材は日本の文化や価値観とは違う環境で育っています。他者理解としては、相手の文化や価値観を知ろうという姿勢は重要ですし、高度外国人材側にも日本や自社のことを理解してもらわなくては良い関係が築けません。
一方で自己理解とは、自社が「なぜ」高度外国人材を採用したのか、に対する理解です。人手不足だから、日本人が採用できないから、という理由で高度外国人材の採用に踏み切ることが良くありますが、多くの場合失敗します。とくに終身雇用制度が長く続いてきた日本企業では、「採用目的」と「キャリアパス」を明確にしていないことが多々あります。新人だから3年は我慢して当たり前、ではあるのかもしれませんが、終身雇用の概念がない、もしくは希薄な高度外国人材にとっては、「なぜ」自分が雇われたか分からないことは大きなストレスです。採用された企業で生涯働こうと思ってくれていたとしても、「採用目的」と「キャリアパス」を提示されないと早期離職につながります。まずは、企業側が自社のことをよく理解し、「なぜ」の部分を説明できるようにすることで、早期離職を防ぐことにつなげられます。
入社後のビジネスコミュニケーションでのストレス
入社後の問題として最も多く挙げられるものが、コミュニケーションについてです。
日常会話とビジネスコミュニケーションは違います。日本語能力試験で一番難しいレベルであるN1であったとしても、コミュニケーションが難しい場合もありますし、外国語が堪能な日本人社員の在籍は企業単位で見ても少数派です。コミュニケーションが円滑に進まず、チームでの仕事に支障が出ることは、高度外国人材だけでなく、日本人社員のモチベーションも大きく下げてしまいます。とくに問題になりやすいシーンには、次のようなものがあります。
- 業務指示、依頼、注意
- 休暇依頼があったときの対応
- 食事などに誘うとき、断るとき
- 雑談
- 出退勤、残業に関する話題
- メール、電話応対
- 会議でのディスカッション、社内外に対するプレゼンテーション
このようなシーンのときに、高度外国人材のことを尊重するだけでなく、自社の特徴を理解してもらい、相互に尊重しあえる関係を築くことが、高度外国人材と日本人社員双方のモチベーションを上げることにつながります。そのためには、日本人社員は高度外国人材が分かりにくい表現の仕方を知り、「やさしい日本語」のような伝わりやすい言葉使いでのコミュニケーションを習得することが必要です。高度外国人材側にも配慮ある話し方や聞き方など、日本企業で働くうえで必要なコミュニケーションを学んでもらうことで、よい関係構築につながります。
高度外国人材活躍を推進するための施策例
高度外国人材の活躍を推進するために企業ができることには、たとえば以下の図のようなものが挙げられます。採用までは整えようとする企業が多いですが、定着を考えて環境を整えたり、研修を実施すると、包括的な取り組みになります。
高度外国人材の定着と戦力化に研修をおこなう重要性
高度外国人材定着の課題として挙げた「入社前の相互理解の甘さ」や「入社後のビジネスコミュニケーションでのストレス」への有効な対策のひとつが、人材育成研修です。
日常業務から離れることのできる場を用意することで、
- 外国籍社員のリテンション
- 外国籍社員のスキルアップ
- 日本人社員のスキルアップ
- 外国籍社員と日本人社員の相互理解促進
などをおこなうことができます。
たとえばビジネスコミュニケーションのストレスのひとつに、挨拶があります。毎日顔を合わせる場合、いちいち挨拶をしない文化の国もあります。一方で、日本の企業で挨拶をしなければ、「人としておかしい」「やる気がない」などとみられてしまいます。こうした違いを日常の仕事の場面で知ることは非常に難しく、そのまま双方にとって不幸な結果になってしまいがちです。研修であれば、それぞれの文化の違いを知ることができたり、コミュニケーションミスを減らすようスキルアップを目指すことができます。
高度外国人材の定着と戦力化を目指した研修テーマ例
高度外国人材の定着と戦力化を目指して実施する研修テーマにはさまざまなものがありますが、ここでは、「人の問題」「仕事の問題」「働く環境の問題」の3つの切り口で、代表的な研修テーマをご紹介します。
- 人の問題:周囲や上司との人間関係構築に関する問題
- 仕事の問題:仕事の進め方や仕事に対するモチベーションの問題
- 働く環境の問題:キャリアパスが不明瞭だという問題
高度外国人材の定着と戦力化を目指した研修のポイント
高度外国人材活躍を目指して実施する研修を企画する際には、気を付けたいポイントがあります。ここではそのポイントを4つ、簡単にご紹介します。
研修の全体像を描く
高度外国人材活躍を目指して実施する研修テーマはさまざまあるため、ひとつの研修を単体で実施するのではなく、複数の研修を組み合わせて、定期的に実施するのが一般的です。最初に全体像を描くことで、最終的にどうなっていてほしいのかというゴールを明確にすることができるため、どんな研修を実施していくかの指標ができます。
研修と研修をつなげる
全体像を描いたら、誰に、いつ、どのような内容の研修を実施するのかを決めていきます。その際、それぞれの研修の目的とゴールを決め、研修と研修をつなげていくと効果的な研修になります。とくに外国人材はなんのために、という「目的」を気にする場合が多いです。研修の際にそれがつたえられるよう、研修の目的や研修後になっていてほしい姿を明確にしておくことをおすすめします。
ワークを多くおこなう
異文化理解のためには知識も必要ですが、知識だけでは、外国人材も日本人社員も実際にどうしていいか分かりません。ワークを増やし、実践的な練習をなるべく多く実施することで、職場での行動変容につなげやすくなります。外国人材がより深く理解できるよう、日本語だけでなく、母国語や英語で話したり、翻訳されたテキストを用意することも重要です。
受け入れる側の日本人社員にも研修を実施する
外国籍社員だけ学んでも「相互」理解にはつながりません。受け入れ側の日本人社員にも、異文化理解やチームビルディングなどの研修を実施することが重要です。そうすることで相互に理解をし合うことができ、職場での人間関係構築の大きな手助けとなります。また、その際、管理職や先輩社員だけでなく、上位職や経営層も研修に参加してもらう機会をつくると、組織全体で外国人材活躍を支援する風土が醸成されやすくなります。
アルーの高度外国人材の活躍を引き出す研修事例
アルーでは、これまでにさまざまな企業で高度外国人材の活躍を引き出す施策を支援してまいりました。ここではそれらの中から、高度外国人材を受け入れる日本企業の上司向けに実施した事例を1つピックアップして紹介します。
外国籍社員の上司向けマネジメント研修
本研修を実施した企業様では、外国籍社員とのコミュニケーションがうまくいかず、やってほしい仕事を依頼できなかったり、外国籍社員から不満が出て定着せず離職してしまう課題に悩まされていました。
そこで主に外国籍社員をマネジメントする上司を対象に、コミュニケーションを改善する研修を実施しました。
本事例の詳細は、以下のページから詳しくご覧いただけます。
外国籍社員の上司向けマネジメント研修
高度外国人材の活躍を引き出す研修ならアルーにお任せください
高度外国人材の活躍を引き出す研修なら、ぜひアルーへお任せください。
人材育成を手掛けているアルーでは、高度外国人材の活躍を引き出す研修を数多くご用意しています。例えば、日本企業への内定が決まった高度外国人材向けの研修や、上司のマネジメント力を磨くマネジメント研修などの実施も可能です。
高度外国人材に関することなら、何でもお気軽にアルーまでご相談ください。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では、人手不足が常態化する日本企業で今、注目を集めている外国人材の中でも、とくに「高度」外国人材に注目して、受け入れの現状やメリット、定着・育成施策をご紹介しました。ダイバーシティ経営も重視されており、高度外国人材活躍推進の重要性がますます高まってきています。
ぜひこの記事の内容を参考に自社の状況に合わせた高度外国人材活躍推進を応援する研修を企画し、効果的に施策を進めていきましょう。