※本文内、敬称略
-貴社の事業内容と部署の役割について教えてください
寺田:当社は総合エンジニアリング会社として、国内外2万件に及ぶプロジェクトを遂行してきており、主にオイル&ガス領域におけるEPC*コントラクターとして、顧客のニーズに応えるプラントの設計・建設を行ってきました。
最近では新規ビジネス領域にも挑戦しており、オイル&ガスの低・脱炭素化、クリーンエネルギーの拡大だけでなく、ヘルスケア・ライフサイエンスなどのエネルギー分野以外にも積極的に取り組んでいます。
*EPC:Engineering,Procurement,Construction(設計・調達・建設)
寺田:2023年 4月からグループ内のコーポレート機能業務を集約し、コーポレート機能の効率化、高度専門化を目的とする新会社として、日揮コーポレートソリューションズ株式会社を設立しました。
私たちの所属する人財・組織開発チームは、人の育成と組織の活性化という役割を担っており、人材育成・組織開発全般に取り組んでいます。そのなかで私は、長期経営ビジョン「2040年ビジョン」を実現するための人財育成の施策の検討や、新入社員教育、指導員制度、英語関連のビジネスコミュニケーションスキル教育、全社向けのDX教育などを担当しています。
黒木:私は、寺田と同じく新入社員研修と指導員制度を担当しています。また、シニア層のキャリアプラン研修、ラーニングマネジメントシステムの運用管理なども担当しております。
課題・背景
指導員のマインドセットとスキルを共通言語化する必要があった
-今回の指導員研修を企画するに至った背景を教えてください
寺田:当社ではこれまでに何度か形を変えながら指導員制度を運用してきたため、指導員研修についても不定期での開催となっていました。また、内容も指導員同士での意見交換や交流が中心であり、指導員としての役割認識の共通言語化やマインドセット、指導スキルの習得までは行っていなかった年もありました。この点に関しては、「先輩の背中を見て育つ」企業カルチャーが強かったことも一つの要因ではないかと思います。
しかし、新入社員教育を担当するなかで、指導員は新入社員が成長していく上でとても重要な存在であることに気づかされました。そのため、指導員同士の意見交換だけでなく、指導員の役割を改めて理解してもらい、新入社員との関係構築力や指導スキルをしっかりと学んでもらいたいと考えました。
指導員によって新入社員への関わり方や指導の仕方のバラツキを最小限にするためにも研修が必要だと考え、指導員研修を企画しました。
実行施策
新入社員との関係構築を重視し、時代に合った指導方法を身につける
-今回、アルーにどのような指導員研修を依頼しましたか?
寺田:新入社員の指導員に向けて、関係構築スキルと指導スキルを習得することを目的とした指導員研修を依頼しました。指導スキルは、フィードバックとティーチングにフォーカスしました。指導員研修で特にこだわったポイントは、関係構築を第一に考えたところです。私たちは新入社員研修も担当しているので、「新入社員が配属後に指導員のもとで実力を発揮していける環境を作っていきたい」という思いが強いです。指導スキルも大事ですが、新入社員が現場で安心して指導を受けられる環境を作るためには、まずは指導員と新入社員の関係構築が重要だと考えています。
黒木:指導員研修の対象となる社員は、指導員を初めて経験する入社5〜10年目の社員です。年次に幅があるため、一人ひとりさまざまな価値観やバックボーンを持っているため、まずは指導員の目的意識や動機付けの部分を統一させました。また指導員にとっても、新入社員を育成することは良い機会になります。この育成の経験は、今後マネジメント層に上がったときにも貴重な経験になりますので、相互に関係構築しながら取り組んでもらうことを重要視していました。
-今回、指導員研修を導入してどのようなことを達成したいですか?
寺田:新入社員との関係構築について改めて考えるきっかけをつくり、更に良い関係構築につなげてほしいです。また、指導員には自分が新入社員にとっての指導役・相談役だけでなく、周りと繋ぐハブのような役割になるという意味でも、大きな存在であることに改めて気付いてもらう機会になればと考えています。先ほども申し上げたように新入社員の指導を行う上で、指導員が新入社員と関係構築ができていることはとても重要になります。そして関係構築の土台となるのは日々のコミュニケーションです。忙しくなるとコミュニケーションが減ってしまいがちですが、指導員の方から自ら新入社員に対して積極的にコミュニケーションを取りに行って欲しいと思っています。
黒木:また、指導員自身がこれまでの上司から受けてきた指導方法をそのまま踏襲するのではなく、新入社員の考え方の変化や時代の潮流などを踏まえた指導方法を理解し、それを咀嚼して自分の指導方法に落とし込むことを求めています。
寺田:新入社員の考え方が10年前と今では変化している部分があります。たとえば、あるアンケート調査では、10年前の新入社員は「先輩の仕事に対する情熱の有無」を重視していましたが、今の新入社員は「先輩が丁寧に指導してくれること」を求めている傾向に変わっていました。
時代の変化に伴い、指導方法や関わり方を変えていくことも時には必要であることを認識してもらいたいと思いました。
そのため、今回の指導員研修では「今の新入社員の傾向」という内容を入れ、指導員に「自分たちが新入社員のときとは違う」ことを、数値データを基に理解してもらいました。今の指導員が新入社員の時は「先輩の背中を見て学ぶ」カルチャーも一部あったと思いますが、そのような指導を受けてきた指導員が、同じように指導するのではなく、今の時代に合わせて、自分の指導スタイルを適応させていくきっかけにもなったのではないかと思います。
成果
受講者の多くが指導員研修で新しい気付きを得て、毎日新入社員とコミュニケーションを取っている指導員が8割以上!
-今回、指導員研修を実施してみての所感を教えてください
黒木:研修を通じて新しい気付きを得た受講者が非常に多かったです。例えば、受講後のアンケートでも「今までの自分の指導方法は、間違いではないけど、基本的なスキルに照らし合わせていたかというと照らし合わせていなかった」など新しい気づきが得られた声があり、研修の質の高さを感じました。
寺田:一番うれしかったのは、研修実施後に月に1度アンケートを取ったところ、新入社員とのコミュニケーションの頻度を「毎日」と答えた受講者が8割いました。講師の話に「関係構築をする上で接触頻度が大事だ」という話があり、多くの受講者に響いていました。実際に1か月後のアンケートでも、指導員が新入社員に自ら積極的にコミュニケーションを取っていることが分かりました。「関係構築を大事にしてほしい」という私たちの思いが伝わっていたこと、研修での学びが実践されていたことがとても嬉しかったです。
今後の取り組み
-研修を実施して、もっとこうだったらと思うことはありますか?
寺田:受講者から「ソーシャルスタイル診断をもっとやりたかった」という意見がありました。ソーシャルスタイル診断は、新入社員のタイプと指導員のタイプから、適切なコミュニケーション方法を導くことができる診断です。型にはめて分析できるところが、エンジニアの多い当社の社員に向いていると思いました。
今回は他のプログラムとの兼ね合いからソーシャルスタイル診断に時間を多く割くことが出来ませんでしたが、来年度は時間を十分に取れるように調整していきたいです。
-指導員研修において、今後どのようなことを行っていきたいですか?
寺田:今後は指導員研修の頻度を増やし、フォローアップも行っていきたいです。新入社員が成長する過程において、ティーチングからコーチングに徐々に切り替えるタイミングが出てきます。研修を単発で考えず、各成長ステージにおいて適切なタイミングで必要な研修を行えるよう、全体設計をして連続性のある施策にしていきたいです。
黒木:新入社員が配属される前に行うのか、配属後に行うのか、プログラム内容によって異なります。適切なタイミングで適切な内容を盛り込めるよう、指導員研修をシリーズ立てて提供していけたらいいですね。
また、今回は職種に関係なく一律で指導員研修を行いましたが、今後は職種別で指導員の教育を実施していくことも検討したいです。当社のエンジニアはプロジェクト単位で業務を遂行しており、接触頻度が取りづらい環境の職種もあれば、比較的接触頻度が取りやすい環境とさまざまですので、当社特有の課題として、プロジェクト単位で配属先が変わったときにどのように対応していくのかを考えていきたいです。
寺田:指導員の選定は、年次の幅が広く、指導経験が豊富な人もいれば、ほぼ初めての人もいます。指導員研修を細分化して、それぞれの状況に合った研修を選んで受講できたら理想ですね。
他には、指導員たちのノウハウを貯めて「日揮グループの指導ノウハウブック」を作りたいです。当社は指導に対して情熱を持っている人、後輩に対して愛情深い人が多いと感じています。テクニカルなスキルだけでなく、先輩たちの「指導愛」が引き継がれるといいなと思いました。
若手社員が、先輩社員が思いやりを持って指導していることを知る良い機会にもなると思います。
-指導員や新入社員に限らず人財開発の観点で、今後どのようなことを行っていきたいですか?
寺田:当社では「2040年ビジョン」実現に向けて、社員1人1人が新たな挑戦ができる環境を整えています。組織として社員の挑戦を支えていくため、人事としては教育機会を更に充実させていきたいと考えています。
従来の階層別研修を充実させるだけでなく、自己研鑽の制度を拡大したり、社外に出て新しいことに取り組む制度を導入したりと、新たな知識やスキル習得への支援を強化していきたいと思っています。
黒木:人財育成の観点から、日揮の社員としてキャリアを描くためのモデルケースを示していきたいと思います。自身のキャリアを考える機会が多い時代になっていますので、長期的にキャリアを歩めるキャリアプランを描けるモデルケースを示していきたいです。
寺田:キャリアの観点では、会社のビジョンと個人のありたい姿を重ね、互いに擦り合わせることが大事だと考えています。会社と個人がWin-Winな関係性を築き、同じ方向を目指すことができれば社員の会社へのエンゲージメントは自然と高まりますし、社員のワークインライフ(仕事を含めた人生)の満足度が上がれば仕事のパフォーマンスも向上すると考えています。また、キャリアのイメージがあまり湧かない社員に対しては、上司が一緒にキャリアを考えてくれるような組織であれば、部下が自身のキャリアを描いて、そのキャリアに向かって歩みやすくなりますね。
一人ひとりのキャリアも含めて、「会社全体で人を育てる文化・風土」を作っていきたいと思っています。研修や施策を通じて、このような文化を醸成していきたいですし、今回の指導員研修も人を育てる文化の1つのハブになると考えています。私たちは、人財・組織開発チームとして、人財育成だけでなく、組織や文化を作り上げていくことも我々の重要な役割の1つです。
アルーを選んだ理由
-指導員研修を実施するにあたって、アルーを選んだ理由を教えてください
寺田:アルーは指導員研修の企画段階から当社の考えをしっかり聞いて、自分たちでは言語化できていなかった部分も含めて一緒に考えてくれました。研修を単体で設計せず、前後の指導員制度も考慮して全体像を見て一緒に考えてくれるところも他社にはないアルーの強みでしたので、当社に寄り添った提案をしてくれたアルーを選びました。
黒木:そうですね。当社の社員の想いを汲み取り、研修をアレンジしてくれたところが大きかったです。他社では決まったフォーマットでの研修が多い中で、アルーは対話を深めていってくれました。
寺田:講師が心理学を強みにしている方であったことも、当社の社員に合っていると感じました。当社はエンジニアが9割のため、研究やデータに基づいた話をできる講師の方が当社の社員にも伝わりやすいと考えました。
黒木:他にも、研修のプログラムにワーク形式が多いところも良かったです。ただ教わるのではなく、受講者自身で考えて、言語化して、今後の指導方法に生かしていけるよう演習を行ってもらえるところがいいと感じました。
-今後実現したいことに対して、アルーにどのようなことを期待しますか?
寺田:指導員研修に限らず、日揮グループ全体の人財育成に関わっていただきたいです。マネジメント向けや新入社員向けの教育についても引き続き相談させてもらえたらと思っています。
黒木:寺田が申し上げた通り、弊社の全社的な研修に携わっていただきたいというのが一つです。それ以外には、専門的な知識や知見を踏まえた上で、アドバイスをしていただきたいです。
-貴社にとってアルーはどのような存在ですか?
寺田:信頼できる存在です。アルーは親身になって相談にのってくれます。私たちが検討に時間がかかっても急かすことなく、時にはひとつ前に戻って再度考え直す必要があっても一緒に考えてくれます。社外の人ですが、日揮グループの社員のように私達のことを考えて、研修や育成の実現に向けて伴走してくれるので、とても信頼しています。
黒木:私も寺田と一緒の考えですね。研修を依頼する立場、研修を提供する立場、という関係性ではなく、お互いのことを知って意見を出し合えています。忌憚のない意見も出しながらも、適切な距離感を保ちながら当社に寄り添ってくれるパートナーだと考えています。
アルー営業担当からの一言